転生リィンのやり直し 作:影後
マキアスとユーシスの旧校舎での喧嘩を、
オリチャー発動させ《少しでも》
マシにしようとしたリィンだったが、
何故かサプライズ魔煌兵の出現により己の本気を出してしまう。
それから、少しばかり浮いた生活をしていた。
S.1204 / 4.17 / Saturday
「……はぁ…俺は本当に救いようが無いな」
俺は毎朝、街道に出ては魔獣を誘き寄せて殺戮をしていた。
「力の誇示という訳でもないんでしょ?
てか、汗一つ流さないとか『理』に至ったら
皆そうなるのかしら」
「セリーヌ、何時人が来るか判らないんだ。
話すのは」
「アンタの気配察知を信用してるのよ」
俺はクラスの皆と生活するよりも、
エマ、ユーシス、セリーヌと共にいることが多くなった。
優等生を演じる気にもならず、自分なりに生きている。
だが、やはりセリーヌとの時間が一番多いだろうか。
エマとセリーヌは導き手として入学した。
だが俺は導き手無しに《ヴァリマール》と契約し、
少なからず魔術を教わる簡単な師弟関係にもなっている。
だがやはり、エマにも自分の時間があるため、
必然的にセリーヌとの時間が多い。
というよりも、エマか俺の肩にセリーヌが乗ってるのだ。
前回とは違い隠れる必要が無い為か、
学園内でも、散歩、日向ぼっこ、昼寝の3つ以外は
俺の肩に乗っているか、エマに抱かれているかだ。
「ねぇ、鰹節ちょうだいよ!」
「好きになったねぇ…まぁ、俺があげたせいだけど」
「噛み応えあるし、おいしいのよ」
鰹節をナイフで削り、セリーヌにあげる。
序に自分で噛む用にもだ。
「〈ハグハグ〉…それで、セピス集めって訳じゃないのよね」
「まぁね、魔獣を一太刀で倒せるのは良いが…
斬り方にもまだまだムラがある」
斬り方のムラ、それは『身体が技量に追い付いていない』
という証明だ。仕方が無いだろう。
元の俺、前回は『初段』。
そして『中段』だった。
それがいきなり『剣聖』となった技量を
肉体が扱いきれないのだ。
ソフトウェアとハードウェアに差が開き過ぎている。
だからこそ、変に身体が疲れていく。
今、ここいらの魔獣は強くないのだ。
肉体を少しでも、技量に追いつかせるには丁度いい。
その為に、魔獣を殺している。
「セリーヌ、そろそろ学園に行くが……」
「良いわよ、乗っけて」
「まったく……爪立てないでくれよ」
セリーヌを肩に乗せて学院にあるく。
途中、マキアスと出会ったが悲しげな顔をして、
俺から逃げるようにでスタスタと学院へ消えていく。
「やっぱり地雷だったか……だがなぁ…」
「アンタの話聞いて、問題ない人間なんて、
心臓に毛が生えている奴ぐらいよ」
そう、今は4月17日だがそれまでにも授業があった。
オリエンテーションを終えた翌日、
クラスで改めて自己紹介などをする機会があったのだが、
俺は色々と面倒に巻き込まれるのは諦めるが、
少しでもマシにしたいという考えの下で自己紹介をした。
「リィン・シュバルツァー。17歳だ。
出身地は不明、両親はシュバルツァー男爵夫婦。
貴族嫌いな人や、貴族となんとなく話すのが苦手と
言う人に話そう。俺は二人と血の繋がりはない。
それどころか、俺のせいでシュバルツァー男爵家は
社交界を半ば追放され、孤立無援の状態だ。
もっと言えば、俺の本当の両親は帝国軍元准将で
帝都に住んでいた。百日戦役の際に父は反対派でな。
俺と母さんは親父がいない時間を狙い、猟兵に襲われた。
胸に傷もある、機会があれば見せよう。
だが…俺は猟兵を憎んでない。仕事だ。それに、
俺たちを襲った猟兵は親父に殺された。
まぁ、色々とあってシュバルツァー男爵家に
引き取られたが、この通り俺は俺だ。
詳しくは話したくない。以上だ」
……本当に爆弾発言しかしていないと今は思う。
マキアスに嘘だと言われた際、
事細やかに状況を話して居たらサラ教官に止められた。
一部、荒事に慣れていない一部が顔を青くしていた。
まぁ仕方ないと言えば仕方が無いのだ。
俺にとっては過去の事。どうでも良いのだが……
「でも、まぁ…親父は一発殴りたいな」
(親子喧嘩でもしたいの?)
