扉の向こうは、青い世界だった。
床も、壁も、天井も、全てが氷で出来ている。厚い氷の奥に、ヨツンヘイムの燐光が滲んで、城全体が内側から、ぼんやりと青白く光っていた。吐く息が、白く凍っては砕ける。足音が、氷の回廊に何重にも反響して、どこまでも遠くへ響いていく。
「うわぁ……綺麗……」
シリカが思わず声を漏らした。その肩で、ピナも同意するように、きゅる、と鳴く。
「綺麗なのは見た目だけだぞ。この城、中には霜の巨人がうようよしてるからな」
キリトが、腰の剣の位置を直しながら言った。背中には、今日は二本の剣がある。一本は見慣れた黒い片手剣。もう一本は、リズが鍛えたという細身の剣だ。
「じゃあ、改めて編成の確認だ。俺たち七人で一パーティ。アルバはソロで、レイドとして連結する」
「オーケー」
俺はウインドウを開いて、レイドの表示を確認した。七人のHPバーが並ぶ第一パーティの下に、俺一人の名前だけがぽつんと表示された第二パーティ。
「アルバ君、本当に一人でいいの?」
アスナが心配そうに聞いてきた。俺は肩を竦めながら応える。
「むしろ一人の方がいいんだよ。俺は基本的に遊撃に回る。前衛が詰まったら横から崩す、後衛が狙われたら割り込む。パーティの陣形に縛られねぇ駒が一つあった方が、お前らも動きやすいだろ」
「それは、そうだけど……」
「それに」
俺は、七人のHPバーの並びを指差した。
「最初から思ってたけど、お前らのパーティ脳筋すぎねぇ?キリト、クラインさん、リーファ、リズ、シリカ。回復はアスナ、遠距離はシノンがいけるけど、攻撃魔法撃てるやつがほぼいねぇじゃねえか」
俺の指摘にキリトを含めたSAO生還者の各員が苦笑いをする。
二週間前、初めてこいつらの戦い方を見た時から、気になっていたことだった。全員が近接戦闘タイプ。恐らく、SAOは魔法の存在しない世界だったと聞いているので、その名残だろう。剣が通らない敵が出てきた瞬間、このパーティは手詰まりになる。といっても、ソードスキルには属性ダメージも乗るから何とかなるにはなるが、絶対にメイジ寄りのメンバーがいた方がいい。
だから俺は、この二週間、剣のスキルと並行して、攻撃魔法のスキルを徹底的に上げた。シルフの得意とする風属性の攻撃魔法を重点的に、各属性の攻撃魔法も。ついでに、片手剣のソードスキルもいくつか覚えた。構えさえ正しければ、システムが勝手に体を動かしてくれる剣技。最初は他人に手足を操られているようで気持ちが悪かったが、慣れれば使い道はある。
——使い方次第では、とんでもない使い道が。
「それで、あんなに詠唱を覚えてたんですね」
リーファが、呆れ半分、感心半分の顔で言った。
「二週間であんなに詠唱を覚えるなんて…。普通、何か月もかけて覚えるものなんですよ?」
「ま、言葉を覚えるのは慣れてっからな。要領は外国語を覚えるのとあんま変わんねぇわ」
「さすが、マルチリンガルは違うわね」
シノンがからかう様に言う。コノヤロ、と一瞥しておく。その視線に山猫が肩を竦める。
「頼りにしてるよ、アルバ」
キリトが、拳を軽く突き出してきた。俺は、それに自分の拳を当てた。
「任せとけ。俺がお前らの穴を埋めてやるよ」
◇
第一層は、力押しで抜けた。
回廊を塞ぐ霜の巨人たちを、キリトたちの前衛が正面から受け止め、俺が側面から魔法で削る。ボス部屋に待ち構えていたのは、一つ目の巨人——サイクロプスだった。その巨大な単眼を、シノンの矢が三本立て続けに射抜き、怯んだ隙に俺の風の刃が眼球を抉る。視界を失って暴れる巨体を、六人の剣が一斉に斬り刻んだ。
「ナイス、シノン!」
「当然」
シノンが、弓を下ろしながらちらりとこちらを見た。俺も目だけで応える。言葉は要らなかった。
問題は、第二層だった。
◇
ボス部屋の扉が開いた瞬間、キリトが舌打ちするのが聞こえた。
「……二体か」
氷の大広間の奥に、二つの巨体が並んでいた。
牛の頭に、人の体。身の丈、八メートルはあるだろうか。筋肉の塊のような腕に、それぞれ巨大なバトルアックスを握っている。
右は、全身が墨を流したように真っ黒。左は、全身が溶かした金のように輝いていた。
「ミノタウロス……!」
アスナが、細剣を構える。
二体が、同時に咆哮した。空気が震える。氷の天井から、細かい氷片がぱらぱらと降ってくる。
「散開!まずは黒からだ!」
キリトの号令で、七人が動いた。前衛が黒いミノタウロスに殺到し、剣を叩き込む。黒の巨体に、次々とダメージのエフェクトが弾ける。HPバーが、目に見えて減っていく。
——順調すぎる。
俺は、部屋の側面を走りながら、二体の動きを観察していた。金の方が、動かない。黒が攻撃されているのに、その背後で、じっと構えたままだ。
黒のHPが、三割ほど削れた、その瞬間だった。
黒が、大きく跳び退った。代わりに、金が前に出る。巨大な斧が唸りを上げて振り下ろされ、キリトたちが慌てて飛び退く。金が前衛の攻撃を一手に引き受ける、その後ろで——黒が、床に座り込み、両手を膝に置いて、目を閉じた。
