シャーレの先生最終学歴:才囚学園卒業   作:鳩胸な鴨

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供養。

思いついた分だけ書いた短編集みたいなもんです。


超高校級の言葉足らずはキヴォトスに何をもたらしたか

ケース1.ゲヘナ風紀委員顧問の場合

 

「人を殺したことがあるのか…って?」

 

ゲヘナ風紀委員会の執務室にて。

書類仕事を終わらせた顧問…シャーレから出向してきた赤松(アカマツ) (カエデ)が投げかけられた問いを反芻する。

彼女の瞳は書き終えた書類から、申し訳なさと息苦しさに顔を歪めた少女…風紀委員長たる空崎 ヒナへと向けられていた。

 

「ごめんなさい、赤松先生…。その、連邦生徒会からあなたたちが過去に見せ物としてコロシアイをしていたって情報が来て…」

 

今にも泣きそうな顔のヒナに、赤松はどうしてその情報が回ってきたのか、何の情報が抜け落ちているのかを瞬時に悟った。

シャーレの先生として働いている彼のことだ。おそらく、「無自覚ながら見せ物としてコロシアイをしていた」くらいしか語らず、それが馬鹿らしい形で終わったことを伝え忘れてしまったのだろう。

早めに誤解を解かないと、と思っているうちにも、ヒナが辿々しく言葉を紡ぐ。

 

「ご、ごめんなさい…。辛い過去だろうと思ったけど、どうしても確認したくって…」

「柏生くん、言っちゃったんだ…」

「……じゃあ、本当のことなの…?」

「まあ、うん」

 

果たして、あれをコロシアイと言っていいのかは謎だ。確かに自分は殺人を企てたが、実行に移す直前でそれどころじゃない情報量を含有する映像を見せつけられたせいで、計画しただけに終わっている。

ヒナの反応を見るに、自分が推察した通りの情報しか伝わってないのだろう。

柏生くんは肝心なところで抜けてるなぁ、と呆れつつ、赤松はヒナの誤解を解こうと苦笑した。

 

「大丈夫だよ。コロシアイって言っても…って、ヒナちゃん?」

「……………」

 

ぎゅぅ、と赤松を強く抱きしめるヒナ。

その脳裏に、赤松、果てはシャーレの先生との思い出が濁流のように溢れ出る。

 

────大丈夫だよ。私も頑張るからさ。一緒に乗り越えて行こう?

 

────よかった。この曲なら、君を励ませるかなって。

 

────ゲヘナのことは赤松さんに任せきりだからね。たまには私にも先生らしいことをさせてほしいな。

 

日々の動乱に忙殺される自分を支え、励ましてくれた恩人2人。

そんな彼らの、2度と触れられたくないだろう傷を、無遠慮に抉ってしまった。

ヒナは衝動が突き動かすがまま、赤松を抱きしめる力を強める。

 

「あの、苦しいなー…。ちょっと弱めてくれると嬉しいかなー…?」

「赤松先生…」

「な、なに…?」

 

ヒナが顔を埋めた場所が、じんわりと濡れていくのを感じる。

果たして、どうしたものか。

赤松が誤解を解こうと口を開くより先、ヒナの震え、くぐもった声が響いた。

 

「わたしが、まもるから…。ぜったい、ぜったい、まもるから…っ」

「……………う、うん…」

 

この空気で「私たちのコロシアイはバカみたいな形で終わりました」とは、とても言い出せなかった。

 

 

ケース2.アビドス廃校対策委員会顧問の場合

 

「ホシノよぉ。なんか今日、近くねーか?」

「んー?そうかなー?」

 

ぎぃ、と資料が積まれた机が鳴る。

借金により廃校になるかどうかの瀬戸際からなんとか免れたアビドス。

その立役者の1人…、シャーレから出向してきた百田(モモタ) 解斗(カイト)が資金面を計算する机には、小柄な少女…対策委員会の長、小鳥遊(タカナシ) ホシノが腰掛けていた。

少し肘を動かせば、その太腿に当たる。百田の中の常識が正しいなら、どう考えても年頃の女子と教師の距離感ではない。

百田はそれに苦笑し、少し体をホシノから離した。

 

