追憶:決意
朝は決まって、窓の外の光で目が覚めた。
日本の朝みたいに柔らかい光じゃない。
こっちの朝は、最初から輪郭がはっきりしていて、空気まで白く見える。
カーテンを開けると、遠くの街がまだ眠っているのに、もう太陽だけは働いているみたいに高い。
「暁、起きた?」
母さんの声がキッチンから飛んでくる。
皿が触れ合う音、湯気の匂い。
少し焦げたパンの香り。
見慣れない国の匂いの中で、それだけはどこにいても同じだった。
「起きてる」
ベッドの上で返事をして、ゆっくり起き上がる。
眠気はまだまだ残っていたが、もう起きる時間のため、無理矢理体を起こす。
リビングに行くと、母さんがキッチンで朝食の準備をしていて、父さんはネクタイを結びながら、折りたたまれたタブレットを眺めている。
父さんは大手建設会社の駐在員だ。
昨年、父さんがアフリカのこの国に駐在する事が決まった。
詳しいことは難しくてあまり分からなかったが、この国の街を発展させるためのプロジェクトの責任者に抜擢されたらしい。
なんか凄いことらしかった。
それから家族で話し合いの末、この国に家族全員で暮らすことを決めた。
俺は元々そこまで学校に仲の良い友達もいなかったので、すんなり受け入れられた。
この国での生活は最初は慣れないことも多かったが、10ヶ月経った今ではかなり慣れてきたし、気に入ってきてもいた。
なにより、日本の東京のようなコンクリートジャングルとは違う、自然に溢れたこの景色が好きだった。
父さんは現地のプロジェクトで忙しくて、朝も夜も仕事の話をしていた。
かまってもらえず少し退屈だったが、それがちょっと格好いいと思っていた。
「暁、勉強の方はどうだ?」
父さんが聞いてくる。
「そこそこ」
俺は朝食を食べながら答える。
俺は現在、インターナショナルスクールに通っている。現在住んでいる所からはそこそこ距離があるが、日本人が1番通いやすい学校を、と父さんが選んだ。
実際、色んな国籍の子どもたちが通っているので浮くことはなかった。
授業は英語で行われるので最初は苦労したが、英語が喋れる母さんと父さんにも教えてもらいながら、今ではかなり上達した。
「なんだ、そこそこって」
「この子、けっこう勉強できるみたいよ。先生が褒めてたわ」
母さんが笑いながらそう補足してくる。
スクールの先生と母さんはよく連絡を取っているようで、俺の授業の様子も詳細に報告されているようだ。
「おお、そうなのか。いいことだな」
「この子、アラビア語も今はもうかなり喋れているしね。本当物覚えが早いわねぇ。母さんは英語は喋れるけど、アラビア語はまだあまり分からないから、本当助かってるわ」
「アラビア語まで。すごいな、暁は」
「やめてよ、恥ずいじゃん」
この国の主言語はアラビア語だ。
アフリカに多いとされる英語やフランス語を喋る人もいるにはいるが、第2言語としてが多いため、一般的にはアラビア語がよく使われる。
そのため約1年も毎日言葉を聞いているとなんとなく分かってきた。
どうやら母さんの言うように俺は物覚えが良い方のようだった。
それはそれとして、褒められるとなんだかむず痒くなる。
俺が照れているのを見て、父さんと母さんが笑う。
「暁、学校は今日はお休みでしょ?一緒に買い物にいく?」
そう母さんが尋ねてくる。特にやることもないので、俺は頷いた。
「スーパーにいこっか」
「うん」
朝食を食べて、服を着替えて外出の準備をする。この国に来てから、あまり着込むことがなくなった。
「準備できた?」
母さんが部屋に来て声をかけてくる。
「うん」
「じゃあ、いこっか」
家の外に出ると、空気が熱い。
昼じゃなくても、もう熱い。
この街は色が濃い。
赤土みたいな色の地面。
