《死にゲーマー》 死んだら終わりのSAOへ巻き込まれ……   作:NEAR LIGHT

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四話 デスゲームの略はデスゲー?

 

 

 

SAOサービス開始より二ヶ月間が経過した。

 

開始一ヶ月目でクラインと無事再会し、右ストレートをぶち込んだことで色々と安心した俺は、とりあえず生き残り茅場晶彦の鼻っ柱に拳を叩き込む事を目標として日々頑張っている。

 

今日も今日とて迷宮区でレベル上げだ。

 

「よっと!!」

 

メイス持ちコボルトの大振りな一撃を短剣で流すようにパリィ、即座に突進ソードスキル ベーシックバイト で反撃する。それでも削り切れないHPを体術スキル 登天 での蹴り上げで削り切った。

 

「おっ、もうこんな時間か」

 

熟練度も良い感じに上がった事だし帰りますか。にしてもこの熟練度というシステム、単なる武器種に応じた数だけあると思ったが、実際は索敵スキルから釣りスキルまで星の数ほど設定されている。

 

さっき俺が使ったのもその一つ、モンスターをぶん殴ったり蹴ったりしていたら、いつの間にか手に入った体術スキルだ。

 

短剣だけではギリギリの所でミリ残してしまう時のダメージソースとして優秀で、短剣ソードスキルと同じくらい熟練度が溜まっているスキルでもある。

 

「うん?」

 

帰路を呑気に歩いていた俺を返すつもりは無いと言わんばかりに、一つモンスターの出現エフェクトが現れる。

 

俺はそのエフェクトからモンスターが形を成す前に駆け出し、コボルトの姿が完全に見えたところで肉薄。

 

即座にソードスキル バイパーバイト の切り上げ切り下ろし二連撃を浴びせ、継いで左拳から体術スキル 閃打 を中段の正拳で放つ。

 

コボルトが怯んでいる内に背後に回りながら、撫でるように脇腹を背中にかけて一閃、トドメに背後からコボルトの首を掻き切る。

 

コボルトは俺へのアクションを何一つ起こせずポリゴンへと還る。

 

 

これが最適解、有無をいわせず初手で潰す。

 

 

敏捷と筋力の二択しかステ振り出来ないSAOで、俺が敏捷に優先的に数値を振っている理由がこれだ。

 

敵より速ければ攻撃は当たらないし、敵より速ければその分攻撃回数を増やせる。いざって時の防御はパリィで対応する。

 

攻防のスピードを極限まで上げるために、中途半端な重りとなる防具は外し胴当てのみの超軽量。

 

普通のゲームでならいざ知らず、文字通りのデスゲームと化したSAOでは命知らずの死に急ぎ野郎しか使わない、極限スピード特化ビルトだ。

 

 

俺的には胴当ても外して良かったんだが、キリトに本気の怖い顔で睨まれたので流石に止めた………

 

いやまあ自分でもどうかしてると思うけどね?

 

俺が普通の槍戦士とか重戦士やろうとすると、非常に残念ながら俺は体格が小さいのでリーチが大して活かせないし、キリトみたいなスタイルにするにしても腕が短いし…………

 

………とにかく、物凄く身体的理由で一般的な戦士系ビルドは合わない。

 

そこでインテリジェンスに溢れている俺は思い付いた…!

 

小さい奴が高速で動きながら短剣ぶち込むスタイルなら良くね?

 

 

こうして俺の超インテリジェンスな『極限軽量短剣ビルド(小柄な奴限定)』が誕生したのである。

 

高い敏捷と軽い装備から生み出される機動力は縦横無尽に奔り、小柄な体格も相まってことごとく攻撃は意味を成さない。さらに、圧倒的な攻撃回転で敵の初動を潰して翻弄し、急所を狙い澄ます短剣でHPをゴリゴリと削る。

 

しかも、回避前提だから回復アイテムと防具に金を掛けなくて良いから経済的。

 

明確なデメリットとして、通常攻撃二〜三発、重攻撃を一発喰らえば即死という大大特大級のものがある…………

 

 

そうこうしていると、キリトと俺が拠点にしている町の借家の前まで来たので、ここ数日間の同居人のしみったれた空気を吹き飛ばすように明るく元気良くドアを開ける。

 

「よーすッ!戻ったぞー!」

 

「へぶッ……!!」

 