「すまねーが、勘弁してくれよな。ハルマキにバレたら後が怖くてよ」

 

なんでかは知らねーけど、と付け足す百田。

ハルマキというのは、彼のクラスメイトだったという女性…春川(ハルカワ) 魔姫(マキ)の愛称だ。

百田と同じく、シャーレの所属らしいが、ホシノは実際に会ったことはない。ただ、百田の話を聞くに、春川 魔姫が彼に惚れているのは明らかだろう。

 

ホシノに百田に対する恋愛感情はない。

 

あるとすれば、それはシャーレの先生に対してのものだ。

風前の灯だったアビドスに奇跡を運んでくれたのは、間違いなく彼だ。百田は彼が運んでくれた奇跡の一つ。

だが、彼を思わない訳ではない。シャーレの先生ほど劇的ではないにしろ、共に日々の困難を乗り越えた仲間だからこそ、ホシノは彼から離れたくなかった。

 

「……百田先生。なにか辛いことがあれば、いつでもおじさんに頼ってね」

「おう!困ったらいつでも頼むぜ!」

 

それなりに時間を過ごしてきたからわかる。

彼は実直な性格に反し、嘘が上手い。

だからこそ、理不尽にも身に降りかかった悲劇すらも悟らせない。

見栄と意地を張り通し、進んで皆を引っ張ろうとする彼のことだ。弱い部分を見せたくないのだろう。

彼が巻き込まれたという「コロシアイ」。

彼が思い出したくもないだろうそれについて聞く気には、どうしてもなれなかった。

 

(先生たちにも、私と同じ傷がある。だから、触らない)

 

ホシノの胸中に、じくり、と痛みが広がる。

百田にシャーレの先生。彼らもまた、この痛みを抱えている。

傷の形は違えども、同じ痛みを抱えるものとして、力になりたい。

決意を固めたホシノは、離れた分の距離を詰めるように、座る位置を変えた。

 

(でも、今日だけは、そばで守らせてほしいな)

 

 

ケース3.ティーパーティー外部顧問の場合

 

「そうね。私と星くんがコロシアイに参加していたのは事実よ」

「ああ。俺たちの人生のほとんどが作り物だってのも否定しねー」

「…………へー…」

「……そう、ですか」

 

嘘であって欲しかった。そう言わんばかりに、2人の少女…聖園(ミソノ) ミカと桐藤(キリフジ) ナギサの視線が落ちる。

彼女らは公的には派閥争いをする間柄だ。幼馴染故に仲睦まじくはあるが、幼い頃のように腹の底から信頼しあってるというわけではない。

だからこそ、シャーレから出向してきた東条 (トウジョウ) 斬美(キルミ)(ホシ) 竜馬(リョウマ)、果てはシャーレの先生たちの絆が眩く、また疎ましいものだと思っていた。

どうして理由もなく他人を信用できるのか。裏切り、人知れず十字架を抱えたミカと、疑うばかりのナギサ。2人からすれば、その信頼は嘘っぱちのようにしか思えなかった。

 

だが、違った。彼らは「コロシアイ」という疑心暗鬼の地獄を経て、信頼を結んできた仲間だった。

 

連邦生徒会から寄せられた情報は真実だった。その事実を前に2人が感じたのは、自分への失望だった。

どこまでも心からの信用を築けない自分たちと、信じたいものを信じる強さを持つ彼ら。

体も力も立場も生まれも、そのほとんどはこちらが優れている。だというのに、自分がひどく小さな存在のように思えてならない。

その様子を見て何を思ったのだろう。東条らは顔を見合わせたのち、優しく微笑んで見せた。

 

「人生も人格も才能も全て作り物だけど、あなたたちの支えになりたい気持ちは本物よ。

だから、あまり気にしないで、これまで通り接してくれると助かるわ」

「ふん…。入間に次いで不安定だったお前さんがそう言えるとはな」

「皆の影響かもしれないわね」

「だな」

 

彼らがここまで信頼を寄せ合うのも、命のやり取りを経たが故なのだろうか。

自分たちが同じ状況に置かれたところで、彼らのように結束できるのだろうか。

2人して考え込む中、空になったティーカップを見た東条が優しい声音で問いかけた。

 