強い青の空。白い建物。道路の端で売られてる果物。人の声は大きくて、音楽みたいに遠くまで届く。
家から街の中心部まで行く道は、家が街の外れにあるのも相まって、日本のようにアスファルトで整備されていない。
きっと、父さんの仕事はこういう道をアスファルトに変えていったりだとか、そんなことなんだろうなと勝手に想像していた。
街の中心部は栄えているといえば栄えているし、そうでないといえばそうでない。
日本の東京と比べるのが間違っているのかもしれないが、物足りない感じがする。
スーパーマーケットの品揃えは日本とはかなり違う。
ただ、日用品や食料があるのは変わらないので、一通りのものはここで揃う。
俺は母さんとよく買い物に行くので、このスーパーのどこに何があるのかも詳しくなった。
あらかた買い物が終わったあと、帰り道の途中の屋台で見たことのない菓子を買ってもらった。
甘いのに、どこか香辛料が入っていて舌がびっくりする味。日本にはない味だ。
「こういう食べ物も、日本に帰ったら食べられないね」
母さんがそう言って少し寂しそうな表情をしていた。
恐らく、あと2年は父さんの仕事の都合でこの国に滞在するとは思うが、いつかは日本に帰る予定だった。
「また来ればいいじゃん?」
俺がそう軽く返すと母さんは笑って、俺の頭を撫でた。
「そうね。でも、簡単には来られないからね。だから、今を大切にしないとね」
その時の俺は、その言葉の意味をよく理解していなかった。
◇
その日の夜、父さんはいつもより遅く帰ってきた。
玄関の鍵が開く音がして、父さんの靴の音がして、母さんの「おかえり」と言う声がする。俺はソファでだらだらしていたが、父さんの顔を見た瞬間、すぐに起き上がった。
父さんは疲れていた。目の下が少しだけ暗くて、ネクタイは緩んでいた。でも、俺を見て微笑んだ。
「暁、買い物どうだった?面白いものあったか?」
「屋台で変な味のお菓子買ってもらった。意外と悪くなかった」
「へぇ。父さんも気になるな。今度一緒に行こうな」
そう言って俺の頭を撫でてくる。
母さんが温め直した夕飯を出し、父さんは食べながらタブレットを開いた。
画面には地図みたいなものと図面らしきものが映っている。俺にはよく分からない。
「……最近、現場の警備が少し厳しくなっててな」
父さんが、独り言みたいに言った。
母さんが反応する。
「また? この前も言ってたじゃない」
「大丈夫だとは思うけどな。念のため、ってやつだよ」
父さんの声は落ち着いていた。
この国の治安は比較的安定している。
少なくとも、俺たちが暮らしているこの街では、銃声なんて聞いたことがないし、爆発音なんてニュースの中の話だ。俺は特に何も考えず、その話をボーッと聞いていた。
母さんは箸を置いて言った。
「暁、明日の通学気をつけてね。もし何かあったら、運転手さんの言う事をよく聞いてね」
「わかった」
俺はそんなに心配しなくてもと思ったが、とりあえず頷いた。
インターナショナルスクールまでは距離がある。通学は専属のタクシーサービスを利用している。
決まった運転手が迎えに来て、決まった時間に送ってくれる。
父さんは俺を見て、少しだけ真面目な顔になった。
「暁。何かあったら……大人の言うことをよく聞け。分かったな」
「何かって?」
「……何でもない。念のためだ」
父さんはすぐに笑って、俺の頭を軽く撫でた。
「ほら、早く寝ろ。明日、学校だろ」
「…はーい」
いつも通りの会話。
いつも通りの夜。
なのにその夜、俺はなぜか寝つけなかった。
窓の外の風の音が、いつもより大きく感じた。遠くの犬の鳴き声が、妙に長く続いた。
(……父さん、変だったな)
そう思っても、理由までは分からない。
