《死にゲーマー》 死んだら終わりのSAOへ巻き込まれ……   作:NEAR LIGHT

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五話 ごめん、やっぱクソゲー

 

 

 

多少荒れた攻略会議から翌日、俺達を含めたボス攻略レイドは迷宮区を目指して森の中を進軍していた。

 

「なあ。このゲーム全クリして目覚めたら、まず何したい?」

 

モンスターの処理はほぼ先頭のプレイヤーが行うので、相対的に暇になった俺は何気無くキリトへ投げ掛ける。

 

「気が早い奴だな、まだ一階層すら突破してないんだぞ?」

 

「いいじゃねぇか、明確な目標がある方が、クリアに向けてのやる気が出るってもんだぜ?」

 

「それもそうか。うーん……思い付かないな、サカヅキはどうしたい?」

 

「俺か?俺はだなぁ…」

 

生粋の死にゲーマーにそれを聞くとは愚問だぞキリト。

 

「ゲームがしたい!それも死にゲー」

 

「だと思った」

 

なんだよその面白味の無い答えだなぁって顔。

 

仕方ねぇだろ。あのイカれたデスゲーム主催者に閉じ込められての二ヶ月間、俺は全くマトモなゲームを楽しめてねぇんだぞ。ストレスも溜まるってもんだ。

 

それに、このデスゲーム(SAO)は一応ゲームと名付くが、デスと現実の死がリンクしているゲームなんてゲームと呼んでいいのか?千歩譲ってゲームだとしてもクソゲーに違いない。

 

「でもな、こんなクソゲーぶっ通しで二ヶ月やってたらマトモなゲームもやりたくなるだろ?」

 

「死にゲーとクソゲーとで言えば、死にゲーにも噂に聞くクソゲーがあったよな?」

 

「あぁ……ABYSS ACE ASH な。あれはやってて苦痛だった………」

 

通称トリプルエー。‪‪‪︎︎生物を蘇らせ怪物化させる謎の灰に包まれた現代世界で、某合衆国のエージェントとなって灰に塗れた国々で暗躍するSF死にゲーだ。

 

世界観とストーリーは申し分無しの最高の出来合いだったが、世界観とゲーム性の完全融合を目指した結果、難易度がゲロムズになった挙句、死んだら全ての進行がストーリー最序盤に叩き戻されるせいで、ノーデスチャレンジを強制。

 

死にゲー上位の難易度なのに易々と死ねないという二重苦でストレスマッハ、なのに初見殺しや角待ち謎解き要素を詰め込まれ、幾度死んでチュートリアルをやり直したことか……

 

買ったゲームは何がなんでもクリアする俺が、匙もといコントローラーを明後日の方向にフルスイングしそうになった唯一のゲームだ。

 

「あなた達……ここは一応フィールドなのよ。雑談するなんて危機感が欠如しているんじゃないの?」

 

「危機感が無いのはコイツだけだ」

 

「ひでぇな。適度にリラックスするのも大切だぞ、常に気を張ってちゃ本番で最高のパフォーマンスが出せないかもだからな」

 

緊張と脱力をメリハリつけて切り替えてこそ、温存による解放のカタルシスがあるのだと、表情こそ分からないが懐疑的な視線を向けるレイピア女子に説く。

 

気は抜ける時に抜いておいて、引き締める時にはほど良く引き締めるのが理想。と、俺の少ない人生経験が告げている。

 

「なら、そろそろ気を引き締めて貰いたいものね」

 

「ハハッ!任せとけ、時が来たらバッチシ仕事はするからな」

 

「……疑わしいものね」

 

いかんせん当たりが強い。でも、俺はそういう趣味の人じゃないし鋼鉄メンタルだから無問題。

 

「ま、まあ…!作戦の再確認はしておいても良いだろ。俺達の相手は取り巻きだから、基本は俺と君でスイッチしてどんどん削る。サカヅキは速度を活かして遊撃、合ってるな?」

 

レイド単位の作戦で言えば俺達三人と他パーティーで取り巻きの、なんちゃらセンチネルを惹き付け本隊がボスを倒すという寸法。シンプルイズベスト、至って簡単な分断作戦だ。

 

問題はベータからの変更点、ほぼ必ずあると予想される要素への警戒だけは一際強く保っておこう…………

 

 

 

 

 

 

「……みんな、準備はできたみたいだな!これより第一層ボスを攻略する!

