違和感やおかしいところなどあったら教えていただけると幸いです。
それでは21話どうぞ!
第一試合終了後――。
控えテントへ戻る途中、伏黒恵はスマホ画面を見ながら小さく息を吐いた。
画面には、先程まで行われていた虎杖と加茂の試合映像が映っている。
伏黒は歩きながら思考を巡らせた。
(冥冥さんのカラスが映像を共有できるのは知ってた……。
原作知識通りだ)
だが、問題はそこではない。
伏黒は第一体育館を見上げる。
外から見れば、ただの巨大な体育館。
しかし内部は、明らかに通常構造とは違っていた。
(……これはもう、ほぼマジックミラーだな)
伏黒は先程までいたギャラリーを思い返す。
上からは試合会場がはっきり見える。
だが、下にいる術師たちからは天井しか見えていない。
しかも、ただ視界を遮っているだけではない。
伏黒は結界の構造を頭の中で整理する。
(少なくとも三重構造……)
まず一層目。
下から上を見えなくする結界。
術師たちに“天井”として認識させる認識誘導型。
二層目。
ギャラリーと冥冥さんのカラスを保護する防御結界。
戦闘の余波、呪力衝撃、流れ弾――それら全てから観戦者を守るためのもの。
そして三層目。
上から下だけを透過させる視界共有結界。
おそらく冥冥の黒鳥操術と連動している。
映像共有のための専用結界。
伏黒はスマホを軽く持ち直した。
(カラスを通して映像を流してるだけじゃない……。複数結界を重ねて全国規模の観戦システムを作ってる)
普通ならあり得ない。
結界術師、補助監督、冥冥の術式。
複数人の協力前提。
しかも短時間構築。
伏黒は眉を寄せた。
(本気だな……)
今回の個人戦。
ただの交流会ではない。
全国の術師に向けた“公開試験”。
それに近い。
廊下を歩く補助監督たちも、どこか緊張していた。
「映像班、二層目安定しています」
「東側結界、呪力変動なし」
「観戦術師の通信維持確認しました」
慌ただしく飛び交う声。
高専全体が巨大な舞台装置のように動いている。
伏黒は思う。
(……冥冥さんを呼んだ理由も納得だ)
単純なスタッフではない。
全国への呪術中継。
それを成立させるための核。
そこまで考えた時――。
遠くでざわめきが起こった。
「今の黒閃、マジかよ……」
「一年であれはヤバいだろ」
「東京校の一年、化け物しかいねぇのか?」
「次 その東京の別の1年だろ? どうなるんだ……」
観戦していた術師たちの声が聞こえる。
伏黒は少しだけ目を細めた。
(……虎杖も完全に注目株になったな)
次は、自分が見られる側だと。
伏黒はスマホの画面を消した。
そのまま静かに控えテントへ戻っていく。
これから始まる戦いを思いながら。
★〜
控えテントへ戻った伏黒は、椅子に腰掛けたまま静かに考え込んでいた。
先程の虎杖と加茂の試合。
全国中継。
三重構造の複雑な結界。
それらを頭の中で整理していく。
(……明らかに規模がデカすぎる)
ただの交流会ではない。
誰かが“見せよう”としている。
高専の生徒たちを。
伏黒がそんなことを考えていると――。
「何ぼさっとしてんのよ」
聞き慣れた声が飛んできた。
伏黒が顔を上げる。
釘崎野薔薇が腕を組みながら立っていた。
伏黒は軽く息を吐く。
「……いや、次お前だろ。大丈夫か?」
釘崎はふっと笑った。
「大丈夫よ」
その目には妙な自信があった。
釘崎は続ける。
「アンタのおかげで、さらに術式の解釈広げられたから」
伏黒は少しだけ眉を上げる。
「……だと良いが」
