伏黒恵の調和 (タイトル変更)    作:ゲダツ

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さて、イレギュラーが起こり続けてる このの章は一体どのようになるでしょうか?

私にも予想がつきません


20 京都姉妹校交流会 個人戦開会式 (修正)

 

 

個人戦当日。

 

 午前四時三十分。

 伏黒恵は着替えを終え、静かにストレッチをしていた。

 

 肩を回す。

 脚を伸ばす。

 深呼吸。

 

 身体の調子を確認する。

「……よし」

 

 問題ない。

 むしろ調子は良い。

 それでも胸の奥は落ち着かなかった。

 

 今回の個人戦。

 自分だけルールがおかしい。

 

 敗者復活。

 連戦。

 特別試合。

 

 どう考えても教師陣の悪意が入っている。

 

「五条先生絶対楽しんでるだろ……」

 小さく呟いた。

 

 答える者はいない。

 伏黒はため息を吐き、部屋を出た。

 第一体育館へ向かう。

 

 ★~

 

 まだ空は暗い。

 

 高専全体が静まり返っている。

 だが体育館が近づくにつれ気配が増えていく。

 

 そして。

 

「……誰かいるな」

 

 入口付近。

 

 先客がいた。

 

 禪院真希。

 腕を組みながら壁にもたれている。

 完全に準備済みだった。

 

 伏黒は思わず言う。

「真希さん早すぎません?」

「お前が遅いんだよ」

「今四時半ですよ」

「だから?」

 話にならなかった。

 

 伏黒は肩を落とす。

 真希は鼻を鳴らした。

「私は二番手だな」

「二番手?」

「私より先に来てる奴がいる」

 

 その瞬間。

 後ろから低い声が響いた。

「早くも遅くもない」

 

 伏黒が振り向く。

 そこにいたのは。

 東堂葵。

 

 巨大だった。

 朝なのに元気だった。

 いや元気すぎた。

 

「到着だな」

 東堂が腕を組む。

「マイブラザー」

「うわっ!」

 

 伏黒が一歩下がる。

「なんでいるんですか」

「参加者だからな」

「そうじゃなくて」

「元気そうで何よりだ」

「話聞いてください」

 東堂は満足そうに頷いた。

 

「やはりお前は良い」

「何がですか」

「女の趣味が良い」

「まだ言うんですかそれ」

 真希が吹き出した。

 

「慣れろ」

「慣れたくないです」

 東堂は真顔だった。

 

「女性の趣味があり、ある程度強い者は皆友達だ」

「意味が分からない」

「つまりブラザーだ」

 

「意味が分からない」

 伏黒は頭を抱えた。

 

 本気で分からない。

 東堂は満足そうだった。

 

 そこへ。

 さらに足音。

「どうやら私が四番手か」

 

 加茂憲紀だった。

 制服を整えながら歩いてくる。

 

 真希が口を開く。

「遅かったな」

「君たちが早すぎるだけだ」

「普通はそうですよね」

 伏黒が即座に同意した。

 加茂も頷く。

 

 東堂だけが不満そうだった。

「強者は環境に左右されない」

「何言ってるんですか」

「起床時間で強さは決まらん」

「誰もそんな話してません」

 伏黒が即答した。

 

 真希が笑う。

 加茂がため息を吐く。

 

 東堂だけが満足していた。

 そんなやり取りをしているうちに時間は過ぎる。

 

 そして。

 午前五時前。

 参加者達が続々と集まり始めた。

 虎杖。

 釘崎。

 狗巻。

 パンダ。

 三輪。

 西宮。

 真衣。

 

 全員が揃う。

 その中でも。

 虎杖が一番酷かった。

「ねみぃ……」

 ふらふらだった。

 

 釘崎も目を擦る。

「なんでアンタらそんな元気なのよ……」

 真希を指差す。

「人間?」

「失礼だな」

「四時起きで元気なのは化け物なのよ」

「誰がだ」

「全員よ」 

 

 釘崎は真希。

 

 東堂。

 

 加茂。

 

 伏黒を順番に指差した。

 

 誰も否定できなかった。

 伏黒だけは反論する。

 

「事前に起きて眠気飛ばしただけだ」

「それを出来る時点で偉いのよ」

「そうか?」

「そうよ」

 虎杖も頷く。

「俺三回寝た」

「起きろ」

 伏黒は即答した。

 そんな中。

 

 体育館入口が開く。

 一瞬で空気が変わった。

 

 教師陣。

 学長。

 補助監督。

 そして見知らぬ術師達。

 

 次々と入ってくる。

 伏黒は目を細めた。

 

(思ったより少ない)

 

 観客が少ない。

 違和感が残る。

 

