術式「百鬼夜行」   作:Virus Miss

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入学時の綺羅羅の口調が想像できん。
中学生時代は短髪らしいですね。入学まで期間があったと思うので髪は伸びているはず・・・
長さ的には原作の登場時と同じくらいでしょうか?襟足と後ろは時間かかりますが前髪やサイドの長さは同じということにします。私は男性ですが2ヶ月くらいあればそれくらい伸びるので後ろを伸ばしている最中の綺羅羅が正解でしょう。おそらく



お前の熱はなんだ?

五条先生に保護され、連れてこられたのは山奥にある宗教施設――いや、東京都立呪術高等専門学校だ。木造建築特有の古い匂いと、肌に張り付くような独特の空気感。これが結界によるものなのか、それともこの場に染み付いた歴史の重みなのかはまだ分からない。ただ、ここが普通の学校ではないことだけは肌で理解できた。

 

今は4月。世間では桜が舞う入学シーズンだ。

特殊な場所とはいえ、ここにも入学という行事は存在するらしい。あてがわれた個室で、支給された真新しい制服に袖を通す。

黒の詰襟。第一ボタンまできっちりと留め、その上から黒いマントを羽織る。仕上げに学生帽を目深に被れば、鏡の中には大正時代の書生のような男が立っていた。

 

これは五条先生が勝手にカスタムした特別製らしい。『僕の学生時代の制服と同じデザインだけど、それだと僕の二番煎じでつまんないから追加したよ☆』

 ……とのことだ。少し派手すぎないだろうか。

 

コンコン、と扉が叩かれ、五条先生が顔を出す。

 

「おぉ、似合ってるね。レトロモダンってやつ? さすが僕。それじゃ教室に行くよ」

 

「はい」

 

先生の後ろについて廊下を歩く。

コツ、コツ、と足音が静寂な廊下に響く。すれ違う生徒の気配はない。

聞いていた話では、同級生は僕を含めてたったの三人。仲良くできるといいのだが。

それにしても、前を行くこの人は白い包帯で両目を完全に覆っている。それでスタスタと歩けているのが不思議でならない。

 

「……見えてるんですか?」

 

「心の目がね。……なんて、嘘だよ」

 

教室の前で立ち止まる五条先生。

 

「ちょっと待っててね」

 

言うが早いか、ガララッ! と勢いよく引き戸を開け放った。

 

「はーい、ちゅーもく! 遅れてきた3人目が到着したよ! 盛大な拍手で迎えるように!」

 

……シーン。

拍手どころか、静まり返っている。

先生からの目配せを受けて、僕は教室に足を踏み入れた。

教室の中には、異質な空気が漂っていた。

 

一人は、机の上に堂々と足を乗せている黒髪の男。鋭い目つきに、着崩した制服。絵に描いたような不良だ。その隣には、スマホをいじっているもう一人の生徒。

耳にはあちこちにピアスが光り、襟足が少し長く伸びたウルフカット気味の髪型。中性的で整った顔立ちをしているが、その瞳にはどこか周囲を拒絶するような色が混じっている。

黒髪の男が、値踏みするような視線を投げてきた。

 

「おいおい、随分と『イイ子ちゃん』が来たな。……ここは寺子屋じゃねぇぞ」

 

「金次、あんまり絡まないであげなよ。……先生、この子が最後?」

 

中性的な生徒――綺羅羅と呼ばれた彼もまた、僕に対してあまり良い印象を持っていないようだ。

まあ、この格好だ。浮くのも無理はない。

 

「ま、とりあえず自己紹介しなよ。これから死線を潜るクラスメイトだ」

 

五条先生の適当な仕切りに、黒髪の男――秤が机から足を下ろさずに口を開く。不敵な笑みだ。

 

「俺は秤金次。好きなもん? 『熱』だ。ギャンブルだろうが呪術だろうが、熱くなれねぇ人生に価値はねぇ。よろしくな、優等生」

 

続いて、隣の彼が気だるげにスマホを置く。

 

「……星綺羅羅。ま、適当によろしく」

 

僕の番か。

一歩前に出て、深々と頭を下げる。

 

「初めまして。轟鬼欠意です。好きなものは……平穏、でしょうか」

 

チッ、と秤から露骨な舌打ちが聞こえた。

どうやら彼の癇に障ったらしい。

 

「あぁ? 平穏だ? ナメてんのかテメェ。これから呪い殺し合おうって奴のセリフじゃねえな」

 

ガタッ、と椅子を蹴り倒し、秤が立ち上がる。

大股で近づいてきたかと思うと、乱暴に僕の胸ぐらを掴み上げた。顔が近い。煙草の匂いはしないが、焦げ付くような威圧感がある。

 

「おい、何しにここに来た。思い出作りか? それとも正義の味方ごっこか?」

 

「ちょっ、金次!」

 

綺羅羅が止めに入ろうとするが、秤は止まらない。

揺れる黒い瞳が、僕の本質を暴こうと覗き込んでくる。

――まただ。

孤児院で感じた、あの理不尽な暴力への怒りが、腹の底で燻り始める。

僕は表情を変えず、秤の瞳を真っ直ぐに見据えた。

 

「……言葉足らずでしたね」

 

「あ?」

 

「僕が求めているのは、理不尽な死のない『平穏』です。そのために必要なのが『救うこと』への執着」

 

僕の手の届く範囲。視界に映る人間。それらを理不尽な死から救い出す。

そのためなら、代償なんて幾らでも払う。

 

「僕の命も、魂も、全てチップとして賭けられます。貴方風に言うなら……これが僕の『熱』です。無理だなんて言わせない。不可能を可能にするために、僕はここに来た」

 

感情の高ぶりに呼応して、背後からドス黒い呪力が溢れ出した。

ただの呪力ではない。無数の視線と、何かが這い回るような気配。僕の中に潜む『百鬼』たちが、主人の怒りに呼応して産声を上げる。

教室の空気が、ピリついたものに変わる。

綺羅羅が息を呑む気配がした。

だが、秤は――。

パッ、と手を離し、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。

 

「……ハッ、上等だ。平穏とか言ってる割に、随分とイカれた熱持ってんじゃねぇか。合格だ、轟鬼」

 

「……え?」

 

「俺は賭け事(ギャンブル)が好きだが、勝ち目のない勝負に命張るバカは嫌いじゃねえよ」

 

どうやら、彼の基準での「合格」を貰えたらしい。肩の力が抜ける。

パン、と乾いた音が響いた。

 

「はいはい、仲良きことは美しきかな。男の友情成立ってことで、さっさと実技行こっか」

 

五条先生が能天気な声で割り込んでくる。

僕と秤、そして呆れ顔の綺羅羅。

三人の視線が、一瞬だけ重なった気がした。

(((……この人(先生)が一番のイレギュラーだな)))




孤児院の時に術式使えば良いじゃん。と思ったでしょ?術式を自覚した瞬間から基礎的な使い方は彼自身わかっていましたが触媒が特殊で苦労しました。入学までにはしっかり使えるようになっています。
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