伏黒恵の調和 (タイトル変更)    作:ゲダツ

23 / 34
私は前に中間ぐらいの評価が欲しいと言ったが、

やっぱり上の評価が欲しい! 欲しすぎる! 欲しいんだよ〜


22 個人戦1回戦目 伏黒 (修正)

第2体育館。

 

パンダVS東堂葵の試合は、まだ続いていた。

 

鈍い衝撃音が、壁越しに第1体育館まで響いてくる。

床を踏み砕く音。

重量同士がぶつかる轟音。

東京校控えテントでも、その激しさは十分伝わっていた。

 

虎杖は思わず顔を引きつらせる。

「いや、ヤバくねぇかあれ……」

 

釘崎も眉をひそめる。

「壁越しでこれってどうなってんのよ……」

 

真希は腕を組んだまま鼻で笑う。

「東堂もパンダも真正面から殴り合うタイプだからな」

 

その直後。

 

館内放送が響く。

『第4試合、勝者――狗巻棘』

『試合終了です』

 

東京校の空気が少しだけ動く。

 

「お、棘先輩勝ったか」

虎杖が言う。

 

真希は当然と言わんばかりに頷いた。

「まぁあいつならそうなる」

 

釘崎は少し感心したように、

「三輪相手でも容赦ないわね……」

 

と呟く。

その頃。

 

狗巻は第1体育館の通路を静かに歩いていた。

喉を押さえながら、小さく息を吐く。

 

呪言の反動は軽くはない。

だが歩みに乱れはなかった。

 

その姿を見た東京校側の補助監督が、

「お疲れ様です」

と頭を下げる。

 

狗巻は小さく、

「しゃけ」

と返した。

 

そして――

東京校控えテント。

伏黒恵は静かに座っていた。

 

すでに準備は終えている。

 

制服の袖を整え、靴紐を結び直し、呼吸を整える。

視線は静かだ。

 

だがその奥では、熱が燃えていた。

 

(ここからだ)

(ここからが本番)

(連戦――上等)

(全員、ぶっ潰してやる) 

 

(俺が勝つ)

 

その時。

テントの入口が開く。

 

「伏黒さん。特別試合です。

10分以内に準備を済ませてください」

 

補助監督の声。

 

ついに呼ばれた。

伏黒は静かに立ち上がる。

 

その空気の変化に、虎杖が気づく。

「……伏黒?」

 

釘崎も少し目を細めた。

「なんか急に空気変わったわね」

 

真希は口元を上げる。

「やっとスイッチ入ったか」

 

伏黒はそのまま歩き出そうとする。

その背中を、虎杖が軽く叩いた。

「おい、伏黒…」

 

伏黒は振り返る。

 

虎杖は笑っていた。

「大丈夫か?」

 

伏黒は一瞬だけ目を閉じる。

胸の奥で燃えていた熱を、ゆっくり押し込める。

そして静かに息を吐いた。

「……大丈夫だ」

 

虎杖は笑う。

「ならよし!」

 

真希は背中越しに言う。

「死ぬほど暴れてこい」

 

釘崎も腕を組みながら、

「MVP様なんだから、無様晒すんじゃないわよ」

 

伏黒は数秒黙り、

「……プレッシャーかけるの好きですね、みんな」

 

と小さく返した。

だがその声には、もう迷いはなかった。

 

 

★〜

 

 

伏黒が第1体育館へ到着した頃。

 

結界によって拡張された戦場は、

先程までとは少し空気が違っていた。

 

伏黒はゆっくり視線を前へ向け――止まる。

 

「……は?」

 

そこに立っていたのは、

 

1回戦で敗北した加茂憲紀。

そして、

2回戦で敗北した禪院真衣。

 

伏黒は数秒沈黙したあと、素で口に出した。

 

「個人戦じゃねぇじゃん……」

 

加茂は静かに腕を組む。

 

「だからこその特別戦なのだろう」

 

真衣は肩を竦めながら笑った。

 