「ところで、紅茶のおかわりはいるかしら?」

「あ…、うん」

「すぐに淹れ直してくるわ。少し待っててちょうだい」

 

言って、あっという間にその場を去っていく東条。

その姿が見えなくなり、沈黙が漂う。

何を話していいかわからない。ナギサは視線を空になったティーカップに注ぎ、ミカは視線をどこかに落ち着けることなく眼球を震わせる。

その沈黙に真っ先に耐えられなくなったのは、ミカだった。

 

「…ねぇ、星ちゃん」

「なんだ?」

「……………人を殺しちゃった時って、どうだった?」

 

胸を引き裂くような痛みが広がる。

ああ、どうしてこんなことを聞いてしまったのだろう。

そんな後悔がよぎる中、星がその丸い目を天へと向けるのが見えた。

 

「作り物だがよ。最悪って言葉じゃ足りなかったぜ」

「………そう」

 

 

ケース???…才囚学園卒業生モモトーク

 

ピアニスト:かーしーわーぎーくーん…!!

 

ピアニスト:言葉足らずにもほどがないかなぁ!?

 

幸運:なにが?

 

探偵:コロシアイのこと話したでしょ

 

幸運:うん。話の流れでリンちゃんに

 

探偵:僕らがコロシアイせずに済んだってこと、ちゃんと伝えた?

 

幸運:あ

 

ピアニスト:やらかしてるじゃん!!

 

ピアニスト:柏生くんのせいで連邦生徒会から情報もらったヒナちゃんが勘違いして泣いちゃったんだからね!?

 

メイド:なるほど…。ミカさんたちの様子がおかしかったのはそのせいね

 

テニス:どうすんだ。今更「アホみたいな形で終わった」なんて言えねーぞ

 

冒険家:行く先々で変な視線を浴びたのはそう言う理由っすか…

 

宇宙飛行士:なんか今日ホシノが近かったのそういうことかよ…

 

暗殺者:百田

 

宇宙飛行士:ヒェッ

 

民俗学者:ボクなんて100人近く殺した異常者みたいな扱いされたヨ。まだそこまで殺してないのに

 

合気道家:実際に殺したみたいな言い方やめてください!作り物の記憶でしょうに!!

 

民俗学者:ブラックジョークってやつだヨ

 

発明家:お前が言うとそう聞こえねーんだよ!!

 

ロボット:ミレニアムでももう取り返しのつかないレベルで話が広まってますよ

 

美術部:レッドウィンターも同じだよー!おかげで神さまを信じる人が爆増して神りまくってるよー!

 

魔法使い:ウチなんて「本当は『望まぬ形で大量殺戮魔法を修めたけど、それをマジシャンという化けの皮で隠してる悲しき魔女』なのでは」とか噂され始めたんじゃぞ。責任取れ

 

総統:夢野ちゃんのは都合のいい妄想でしょ

 

魔法使い:マジじゃ!!今もエリたちが目の前でその噂流しとるんじゃぞ!?

 

幸運:ご、ごめん…。ちゃんとリンちゃんには伝えとくから…

 

探偵:もう遅いと思うよ

 

幸運:えっ?

 

探偵:尾刃さんに伝えたら、「そんな嘘つかなくてもいいですから」って慰められた

 

冒険家:まあ、そうなるっすね

 

コスプレイヤー:黒幕役としては嘘であって欲しかったよ

 

宇宙飛行士:だろうな

 

総統:オレはまだ被害ないけどさぁ。どうすんのこれ。本当に

 

幸運:頑張って考えます、はい

 

【虫に囲まれて笑顔の昆虫博士と憂いを帯びた笑顔を浮かべるRABBIT小隊の写真】

 

昆虫博士:みてみてみんな!きょうはらびっとしょうたいのみんなとむしさんをさがしたんだ!すごくたのしかったよ!

 

幸運:ああ、うん。よかったね…




キヴォトスの生徒たち…そのほとんどがドン曇りか覚悟ガンギマリの二極化。結果、「コロシアイは舞台ごと吹っ飛んで終わった」と言っても信じてもらえない状況に。どうしろってんだ。

才囚学園卒業生…「ふざけんな柏生ィ!!!!」

昆虫博士…知らない虫さんがいっぱいで嬉しいなぁ。
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