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Side story of ULTRA SEVEN
“I am DAN MOROBOSHI”
「ウルトラセブン外伝‐僕はモロボシ・ダン‐」
ゆっくりと少しふらつきながら、銀色の顔と肩と胸回り以外は真っ赤な巨人、M78星雲人ウルトラセブンこと恒点観測員340号は立ち上がった。ウルトラセブンなる名前は地球人が、地球防衛軍ウルトラ警備隊が名付けた名前であり、彼の本名ではないがこの物語ではウルトラセブン、またはセブンで統一することにしたい。
セブンは謎の宇宙人の円盤、彼らが操る宇宙怪獣を額のビームランプから発せられたウルトラビームと頭についているブーメランのようなアイ・スラッガーで倒すことができた。決して容易な闘いでなかったことは、赤い巨体が土まみれになり、ふらついていること、ビームランプが激しく点滅していることで分る。
頭上をウルトラ警備隊が誇るウルトラホーク1号と3号がバンク(翼を振ること)しながら飛び去っていき、セブンは頷くことで答礼をした。
(彼らの支援が無ければ、私は倒されていたかも知れない)
セブンがM78星雲の言語でそう考え、飛び去る二機に大きく頷いたとき、500メートルほど南の方向から地球人女性の声が聞こえてきた。
「ウルトラセブーン!ありがとう!ありがとーう!」
それはウルトラ警備隊の紅一点であり、医師でもあるユリ・アンヌ隊員の声だ。
(いや、彼女の声援が一番大きかった)
怪獣によって山肌にたたき落とされ、円盤からのビーム攻撃でセブンの意識はもうろうとした。そのときアンヌの声が聞こえたのだ。
「ウルトラセブーン、がんばってぇ!あなたの肩に地球の平和がかかっているのよー」
その声にセブンは奮起し、怪獣と円盤を倒すことができたのだ。身長四十メートルの巨人に対し、地球人女性は身長158センチと小さく脆い。だが、彼女は生命力に満ちあふれ、優しく抱擁力があり、好奇心も強い。セブンはそんなアンヌを見下ろし、大きく頷くと空を見上げた。
「タアアアアァ!」
大きな叫び声とともにセブンは大空へと飛び去った。
大空を飛ぶ自分の身体が、アンヌの視界から消えたであろうことを見計らって、高空のセブンは地上にテレポーテーションをした。
「デュワ!」
崖の下に実体化したセブンが右手を額の横に持ってくると、らせん状の光が彼を包んだ。数秒後、そこには赤い眼鏡、ウルトラアイを持ったウルトラ警備隊の新人隊員モロボシ・ダンが立っていた。ダンはウルトラセブンの地球上での仮の姿であり、ウルトラアイを装着することで本来の姿に変身するのだ。
ダンがウルトラアイをグレーの制服の胸ポケットに入れると、林道のカーブの向こうから女性の声がした。
「ダン!ダンじゃないの!何処に行っていたのよ!」
そう言いながら、駆けてくるアンヌがダンにはまぶしかった。少し小さめの土ぼこりで汚れた制服が彼女の胸の膨らみや腰の括れを際立たせる。いや。それ以上に彼女は瞳が大きく、鼻が高く、唇は艶っぽくて美しい。いや、本来ダンはM78星雲人のウルトラセブンであり、地球人は異星の種族だ。それでもダンはアンヌを美しいと思っており、地球人の男として惹かれていたのだ。彼の股間が極めて地球人男性らしい反応をしたことにダンは一瞬苦笑した。
息を切らしたアンヌはダンの前で立ち止まると叫んだ。
「もう!いきなり姿を消すんですもの。ダン、セブンが大変だったのよ!」
「知っているさ。僕もセブンをここから応援していた」
「ここで?ここってセブンがあの怪獣に叩きつけられたところよ!大丈夫だった?怪我はない?」
アンヌは身長178センチのダンの肩と腕をさすった。おそらくアンヌも恐ろしい目にあっただろうに、彼女はいつも人の心配ばかりしている。そんなところも彼女の魅力だ。
「大丈夫だ。ありがとう。では本部へ帰ろうか」
二人はウルトラ警備隊の水陸両用パトロールカーポインターに乗り込んだ。ダンはキーを差込み、エンジンをかけるとギアをローに入れてアクセルをふかせた。
ポインターのハンドルを握りながらダンは考える。勿論地球人の言語である日本語だ。ダンもこの頃は普段は日本語で物事を考えている。近頃は自分がM78星雲からやってきた恒点観測員であることを忘れていることも多い。
(もし、このままずっと地球にいたら、ウルトラ警備隊の一員でいたら、アンヌとはどうなるのだろう)
地球人の寿命は悲しいほど短い。アンヌが年老いて死を迎えても自分は、地球人基準なら青年の部類のままであろう。そんなアンヌは間違いなく自分に好意を持っている。この前の休日、二人で東京へ出て銀座のデパートで買い物をしたときは、ショーウインドーのウエディングドレスを見て目を輝かせて聞いてきたものだ。
「ああ、早くこんなドレス着たいわね。ねえ、ダンはどう思う。ひょっとしたら和装が良いのかしら?」
勿論アンヌはダンを地球人と信じている。ウルトラ警備隊に入隊するとき、地球人モロボシ・ダンとしての履歴書はきちんとそろえたし、それをアンヌに見せたこともある。ダンの身体のモデルとした薩摩次郎の記憶から、地球の日本人男性としての一般常識は得ているし、地球防衛軍医療部の健康診断では健康な地球人男性としてのデータがでた。そう、今のダンは生物学的には地球人男性である。その気になれば結婚をし、子供を作ることだって可能だろう
ポインターが川に架かる古い橋を渡った時の衝撃で、ダンはアンヌが何か話し込んでいることに気がついた。アンヌの話に上の空だったのだ。
「ねえ、ダン、聞いているの?で、どこにするの?」
(どこに?まさか結婚式場の場所か?それとも新婚旅行の行き先か?飛躍しすぎだぞ、アンヌ!)
「初詣よ!明治神宮?川崎大師?」
「ああ、なんだ、初詣か?新年を迎える地球人の宗教的儀式だね」
「地球人?何それ!ダンってまるで自分が宇宙人みたい」
アンヌはお腹を抱えて笑った。笑った彼女の顔もチャーミングだ。ダンの鼓動が高鳴った。たわいもない会話だが、楽しいひとときだ。
「帰って報告書の作成だ。急いで戻るぞ!」
ダンはギアを上げ、アクセルを思い切り踏み込んだ。きゃあっと言ってアンヌはシートに身を沈めた。悲鳴を上げながらも楽しそうだ。
(結婚か。この先どうなるのかはわからないが、今の僕はモロボシ・ダンとしてウルトラ警備隊隊員として地球の平和とアンヌを守るのみだ。そして僕がウルトラセブンであることは絶対の秘密だ)
二人を、一人の地球人男性に偽装したM78星雲人と地球人女性を乗せたポインターは基地へと向かって走って行く。その行く先には夕焼けに赤く染まった富士山がそびえていた。
おわり
Side story of ULTRA SEVEN
“I am DAN MOROBOSHI”
END