実際どうすればいいのかわかんねえし
誰か教えてくれー
数日後。
滝の修行場。
伏黒と東堂は向かい合っていた。
互いに術式は使わない。
使うのは、呪力による攻防。
純粋な体術の鍛錬だった。
伏黒が踏み込む。
拳。
肘。
膝。
細かく刻むような連撃。
東堂は最小限の動きだけで受け流していく。
「軽い」
そう言った直後。
東堂の拳が振るわれる。
大振り。
だが、一撃の重さは圧倒的だった。
伏黒は腕を交差させて受ける。
衝撃で数歩滑る。
(重い……)
(まともに受け続けたら持たない)
再び距離を詰める。
今度は拳ではなく足払い。
東堂の重心がわずかに崩れる。
その隙。
伏黒は全身を使った一撃を叩き込んだ。
鈍い音。
東堂の身体がわずかにのけぞる。
「……ほう」
東堂は口元を上げた。
「今のは悪くない」
伏黒は息を整えながら距離を取る。
「……休憩にしましょう」
「ああ」
二人は岩へ腰掛けた。
滝の音だけが響く。
しばらく水を飲んでから、伏黒が口を開く。
「京都校の皆さんって、どちらかというと
支援向きの術師が多いですよね」
東堂は頷く。
「ああ。皮肉な話だがな」
「だが呪術師は、強い者だけで成り立つ世界ではない」
「前線で戦う者がいれば、それを支える者も必要だ」
伏黒も静かに頷く。
「確かに」
少し考えてから続ける。
「三輪さんは、どうでしょうか」
東堂は腕を組んだ。
「簡易領域はまだまだだ…」
「それ以上へ進むには呪力操作が足りん」
「まずは基礎を磨くべきだろう」
伏黒は納得したように呟く。
「やっぱり繊細な呪力操作ですか」
「呪術師は才能の差が大きいですからね」
東堂は淡々と説明する。
「一般的に術師が到達できるのは三級か四級だ」
「努力を積めば二級までは届く者もいる」
「だが一級以上は話が変わる」
「そこから先は、才能か異常な努力が必要になる」
伏黒は苦笑する。
「人手不足なのも納得ですね」
(……組織そのものにも問題はあるんだけどな)
そんなことを思いながら立ち上がる。
「少し出てきます」
「どこへ行く」
「第四班です」
「釘崎の様子を見てきます」
東堂は頷く。
「加茂とメカ丸がいる班だな」
「場所は分かるか」
「ええ」
「高専の演習場ですよね」
「ああ」
東堂は立ち上がり、肩を回した。
「だが遠いぞ」
「移動手段はどうする」
伏黒は平然と答える。
「影移動を最速で使えば、一時間ほどです」
「遅くても三時間はかかりません」
「一か月もあれば、こういう空き時間も増えるでしょうから」
東堂は笑った。
「相変わらず無茶な移動方法だ」
「まあ、お前なら問題あるまい」
そして少しだけ真面目な顔になる。
「他の班には、それぞれ課題を与えてある」
「必要以上に邪魔はするな」
「言われなくても」
伏黒は短く返した。
東堂は最後に思い出したように言う。
「そうだ」
「虎杖の件だが、察しのいい連中には必要最低限だけ
話してある」
「妙な勘繰りは起きんだろう」
伏黒は少しだけ肩の力を抜いた。
「……ありがとうございます」
「礼はいらん」
「仲間を守るためなら当然だ」
その横では。
三輪が二人の会話を聞きながら、小さく首を傾げていた。
(……虎杖くんの件?)
