《死にゲーマー》 死んだら終わりのSAOへ巻き込まれ…… 作:NEAR LIGHT
好きなゲームはアークナイツとアーマードコアVIとBloodborneです!!
アークナイツ好きとフロムゲー好きは通ずるところがあると信じてる。
2022年11月6日
粉雪が舞い散る曇り空、冬も本格的に始まろうとするこの頃、神奈川県横浜市のとある一等地の住宅街、現代的な車庫付き庭付き一軒家という平均以上の住宅。
その一室、モダンな家具に囲まれた部屋のデスクにて、その少年はコントローラーを握り手に汗を滲ませ、大きなモニターに集中していた。
モニターにはおぞましい六足歩行キメラの化け物、対峙するのは二本の短剣を携えてた、少年の操る軽装のキャラクターだ。
『GAAAA!!!?!』
雄叫びとキメラは肉体を収縮させる予備動作の後に、飛び掛りから始まる幾度と続く攻撃をキャラへと殺到させる。
前足の薙ぎ払い、噛み付き、突進。連続するそれらをコントローラーのステックを倒し、ボタンを弾き、ローリング回避とスキルを混じえて全てを回避する。
連撃の最終段階、キメラは背部のサソリの尻尾から毒針を伸ばしキャラを狙う。スキル後の硬直で全ての回避行動は封じられていた。
その上回復アイテムは残されていない。そもそも敵の攻撃を一度でも喰らえばHPが消し飛ぶオワタ式戦法なので、被弾を許すことは即ち即死である。
「オラ来いよッ…!!」
直撃は不可避、この状況で尚も少年は不敵に笑った。
決定的瞬間、モニター内の毒針がキャラのHPを削り切らんとする時、キャラの装備していた短剣が振るわれ、甲高い音が響き毒液と火花を飛び散らせ毒針を弾く。
《パリィ》
このスキルは敵の攻撃に合わせ、完全なるタイミングで発動することにより、攻撃をノーリスクで無効化する事が出来る。
彼の遊んでいるゲームには、武器に一つに対し一つスキルをセット出来る。二刀の短剣の片方には回避スキル、もう片方にはジャストパリィがセットされていた。
ここからが反撃、そう言わんばかりにキャラはキメラへと接近し、二刀流の短剣で乱撃を加えて行く。幸運な事に、キメラが怯むことで更なる隙が生まれた。
「ここまで死亡回数45回………こ、これでようやく先に進める!!」
絞り出された言葉は勝利を前にして歓喜から出るものか、これで苦行とも表せる戦闘を終わらせられることへの、安堵から来るものか………
インベントリを開き高速で武器を切り替え、攻撃性能に特化した出血属性が付与された短剣に持ち変え、キメラに属性攻撃も合わせた高ダメージを与えて行く。
これらの流れを生んだパリィ、それ自体はタイミングさえ掴めば可能だが、着目すべきは数多の死を経ても諦めない彼の強固な意志である。
死で敵の攻撃パターンを学び、死で敵へのアタックチャンスを学び、死で磨り減りそうな神経を酷使して、ミスを極限まで減らす。
幾度の死を超えて不屈、それこそこの少年。
「このクソカスキメラがァ!!散々ボコしやがって、キメラだからって攻撃手段が多彩過ぎなんだよテメェ!しかもランダム性が強いと来やがる!!」
口の悪さも、坂本美月の個性である。
「適正レベルから低いとは言え、こちとら”技量”、”信仰”特化だ!!紙装甲の代償のバ火力を喰らいやがれ!!