 だが考える時間はなかった。

 夜蛾が前へ出る。

 

「これより個人戦開会式を行う」

 

 場が静まる。

先ほどまで眠そうだった虎杖や釘崎ですら

表情を引き締めている。

「ルールは事前説明通りだ」

 

 夜蛾は資料を確認しながら続ける。

「追加事項を説明する」

 伏黒は嫌な予感しかしなかった。

 

 今回の個人戦

 教師陣がやたらと準備している。

 それがどうにも引っかかる。

 

「一つ。この第一体育館第二体育館第三体育館

でのみ戦闘を許可する」

「一つ。体育館外での戦闘は禁止」

「一つ。勝敗は教師陣が判断する」

 

「判定に従わなかった場合、その場で棄権扱いとする」

 特に異論は出ない。

 全員が聞いていた。

 

 だが。

 次に出てきた五条の言葉で空気が変わった。

 

「ジャッジは僕とここにはいないけど七海が担当しまーす」

 

 ざわっ。

 小さな声が漏れる。

 伏黒も思わず眉をひそめた。

 

 信用できないという意味ではない。

 信用しすぎるから問題なのだ。

 五条はニヤニヤしながら続ける。

「それと」

 

 一拍。

「今回の個人戦は全国の術師達に中継されております」

 

 一瞬。

 沈黙。

 

 そして。

 ざわざわざわ。

 空気が揺れた。

 

 虎杖が目を丸くする。

「全国?」

 釘崎も驚いている。

「ちょっと待ちなさいよ」

「そんなの聞いてないんだけど?」

 

 パンダも肩をすくめた。

「大規模だな」

 

 真希は舌打ちする。

「面倒臭ぇ」

 

 伏黒は周囲の反応を見ながら考える。

(やっぱりか)

 

 事前に冥冥が呼ばれていた。

 カラスによる映像中継。

 その時点で嫌な予感はしていた。

 

 だが。

(ここまでやる必要あるか?)

 全国中継。

 

 それは単なる交流会ではない。

 何か別の意図を感じる。

 伏黒は無意識に教師陣を見る。

 

 五条は笑っている。

 夜蛾は真面目な顔。

 歌姫も警戒しているように見えた。

(……何かある)

 

 だが情報が足りない。

 今考えても答えは出なかった。

 夜蛾が最後の説明に入る。

「以上で説明を終える」

 

「試合開始は三十分後」

「生徒達は各自控えテントへ移動するように」

「テント外へ出る場合は補助監督へ申請を行うこと」

 

「無断行動は禁止だ」

 そこで夜蛾は少しだけ表情を緩めた。

「君達はまだ生徒だ」

「守られるべき立場でもある」

「今回の措置はそのためだと理解してくれ」

 そうして開会式は終了した。

 

 生徒達が移動を始める。

 伏黒も歩き出した。

 向かう先は控えテント。

 

 外から見ればただの大型テント。

 だが中に入ると印象が変わる。

 

「広っ」

 

 虎杖が素直に驚いた。

 伏黒も周囲を見渡す。

 

 地面にはシート。

 外壁は厚い布。

 

 人数に対して異様に広い。

 

 しかも。

 外から中を見ることはできない構造になっている。

 

「……徹底してるな」

 伏黒が呟く。

 

 パンダも頷いた。

「結界もあるな」

 

 どうやら防音までされているらしい。

 

 さらに奥には受話器付きの電話。

 説明書きが置いてあった。

 

『他テントとの会話は補助監督の許可を得てください』

 

 伏黒は苦笑する。

「監禁施設かよ」

「交流会なのに交流できないわね」

 釘崎も呆れていた。

 

 そんな中。

 伏黒は虎杖へ視線を向ける。

「もうすぐ試合だな」

「ああ」

「大丈夫か?」

 

 虎杖は笑った。

「なんとかなるだろ」

 根拠はない。

 

 だが不思議と安心感があった。

 それが虎杖だった。

 

 逆に虎杖が聞いてくる。

「伏黒こそ大丈夫なのか?」

「何がだ」

「連戦」

 

 伏黒は黙る。

 図星だった。

 今回一番無茶を押し付けられているのは自分だ。

 虎杖も分かっている。

 

「正直きついだろ」

「まぁな」

「だよな」

「でもやるしかない」

 伏黒は肩を回した。

 

 今さら逃げる気はない。

 虎杖は笑う。

 

「それ聞いて安心した」

 

「何がだ」

 

「いつもの伏黒だ」

 

 その時。

 

 テントの入口が開いた。

 補助監督が現れる。

「虎杖悠仁君」

 全員の視線が集まる。

「第一試合です」

「十分以内に準備を済ませてください」

 