風呂付きベッド付き二階建ての仮住まいに帰って来て真っ先に目に入ったのは、件の同居人、キリトが脱衣場のドアを突き破り宙を舞う光景だった。

 

「………お、おかえりサカヅキ」

 

「ただいま。受け身の練習にしてはやけに迫真的だな」

 

「これが受け身の練習に見え…「見えるね」………即答かよ」

 

茶化すのはこんの辺にして、なんでキリトが風呂場から吹っ飛んで来たか考えるとしよう。

 

風呂場からは誰かの息遣いがして……今しがた、風呂場から腕が生えて扉を閉めたな。一瞬しか見えなかったが、あの細い腕は女のものだ。

 

うん……何が起こったか読めて来たぞ。

 

「キリト…俺という同居人が居るってのに、女を連れ込むのはどうかと思うぞ」

 

「ちょっと待て!これには深い訳が…」

 

「辞世の句にしては華がねぇなァ!!」

 

この男どうしてくれようか…!!用事があるからと俺一人に迷宮区に向かわせたくせに、その間に自分は女とヨロシクやってた訳かぁ?

 

断じて女とイチャコラしたい訳では無いが、それはそれとして命張ってる最中にイチャコラされていたらムカつくんだよなァ……!!

 

「あの……」

 

「あん?」

 

ゲシゲシとキリトを足蹴にしていると、風呂場から俺よりも多少マシな軽装とレイピアを装備して、フードを深く被った女が出て来た。

 

「あー、悪いがネーチャン、今日は帰ってくれるか?見ての通り、俺はこの真っ黒クロ助を尋問しないとなんだ」

 

「えぇ……元々お風呂だけ借りに来ただけだから問題無いわ。その…お風呂ありがとう、お邪魔しました」

 

「ちょ…!帰るな!俺が勘違いされたままになるだろ……!?」

 

体格と声色からして女というより女子の、レイピア女子が一歩二歩引いた雰囲気でペコリと軽くお辞儀をして借家から去る。

 

「……」

 

「……」

 

残ったのは俺と色ボケ野郎(暫定)のみとなり妙な沈黙が流れ、一秒もせずに沈黙は尋問へと変化する。

 

「とりま主文後回しで死刑」

 

「ま、待て!俺は彼女にタオルを渡そうとしただけだ!!控訴する!!」

 

「ここ最高裁なのでダメです」

 

「一審二審は何処へ!?」

 

 

 

 

翌日………

 

 

 

 

 

 

「悪かったよ〜……まさか倒れた女子を助けたとは思わなかったんだよ〜」

 

翌日。俺は街中を歩きながら、すまし返した態度を貫くキリトの防備を崩さんとすべく、様々な手練手管を用いていた。

 

いやホントに、フィールドで倒れた女子を助けた上、その助けた相手にラッキースケベ発動するなんてラブコメ展開が現実に起こるとは思わなかったんだよ。

 

「……第二階層の敵が落とすレアドロップ、ウィンドワスプのハチミツ十個で手打ちだ」

 

「任せとけ、今日の会議を糧にして二階層行ったら、バッチシ取って来てやるよ!」

 

そう、今日俺達が街へと繰り出している理由、それはこのデスゲーム始まって以来初の、プレイヤー間による攻略会議が行われようとしていたからだ。

 

二ヶ月あれば第五階層くらい行けると思ってたんだが、俺の想像以上に攻略は難航しているらしい。

 

既に2000人近く犠牲者が出てる上に、次の階層に行くために倒すボス部屋すら見つかって無い。ベータテスターのキリトが知ってるかと思えば、迷宮区はベータから少々変更されていて知識も活かせない。

 

俺も死にゲーマーテクニックその2、死んで覚えるが使えず、常に命大事に戦法をとらされるせいで、地図埋めは難航していた。

 

この状況を打開すべく、俺とキリト含め40人ほどのプレイヤーが段々にすり鉢状になった集会所に集結し、会議の開始を今か今かと待ち侘びていた。

 

「はーい!それじゃ、少し遅れたけどそろそろ始めさせてもらいます!」

 

皆の注目を集めたのは気の良さそうな剣盾持ちの青年だ。装備からして重戦士寄りの筋力が高そうな中戦士系ビルドだ。

 

「俺の名はディアベル!職業は、気持ち的にナイトやってまーす!」

 

「おいキリト、アイツがナイトなら俺のジョブはなんだと思う?」

 