釘崎はその反応にむっとした。
「何その微妙な返事」
「いや、お前調子乗ると突っ込むタイプだからな」
「はぁ!? 誰が猪突猛進女よ!」
「言ってない」
「顔が言ってんのよ!」
近くで聞いていたパンダが肩を揺らす。
「仲良いなぁお前ら」
「よくねぇ!」
「良くないです」
声が綺麗に重なる。
パンダは笑った。
真希も壁にもたれながら口を開く。
「でも釘崎、前よりだいぶ戦い方まとまったよな」
釘崎は鼻を鳴らす。
「当然。私、伸びる女だから」
「自分で言うな」
「事実でしょ」
そんなやり取りをしていると、テントの入口が開く。
補助監督が書類を確認しながら口を開いた。
「釘崎野薔薇さん。試合です。10分以内に準備を済ませてください」
空気が少しだけ引き締まる。
釘崎は立ち上がり、トンカチを軽く肩に乗せた。
「はいはい、了解っと」
そのまま歩き出そうとした時――。
真希が背中を軽く押した。
「きばれよ」
釘崎は一瞬だけ目を丸くし、すぐに笑う。
「もちろん」
そして釘崎は深く息を吐いた。
その表情から、さっきまでの軽口が少しだけ消える。
代わりに浮かぶのは、戦う術師の顔。
伏黒はその背中を見ながら思う。
(……釘崎も、かなり変わった)
以前よりずっと。
強くなっている。
釘崎はテントの入口で一度だけ振り返った。
「ちゃんと見てなさいよ。伏黒」
「……ああ」
短く返す伏黒。
釘崎は満足そうに笑い、そのまま試合会場へ向かっていった。
★〜
第一体育館――。
結界によって拡張された戦闘空間の中央へ、二人の術師が歩み出る。
東京校、釘崎野薔薇。
京都校、禪院真依。
互いに一定距離を空けて立ち止まる。
釘崎は肩にトンカチを担ぎながら、じっと真依を見据えた。
その口元がゆっくり歪む。
「団体戦じゃ圧勝したけどさぁ」
釘崎はトンカチを軽く回す。
「アンタには、この前の借り返せてなかったからねぇ」
真依は鼻で笑った。
「よく言うわね」
銃を回しながら、安全装置を外す。
「伏黒君におんぶにだっこされてたくせに」
釘崎の眉がぴくりと動く。
「……は?」
「実際そうでしょ。索敵も援護も作戦もほとんど伏黒君。アンタは暴れてただけ」
「言ってくれるじゃない」
釘崎の声色が低くなる。
真依は続けた。
「でもまぁ、あれだけ好き勝手暴れられるなら楽しかったでしょうね」
「はっ、そっちこそお姉ちゃんコンプレックス爆発させながら負けたくせに」
空気が一気に張り詰める。
真依の笑みが消えた。
「……今、なんて?」
「聞こえなかった?」
釘崎はわざとらしく耳に手を当てる。
「敗・北・者って言ったのよ」
「上等」
真依の呪力がわずかに膨れ上がる。
釘崎もまた、トンカチを握り直した。
ギリ、と柄が軋む。
上のギャラリーでは、真希が腕を組みながら呟く。
その時――。
壇上へ一人の男が降り立つ。
白髪、包帯、軽薄な笑み。
五条悟。
「はいはーい、お待たせー」
軽い調子の声が体育館に響く。
だがその瞬間、空気が自然と静まった。
五条は二人を交互に見た後、口元を吊り上げる。
「第二試合――」
片手を上げる。
「禪院真依VS釘崎野薔薇」
「試合開始!!」
真依は即座に拳銃を構えた。
躊躇なく引き金を引く。
釘崎へ向け、数発の銃弾が放たれる。
釘崎は舌打ちしながらトンカチを振るった。
数発を弾き飛ばす。
だが――。
一発、二発。
肩と脇腹を掠めた。
釘崎は大きく後ろへ跳ぶ。
「っクソ……!」
制服が裂け、血が滲む。
釘崎はすぐに理解した。
(近距離は相手の方が上……!)
