前作同様、pixivに投稿していたものです。
よろしければおつきあいください。
Side story of ULTRA SEVEN
“I wonder if I will be a ANNE MOROBOSHI in the future.”
「ウルトラセブン外伝 ‐私はモロボシ・アンヌになる?‐」
「勝ったわ!ウルトラセブンが勝ったんだわ!」
地球防衛軍の精鋭ウルトラ警備隊の制服に身を包んだユリ・アンヌ隊員は両手を胸前で交差させつつ叫んだ。彼女はエリート部隊であるウルトラ警備隊の紅一点であり、医師でもある。
ウルトラセブンはゆっくりとその四十メートルの巨体を少しふらつかせながら立ち上がった。銀色の顔と肩と胸回り以外は真っ赤な巨人だ。ウルトラセブンの名前はウルトラ警備隊が名付けた名前であり、彼の本名ではない。その意味はウルトラ警備隊の七番目の隊員を意味する。セブンが宇宙人なのか、宇宙人が造ったロボットなのかは謎だが、クール星人が多くの人間達を誘拐した事件以来、ウルトラ警備隊の危機には当然のように現れ、共に闘ってくれるのである。
「セブンは今日も私たちを、いいえ、地球の危機を救ってくれたわ。私の声、届いたかしら」
セブンは謎の宇宙人の円盤、彼らが操ったと想われる宇宙怪獣を額のランプから発せられたビームと頭についているブーメランのようなアイ・スラッガーで倒すことができたのだが、けっして容易な闘いでなかったことは、赤い巨体が土まみれになり、ふらついていること、ビームランプが激しく点滅していることで分る。何よりアンヌがよく知っていることだ。
「ウルトラセブーン、がんばってぇ!あなたの肩に地球の平和がかかっているのよー」
そう言ってアンヌは赤い戦士を応援したのだ。
頭上をウルトラ警備隊が誇るウルトラホーク1号と3号がバンク(翼を振ること)しながら飛び去っていった。二機に対しセブンは頷いて答礼したようにアンヌには見えた。
「今回ばかりは、ホーク1号、2号のキリヤマ隊長達の支援がなければセブンは倒されていたかも知れないわ」
だが、セブンが最終的には自分の力で敵を倒したことは事実だ。そして地球の危機を救ってくれたことも。
セブンが飛び去る二機に大きく頷いたとき、アンヌは500メートルほど北に立つ彼に大きく手を振りながら叫んだ。
「ウルトラセブーン!ありがとう!ありがとーう!」
セブンにはアンヌの声援が届いただろうか。
セブンが現れたあと、いつもと違い彼はすぐに危機に陥った。
セブンは怪獣によって山肌にたたき落とされ、宇宙人の円盤からのビーム攻撃で意識がもうろうとしたかのようにフラフラになったのだ。
そんな宇宙から来た平和の使者の危機に、先述したようにアンヌは思わず叫んだのだ。
「ウルトラセブーン、がんばってぇ!あなたの肩に地球の平和がかかっているのよー」
アンヌには自分の声にセブンが頷いて奮起し多様に見えた。そしてセブンは怪獣と円盤を倒すことができたのだ。身長四十メートルの巨人に対し、地球人女性のアンヌは身長158センチと小さく脆い。だが、彼女の声援が彼を勇気づけ、勝利に導いたのだ、とアンヌは想った。セブンはそんなアンヌを六角形の眼で見つめながら大きく頷くと空を見上げた。
「タアアアアァ!」
大きな叫び声とともにセブンは大空へと飛び去った。
「セブンっていつも空を飛んでいくけどどこへ行くのかしら。自分の故郷の星へ毎回帰るの?それともどこかに秘密の隠れ場所があったりして、ねえダンはどう思う?」
アンヌは横を見たが、そこにダンなる男はいない。ダンとはウルトラ警備隊の一番新しい隊員で、先述のクール星人の事件の時の貢献を評価され、特別に入隊を許された好青年だ。
今日はアンヌとダンは二人で出動したのだが、円盤と怪獣を発見後、二人ははぐれてしまった。その直後、ウルトラセブンが出現したのだ。
「そうだった。はぐれたのを忘れていたわ。ダンはどこにいったのだろう?無事かしら」
アンヌは左手首につけたビデオシーバーを作動させようとしたが、円盤が発したらしい妨害電波で作動不動となり、円盤が破壊されたというのに今も動かなかった。
「とにかくダンを探しましょう」
アンヌは林道を走り出した。
林道のカーブの向こうで何やら不思議な音がし、何かが光ったように見えたアンヌは、一度立ち止ったあと、再び走り始めた。
(ダンの身に何かあったのかも)
カーブを曲がりきると、アンヌはダンの姿を見つけた。制服の胸ポケットを何やらいじっている。
(よかった。ダンは無事だった!)