「紙装甲の装備とステ振り、それを何とも思わないイカれた頭……狂戦士か?」

 

「えぇ…酷くね?」

 

ただの超特化型ビルドなのにこの言われよう………何に特化してるかはご愛嬌。

 

「今日俺達は、ボスの部屋を発見した!ボスの名前はイルファング・ザ・コボルト・ロード、取り巻きに……」

 

ディアベル=サンが丁寧にボスの説明をしてくれる。うんうん丁寧で要点を掻い摘んでいて、よくボスをリサーチしているのが分かる説明だ。

 

でも全部知ってるんだよね。

 

なぜなら、俺は隣のキリトからボス含め取り巻きの情報を何から。俺が攻略会議の存在を知ったのが二日前、会議では当然ボスについての言及もあるだろうという事で事前にレクチャーを受けていたのだ。

 

「ベータからの違いは?」

 

「今聞いているところは無い。まあ攻略と言っても、コボルトロードはSAO基本のおさらいの側面が強いボスだからな。取り巻きの各個撃破を行いつつ、スイッチを繰り返せば勝てるボスではある」

 

「問題はベータからの変更点か」

 

キリトとの迷宮区探索中、キリトはベータからの変更点が僅かにあると言っていた。

 

デスゲームを開催するようなイカレポンチが作ったゲームだ。小さい事だろうと放置していたベータテストからの変更点が、致命的なところで効いて来るのなんて想像に易い。

 

転ばぬ先の杖。転ぶなら大いに結構、転ばぬなら御の字。

 

ベータテスターというキリトの身分を気取られぬよう声を潜め、会議の内容とベータ情報を擦り合わせて行く。

 

「…互いのHP管理のためにも、近くの人とでパーティを組んでくれ!その上でレイドを組む、パーティーを作り次第リーダーは俺のところに来てくれ!」

 

俺は誰と組んでも良いのだが、キリトの身の上の都合上おいそれとパーティーは組めない。ここは俺とキリトのコンビでやらせて貰おう。

 

…って見覚えのあるレイピア持ちが居るな。

 

「あのレイピア女子、昨日お前が助けた奴だよな?」

 

「レイピア女子て」

 

「余った、というより自分から一人を選んでるみてぇだな」

 

「うーん、一人で行かせて死なれても目覚めが悪いし。ここは組んでみるか?」

 

「サンセー」

 

軽く返してレイピア女子の近くに寄って話し掛ける。

 

「よっ、昨日ぶりだなレイピア女子」

 

「……えぇ、昨日ぶりね」

 

「パーティー組まねぇか?ツーマンセルじゃ不安でな、せめてスリーマンセルは欲しいんだよ」

 

「お願い出来るか?昨日の迷宮区での活躍ぶりを見込んでなんだ、頼む」

 

お互いにアドリブで合わせながらレイピア女子を勧誘する。昨日ってのはアレか、キリトのラッキースケベが発生するより前か。

 

「…良いわよ」

 

「おっ、ありがとな。多分知ってると思うがこっちはキリトで、俺はサカヅキだ」

 

反応薄いなおい、トントン拍子で決まるのはいいけどこの薄さは俺が嫌われてないか不安になるな。

 

「好きなゲームは死にゲーだ、よろしく」

 

握手は無視された。レイピア女子の属性に無愛想を追加しておこう。

 

「……皆、パーティーを組み終わったな!それじゃあ役割分担を…」

 

「ちょっと待ったんか!ナイトはん!!」

 

ん?なんだあのツンツン頭、イケメソディアベルの話の流れをぶった切って乱入して来るなんて度胸あるな。

 

「わいはキバオウってもんや。この中に、5人か10人、ワビぃ入れなあかん奴がおるはずや!」

 

そこからツンツン頭……じゃなくてキバオウはベータテスターへの批難をつらつらと語った。

 

やれ狩り場を独占しただの、やれ初心者をレクチャーしなかっただの、哀れみから同情はするが賛同はしない絶妙なラインの気持ちを抱く演説だ。

 

俺はどうもベータテスターがキバオウの言う身勝手な奴らには思えなかった。

 

だって、キリトはあの日クラインを置いて行った事をいつも悔やんでいる。そんな奴が身勝手と言われてたまるか、それなら俺はエゴイストの極だ。

 

「……」

 

隣のキリトを見ると明らかに俯いて表情に影を落としている。

 