自分はまだ子どもで、大人の事情はよく分からない。
だからとりあえず、明日の学校のことを考える。
明日は苦手な算数の授業がある。頑張らないと。
そんな事を思いながら布団の中で目を閉じる。
窓の外の光はもう消えて、夜は静かだった。
翌朝も、窓の外の光で目が覚めた。
昨日と同じように、空は青くて、太陽は高い。街もいつも通りに見える。
――いつも通りに、見えた。
「暁、朝ごはんできたよ」
母さんの声。皿の音。パンの匂い。
それだけが、昨日と同じで。
父さんはもうネクタイを結んでいて、タブレットを見ていた。画面の隅に、赤い文字がいくつか並んでいる。英語でもない、アラビア語でもない。よく分からない記号みたいな文字。
父さんは俺に気づいて、笑った。
笑って――すぐに視線を画面に戻した。
「今日は、学校だな」
「うん」
「帰りはいつも通りだ。寄り道するなよ」
「しないよ」
母さんが少しだけ眉を寄せる。
「暁、もし道が変だったら、運転手さんの言う通りにしてね。分かった?」
「わかった」
“道が変だったら”。
そんな言い方を、母さんは今までしなかった。
(何かあるのかな)
でも、質問はしなかった。
そういう“空気”が、朝食のテーブルに薄く広がっていたから。
通学のタクシーは、いつも通り時間ぴったりに来た。
専属のサービスで、運転手は固定。俺の名前も学校も知ってる。
「サバーフ、キョウ」
運転手がそう言って軽く手を上げた。
“おはよう”のアラビア語。俺は少しだけ得意げに返す。
「サバーフ。ミスター。元気?」
「ああ、元気だよ」
俺は運転手のことをミスターと呼んでいる。理由は特にない。彼もこの呼び方を気に入っているので、このままずっと続いていた。
俺はこのミスターとの通学の時間が好きだった。俺がアラビア語の上達が早かったのは、彼にアラビア語を通学時間に色々と教えてもらっていたことが大きい。代わりにミスターにも日本語を教えていた。
でも日本語は難しいようで、簡単な言葉なら喋れるようにはなったが、まだまだ会話するには程遠かった。
それでも、ミスターはいい人なので俺は大好きだった。
車は街を抜けて、学校へ向かう。
窓の外の景色が流れる。屋台、白い壁、乾いた木。遠くの工事現場。父さんが関わってるかもしれない現場。
……いつもと違うのは、人が少ないことだった。
いつもなら朝から賑やかな通りに、空白がある。
シャッターが閉まっている店。交差点に立っている警備員。普段見ない車両。
ミスターは今日は無口だった。
いつもなら軽口を叩くのに、今日は前だけ見て、ラジオの音量も小さい。
「ミスター、今日どうしたの?あんま喋らないけど」
その質問に、ミスターは俺の方を見て笑いながら答える。
「いや、なんでもないさ」
そう言うミスターはその後も喋らなかった。
学校に着く頃には、俺も口数が減っていた。
授業は普通だった。
英語の算数。理科。社会。
友達と呼べるほどじゃないが、挨拶する相手はいる。
色んな国の子がいるから、誰かが少し変でも気にしない空気がある。
でも、先生が何度か窓の外を見た。
校庭の向こう――遠い方から、何かが来るみたいに。
昼休み、校内のざわめきが少し変わった。
誰かが「外でデモがあるらしい」と言って、別の誰かが「大丈夫だよ、ここは安全だよ」と笑った。
“安全”。
その言葉が、昨日からやけに引っかかる。
授業が終わる頃、校内放送が流れた
父さんと同じ言葉。
帰りの車に乗った瞬間、ミスターは言った。
「キョウ。シートベルト、しっかりしめて」
「うん」
車が動き出す。
いつもの道――のはずが、途中で曲がった。見慣れない路地に入る。遠回り。小さな店が並ぶ裏道。
「いつもの道じゃない」
