伏黒恵の調和 (タイトル変更)   作:ゲダツ

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原作開始
4 原作開始


 

 

仙台に降り立った瞬間、違和感は確信に変わっていた。

 空気が軽い。いや――正確には、「あるはずの重さ」がない。

 宿儺の指が放つ、あの粘つくような呪力の澱みが感じられなかった。

 

 

「……やっぱり、か」

 

 

 伏黒は独り言のように呟く。

 原作通りなら、ここには確実に呪物がある。  だが今はない。

 つまり――

 

 

 もう誰かが触れている。

 

 

 

パラドックス。  自分の介入が、世界の流れを微妙にズラし始めている証拠。だからこそ、最初から手を打っていた。

 

 仙台市内蝦蟇犬さんたちの一部は市内を囲むようにで包囲網を組み もう1部は呪物の索敵に当たらせている

 

蝦蟇と犬の異形――蝦蟇犬さん

 複数顕現。

 

 

 本来なら影に潜伏する式神を、あえて現実に展開している。索敵効率を最大化するためだ。

 

 

影越しでは拾えない微細な呪力の揺らぎも、  実体を持たせれば嗅ぎ取れる。

 

 

(これが、本来の使い方だ)

 

 

 戦闘用ではない。  これは“観測装置”だ。

 

 伏黒は百葉箱の前に立つ。形式上、任務は遂行しなければならない。蓋を開ける。――空。 

 

 

 知っていた結果を、初めて見たような顔で確認する。

 ポケットからスマホを取り出し、短く連絡。

 

 

「……五条先生。百葉箱は空でした。呪物はありません」

 

 

『へぇ? 先を越されて回収済みってこと? 面倒くさいねぇ』

 

 

「周辺を調査します」

 

 

『任せたよ、恵』

 

 

 通話終了。伏黒は息を吐く。

 

 

(ここからが本番だ)

 

 

 既に蝦蟇犬たちは仙台市内へ散開している。原作改変が起きた場合の保険。自分の知らない動きが発生した瞬間、  どこかで必ず“匂い”が出る。それを拾わせるための網だ。

 

 

 夜。

 

 

 杉沢第三高校。人気のない校舎を、伏黒は無音で進む。帳を下ろす。

 

 

「闇より出でて、闇より黒く その穢れを禊ぎ祓いたまえ」

 

 

 帳、完成。これで外部からは一切認識されない。伏黒の隣には、一体の蝦蟇犬だけを残している。この個体には封印術式を刻んである。呪物を飲み込ませた瞬間、内部で一次封印を行う特別仕様。

 

 

(宿儺の指を虎杖が飲み込む前に確保できれば、それが最善なはず)

 

 

 最悪の未来を知っているからこその配置だった。そして。

 グラウンドの端。いた。原作でも確認されている、二級呪霊。

形状は歪な型。  だが、脅威度は高くない。伏黒は一歩も動かない。

 

 

「――黒狼」

 

 

 影から現れた漆黒の式神が、低く唸る。

 

 

(戦力差は歴然。ここで俺が出る意味はない)

 

 

 戦闘は任せる。自分の役割は観察だ。この世界がどこまで原作と同じ動きをするのか。  どこでズレるのか。それを見極めることの方が、はるかに重要だった。

 

 

 黒狼が地面を蹴る。一瞬で間合いを詰め、呪霊の喉元へ食らいついた。抵抗すら許さない、圧倒的な速度で祓った

 

 

(問題なし)

 

 

 伏黒の意識はすでに別へ向いている。――虎杖悠仁。まだ指を渡していない時間帯。

 

 

(ここから接触する)

 

 

 未来を知る者としてではなく。あくまで“伏黒恵”として。伏黒は静かに歩き出した。蝦蟇犬が、その後ろを無言で付き従う。

 

 

翌日。

 

 伏黒は予定通り、杉沢第三高校へ向かった。影の中ではなく、隣を歩かせているのは一体の蝦蟇犬。

 

 通学路を歩く生徒たちは、誰一人として異形に気づかない。 認識阻害は最低限しかかけていないが、それでも「見ようとしない」側の無意識が働く。

 

 

(問題なし)

 

 