はーやだやだ。キリトのこんな顔を見ちまったら気分も激下がりだよ全く。これじゃ俺のパフォーマンスまで三割減だよ。

 

それに、意図せずとも友達の事を悪く言われ続けるのも気に食わない。

 

「だからや!ベータテスターは今すぐにでも死んだ奴らに土下座して、溜め込んだアイテムや金やらを吐き出して貰わんと気が…「へいアンタ!」…」

 

「…なんや坊主、何か言いたい事でもあるんか」

 

誰が坊主だ、俺はこれでもギリ坊主って年じゃねぇんだぞ。

 

「俺はサカヅキだ。単刀直入に言わせて貰おう。アンタはベーターに姫プして欲しいのか?」

 

「あ?」

 

「いやいや気を悪くしないでくれ、あくまで俺の勝手な推測だ。だけどな、アンタの言い分じゃ力不足を理由にベーターにたかってるようにしか聞こえねェんだよ。

 

ベーターは確かに金や装備を持っていると思うが、それを提供するかはその個人次第だ。なんせベーターも危険を犯して手に入れた物を、その苦労を労いもしない態度だけデカイ奴にかっ攫われるのも癪に触るだろうしな」

 

「このッ…!!」

 

よしガッツリ食い付いたな、念入りに釣り上げてやんよ。

 

「何が言いたいかと言うと、ベータテスターも危険を承知で俺達のような初心者をキャリーする義務は無いし、文句を言われる筋合いも無い。

 

テメェの私利私欲のためにベーターを悪役にするんじゃねぇ」

 

キリトだって、ここに居るかもしれないベーターだって誰もが命賭けてんだ。わざわざこんな奴にアイテムを渡すかってんだ。

 

「ガキ………喧嘩売ってんのか」

 

「はっ!特売で売ってんだよバカ野郎、売ってるように聞こえなかったならおめでたいツンツン頭してんな」

 

ダメだな、これは完全に私怨だ。俺もヒートアップしちまってる。

 

俺も何かを理由に利用することだってある。

 

だがな、俺は自分が卑怯者のクソ野郎と自覚した上でやってるがこいつは違う、こいつは自分が正義だとしてやっていた。

 

そこが根本的に気に食わない。

 

「そこまで言うなら覚悟出来てるんやろなぁ…!!」

 

煽ったのは俺だけど、剣抜くまでかよ…!!

 

しゃあねェ…!こっちもやるしか…!!

 

 

 

「やめろ!!!!」

 

野太くよく通る声が一喝。

 

声の方向を見ると、こんがりと色付いた肌をした体格の良い大男が居た。

 

直剣を抜いたキバオウと短剣に手を掛けた俺の動きがぎこちなく止まる。

 

「ここはボスを攻略するための場だ、決してプレイヤー同士でいがみ合う場所じゃない。それに、いくら圏内とはいえ人に剣を向けるな、二人とも落ち着け」

 

…そうだった。ここ街中の圏内だから剣抜いても意味無いんだったな。ツンツン頭のマジな目にビビッちまった。

 

「あんた、名前は?」

 

「俺はエギルだ。サカヅキさん、相手が欲しいなら俺が…」

 

「いいや違うんだエギルさん。あんたの言う通り今は攻略会議の真最中だ、俺の個人的な想いを言う場所じゃない。あんたのお陰で冷静になれたよ、ありがとう」

 

「あぁ…それならいいんだ」

 

短剣に手を掛けた手は既に離している。いやホントに冷静になれたわ、カッとなって勢いで出てきたけど他プレイヤーの目が痛い。ヤバいなんか凄い恥ずかしくなってきたぞ。

 

「ディアベルさんに他のみんなも!会議の進行を妨げて本当に済まなかった!」

 

ここはさっさと謝って退散するに限る、一応というか会議を半ば妨害したのは俺のせいいでもあるしな。

 

「キバオウさん。あんたに言ったことはマナーに欠ける言葉だった、悪かった」

 

口調やら煽りが悪いと思ってるだけで、別に内容まで悪いと思って無いからな姫プ野郎。俺は冷静な奴なので、今日はこの辺にして席に戻ってやるよ。

 

 

 

席に戻って小綺麗に座った俺はエギルさんのベーター関連の話を聞きつつ、ふと友達(キリト)の方をを見る。

 

まあ……随分とマシな顔にはなったじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 




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