(何の話なんだろう……)
(まいいか…)
何も知らない三輪霞だけが、不思議そうな表情を浮かべていた。
伏黒は軽く手を挙げる。
「それじゃ、行ってきます」
影が足元へ広がる。
次の瞬間。
伏黒の姿は影の中へ沈み、そのまま第四班のいる演習場へ
向かっていった。
★〜
京都高専演習場。
伏黒恵は木陰から姿を現した。
影移動を使っての長距離移動。
慣れてきたとはいえ、流石に疲れる。
「……二時間か」
額の汗を拭う。
「思ったよりかかったな」
周囲を見渡す。
広い演習場。
その中央では第四チームが訓練を行っていた。
最初に気付いたのは加茂だった。
「伏黒くんか」
弓を下ろしながら近づいてくる。
伏黒も軽く手を上げた。
「お疲れ様です」
「何の修行してるんですか?」
加茂は一度演習場の方を見る。
「呪力の精度向上だ」
「実戦では無駄な消耗が生死を分ける」
「だから最低限の出力で最大限の成果を出す訓練をしている」
そう言いながら演習場を指差した。
そこには複数の的。
どれも小さい。
しかも不規則に動いている。
「決められた呪力量だけで的を破壊する」
「出力が多すぎても失敗」
「少なすぎても失敗だ」
伏黒は少し感心した。
「地味ですね」
「だが効果は高い」
加茂は即答した。
「派手な技ほど基礎の精度が問われる」
「君なら分かるだろう」
「まぁ……それはそうですね」
伏黒は苦笑する。
その時だった。
「休憩だ」
加茂が声を上げる。
演習場の奥で動いていた人影が止まった。
機械音が鳴る。
「了解した」
メカ丸だった。
こちらを見て一瞬だけ沈黙する。
「……伏黒カ」
伏黒も軽く会釈した。
「どうも」
そのさらに奥。
釘崎野薔薇もこちらを見ていた。
そして。
無言。
数秒。
無言。
さらに数秒。
伏黒は嫌な予感がした。
「……」
「……」
釘崎が歩いてくる。
無言。
怖い。
普通に怖い。
伏黒は少し目を逸らした。
釘崎は伏黒の前で止まる。
そして。
「伏黒」
「はい」
「後で話がある」
笑っていない。
まったく笑っていない。
伏黒は即座に理解した。
(まだ怒ってる)
当然だった。
虎杖の件。
天元の件。
認識阻害の件。
そして
虎杖の件。
色々やり過ぎた。
「……ああ」
「分かった」
素直に頷く。
下手な言い訳はしない。
すると釘崎は踵を返した。
「来なさい」
「今」
「今かよ」
思わず本音が漏れる。
釘崎は振り返らない。
「今」
「はい」
伏黒は諦めた。
そのまま釘崎の後ろを歩いていく。
残された加茂とメカ丸は顔を見合わせた。
「……」
「……」
しばらく沈黙。
そして。
「気まずいな」
加茂が呟く。
「同感だ」
メカ丸も短く答えた。
二人とも。
伏黒の今後に少しだけ同情していた
★〜
誰もいない裏庭。
高専の敷地内とは思えないほど静かだった。
風だけが木々を揺らしている。
伏黒は立ち止まった。
その背後で、
釘崎も足を止める。
数秒。
沈黙。
そして――
伏黒の胸ぐらが掴まれた。
「なんで虎杖を殺した」
低い声だった。
怒鳴ってはいない。
だからこそ重かった。
伏黒は視線を逸らさない。
「……そうするしかなかった」
次の瞬間。
身体ごと壁へ押し付けられる。
鈍い衝撃。
だが伏黒は抵抗しない。
(来るとは思ってた)
(むしろ遅かったくらいだ)
釘崎の目は赤かった。
怒り。
悲しみ。
混乱。
全部混ざっている。
「ふざけんな」
「お前なら助けられただろ」
「お前なら何とかできたはずだろ!」
伏黒は胸ぐらを掴む手を振り払う。
そして距離を取った。
「いつかこうなることは分かってたはずだ」
「虎杖はこうなる運命だったんだよ」
釘崎の顔が歪む。
「運命?」
「それで納得しろって?」
「違うだろ!」
伏黒は息を吐く。
「俺たちは呪術師だ」
「仲間が呪詛師になることもある」
「世話になった人間が敵になることもある」
「珍しくない」
「むしろ多い」
釘崎は一瞬だけ言葉を失った。
だがすぐに睨み返す。
「それが虎杖と何の関係があるんだよ」
伏黒は沈黙した。
本音が喉元まで出る。
(理由があったんだよ)
(あいつは操られてた)
(全部説明できるなら苦労しない)
だが言えない。
だから別の言葉を選ぶ。
「宿儺に身体を渡した」
「結果だけ見ればそうだ」
「それが原因で被害が出た」
「やってることは呪詛師と同じだ」
「事実だけならな」
釘崎が歯を食いしばる。
伏黒は続けた。
「逆に聞く」
「お前は何も違和感なかったのか」
「……は?」
「何のことだ」
伏黒は頭を押さえた。
(やっぱりか)
(誰も気付いてない)
釘崎が苛立つ。