「……そんなんじゃないさ」
下手に話していると本当に可哀想な奴と思われかねない。
俺はマキアスに続いて学院に入った。
俺自身、自分が優等生だとは思わない、
本当のリィン・シュバルツァーを演じていた時も、
別に勉強事に関しては自分なりに向き合ってやっていた。
でなければ、教官職に就くなど夢のまた夢だ。
だが、やはりトマス教官の《歴史》は楽しい。
「さて、リィン君。
ドライケルス帝が挙兵した辺境の土地と言えば、
何処でしょう?」
「ノルド高原ですね」
「えぇ、正解です。当時の〜」
その日の授業が終わり、LHRの時間になる。
「ーお疲れ様。
今日の授業も一通り終わりね♡
まぁ、クラスの輪はなんとなく悪いけど……」
「はは…何のことでしょうね?」
「本当、おかしいのよね。
ヴァンダイク校長がアンタの話を聞いた瞬間、
『以降、リィン・シュバルツァーの
過去に対する調査を禁ずる』だもの。
本当にアンタの生活態度で人柄を
調べるしかないじゃない」
LHRで言う事じゃないだろうが、
仕方ないだろう。クラスの空気を破壊したのは俺だ。
まぁ、そのなかでも魔女関係でもないユーシスが
話しかけてくるのは正直驚きだ。
「前にも伝えたと思うけど、明日は《自由行動日》に
なるわ。厳密に言うと休日じゃないけど授業はないし、
何をするのも生徒の自由にされているの。
帝都に遊びに行ったって良いし、
何だったら私みたいに1日寝てても良いわよ?」
サラ教官はこんな人だと言う変わらない印象に
微笑みそうになるのを防ぎ、話に耳を傾ける。
エマやマキアスの質問、更にクラブ活動について。
だが、本題はここからだ。
「―それと来週なんだけど、
水曜日に《実技テスト》があるから」
始まりの日は着々と近付いていく。
まぁ、まだ荒削りだが特殊部隊でもない領方軍程度、
簡単に仕留めることは出来るだろう。
「ちょっと、リィン!話きいてるの!」
「はい、実技テスト及び、特別カリキュラム。
個人的にどのような物かと考えていました」
「それが質問だとしても答えられないのよね〜。
当日を楽しみにしてなさい」
そして放課後、一人クラスに残り黄昏ていた。
「何一人で黄昏れてんのよ」
「サラ教官もどうですか?景色は中々ですよ」
「屋上の方が良いじゃないの」
「……サラ教官の気配があったので、
下手に動くより留まったほうが良い。
そう考えました」
サラ教官は溜息をついたが、
俺は無表情でグラウンドを見る。
「今、こうして笑っている人間も…
いずれ殺し合う運命にあるとしたら、サラ教官。
貴女はどうしますか?」
「何のことか知らないけど、止めるわよ。
一人の大人としてね」
その言葉を受けて、ホッとしている自分がいる。
「…なら、事件が起きた時。
教師として俺以外の皆を救ってやって下さい。
俺は生き残れるが、周りはそうじゃない」
「何言ってんのよ、アンタも生徒でしょうが」
「まぁ……今はまだそうですね」
俺はそう言いながらサラ教官に顔を向ける。
「相談乗るわよ」
心配そうに見つめる顔を、俺は受け取れられなかった。
話題を赤羅様に変えて、話の腰を折る。
「頼み事があるんでしょう?