俺が言うと、ミスターは短く答えた。
「今日は、こっちだ」
「なんで?」
ミスターは一瞬だけ言葉を探してから、口を開いた。
「……町の方で問題が起きてる。危険だから、裏道を使う」
「…問題?どんな?」
「いや、まだ分からない。それでも、念のためにな」
問題。危険。念のため。昨日から、やけにその言葉が気になる。ふと、窓の外をみると、遠くの方に黒い煙が見えた。
最初は雲だと思った。でも雲はあんなふうに真っ直ぐ立たない。
次の瞬間。
ドン、と腹の底に響く音がした。
空気が揺れた。車の窓がわずかに震える。
俺は体が固まる。
「なに、今の……?」
ミスターはハンドルを握りしめて、短く言った。
「……大丈夫だ。大丈夫。家に向かうよ」
その言葉の直後、別の音が重なった。
パン、パン、パン――乾いた連続音。
銃声という言葉を、俺はその時知らなかった。
でも、体が“危ない音”だと分かった。
車が急にスピードを上げる。
交差点で人が走っている。荷物を抱えている。誰かが泣いている。
今まで見てきた“この国の色”が、一気に濁っていく。
(嘘だろ)
頭の中で、何度もそう言う。
でも目の前の景色は嘘をやめない。
角を曲がった先で、道路が塞がれていた。
車列。叫び声。誰かが手を振っている。
ミスターが舌打ちして、急に車を寄せた。
「降りるよ」
「え?」
「ここからは走るぞ。家はもうすぐそこだから」
ミスターはドアを開け、俺の手を掴んだ。
強い力。いつもの優しいミスターじゃない。
俺は頭が追いつかないまま、車から降りた。
熱い空気。砂。遠くの煙。
そして――また、乾いた音。
パン。
俺は反射でしゃがみ込んだ。
ミスターが俺の襟を掴んで引き上げる。
「走るんだ!」
走った。
ただ走った。
何が起きているのか分からないまま、足だけが勝手に動く。
途中、父さんの現場の方角が見えた。
工事現場の辺りから、煙が出ている気がした。
胸がぎゅっと縮む。
(父さん……?)
走りながら、母さんの顔が浮かんだ。
“今を大切にしないとね”。
昨日の言葉が、嫌な形で頭に刺さる。
家の近くまで来た時、ミスターが急に立ち止まった。
角の向こうから、別の声が聞こえる。
怒鳴り声。
叫び声。
そして、また乾いた連続音。
ミスターは俺を壁際に押し付けるみたいに隠し、低い声で言った。
「キョウ。ここにいて。動かないように、静かに」
「……なんで?何かあるの?」
そう言って叫び声の方に向かおうとする俺をミスターが慌てて止める。
「危ない!」
ミスターの声は、聞いたことがないほど荒かった。
その荒さで、俺はようやく理解する。
――これは、いつもの日じゃない。
その時、家の方角から人影が走ってきた。
母さんだった。
母さんは俺を見つけるなり、顔が歪んだ。
「暁!」
母さんが俺を抱きしめる。
心臓の音が早い。母さんの体が震えている。
「大丈夫!?怪我してない!?」
「してない……何が起きてるの……?」
母さんは俺の肩を掴んで、目を見て言った。
「暁、よく聞いて。今、町で大変なことが起こっているの。今から急いで家に帰って、大使館が保護のための迎えの車を寄越してくれたから、それを待ちましょう」
母さんの顔が、見たことないぐらい真剣だった。それだけで、とても大変なことなんだと理解した。ミスターが辺りを警戒しているように見廻している。俺は1つだけ、気になったことを聞いた。
「父さんは?」
その言葉を聞いた瞬間、母さんの目が潤んだ。一瞬だけ、本当に一瞬だけ、その奥に諦めに似たものが見えた。それでも母さんは、無理に笑った。
「……お父さんは、先に大使館に向かったわ。きっと、あとで合流できる」
"きっと"、という言葉が、ほんの少しだけ揺れていた。