「ダン!ダンじゃないの!何処に行っていたのよ!」
そう言いながら、アンヌは駆けていった。ダンはまぶしそうにこちらを見ていたが、すぐに彼の顔は笑顔になった。
息を切らしたアンヌはダンの前で立ち止まると叫んだ。
「もう!いきなり姿を消すんですもの。ダン、セブンが大変だったのよ!」
「知っているさ。僕もセブンをここから応援していた」
「ここで?ここってセブンがあの怪獣に叩きつけられたところよ!大丈夫だった?怪我はない?」
アンヌは身長178センチのダンの肩と腕をさすった。怪獣が発した土埃でアンヌの制服は茶色くなっているが、ダンのそれはクリーニングしたてのスーツのように綺麗で皺もなかった。自分は恐ろしい目にあったのに、ダンはひょうひょうとしているのが腹立たしくもあり、可笑しくもあった。人の心配ばかりしているのが馬鹿らしくなったが、それでいてダンはどこか憎めない。
「大丈夫だ。ありがとう。では本部へ帰ろうか」
二人はウルトラ警備隊の水陸両用パトロールカーポインターに乗り込んだ。ダンがキーを差込み、エンジンをかけ、ギアをローに入れてアクセルをふかせる動きに見とれてしまったアンヌ。ポインターのハンドルを握りながらダンは何か考え事をしているように見えた。
(ダン、何を考えているのだろう。それとダンは私の思いに気づいてくれているのかしら)
ダンは好青年で、キリヤマ隊長以下ウルトラ警備隊のメンバーはもとより参謀達、技術員達からも信頼され、好感をもたれているが、どこか不思議な雰囲気がある。
アンヌが最初にダンと会ったとき、まだ隊員でないただの風来坊だった彼にこう言った。
「一緒に戦ってくれた御礼に何かプレゼントをしたいわ。あなたの好きな物はなあに?」
それに対してダンはこう答え、アンヌの目を白黒させた。
「地球!僕が戦ったのはウルトラ警備隊の為だけではなく、この美しい地球の為だ」
「そう、じゃああなたにこの地球をプレゼントするわ」
最初に出会った頃のやりとりを思い出していたアンヌは、フロントガラスのほうを見ながら、チラチラとダンに視線を送った。
(もし、このままずっと二人がウルトラ警備隊の一員でいたら、私とダンはどうなるの?
ダンは考えてくれている?)
ダンもアンヌのことを決して嫌ってはいないだろう。好意を持ってくれているはずだ。だが、それが同僚としての好意なのか、男女の仲のそれなのかは分らない。
この前の休日、二人で東京へ出て銀座のデパートで買い物をしたときは、ショーウインドーのウエディングドレスを見てアンヌは言ってみた。
「ああ、早くこんなドレス着たいわね。ねえ、ダンはどう思う。ひょっとしたら和装が良いのかしら?」
ダンはアンヌの問いには答えずにジッとドレスを見ながら押し黙っていたものだ。
(もうすぐクリスマス、そのあとはお正月、二人の仲を縮める良い機会だわ)
そう思ったアンヌはダンに問うたのだ。クリスマスにパーティをしましょう、お正月は初詣に行かない?どこがいいかしら、いろいろ考えているのよと立て続けに喋ったがどこかダンは上の空だった。
ポインターが川に架かる古い橋を渡った時、継ぎ目の衝撃で車体が揺れた。アンヌはいっこうに会話に乗ってこないダンに痺れを切らして言った。
「ねえ、ダン、聞いているの?で、どこにするの?」
それに対し、ダンはチラッと一瞬アンヌを見、すぐに視線を前方に戻したが、その表情はどこか焦っているように見えた。ハンドルを握る彼の手は気のせいか少し震えている。
「初詣よ!明治神宮?川崎大師?」
「ああ、なんだ、初詣か?新年を迎える地球人の宗教的儀式だね」
「地球人?何それ!ダンってまるで自分が宇宙人みたい」
地球人って言うより日本人だけど、と想いながらアンヌはお腹を抱えて笑った。
そう、ダンはどこか宇宙人みたいだ。それも地球が大好きな平和を愛する、正義の為に戦う宇宙人。アンヌの脳裏に銀色の顔、六角形の輝く眼、開かない口といったウルトラセブンの無表情なようでどこか強さと優しさを兼ね備えた顔が浮かんだ。
(まさか、ダンは、ひょっとして・・・)
ダンがウルトラ警備隊の前に姿を現わした時、ウルトラセブンが初めてこの地球に出現した時期はほとんど同じだ。
(そう言えば、私とダンが出動したときよくセブンが現れる。でも、ダンと一緒にセブンが戦ってくれているのをみたことはないわ。今日だって・・)
ポインターは防衛軍のトラックとすれ違った。その時ダンは笑顔で対向する抗する隊員に黙礼した。
(まさか、そんなはずは無いわね。だって・・・)
ウルトラ警備隊に入隊するときのモロボシ・ダンとしての履歴書、戸籍謄本などをアンヌは見たことがある。必要な書類はすべて揃っていたし、ダンは地球の日本人男性としての一般常識は備えている。
(時々不思議な発言をすることはあるけれど・・・)
地球防衛軍医療部の健康診断では健康な地球人男性としてのデータがでた。
(ダンが人間じゃないなんて、宇宙人だなんて、ましてやウルトラセブンだなんてありえないわ)
そう心の中で納得したアンヌはくすっと笑った。
「帰って報告書の作成だ。急いで戻るぞ!」
そう言ったダンがギアを上げ、アクセルを思い切り踏み込むと、アンヌの身体がシートに沈み思わず彼女の口からきゃあっと悲鳴が出た。楽しそうな悲鳴だ。
(人間だろうと、宇宙人だろうとダンがダンであることにかわりはないじゃない。そんなダンを私は信頼し、そして愛していることに変わりは無い、例え彼がウルトラセブンでも)
空に星が瞬いたような気がしたアンヌはそう思った。
(もっともそんなことはないでしょうけど)
ハンドルを握り続けるダンはまた何か考え込んでいるようにアンヌには見えた。
(きっと、ダンは私の事を、私たちの将来を考えてくれているわ)
アンヌの脳裏に「モロボシ・アンヌ」という名前が浮かび、慌てて首を左右に振った。そんな彼女をダンはほんの一瞬だが優しく見つめた。
二人のウルトラ警備隊隊員を乗せたポインターは基地へと向かって走って行く。その行く先には夕焼けに赤く染まった富士山がそびえていた。
おわり
Side story of ULTRA SEVEN
“I wonder if I will be a ANNE MOROBOSHI in the future.”
END