伏黒恵の調和 (タイトル変更)    作:ゲダツ

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やる気でね。
うまくできねー
どうすればいいんだよ〜



35 修行中

 

合宿が始まって数日。

 山奥の修行場には、今日も滝の音だけが響いていた。

 それぞれが、自分自身の課題と向き合っている。

 

 伏黒は深く息を吸った。

「……もう一回」

 

 足元へ呪力を集中させる。

 宿儺との戦いで掴んだ技術。

 

 空中に存在する、ごく僅かな気圧差。

 その"面"へ呪力を撃ち込み、爆発の反動だけで空を蹴る。

 成功すれば、空中を自由に移動できる。

 

 伏黒は一点へ視線を固定した。

 

(そこだ)

 呪力を放つ。

 

 一歩。

 身体が空へ跳ね上がる。

 

(よし)

 二歩目。

 

 空中でもう一度気圧差を探る。

 しかし——

「……違う!」

 

 足場を捉えきれない。

 身体は支えを失い、そのまま落下した。

 伏黒は影へ半身を沈め、衝撃だけを逃がす。

 それでも勢いは殺しきれず、地面を転がった。

 

「くそ……」

 制服についた土を払いながら立ち上がる。

 

(一歩目だけは成功する。)

(でも二歩目から急に感覚が消える。)

 

 空を見上げる。

(宿儺は連続で何十回もやっていた。)

(戦闘中の俺も出来ていた。)

(何が違う。)

 

 答えが出ない。

 一方。

 

 東堂は広場で石を五十個ほど空へ放り投げていた

 すべて番号が書かれている。

 東堂は目を閉じる。

 

 手を叩く。

 

 石同士が一斉に位置を入れ替えた。

 もう一度。

 さらに配置が変わる。

 最後に目を開き、一つだけ掴む。

 

 掌を見る。

 

「……一番」

 狙った番号だった。

 残った石は拳で叩き落とす。

 

「まだ遅いな」

 東堂は静かに呟いた。

「もっと速く出来る。」

 

 三輪は滝の前で座禅を組んでいた。

 簡易領域。

 半径約二メートル。

 

 淡い膜のような呪力が身体の周囲へ広がっている。

 しかし。

 

 額から汗が止まらない。

 肩は震え。

 

 呼吸も浅い。

「……っ」

 

 領域が揺れる。

 維持するだけで限界が近かった。

 伏黒は修行を止め、三輪の前へ歩いていく。

 

「三輪さん。」

「あ、大丈夫です。」

 

 その返事とは裏腹に、声に力はない。

 伏黒は領域を見つめる。

 

(やっぱり。)

(脳への負荷が大きい。)

 

「一回休みましょう。」

 

 三輪は素直に頷き、簡易領域を解除した。

 その場へ寝転がる。

 

「つ、疲れました……」

 伏黒も隣へ腰を下ろした。

 

「三輪さん。」

「はい。」

 

「なんでそこまで分かるんですか?って思ってますよね。」

 

 三輪は少し驚いた。

 

「……思ってました。」

 伏黒は静かに答えた。

 

「交流会です。」

「俺があなたの簡易領域を受け続けた時。」

「構造だけじゃなく、呪力の流れも全部観察していました。」

「その後、自分でも簡易領域を再現した。」

「だから特徴も分かります。」

 

 三輪は目を丸くする。

「そこまで見てたんですか……。」

「はい。」

「三輪さんの簡易領域は迎撃特化です。」

 

「半径約二メートル以内へ侵入した相手を、

 自動で斬撃が迎撃する。」

「反応速度は非常に高い。」

「その代わり。」

「足を一歩でも動かすと領域は解除される。」

 

 三輪は頷いた。

「……その通りです。」

 

 伏黒は続ける。

「つまり。」

 

「自分が動けない代わりに、迎撃性能を

 最大限まで高める。」

「それが三輪さんの縛りです。」

「守ることに特化した簡易領域。」

 

 三輪は小さく笑った。

「そういう見方もあるんですね。」

 

「はい」

 

 伏黒は空を見上げた。

 

(簡易領域。)

 

(ここまでは理解した。)

 

 その先。

 

 領域展延。

 宿儺や特級呪霊が扱う技術。

 

(身体へ纏う。)

(身体そのものを極薄の領域へ変える技術。)

 

(だから必中はいらない。)

(術式だけを中和する。)

 

 伏黒は拳を握る。

(俺にはまだ早い。)

(でも。)

(簡易領域をここまで理解できた。)

 

(なら。)

(いつか必ず。)

 

(領域展延へ届く。)

 

 滝の音だけが、静かに響き続けていた





おまけ 

合宿が始まる少し前。

 伏黒は、高専から最寄りの銀行へ向かっていた。
 理由は単純。

「報酬が振り込まれたって言われたけど……どれくらいなんだ」

 交流会での事件。
 宿儺との戦闘。

 その功績に対する報酬と、一級術師昇格に伴う手続きが
 終わったらしい。

 とはいえ、伏黒の予想はせいぜい数百万円程度だった。

(高専の仕事は危険だけど……そんなに出る業界でも
 ないはずだ…)

(五条先生とか活躍してる1級術師以外は)

 ATMの前に立つ。
 カードを入れる。
 暗証番号を入力。
 残高照会。

 画面が切り替わる。
「……」

 伏黒は無言だった。
 数字を見つめる。
 一度、目を擦る。

 もう一度画面を見る。

「……は?」
 桁を数える。

 一。
 十。
 百。
 千 
 万。
 億。

「……三億?」
 もう一度最初から数え直す。
「いや、違う……」

 数え直しても。
 三億円だった。

 伏黒は画面を凝視したまま固まる。
「……銀行のシステム壊れたか?」

 周囲を見回す。
 誰も騒いでいない。

 ATMも正常に動いている。
「俺の口座……だよな」
 カードを抜き、名前を確認する。

 間違いない。
 伏黒恵。
 本人だ。

 恐る恐る明細を印刷する。
 そこには新しい振込履歴が一件。

 特別危険任務報酬(宿儺討伐功績)
 その下。

 一級術師昇格特別報奨金
 合計。

 三億円。

「…………」

 伏黒はしばらく動かなかった。
(宿儺って……そんな賞金首みたいな扱いだったのか)
 ようやく現実味が湧いてくる。

「いや……」
「こんな金、どう使えっていうんだ」

 財布へカードを戻しながら、小さく息を吐く。
「家でも建てろってことか……?」

 それでも結局、何も引き出さず銀行を後にした。

 三億円という数字だけが、妙に現実味を持たないまま頭の中を
 回り続けていた。

オリキャラ出します 

  • 大丈夫だよー
  • どっちでもいいよー
  • 入れちゃだめだよー
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