伏黒恵の調和 (タイトル変更)   作:ゲダツ

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AI ってとっても楽


2 調伏の儀 戦闘

 

  影の縁が、わずかに波打つ。

 

   玉犬・黒狼は着地と同時にこちらを見失っていない。鼻先が僅かに動く。

 

   「――グルル……」

 

  低い唸り。威嚇じゃない。確認だ。獲物の位置を、匂いで“固定”している。 視覚遮断は意味が薄い。 なら、隠れる必要もない。

 

 

  「不知井底」

 

 

  影から現れた翼持ちの蝦蟇が、複数同時に跳び出す。羽音と着地音が重なり、空間が騒がしく満ちる。

 

 

  「ガァッ!!」

 

 

  玉犬が一体を噛み砕く。咀嚼するような動きすら見せず、即座に次へ向き直る。排除じゃない。邪魔を消しているだけ。

 

(思考がシンプルすぎる……だから速い)

 

  数で撹乱しても、恐怖も躊躇もない。 ただ一直線に殺意だけを通してくる。玉犬が地面を蹴る。 爆ぜる音。

 

 

  「――ッ!」

 

  反応より速く間合いを詰めてくる。

 

  「狗顎爪」

 

 腕に青い呪力を纏わせ、迎撃。打撃と斬撃を同時に叩き込む。

 

 

  「ガァァッ!!」

 

 

  浅い。だが玉犬の声が僅かに変わった。怒りじゃない。認識した声。

 

 

  (今ので、ようやく“敵”として見たか)

 

 

  直後、牙が迫る。

  

 

  「不知井底!」

 

 

   一体を割り込ませ、噛ませる。 潰される、その瞬間。伏黒は影へ沈む。玉犬が吠える。

 

 

  「オオォォォォォッ!!」

 

 

  さっきまでより明確な咆哮。姿が消えたことに対する、苛立ち。 だが探さない。嗅覚で追っている。 真上。真下。影の揺れに合わせて首だけが動く。

 

  (見えてないのに位置を読んでる……)

 

  伏黒が足元から浮上。 手には三節棍――特別級呪具遊雲。

 

 

  「……本能だけでここまで来るか」

 

 

  振り抜く。重撃。空気が爆ぜる。

 

 

  「ギャウッ!」

 

 

  初めて、明確な苦鳴。玉犬の体が横へ弾かれる。だが倒れない。四肢で地面を掴み、無理やり止まる。爪が地面を削り、火花のように砂が散る。その喉から、低い音が漏れる。

 

 

  「……グ……ルルルル……」

 

 

  威嚇ではない。戦意の再点火。

 

 

  (完全に戦闘態勢に入ったな)

 

 

  「咬捻」

 

 

  大蛇の術理を腕に流す。接触。捻転。巨体を強制回転させ、叩きつける。 衝撃。  瓦礫が跳ねる。それでも玉犬は、すぐ起き上がる。

 

 

  「ガァッ!!」 

 

 

  短い吠え。合図みたいな声。次の瞬間、加速。

 

 

  (まだ伸びるのかよ……!)

 

 

  不知井底を一斉展開。数で包む。羽音、跳躍、影の揺らぎ。

情報を飽和させる。玉犬がその群れへ突っ込む。

 

 

  「オォォォォォッ!!」

 

 

  咆哮と同時に、一直線。迷いがない。だから読める。

 

 

  (来るタイミングは一回だけ)

 

 

   伏黒は呼吸を落とす。狙うのは最大出力。遊雲。黒閃の間。玉犬が不知井底を突き破る。壁を抜けた、その瞬間。視界が開ける。

 

  伏黒が正面に立っている。玉犬の目が、伏黒を捉える。一瞬だけ静止する。 獲物を仕留める直前の、獣の“確信”。

 

 

  「黒閃!」

 

 

   踏み込み。誤差、零。遊雲を振り下ろし黒い火花が散る 鈍い衝撃が腕を通り越して全身に突き抜けた。  

 

 

  「――ッ!」

 

 

   狙い通り、間に入った。呪力の核心を、掴んだ感触。玉犬・黒狼の巨体が、地面に沈む。だが、終わらない。

 

 

   「ガァァァァッ!!」

 

 

   咆哮。四肢が地面を掴み、無理やり起き上がる。

 

 

  (まだ来るか……!)

 

 

 

 

  式神だけじゃなく、術者も同じ戦闘を生き残ること。強化された玉犬を倒す。その過程を身体に刻む。だから逃げない。伏黒は影へ沈まない。正面に立つ。

 

 

  「来い」

 

 

 玉犬が跳ぶ。迷いのない、最後の突進。速さも、重さも、最初より鋭い。だが。

 

 

  (もう見えてる)

 

 

 

  戦闘を重ねたことで、動きが読める。嗅覚頼りの直線的な詰め方。踏み込みの癖。噛み付く瞬間の重心。全部、一度受けた。だから対応できる。

 

 

 

  「蝦蟇」

 

 

 

  地面から舌が伸びる。わずかに軌道をズラす。その“一瞬のズレ”だけで十分。伏黒は踏み込む。

 

 

 

 「――これで終わりだ」

 

 

 

  遊雲を横薙ぎに叩き込む。衝突。玉犬の動きが止まる。そのまま、押し切る。力比べじゃない。呪力の流れを断ち、術式としての核を潰す。数秒の拮抗。やがて。玉犬の身体を覆っていた荒々しい呪力が、ほどけ始める。

 

 

  「……グ……」

 

 

  低い声。さっきまでの咆哮とは違う。戦闘の音じゃない。確認するような、小さな唸り。伏黒は遊雲を下ろさない。視線も逸らさない。完全に消えるまで、構え続ける。影が静かに収束していく。暴走していた呪力が、術式へと組み直される。

 

 

 

  そして。玉犬は、伏黒の影の中へ沈んだ。今度は拒絶も、暴発もない。ただ静かに――戻った。

 

  調伏、完了。 訓練場に、遅れて静寂が来る。伏黒はその場に膝をついた。

 

 

 

「……はぁ……」

 

 

 

 呼吸が荒い。だが、感覚ははっきりしていた。呪力の巡りが、以前より重く、深くなっている。玉犬を通していた出力の一部が、術者側に馴染んでいる。

 

 

 

(これが……縛りのメリットか)

 

 

 

  成功した分だけ、術者も変わる。リスクと引き換えの強化。

 無茶なやり方だが――確実に、前より扱える。影が足元で揺れる。呼応するように、気配が返ってきた。もう暴れる気配はない。完全に従属した、新しい玉犬・黒狼だ。

 

 

   「……次からは、仲間だ 」

 

 

 返事はない。だが影の中で、低く一度だけ唸りが響いた。




AI ってとても楽でも これだって思うものがなかなか生成されないからとても難しい
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