「説明しろ」
「意味分かんねぇんだよ」
伏黒は首を振る。
「言う必要はない」
「その頭で考えろ」
「ふざけんな!!」
釘崎がトンカチを振るう。
伏黒は避けない。
額に当たる。
血が流れる。
それでも動かない。
「言えよ!!」
もう一撃。
肩。
三撃目。
腕。
四撃目。
頬。
伏黒は全部受けた。
避けられる。
だが避けない。
その資格は自分にはないと思っていた。
釘崎も途中で気付く。
(なんで避けない)
(なんで反撃しない)
(こいつなら私なんか簡単に止められるだろ)
それでも止まれない。
怒りの行き場がない。
伏黒は反転術式で傷を塞ぐ。
血が消える。
皮膚が元に戻る。
釘崎はさらに殴る。
何度も。
何度も。
何度も。
やがて――
トンカチの柄が耐え切れなくなった。
乾いた音と共に折れる。
釘崎の肩が震える。
呼吸が荒い。
伏黒は壁を背に座り込んだ。
「……この世界は弱肉強食だ」
釘崎は反応しない。
伏黒は続ける。
「強いやつはさらに強さを求める」
「弱いやつは毎日生きるので精一杯だ」
「お前が弱いとは言わない」
「でも――」
伏黒は言葉を選んだ。
「どうしようもないことはある」
釘崎は何も言わない。
ただ地面に座り込んだ。
怒り切った。
泣き切った。
もう感情を出す力も残っていない。
伏黒はスマホを取り出す。
加茂へメールを送る。
| 釘崎さんが限界です。
|自分ではこれ以上悪化させそうなので
|お願いします。 場所を送ります。
続けて真希にも送る。
| 自分では釘崎をさらに傷つけてしまいました、
| 自分じゃさらに傷つけそうなので フォローをお願いします。
送信
地面に座り込む釘崎を見る。
「……悪かった」
小さく呟く。
聞こえたかどうかも分からない声だった。
その後。
伏黒は東堂へ電話を掛けた。
数コール。
すぐ繋がる。
『どうした恵』
「釘崎は今日は無理そうです」
『そうか』
少し沈黙。
そして東堂は意外なほど真面目な声で言った。
『なら休ませろ』
『修行は逃げん』
『人間は壊れる』
『そこを間違えるな』
伏黒は一瞬黙った。
「……了解です」
『あと』
「なんですか」
『お前も休め』
即答だった。
伏黒は苦笑する。
「善処します」
『信用できん返事だな』
通話が切れる。
伏黒は空を見上げた
その時だった。
ふと、自分の腕に違和感を覚えた。
「……?」
視線を落とす。
腕が白い。
いや、違う。
皮膚の下から光が漏れている。
月光が真っ白に見える月白それに似ている 白肉色だ
それが血管のように全身へ広がっていく。
「なんだ……これ」
伏黒は眉をひそめた。
指先。
腕。
肩。
首。
胸。
白い光はゆっくりと身体を染め上げていく。
痛みはない。
苦しさもない。
だが――
妙な感覚があった。
自分の身体なのに、
少しだけ違う。
骨格が。
筋肉が。
皮膚が。
ほんのわずかに、
別の形へ寄っているような感覚。
「……気持ち悪い!!」
伏黒は拳を握る。
いつも通り握れる。
力も入る。
だが違和感だけは消えない。
まるで人間だった粘土を、
別の何かの型へ押し込まれているようだった。
白い光はさらに全身に広がる。
その姿はどこか神々しく、
同時に異様だった。
人ではない。
だが式神とも違う。
その中間。
曖昧な何か。
「……まさか」
一瞬だけ、
脳裏を嫌な予感がよぎる。
だが答えは出ない。
次の瞬間。
光はすっと消えた。
何事もなかったかのように。
肌の色も戻る。
身体も元通りだ。
それでも伏黒は自分の手を見つめ続ける
異常はない
むしろ以前より呪力の巡りは良いくらいだった。
だからこそ不気味だった。
伏黒はしばらく腕を見続けた
静かなまま。
それでも。
ほんの一瞬だけ見えた白い姿が、頭から離れなかった。
さっきまで確かに感じていた。
自分が、
ほんの少しだけ。
人間ではない何かへ近づいていたことを。
最近 をどうやればいいのかの指針は決まってるんですけどね。
道中が面倒くせえんですわ
なので、時々ペースが落ちる時がありますが察して温かい目で見守っていただけるととてもとても幸いです
そこのとこをおよろしくございます
オリキャラ出します
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大丈夫だよー
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どっちでもいいよー
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入れちゃだめだよー