「悪く思わないでね、伏黒君」

 

伏黒は二人を観察する。

加茂の体にはまだ包帯が残っている。真衣の足取りも万全ではない包帯は少し血が滲んでいる

 

どう見ても手負いだった。

 

伏黒は眉をひそめる。

「……2人とも結構な傷負ってるのに」

「大丈夫なんですか?」

「それで私に勝てますか?」

 

その言葉に、真衣が少しムッとする。

「言うようになったじゃない」

 

加茂は真っ直ぐ伏黒を見る。

「無論だ」

「こちらも勝つために来ている」 

 

真衣も拳銃を回しながら言う。

「勝つためにはしょうがないからね」

 

伏黒は思う。

(いや普通に理不尽だろ)

(手負い二人とはいえ、連携されたら普通に面倒だぞ)

(しかも俺はこの後も連戦確定)

(五条先生、絶対面白がってるな……)

 

その時。

壇上へ五条が飛び乗る。

「はーい注目ー!」

軽い声が体育館に響いた。

五条は楽しそうに笑いながら説明を始める。

 

「今回の特別戦はぁー!」

「2対1!」

「加茂憲紀&禪院真衣VS伏黒恵!」

 

少し間を置き、さらに続ける。

「恵側は相手を全員倒さないと勝利になりませーん」

「憲紀と真衣は、相手一人を倒せば勝利ね」

 

伏黒は無言。

 

真衣はニヤつく。

加茂は静かに目を閉じる。

 

五条はさらに笑顔で続けた。

「でもまぁー、一回負けた側は手負いで

どこまで行けるかわかんないし?」

「恵はこの後も連戦だから、

力をセーブする必要もあるし?」

「そこんとこ頑張ってー」

 

伏黒は思う。

(説明の全部が嫌すぎる)

(誰も俺の負担を軽くしようとしてない)

(教師としてどうなんだこれ)

 

その時、真衣が小さく笑った。

「伏黒君、顔に出てるわよ」

 

加茂も珍しく口元を緩める。

「少々同情する」

 

伏黒は真顔で返す。

「だったら辞退してください」

 

「断る」「断るわ」

綺麗に重なった。

 

伏黒は小さくため息を吐く。

 

その空気を断ち切るように、五条が手を振り上げる。

「特別戦 第1試合…」

「開始!」

 

 

 

特別戦。

 

伏黒恵。

加茂憲紀。

禪院真衣。

三人が向かい合う。

 

加茂は弓を構え、

真衣は拳銃を抜く。

二人とも一度敗北しているため負傷しているが、

その目から闘志は消えていなかった。

 

伏黒はそんな二人を見ながら小さく息を吐く。

「確認なんですけど、赤血操術って血液を操る術式ですよね?」

 

加茂が眉をひそめた。

「そうだが?」

 

「それに比べて俺の術式は十種影法術。

影を媒体に式神を顕現する術式です」

 

「知っている」

加茂は弓を引きながら答える。

伏黒は続けた。

 

「影を操ることは――」

 

「できないだろう」

加茂が言い切る。

 

それは術式の常識だった。

伏黒は頷く。

「ええ。その通りです」

 

そして静かに付け加えた。

「縛りを除いての話ですが」

 

加茂の表情が変わった。

「何?」

 

次の瞬間だった。

 

伏黒の足元から黒い影が波のように溢れ出した。

床を飲み込み、壁際まで広がる。

まるで黒い海だった。

 

真衣が目を見開く。

「何よこれ!?」

 

影は瞬く間に体育館を侵食していく。

足元が沈むような感覚。

まとわりつくような圧迫感。

 

加茂は思わず後退した。

「まさか……縛りで影を操れるようになったのか!?」

 

「正解です」

伏黒は静かに答える。

 

「これが俺の縛りによって生み出した拡張術式――影操術」

 

影が蠢く。

まるで生き物のように。

 

真衣は思わず息を呑んだ。

団体戦で活躍していたことは知っている。

だが、目の前にいる伏黒はその時よりも明らかに危険だった。

「化け物じゃない……」

 

伏黒は聞こえていないかのように二人を見据える。

「とくとご覧あれ」

 

加茂はすぐに気持ちを切り替えた。

「真衣! 私が隙を作る! その間に撃ってくれ!」

 (赤鱗躍動!)