 今回の役割は護衛兼探知機だ。校門を越え、人気の少ない校舎裏へ回る。

 

 

「……来い」

 

 

 

 短く呟く。少しして、足音が近づいてきた。

 

 

「なんだよ急に呼び出して。昨日の人だよな?」

 

 

 虎杖悠仁。

 

 

 予想通りの反応。 だが――視線が、伏黒ではなく隣の蝦蟇犬に向いていた。

 

 

 

「……あれ? それ、着ぐるみ?」

 

 

 

 見えている。

 

 伏黒は内心で確信する。

 

 

(やはり、素養がある)

 

 

「式神だ」

 

 

「……しきがみ?」

 

 

「呪いに対抗するための技術だ。昨日の説明をする」

 

 

 伏黒は簡潔に話す。

 

 

 呪いの存在。 呪力。 呪物。 そして、それを扱う術師のこと。

 

 

 虎杖は途中で何度か蝦蟇犬さんを見ながら、妙に納得した顔をした。

 

 

「……あー、だから昨日の変な空気か」

 

 説明を理解した、というより。実物が見えているから受け入れた。

 

 

(理屈より現物型か)

 

 

 伏黒は包みを差し出した。

 

 

「それを渡せ」

 

 

「これ? 拾ったやつだけど」

 

 

 受け取る。包み越しでも分かる、強烈な呪力。だが――その瞬間。

 

 

「ゲコ」

 

 

 蝦蟇犬さんが鳴いた。さらに。

 

 

「ゲコ!、ゲコ!、ゲコ!」

 

 

 止まらない。明確な反応音。

 

 

「……なんだよコイツ、さっきからうるせぇな」

 

 

 虎杖が眉をひそめる。伏黒は視線を細めた。

 

 

(おかしい)

 

 指は手の中にある。だが蝦蟇犬の警戒は解除されない。むしろ、強くなっている。探知対象が――目の前から離れていない。

 

 

 伏黒は虎杖を見る。呪力の流れ。一般人にしては、妙な淀み方をしていた。

 

 

(まさか)

 

 

「お前」

 

 

「ん?」

 

 

「昨日、それを拾った場所で何か変わったことはあったか」

 

 

「変わったこと? 別に……」

 

 

 虎杖は少し考えてから、

 

 

「あー、なんか変な匂いしたくらい?」

 

 

 伏黒は確信した。

 

 

(封印されている)

 

 

 指の一つが、 既に虎杖の内側に取り込まれている。

 

 

 無自覚。 未発現。 だが確実に存在している。だから蝦蟇犬は鳴き続けている。“外”と“中”の両方に反応しているからだ。伏黒は結論を出した。

 

 

「……今日はそれでいい」

 

 

「は?」

 

 

「明日、指定する場所に来い。詳しく説明する」

 

 

「なんだよ急に」

 

 

「来れば分かる」

 

 

 それ以上は話さない。今ここで刺激するべきではない。虎杖が完全な器として覚醒する条件が、 まだ揃っていない可能性がある。

 

 

「……まあいいけど」

 

 

 虎杖は首を傾げながら去っていった。蝦蟇犬はまだ低く鳴いている。高専へ戻り、伏黒はすぐに連絡を入れた。

 

 

「五条先生」

 

 

『やっほー恵。早かったね』

 

 

「指は回収しました」

 

 

『優秀優秀、さすが僕の生徒』

 

 

「ですが」

 

 

 伏黒は一拍置く。

 

 

「別の一本が、人間に封印されています」

 

 

 電話の向こうが、静かになった。

 

 

『……へぇ?』

 

 

 軽さが消える。教師ではなく、 最強の術師の声音だった。

 

 

「対象は一般人。ですが、呪物への耐性があります」

 

 

『名前は?』

 

 

「虎杖悠仁」

 

 

 数秒の沈黙。そして――

 

 

『……面白くなってきたね』

 

 

 伏黒は空を見上げた。

 

 

(ここからが、本当の分岐点だ)

 

 

 原作はもう、 完全に同じには進まない。




虎杖からしたら困惑もんですよね 彼は最悪の事態を得るかもしれないんですから、メロンパンの支配からはおそらくは解放されないでしょう何もしなければ
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