 

最後に俺から言えることは一つだけだ。勝とうぜ!」

 

ディアベルさんが手短に演説を行いプレイヤー達の士気が静かに湧き上がる。先頭で切り込みを行うプレイヤーがボス部屋の大扉を押し開き、様々な光色で彩られる大理石で出来たボス部屋に全員が突入する。

 

同時にボスの大コボルトと取り巻きコボルトが五体スポーンした。ボスが雄叫びを挙げ先頭プレイヤーと切り結び、SAO最初のボス攻略が幕を開けた。

 

 

「んじゃ行くか!!」

 

取り巻きのヘイトを本隊に向けさせないため、俺は一番左のコボルトへ真っ先に斬り掛かる。

 

コボルトは胴体と頭部にだけ重厚な鎧を着込み、それ以外は素っ裸。俺はその素っ裸でいかにも攻撃が通り易そうな部分を狙う。

 

初撃はソードスキル エレメンタリィエッジ で低い姿勢から太腿辺りを切り裂き、高い敏捷値と軽い装備から生み出される機動力で一撃離脱。

 

「キリトっ!」

 

「任せろ!」

 

怯みが発生したのでもう一発ブチ込んでも良かったが、これはチーム戦。敵モブに無い脳ミソと数の暴力を使って袋叩きにしよう。

 

「ハァッ!!」

 

「か〜ら〜の〜…!!」

 

キリトが下方からソードスキルを縦にに叩き込む。鎧でダメージと怯み軽減したコボルトがトゲトゲメイスを振りかぶったところで、鎧に覆われていないメイスを持つ腕を俺が斬る。

 

更なる怯みモーションにその場でソードスキルの用意をしていたキリトが斬る。その次は俺が、その次はキリトが。

 

「ハメ殺しにしてやんよォ!!」

 

作戦には無いソードスキルの連続。二ヶ月一緒に戦ったキリトとのコンビネーションはまだ甘いが、俺が敏捷を活かしてカバーに回り怯みでハメ続ける。

 

「頼んだレイピア女子!」

 

「……ッ!!」

 

怯みハメの継続はいつまでも出来ない、そこでレイピア女子を飛び込ませた。彼女は恐れ知らずの身のこなしでコボルトに肉薄すると、真正面から素の連続刺突で滅多刺しにする。

 

すげぇなあの速度、剣先が全く見えんレベルで動いているぞ。ソードスキル無しでアレとか、ソードスキルが乗ったらもっとヤバい威力になりそうだ。

 

「スイッチ!!」

 

「俺が行く!!」

 

アレを見せられ俺もジッとしてはいられない。

 

俺は右手の短剣と対になるよう、左手に()()()()を逆手で構え走る。

 

レイピア女子が崩した体勢を存分に利用し、両手で大きく振りかぶった短剣を()()()()()()()使()()()、腰の捻りを活かしながら振るい斬る。

 

続けてヒット数を増やしながら踊るように二本の短剣で斬撃を加え続け、鎧で覆えない首筋を晒したので、最後にそこへ左の短剣を深々と突き刺し飛び退く。

 

刺さった短剣のスリップダメージは馬鹿になっていないようで、短剣を抜こうと必死にもがくコボルト。

 

怯みモーションに次ぐ短剣を抜こうとするモーションはあまりにも隙だらけ。致命的とも言えるそれを後ろの二人が見逃すはずなく、キリトとレイピア女子共に刺突系のソードスキルを使ってHPを削り切り、コボルトは硬直した後ポリゴンは砕けた。

 

「やりぃ!ナイス二人とも!」

 

「そっちもな!」

 

「ありがとう……それより、SAOって二本武器を持てたのね」

 