 空気が変わる。

 試合が始まる。

 

 虎杖が立ち上がった。

「おし」

 拳を握る。

 

 伏黒も立ち上がる。

「行ってこい」

「おう」

 短いやり取り。

 だが十分だった。

 虎杖は出口へ向かう。

 

 伏黒はその背中を見送る。

 そして静かに思った。

(始まったな)

 交流会個人戦。

 

 だが。

 これはただの交流会ではない。

 そんな予感だけが強くなっていた。 

 

 ★~

 

第一体育館。

 

虎杖は試合会場へ入った。

広い。

そして妙な感覚がある。

 

天井が低い。

観客席も見えない。

「結界か……?」

そう呟いた時。

 

対戦相手が現れた。

加茂憲紀。

御三家。

加茂家次期当主。

 

「こうして会うのは初めてだな」

「っすね」

虎杖は笑う。

 

「でも勝つ気で来た」

「私もだ」

 

加茂が弓を構える。

「負けるつもりはない」

 

団体戦。

自然呪霊戦。

 

全ての話題は伏黒だった。

御三家の名を背負う自分ではない。

伏黒恵。

 

その現実が加茂には面白くなかった。

だからこそ。

 

勝つ。

勝って証明する。

自分の価値を。

 

五条が壇上へ現れる。

「それじゃあ始めようか」

指を鳴らす。

「一回戦」

静寂。

 

「虎杖悠仁VS加茂憲紀」

 

二人が構える。

 

「開始!」

 

瞬間。

虎杖が飛び出した。

 

加茂は即座に指を切る。

 

血が矢に付着する。

放たれた矢が虎杖へ襲う。

 

速い。

 

だが。

 

虎杖は頭を反らしながら回避した。

「っぶねぇ!」

 

髪が切れる。

紙一重だった。

 

加茂は目を見開く。

(今のを避けるか)

再び放つ。

 

三本。

五本。

七本。

 

矢が空を裂く。

虎杖は走る。

 

避ける。

跳ぶ。

回る。

 

だが矢が追ってくる。

「なんだこれ!」

 

避けても。

避けても。

 

戻ってくる。

術式。

赤血操術。

 

虎杖は歯を食いしばる。

「なら!」

 

拳を振るった。

矢を砕く。

さらに砕く。

 

さらに叩き落とす。

加茂の表情が変わった。

「なんという精度だ」

 

砂煙が上がる。

視界が閉ざされる。

 

虎杖が警戒した瞬間。

加茂が横から飛び出した。

 

血液入りの容器を突き刺す。

「なっ!」

虎杖は蹴り飛ばした。

距離が離れる。

 

腕を見る。

血液。

 

理解した。

「血か!」

 

加茂は冷静だった。

 

(やはり効かない)

 

呪物を取り込んで生きている人間。

 

普通ではない。

なら。

 

正面突破。

加茂の額に文様が浮かぶ。

赤鱗躍動。

 

身体能力強化。

 

「行くぞ」

 

加茂が突撃する。

 

矢。

拳。

蹴り。

 

全てが鋭い。

 

虎杖も殴る。

受ける。

返す。

 

観客席から見れば互角だった。

だが。

加茂は感じていた。

 

重い。

一撃一撃が重い。

 

虎杖はさらに前へ出る。

(伏黒はもっと先にいる)

 

特級。

自然呪霊。

交流会MVP。

 

遠い。

悔しい。

だが。

 

置いていかれるのは嫌だった。

「俺だって!」

 

拳を振るう。

 

加茂が吹き飛ぶ。

 

だが立つ。

御三家は簡単には倒れない。

 

そして。

運命の瞬間。

逕庭拳。

 

遅れて届く二撃目。

 

加茂の身体が揺れる。

「時間差の打撃……!」

その隙。

 

虎杖の集中が極限まで高まる。

 

世界が静かになる。

呼吸。

 

鼓動。

 

呪力。

 

全てが噛み合う。

 

「追いつくんだ」

 

伏黒に。

仲間に。

未来に。

 

置いていかれないために。

 

「黒閃!!」

 

拳が放たれる。

 

黒い火花。

空間の歪み。

黒閃。

 

加茂の身体が吹き飛んだ。

 

地面を転がる。

立てない。

完全に。

 

勝負は決した。

静寂。

そして。

 

五条の声が響く。

「試合終了!」

誰も異論はない。

「勝者」

 

虎杖が肩で息をする。

「虎杖悠仁!」

虎杖は拳を握った。

 

まだ足りない。

まだ弱い。

それでも。

 

確かに一歩進んだ。

 

そんな勝利だった。




まだ成長途中の部分もあるので、違和感があったら感想に変えていただけると幸いです
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