銃火器。
しかも真依は扱いに慣れすぎている。
間合い管理も正確。
不用意に踏み込めば蜂の巣だ。
釘崎は距離を取りながらポシェットへ手を突っ込む。
「だったら――」
取り出したのは大型のネイルガン。
「こっちは遠距離勝負だ」
真依はそれを見て口角を上げた。
「工具たくさん持ってて、まるで大工ね」
そう言いながら拳銃を入れ替えて、別の銃を構える
今度はサブマシンガン。
「どっちが撃ち勝つか試してみる?」
直後。
銃口が火を吹いた。
釘崎もネイルガンを乱射する。
呪力を込められた釘が高速で飛ぶ。
「そんなんじゃ当たらないよ」
サブマシンガンを撃ち続けながら横移動。
釘崎の釘を避け続ける。
釘崎は被弾を避けながら笑った。
「当たんなくていいんだよ」
次の瞬間。
釘崎の呪力が膨れ上がる。
「芻霊呪法――簪」
床に撃ち込まれていた釘が一斉に炸裂した。
真依の足場が崩壊する。
「なっ――!?」
床が砕け、体勢が乱れる。
その隙を釘崎は見逃さなかった。
ネイルガンを捨てる。
代わりに取り出したのはハンマータッカー。
一気に距離を詰める。
真依は舌打ちしながら後退しようとする。
だが間に合わない。
釘崎の連撃が始まった。
腕。
脚。
肩。
高速で釘が打ち込まれていく。
さらに――。
サブマシンガン本体にも釘が叩き込まれた。
真依は目を見開く。
(早い……!)
一瞬だった。
本当に一瞬で、武器ごと制圧された。
釘崎はそのまま術式を発動する。
「簪!」
サブマシンガンが爆ぜた。
だがその瞬間。
真依が何かを地面へ落とす。
煙玉。
濃い煙が周囲へ一気に広がった。
視界が消える。
釘崎は即座に構える。
「クソッ……!」
(煙に乗じて攻撃する気か……!)
だが釘崎は冷静だった。
(足に打ち込んだ釘がある。俊敏には動けないはず、なら――)
その瞬間。
真横から気配。
真依が現れた。
拳銃を構え、釘崎の頭へ銃口を突きつける。
釘崎の瞳が細くなる。
真依は確信した。
(取った――!)
だが。
次の瞬間。
釘崎は勢いよく銃口へ噛みついた。
「――っ!?」
真依の思考が止まる。
(何やってんだコイツ!?)
常軌を逸していた。
普通なら恐怖で避ける。
だが釘崎は、自分から銃口を口へ咥え込んだ。
真依は即座に引き金を引こうとする。
しかし。
釘崎の呪力が炸裂する。
「簪ッ!!」
銃内部から呪力が暴発した。
拳銃が破壊される。
爆発に巻き込まれ、真依ごと吹き飛んだ。
真依は地面を転がりながら理解する。
(そういうことか……!)
事前に釘を大量に口へ含ませていた。
銃口を咥えた瞬間、内部へ釘を侵入させる。
そして術式を即時発動。
相手に“近づかせる”こと自体が罠だった。
真依は顔を引きつらせる。
(普通、口の中がえぐれるだろ……!!)
だが釘崎はさらに狂っていた。
彼女は自らへ“縛り”を課していた。
――銃口を自ら口へ咥える。
その代償として。
一時的な術式出力強化。
さらに術式発動直後、口内への一時的な耐久強化。
危険と引き換えの強化。割に合ってない一時的な部分強化
釘が口の中で離散し口が釘の針山になることも考えられる
まさに命懸け。
釘崎は血や釘を吐き出した。
「おぇっ……!」
口内は焼けるように痛む。
涙が滲むほど痛い。
(縛りかけたとはいえ……)
(めちゃくちゃ痛ぇ……!!)
それでも釘崎は顔を上げた。
血で濡れた口で笑う。
「わらひの……はひは……」
呂律が回らない。
だが言いたいことだけは伝わる。
“私の勝ちだ”
真依は吹き飛ばされたまま動けない。
「ま、だ……」
立ち上がろうとする。
だが。
壇上から声が響いた。
「試合終了」
五条悟。
「勝者――釘崎野薔薇!」
アイデアが出るけど どのように畳切るかはまだ悩んでる途中です。
変な終わり方はできるだけ避けたいところです