教官の代わりにやっておきますから」
「――それも千里眼なのかしら。
まぁいいわ、《生徒会》に行って、学院生活に必要な」
「全員分って事ですね。了解です」
「ゆっくりと聞きなさいよ…もぅ…じゃあ、頼んだわよ」
「えぇ、お任せあれ」
「―あぁ、それと…私が無理でも話せる相手なら
神父様に懺悔と言うか、相談なさい」
「……機会があれば」
俺は懺悔はしない。
俺の選択を迷うことはしない。
彼奴に、リィン・シュバルツァーにそう言われたから。
同一人物にして、別人。
オリジナルとして、グッドエンドに進んだ彼奴に、
もう一人の俺にそう言われたから。
(俺の進む道だ、迷わない。
どんな結果になろうと受け入れて、進んでやるさ。
だろ、リィン)
手を伸ばすなんて事はしない。でも、彼奴の様になりたい。
だから、
(やってやるさ、俺のできる事を。
お前に、追い付くために)
部活動に対しての興味は然程ない。
そもそも入学式をバックレる生徒など、
サラ教官だって本当なら匙を投げたい筈だ。
俺は学生会館へと足を進める。
「よっ、後輩くん!」
(来たっ…)
俺がリィン・シュバルツァーの次に親友だと、
戦友だと言える存在。
俺と共に遥か彼方に進み出でてくれた一人。
この邂逅だけは運命であってほしかったが……
やはり、大まかな流れは原作と同じなのだろう。
だが、そんな事は関係ない。
ゲームだった世界はここにはない。
今目の前にあるのは現実なのだから。
「入学して半月程度だったか?
もう、学生生活には慣れた…って、お前に言う必要無いわな」
「どういう意味です?」
こんな言葉をかけられた記憶はない。
嫌な予感がするが、腹の底に押し込める。
「そりゃあ、入学式をバックレる前代未聞の不良生徒。
そのうえ、学業の大半が上の空。
そのくせ、教師よりも上手く解説とかしてくる。
お前を何の裏もなく褒めてるの、トマス教官ぐらいだぜ?」
「あっ………」
確かに、歴史以外適当に授業してた気がする。
いや、でも自分なりに向き合ってやっていたし、
「その違うって顔、多分見られたんじゃねぇの。
トマス教官の時だけはノートの書き取りも凄い
らしいじゃないか」
「……何で知ってるんです」
正直、恥ずかしくて死にそうだ。
特に、不良生徒先輩のクロウにだけは言われたくない。
「お前、あんまり教官方に迷惑かけすぎんなよ。
っと、これも何かの縁だ。
ちょっと50ミラコイン貸してくれや。
面白い手品を見せてやるよ」
「え?はい」
懐かしい、クロウは右手に乗せたコインを弾くと
そのまま腕をクロスさせ俺に質問してきた。
「――さて問題。右手と左手、どっちにコインがある?」
「……左手」
クロウは左手を開いてみせるが、何もない。
動体視力からしても左手にあるはずのコインがやはりない。
「参りました、動体視力には自信があったんですけど……
って、あれ?手品って事は」
「こういう事さ」
右手も空であり、俺は呆けた顔をする。
「まぁ、これからも精進しろって事さ。
―そうだ、生徒会は2階の奥だぜ」
そう言って50ミラと共に歩いていくクロウ。
ニヤけるのを必死で抑え、呆けるフリをする。
50ミラは莫大な利子を付けて返して貰おう。
(今度は、死なせない)
クロウは、俺の我儘に付き合ってくれたんだ。
クロウの苦しみも、悲しみも、俺には全ては理解できない。
でも、仲間として、友人として、助けるさ。
「あら、貴方。こんなところでどうしたのかしら?」
「え?」
そして、振り返った時正直此処でエンカウントするとは
思ってなかった女子生徒がいた。
「ベリル?」
「私と貴方は初対面……ほぉ~。
良いわよ、私の部室へいらっしゃい」
ベリル、謎多き女子生徒。
此処で出会えたのは何かの縁だと思いたいが、
もう理解できない。
「ほら、はやく」
「待ってくれ」
どうやら、今選択肢は無いらしい。
俺はベリルの後に続いて学生会館へと入った。