全身能力を引き上げる。

 

しかし返事がない。

加茂が振り返った。

「真衣――」

言葉が止まる。

真衣が影の触手に拘束されていた。

両腕も両脚も壁に縫い付けられ

口まで塞がれている。

「んんっ!!」

必死に暴れるが外れない。

「真衣!!」

加茂が助けに向かおうとした瞬間。

 

「隙あり」

横腹に拳がめり込んだ。

加茂の体が吹き飛ぶ。

床を転がりながらもすぐに立ち上がる。

 

伏黒は冷静だった。

「穿血、やってくださいよ」

挑発だった。

加茂もそれを理解している。

「言ってくれる」

「ならばそれに応えよう!」

輸血パックを取り出し百斂を開始する。

伏黒は影を集め、全身を覆う球体を作った。

 

 

加茂は構わず百斂を完成させる。

「穿血!!」

超高速の一撃。

影の球体を貫通する。

加茂は確信した。

当たった。

 

しかし影が崩れると、中に伏黒の姿はなかった。

「どこに――」

足首を掴まれた。

影の中から伸びた腕だった。

「下です」

 

加茂の顔色が変わる。

「しまっ――!」

 

そのまま影へ引きずり込まれる。

加茂は身体強化で抵抗する。

それでも沈む。

影が深い。

底が見えない。

 

伏黒は近づきながら言った。

「さすがですね。普通なら終わってます」

拳と蹴りが飛ぶ。

 

加茂も応戦する。

弓を限界まで引き絞った。

「ならこれでどうだ!!」

矢を放つ。

自分ごと吹き飛ばす勢いの一撃。

加茂は影から脱出した。

 

しかし伏黒は影の触手で矢を止めていた。

「なるほど…」

伏黒が呟く。

「今のでできそうですね」

 

加茂の嫌な予感が膨らんだ。

 

伏黒の周囲の影が盛り上がる。

巨大な影の腕が二本出現した。

 

真衣が思わず叫ぶ。

「まだ何かあるの!?」

 

巨大な手が組まれる。

先端は加茂へ向いていた。

加茂の顔が引きつる。

「まさか……」

 

伏黒が告げた。

「穿水」

影の手から水のレーザーが放たれる。

加茂は横へ飛んで回避した。

「速い!」

 

伏黒は少し驚く。

「避けますか」

 

加茂は理解した。

穿血を見ただけで再現した。

それも自分の術式ではないものを。

異常だった。

 

伏黒はさらに影を操る。

背後。

左右。

巨大な腕が次々と現れる。

 

真衣が叫ぶ。

「後ろ!!」

 

加茂が振り向く。 

だが遅い。

再び穿水が放たれる。

 

加茂は両腕を前に出した。

血液硬化。

強引に受け流した

「ぐっ!!」

 

しかし終わらない。

一つ。

二つ。

三つ。

四つ。

五つ。

 

巨大な影の腕が加茂を取り囲む。

逃げ場はない。

加茂は悟った。

勝てない。

完全に詰みだ。

 

「……参ったな」

苦笑が漏れる。

 

その瞬間。

「試合終了!!」

五条の声が体育館に響いた。

「勝者、伏黒恵!!」

 

加茂は弓を下ろした。

 

真衣も拘束されたまま天井を見上げる。

 

伏黒はゆっくり息を吐いた。

だが、その目は次を見ていた。

 

これはまだ一試合目。

本番はここからだ。

伏黒恵は静かに拳を握り、次の戦いへ意識を向けるのだった。




難産でした 
とても難しかったです違和感が所々にありますが、その辺は許してくれると幸いです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。