その揺れに、俺は気づかないフリをした。気づいてしまうと、足が動かなくなる気がしたから。
「…そう、なんだ」
それ以上、俺は聞けなかった。母さんが言う。
「だから、急いで帰りましょう。きっとまだこの辺りは――」
母さんの言葉が途切れた。
母さんの視線が、俺の後ろの路地へ移る。
俺も振り向いた。
そこにいたのは、見たことのない男たちだった。
顔を布で覆い、手に黒い何かを持っている。
それが“銃”だと、俺はその瞬間に理解した。理解してしまった。
ミスターが一歩前に出た。
何かを叫んでいる。必死の声。彼らは関係ない、とかそんな言葉が聞こえた気がするが、よく聞き取れなかった。ミスターの言葉など関係ないように、男たちは笑ったように見えた。
布のせいで表情は分からないのに、笑いが伝わってくる。
母さんが俺を後ろに押しやる。
その動きが、あまりにも早かった。
「暁、下がって!」
母さんの背中が、俺の視界を塞ぐ。
小さい俺から見えるのは、母さんの肩と、その向こうの男たちだけ。
世界が、ぎゅっと狭くなる。音が消える。母さんが何かを叫んでいる。それを見て男たちが、銃を持ち上げた。
母さんが、俺を覆いかぶさるように抱きしめる。
(やめろ)
声が出なかった。足も動かなかった。
次の瞬間、乾いた音が鳴った。
何度か、短く。母さんの体が揺れた。俺を抱く、母さんの力が抜けていく。俺は息ができなくなった。
喉が、胸が、固まる。泣き声も出ない。
母さんが、ゆっくりとずり落ちるように倒れた。
その体から、赤い液体が大量に出ている。それが血だと理解するのに時間がかかった。
母さんが、俺の方を見た。目が合った。
母さんは、笑っていた。必死に。
そして、言った。
「…暁、ごめんね。あなたをひとりに、しちゃう…」
「…それでも、お願い…。…生きて…。…何としても、生き延びて…」
そう言って、母さんの瞳から、光が消えた。
きっと、その言葉は、最後の祈りだった。
祈りで、願いで、——呪いだった。
◇
そのあと、俺は引きずられた。
男たちに腕を掴まれて、どこかへ連れて行かれる。
ミスターの姿は見えなかった。声も聞こえなかった。
気づけば、暗い建物の中に子どもが集められていた。
泣いている子。黙っている子。震えている子。
俺は、震え方を忘れたみたいに固まっていた。
男たちが言った。
分かる言葉と、分からない言葉が混ざっている。
でも、意味は分かった。
“ここで死ぬか”
“兵士になるか”
子どもに向かって、そんな選択肢を投げる。
——兵士になる。
その意味を、俺は子どもながらに理解していた。兵士は戦う。戦うということは、誰かを撃つ。さっき、母さんを撃ったあの男たちと、同じことをするということ。
分かっていた。分かっていて、それでも。
俺は、母さんの最後の目を思い出した。俺を見て、笑った母さん。光が消える瞬間まで、俺の名前を呼んだ母さん。
――生きて。生き延びて。
その言葉を、今ここで裏切ったら。母さんは、何のために死んだことになる
胸が痛い。痛いのに、言葉が俺を引っ張る。その言葉を、裏切るわけにはいかなかった。
俺は口を開いた。声は小さかった。けれど、確かに言った。
「……兵士になる」
男たちが、満足そうに頷いた。
その瞬間、何かが終わった気がした。そして、何かが始まった。外の世界はまだ燃えている。
遠くでまた、乾いた音が鳴っていた。
俺はその音を聞きながら、心の中で繰り返す。
(生き延びる)
それだけが、今の俺に残された約束だった。それだけが、俺の全て。だから、俺は決めた。これからの生き方を。ただひたすらに、生き延びることを。何としてでも。
その決意が――皆月暁の、終わりと始まりだった。
過去編は一旦3話ぐらいですかね