屍山血流」
下方から振り上げられる出血属性の短剣から、紅いエフェクトを伴ったスキルが五連撃の延長線上へ放出、キメラのHPを更に削っていく。
遠近中に対応するキメラの多彩な攻撃も密着されては真価を発揮出来ない。
「ハッ!得意のオールレンジ攻撃もここまで近付かれちゃ訳ねぇなぁ!!」
短剣特有のモーションの短さと高い持久力効率により連斬は絶え間なく続く。ここで、キメラが大きくよろめき血反吐と共に苦しそうな喘ぎ声を吐いて倒れる。
HPなどの、プレイヤーに見える数値の他に”強靭”という数値が存在している。些細な違いはあれど大概のゲームにおいて、それが削り切られるとエネミーは、現在のキメラのように追撃の隙を晒してしまう。
「そらよォ!!」
倒れ伏したキメラに坂本美月は追撃、”致命の一撃”により様々な生物が混じった猿叫のような醜い叫びを上げて血を吹き上げる。
短剣はその他の武器種よりもリーチが短くダメージが控えめな反面、持久効率と攻撃速度、そして”致命の一撃”に秀でている。
相手によってはパリィから致命の一撃に繋げることが、最も楽な攻略法である事も少なくない。事実、坂本美月はそのようなプレイスタイルを主としていた。
しかし、当然ながら彼のプレイするゲーム、『Blood Burst Beast』略してBBBにおいてパリィをスカることは死に直結し、その緊張感が彼らプレイヤーの感覚を狂わせる。
これこそBBBが長年愛されリメイクまでされる程に愛される理由だ。
「人型エネミーじゃないせいでパリィから致命に繋げられず苦戦したけど、その分ダメージは大きく設定されてるな。この分なら削り切れる…!!」
あと一度か二度、斬撃もしくはスキルを叩き込めばHPを削り切れる。
これまでの敗北の記憶、カタルシスの解放、圧倒的達成感。
この勝利を目前として、坂神美月はふと手を止めた。
「ッと…!」
直後、致命の一撃による怯み状態より復帰したキメラから、ほとんど無いに等しいモーションを挟んでの薙ぎ払い繰り出されれると、パリィ不可と即座に判断して彼はローリングの無敵時間を活かし間一髪でそれを回避する。
彼が直前で手を止めていなければ、薙ぎ払いを喰らいHPを全損してまたも死を重ねていたことだろう。
「あっぶねー……!そうだった忘れてたわ、何してんだ俺。このゲームで焦ってトドメ刺しに行って何回死んだと思ってんだ。ドーパミンに乗せられ過ぎだ」
一度、深く息を吸って吐く。肺の中の空気を入れ替え、頭を冷やした坂本美月は興奮状態から脱却して狭まった思考回路から脱却した。
その間にも彼は襲い来る爪を射出する攻撃や、伸縮し襲い来るサソリの毒針へのパリィや回避は続ける。
(キメラ野郎のHP的にスキルをぶつけりゃ倒せる…が、アレは隙が大きい上に派手なエフェクトの割にリーチも大して無い。こんなことならFPにもっとステ振っときゃよかったな)
そもそもスキル発動に必要なFPも足りてねぇじゃんと、独り言ちる彼の残りFP量は、元々の上限と相まって雀の涙ほどしか残っていない。
この残量ではパリィもせいぜいが5回……否、4回が限界だろう。
幾多の死でタイミングは完全に合わせられるものの、パリィ自体を発動出来なければ意味が無い。
(このカスキメラは極端に攻撃のチャンスが少ないタイプ。パリィをしても隙なんて大して生まれやしない)
思考に意識を割きながら回避を多用して攻撃をやり過ごす。
(これ以上時間を掛ければ死ぬのは確実、こうなったら…!!)
これまでは左右に短いローリングやダッシュで攻撃を避けていたが、一転してキメラと面合わせて間合いへと突っ込んで行く。
「正面突破ッ!!」
一見してヤケクソ、またもドーパミンに乗せられたかに思われる行動、正面から小細工無しに突っ込んだ理由には彼なりの論理があった。
「もう集中力もFPも大して続かねぇんだ!!パリィが出来る内に殺し切ってやるぜ、養成胎エメフィールド!!」
戦況から予測を立て高揚するテンションを抑える、台風の目のような静けさの面を持ち合わせていながら、台風そのものと取れうる吹き荒れた激しい面も持ち合わせている。
平静と激情の両方を併せ持つ彼は、これまで憎悪を込めて呼んでいた敵の名。それを今一度、己を鼓舞する為にその名を呼ぶ。
接近するにつれ苛烈になっていく攻撃を回避し、数少ないパリィを消費して攻撃を無効化する。
