術式「百鬼夜行」   作:Virus Miss

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幸せっていいですよね。



ガチの不定期更新です。別のやつも書いているので・・・
あとキャラたちの口調が難しい。小説書いている人を尊敬します。


始まり

その夜は、ひどく静かだった。

中学を卒業し、春からは街の高校へ進む。いつかは慣れ親しんだこの孤児院を出て、自立して、時々ここに顔を出して……。そんな、ありふれた、けれど確かな幸福を疑いもしなかった。

喉の渇きを覚えて目を覚ましたのは、深夜二時のことだ。

廊下へ出た瞬間、鼻を突いたのは鉄の匂い。むせ返るほどに濃い、血の臭気。

 

「……え?」

 

食堂の扉を開けた先、そこは赤一色の地獄だった。

昨日まで一緒に笑っていた弟たちの四肢。家族のように慕っていた院長の、無残に砕かれた頭部。その中央に、そいつはいた。

人の形を歪めたような、醜悪な化け物。そいつは院長の肉を咀嚼しながら、血に濡れた眼球をこちらへ向けた。

 

「ひっ……あ、あぁ……」

 

声にならない。夢だと思いたかった。だが、足元に流れてきた血の温かさが、これが現実だと突きつけてくる。化け物がケタケタと嗤った。家族を、僕の帰る場所を壊した化け物が、僕を見て笑っている。

恐怖の底から、どろりとした熱い何かがせり上がってきた。幼い頃から、体の中に「ある」と分かっていた不思議な力。いつもは弄んでいただけのそれが、今はどす黒い殺意となって溢れ出す。

復讐だ。

 

「殺してやる……ッ!!」

 

感情のままに叫び、拳を叩きつけた。力を込めた一撃。だが、化け物はそれを嘲笑うかのように躱すと、鋭い爪が僕の腹を裂いた。

衝撃で建物の外まで吹き飛ばされる。地面を転がり、大量の血を吐き出した。視界が点滅し、体が鉛のように重い。這い寄ってくる化け物の影が、僕を覆う。

(……ごめん、みんな。僕も、すぐに行くから)

死を覚悟し、瞳を閉じた。

 

「――おっと。ギリギリセーフってとこかな」

 

軽薄な、けれどどこか絶対的な安心感を抱かせる声。

恐る恐る目を開けると、そこには化け物の姿はなかった。代わりに立っていたのは、頭に包帯をぐるぐる巻きにした奇妙な白髪の男だ。

 

「もう大丈夫。呪霊はもう、僕が祓ったから」

 

「……はらった?」

 

「そう。あ、自己紹介が遅れたね。僕は五条悟。見ての通り、最強の呪術師さ」

 

五条悟と名乗った男は、壊れた孤児院を見渡し、少しだけ声を落とした。

 

「君、呪力を使えるんだね。名前は?」

 

「……轟鬼 欠意(とどろきけい)です」

 

「欠意ね。……ごめん。間に合わなかった。君しか、助けられなかった」

 

謝る必要なんてないはずだ。この人は、僕を救ってくれたのだから。

 

「欠意に提案がある。僕の仕事仲間にならない? 君みたいな才能がある子が通う『呪術高専』って学校があるんだ。そこであの化け物――呪霊を祓う方法を学べる。どうする?」

 

迷う理由などなかった。この人こそが僕の神様だ。この人の背中を追えば、二度とこんな悲劇を起こさずに済むかもしれない。

 

「……行きます。お願いします」

 

「即答、いいね。気に入ったよ。……とりあえず保護するからついてきて」

 

「待ってください。……みんなを、供養させてください」

 

五条は黙って頷き、どこかへ電話をかけ始めた。

僕は震える手で、家族だったものを集めた。庭に穴を掘り、一つずつ埋めていく。爪が剥がれ、泥と血にまみれても、この痛みだけが僕を繋ぎ止めていた。

二度と、手の届く範囲の人間を死なせない。

僕は立ち上がり、五条の方へ向かった。

 

「……行ってきます」

 

残された廃墟に、それまでの轟鬼欠意を置いて、僕は呪いの世界へ足を踏み入れた。

 




秤と綺羅羅と同級生になります。
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