「一応な。とんでもないデメリットがあるぞ。それはな…」

 

武器の補正は片方のものしか適応されないし、武器二個分の重さが敏捷を落とす。しかも一本の時より武器の扱いが難しくなる。

 

なにより致命的なこの二本持ちの弱点は……

 

「ソードスキルが使えなくなるんだ」

 

…この状態でのソードスキル使用不可という点にある。

 

SAOの代名詞であり、プレイヤーの大きなダメージ源となるソードスキルは威力と命中率に補正が掛かるばかりでなく、モーションにも補正あり超人的な動きも可能とする。

 

それが使えないのは攻撃行動に相当なデメリットだ。

 

俺とキリトの推測では、システム上で二本持ち状態は、剣を一本づつ装備しているのではなく、二本持ちという状態だからソードスキルを使えないのではと予想している。

 

「そんなの、いくら二本持ちでも与えるダメージが大きく減るんじゃないの…?」

 

「俺としては二本持ちでも一本持ちでも、敏捷ステ使って攻撃回せばダメージ量は同じくらいだから問題にはならねぇんだよ」

 

なんなら動きを固定されて硬直もあるソードスキルの方が柔軟性に欠けて回避運動が難しいまである。まあ、状況によって二本と一本を切り替えるのがベストだな。

 

「ゼロ距離だと、むしろ連続攻撃でハメ殺せるからお得だ」

 

「見てるこっちは毎度ヒヤヒヤしてるんだぞ……」

 

「良かったなキリト。熱いマップも専用装備要らずだぞ」

 

「そういう意味じゃねぇよ!!」

 

「気を入れてるのか、気が抜けてるやら……」

 

 

呆れ返るレイピア女子はそう言うが、俺もキリトもボス攻略からは意識は離れていない。周囲の取り巻きの状況を確認しながら、ボスの体力にも警戒する。

 

取り巻きは他パーティーの連携の邪魔になるので不介入だがボスは別だ。もうじき体力ゲージが最後の一本になる。

 

ベータの事前情報ではタルワールとの曲刀武器に持ち変えるらしいが果たして…………

 

「GAAAA…!!!」

 

一際強い雄叫びをボスが発すると武器を持ち替える。

 

「さぁて、俺達も本隊に加わるか。ところでMVPボーナスとかってあるか?あるなら狙いたいんだけど」

 

「MVPは無いがラストアタックボーナスが………ダメだッ!!!全員後ろに飛べぇぇ!!」

 

キリトはボスの持ち替えた武器を見ると血相を変え叫ぶ。

 

叫びに気付いて反応出来たのは何人居ただろうか、突然の意図不明の指示にほとんどの奴は反応が遅れる。

 

最も遅れたのは先頭を走るディアベルさんだった。どこか確信めいた行動は易々と変えることは出来ず、脳と肉体の僅かな誤差で一歩前へと進んでしまう

 

そんなプレイヤーを嘲笑うかのようにボスは、曲刀にしては長く片刃のよく見れば武器種が刀と分かる武器に、ソードスキルのエフェクトを纏わせ高く飛んだ。

 

範囲攻撃のソードスキルは本隊のプレイヤー達を薙ぎ倒すと、次なる連撃はディアベルさんへと向けられる。

 

 

俺は走っていた。

 

 

今こそ馬鹿みたいに高い敏捷ステを活かす時だとか、助けて恩を売ろうだとかの、いつも通りの思考をする前に何故だが走っていた。

 

理由は全くもって不明だが、今はどうでも良い。とりあえず助ける、その一心で後先考えず走る。

 

 

 

 

が、無常にも俺が助けに入る前にボスの連撃はディアベルさんに全て命中し、その体をボスとは反対方向へと吹き飛ばしていた。

 

 

 

 

 




評価付与と感想お願いします!

ここで書き貯めは終了なので、次のボス戦終了までは書き切って、続きは気が向いたら書くと思います!!

居るかどうか分からないディアベルファンには悪いですが(めちゃ失礼)、今回のディアベルのセリフは一文だけでした。許してね。
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