なおも彼は止まらず、臆せず、死せず、短剣が届く距離まで近付き、エメフィールド最後の前脚の振り下ろしをパリィした。
「くたばりなぁァ!!」
使い切ったFPなど気にせずダッシュ状態から攻撃に繋げ、45回の死を越え遂にはエメフィールドのHPバーを削り切ることを成し遂げた。
「うっっしゃぁぁぁ!!!やってやったぜこんちくしょう!!」
喜びのあまりコントローラーを放り投げ、立ち上がって声を張り上げる。三時間ぶりの着席に下半身は悲鳴を上げるが関係ない、なぜなら今の彼は狂喜乱舞せんばかりに喜んでいるのだ。
「いやー!演出も凝ってるな、わざわざ専用アニメーションを用意するなんて贅沢なキメラだぜ!」
撃破演出は想像よりも豪華なものでこれから消えるエネミーとは思えない位に細かい物だった。
エメフィールドの肉体はキメラ特有の生物と生物の繋ぎ目から裂け崩壊し………
「へ?」
……再構築されて行く。
「それは聞いてないんですけどぉ!?!?」
再構築、と表現するのは少々語弊があり、正しくはそれぞのベースとなった生物パーツが組変わって新たな人型のシルエットを形作る過程であった。
「ただのキメラからめでたく人に成りましたってか?ふっっざけんな!!!」
半ば八つ当たりに近い嘆きなど、新たなキメラ『創成人エメフィールド』には届かず、ベットに転がったコントローラーを拾う暇も無く、画面内のキャラクターは広範囲の炎ブレスの餌食となる。
暗転する画面にはYOU DIEDの二語が浮かび上がる。ゲームに「お前の負け」と突き付けられる、この画面を見る度に彼はそう錯覚する。
普段ならばこれしきの事で折れはしないのだが、今の坂本美月は半年に一度あるか無いかというレベルの最高潮のテンションから突き落とされ、負けを味わってしまった。
「マジかよぉぉ………」
誰しもが経験する完全な意気消沈。先程まで烈火の如くたぎっていた大火が、完全に消火されて細い白煙だけがノロノロと上がる状態。
簡単に言うと負けが込んで萎えたのである。
「うぅぁ…もうダメだァ……おしまいだァ………第二形態なんて聞いてねぇよォ…………やっぱレベル上げるしかねぇかぁ……?」
モニターとコントローラーへの全集中から、ゲーミングチェアにもたれ掛かって全身で脱力する。
うなだれる彼の手がキーボードに偶然触れ別のタブで開いていたSNSの画面に切り替わる。
トレンド欄は本日正式リリースとなるゲームタイトル。『ソードアート・オンライン』に関連するキーワードに埋め尽くされていた。
彼の目に映り込んだそれらは、消火されてしまった炎に再び燃料を注ぐこととなる。
「ソードアート・オンラインねぇ…」
ソードアート・オンライン、通称SAO。
フルダイブ型VR機器ナーブギアにより作り出される完全な仮装世界で、魔法無しの剣や槍のみでモンスターと戦うMMORPG。
この触れ込みで情報発表から今日に至るまで、ジャンル問わずゲーマー界隈に激震を走らせた。それは坂本美月にも届いていた。
彼が思い出すように振り返り見るのは床にあるナーブギアのデカい箱とSAOのソフト。
「まさか雑誌の懸賞で限定生産品が当たるとはな。やっぱし日頃の行いの良さが出たか?」
世間では凄まじい人気を誇り手に入れるのは至難の業とまで言われているが、彼はその価値にいまいちピント来ていなかった。
(約束された神ゲーとか言われてるゲーム、大体がコケてる気がするんだよなー。でも、フルダイブVRゲームとかやってみたい気持ちもあるんだよな)
元来の捻くれた性格からか、MMOというジャンルへの忌避感からか、なんと彼は正式リリース日になるまで完全放置で半ば存在すら忘れていたのである。
こんな事を聞けば大半のゲーマーが聞けば血涙を流し、坂本美月が泣くまで殴るのを止めなそうな具合だ。
「まあ。せっかく懸賞で当たったんだし、やってみるか!」
萎えた気分転換する程度の気持ちで腰を上げ、手際よくナーブギアを開封して初期設定を始める。体のあちこちを触ったり、PCにケーブルを接続し諸々の設定とSAOのゲームカードの挿入を終え、楽な姿勢でベットに寝転ぶ。
「そんじゃ、リンクスタート」
同期開始の言葉を契句とし、坂本美月は剣の世界へ踏み込む。
評価付与と感想待ってます!
ちなみに、冒頭の死にゲーはELDEN RING×Bloodborneみたいなゲームです。
この二次創作はある程度のところまでは書き貯めてるのでご安心を。