そんな俺でもライバルになりたい   作:ライバルっぽい人

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第一章∶ライバルってフルパーティじゃね
ライバルは初手圧勝するもんだよね


 緑の芝生にまるでサッカーコートのように、白い線の引かれたフィールド。

 本来ならば緑の芝生は風に靡いて、爽やかな空気が流れているはずだった。

 

 だが今は冷徹な風が辺りを凍てつかせるのみ。

 芝生は完全に凍り付き、踏み歩けばじゃくじゃくと音を奏でる。

 

 しかしその芝生を歩く者は誰一人としていなかった。

 

 なんせそこでは今しがた行われていた、戦いの跡が色濃く残っているからだ。

 

 一人な白銀の少女。

 黒く崇高なツノを生やし、背中からはまるで全てを覆い尽くさんとする黒い翼を生やした、白銀の髪を持つ少女。

 

 もう一人は紅い少女。

 白銀に比べれば小さいが、それでも確かに力強いツノに、赤く燃え立つような鱗のついた尻尾を持つ、赤い髪の少女。

 

 白銀は紅を見下し、紅はただ地面に倒れ伏すだけ。

 

 半身は凍てついており、もはや動く様子は見せなかった。

 

 

「……安心しなさい。殺してはないわ」

 

 

 小さくも冷徹、それでいて鈴のような声で白銀の少女が呟く。

 紅い少女は声の一つも出すことなく、ただそこに倒れ伏すだけ。

 

 その光景を見ていた俺──白銀の少女の後ろに立つ、青い髪の俺は帽子を深く被ると、紅い少女の後ろにいた黒髪の少年に向けて言い放つ。

 

 

「俺の勝ち、でいいな? グレン」

 

 

 その言葉に黒髪の少年は悔しさを滲ませながらも、小さく頷いて倒れ伏す紅い少女の元に近寄る。

 

 

「ぐっ……すまない、クリム」

「しょ、勝者! コルト&アルバー!!」

 

 

 審判の勝利を告げる声に、周囲は一斉にざわめき出す。

 

 ──アレはないだろ。

 ──し、死んでないよね? 

 ──アレが天才、コルトか……。

 

 などと、周りは好き勝手言い放題だ。

 

 ……いやさ。

 俺もあそこまでやらせるつもりはなかったんだよ。

 

 流石にしつこいほど食い下がられたら、気絶させるしかないじゃん。

 

 フィールドから離れて、俺の隣に立つ白銀の少女に向けて、俺は小さく呟く。

 

 

「わ、悪いな……嫌なことさせて」

「……別に。弱者は淘汰されるだけ。ここで折れるようだったら、貴方の言う最強のライバルには、届かない」

「それはそうなんだが……」

 

 

 あの光景は心折りにいってるとしか思えない。

 完全に下半身が真っ白で、触るだけ霜焼けになりそうだ。

 

 まぁ、この世界の超技術なら、あの凄惨な傷でも一夜で回復しちゃうんだけど。

 

 

 

 突然だが。

 俺はいわゆる転生者という生き物である。

 

 突然、前世の記憶と言うやつをもってこの世界に生まれ落ち、そうして14歳になり、今日まで生きてきた。

 

 だが、普通に生きてきたわけではない。

 この世界には魔人と呼ばれる存在がいたからだ。

 

 この世界は俺の元いた地球、そこに非常に近しい世界観をしていて、なおかつ近未来的な都合のいい感じの技術が存在している。

 

 そしてその上で、ファンタジー物によくある魔物と呼ばれる、危険な動物が存在していた。

 

 だが時に。

 魔物は突然変異を起こし、人間に親しい姿──即ち『魔人』と呼ばれる存在になる。

 

 魔人と呼ばれる存在は人語を理解し、人間より強く、そして賢く、だが魔物のような凶暴さはなく。

 まさに人間の完全上位互換ともいえる存在だった。

 

 本来ならば支配される、みたいなSF満載な世界になっているんだろうが──魔人のある特性により、そんなことは起きなかった。

 

 魔人は自身の選んだ人間と心を通じ合わせる。

 

 これにより、魔人は人間に寄り添う相棒のような存在となっていた。

 

 そして気づけば、魔人は自らを誇示するかのように、人間と心を通わせながら、互いに力比べを始めた。

 

 弱い人間が指示を出し、強い魔人が戦い合う。

 魔人バトル、なんて呼ばれるスポーツのようなものだ。

 

 某モンスターゲームみたいだって? 俺もそう思った。

 

 とにかく。

 そんな世界観なわけだから、俺は生まれてそれを知った時は興奮したね。

 

 まるでゲームのような光景、だが現実。

 俺はこの世界で魔人バトルに強い憧れを抱き、幼い頃から魔人に関しての勉強を始めた。

 

 そして気づく、俺は天才だと言うことに。

 

 いやまぁ、確かに前世での知識とか、諸々あるのだが……根本的に身体が、才能が、満ち溢れていた。

 

 どんな魔人とも心を通わせることができたし、俺の指示は的確に敵を打ちのめしていく。

 

 ……アレ、俺って天才じゃね? 

 

 ってなったわけだ。

 

 しかし天才と言われてしまうと、それはまるで──

 

 

「ゲームに存在する、ライバルみたいだな」

 

 

 となってしまった俺は、そこで自分の使命に目覚めたのだ。

 主人公っぽいやつのライバルして、最終的にチャンピオンの座を賭けて戦うんだな、と。

 

 無論、勝手な思い込みである。

 

 だがそう思い込んでしまうほど、隣にはそれっぽい奴がいた。

 幼馴染である黒い髪の少年──グレンだ。

 

 才能面では俺には追いつかないが、奴は天性とも言える魔人たらしだった。

 

 出会った魔人に片っ端から契約しようと言われる姿には、流石の俺もちょっとした危機感を抱くほどで。

 

 適当なやつと契約されたくなかった俺は、今のあいつの相棒であるクリムを紹介した。

 少なくともそこら辺のやつよりは、確実に見込みのある紅い竜の魔人、クリム。

 

 ちょっとしたツテで保護した魔人だったが、グレンに見せたらまるで運命の出会いともでも言うかのように、俺の言葉一つなく契約していた。

 

 と言うのがさっき。

 で今、徹底的にぶちのめしちゃった、ってわけです。

 

 

「……正直、アレでライバルになれるとは思えない」

「た、多分、強くなるはずだぜ。進化さえすれば」

「私も、進化してないわ……」

「……ノーコメント」

 

 

 ちなみに隣にいる白銀竜娘ことアルバー、こいつが俺の相棒にして共犯者だ。

 

 契約と破棄を繰り返して俺が、唯一頂点に行ける、そう思ったのがアルバーだった。

 実際、アルバーはかなり強い。

 

 俺の指示がなくとも、格下ならあっという間に片付けてしまうほどには。

 

 だからさっきのグレンとの勝負もほぼ決まっているようなものだった。

 

 のだが……。

 

 

「……あそこまで食い下がってくるとは思わなかったな」

「それは同感……」

「ガッツがあるんだ、強くなってくれるだろうぜ」

「……だと良いけど」

 

 

 俺はこいつと最強のライバルになる。

 最強のライバルとしてグレンの前に立ちはだかり、そしてチャンピオンの座を賭けて戦う。

 

 だが当然、負けて華々しく散るつもりはない。

 それは俺と戦うことを選んでくれたアルバーに対する裏切りだ。

 

 それにライバルにはなりたいと言ったが、敗者になりたいわけではないからな。

 

 だから俺は強くなる。

 最強の壁として奴の前に立つために。

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