黒の体を、淡い光が包む。HPバーが、みるみる回復していく。
「瞑想……!?回復してる!」
リズが叫んだ。
「なら、金を先に——くっ!」
キリトの剣が、金の胴を捉えた。だが、弾かれた。ダメージのエフェクトが、ほとんど出ない。クラインの刀も、リーファの長剣も、同じだった。金色の皮膚が、刃を受け付けない。
「嘘だろ、硬すぎる!」
「物理耐性が高すぎる!あの金色、物理攻撃がほとんど通らない!」
キリトの判断は速かった。
「黒は逆に、魔法耐性が高いはずだ。物理に強い金と、魔法に強い黒。片方を削ると、もう片方がカバーに入って、削られた方は瞑想で回復する——そういうギミックだ!」
「なにそれ、ずるい!」
シリカが悲鳴を上げる。
金の斧が、床を叩いた。衝撃波が円形に広がり、前衛のHPが一斉に削れる。アスナの回復魔法が追いかけるが、削れる速度の方が速い。
俺は、壁際を走りながら、詠唱を始めた。
口の中で、音を刻む。正確に、順番通りに。俺の周囲に、翠色の光の文字が浮かび上がり、回転する。
詠唱が、完成した。
「——喰らえ」
突き出した掌から、圧縮された風の刃が迸った。空気を裂く甲高い音。刃は金の脇腹を正確に捉え——今度は、はっきりとしたダメージのエフェクトが弾けた。金のHPバーが、ぐらりと削れる。
「通った……!」
「魔法なら通る!けど——」
キリトの言葉の続きは、見なくても分かった。俺一人の魔法では、火力が足りない。金のHPは膨大だ。俺が一発撃つ間に、前衛は衝撃波で削られ続ける。それに、金を削れば、今度は回復を終えた黒がカバーに入って金が瞑想を始めるだけだ。
いたちごっこ。こいつらを倒すには、片方を、もう片方が庇う前に一気に仕留めるしかない。
なら——庇わせなければいい。
「キリト!」
俺は、走りながら叫んだ。
「金のヘイトは、俺が全部持っていく!お前らは黒に集中しろ!」
「全部って……一人でか!?」
「このままじゃジリ貧だろ!俺が金を引き剥がすから、その間に黒を潰せ!」
言い終わり、二発目の詠唱を完成させる。
風の刃が、金の顔面に叩き込まれる。金が、牛の頭をこちらに向けた。赤い目が、俺を捉える。十分にヘイトを稼げたようだ。
金が、斧を振りかぶって突進してくる。
「来いよ、デカブツ。二人っきりのダンスタイムと洒落込もうぜ」
俺は、真正面からそれを待った。
振り下ろされる斧。直撃すれば、俺の紙のようなHPなど一撃で消し飛ぶ。刃が、頭上に迫る——その寸前、半歩だけ、横に流れる。斧が、俺の耳のすぐ横を掠めて、氷の床を砕いた。飛び散る氷片の中で、次の詠唱を始めている。
避ける。唱える。撃つ。また避ける。
GGOで、弾道予測線を読んで弾を躱していた時と同じだ。こいつの斧の軌道は、振りかぶる肩の角度と、踏み込む足の位置で、全部読める。単純な分、銃弾より遥かに読みやすい。
横薙ぎの一撃を、身を沈めて潜り抜ける。潜りながら、腰の剣を抜き、金の膝裏を斬りつける。物理だから、ダメージはほとんど入らないが問題ない。狙いは、こいつの注意を、一瞬でも長く俺に縛りつけておくことだ。
金を、部屋の隅へ、隅へと誘導していく。黒からできるだけ遠くへ。
「——今だ!黒に全力!」
背後で、キリトの声が響いた。
七人の剣と弓が、一斉に黒へ殺到する。黒のHPが、みるみる削れていく。三割を切った。黒が、跳び退こうとする。庇ってくれるはずの相棒を、探すように首を巡らせる。
だが、金は来ない。金は、部屋の反対側で、白い髪の妖精一匹を追い回すのに夢中だ。
「させるかよ」
俺は、金の鼻先に、四発目の風の刃を叩き込んだ。金が、怒り狂った咆哮を上げる。俺だけを見ている。
カバーを失った黒は、それでも床に座り込み、瞑想を始めた。だが、それはもう、ただの的だった。
「シノン!」
「分かってる!」
瞑想で無防備になった黒の目に、シノンの矢が突き立つ。回復が中断される。そこに、キリトの、クラインそんの、リーファの、アスナの、リズの、シリカの攻撃が、雪崩のように降り注いだ。
黒いミノタウロスが、断末魔の咆哮とともに、無数のポリゴンとなって砕け散った。
「よっしゃあ!」
クラインの雄叫び。
——だが、まだ終わっていない。
相棒を失った金が、狂ったように吼えた。
全身の金色が、ぎらりと輝きを増す。怒り状態だ。斧の速度が、一段上がった。
「くっ——」
さっきまでとは、まるで別物だった。振り下ろし、横薙ぎ、斬り上げ。その間隔が、ほとんどない。避けた斧の余波が、俺のHPをじりじりと削っていく。
背後を一瞥する。七人は、黒への総攻撃の直後で、まだ態勢を立て直せていない。ソードスキルの硬直が解けきっていない者もいる。アスナが、削れた前衛のHPを必死に回復している。
あと数秒。こいつらが動けるようになるまで、あと数秒、俺一人でこいつを縛っておく必要がある。
だが——避けて、唱えて、撃つ。それでは、もう間に合わない。金の牛の怪物の攻撃は、速度を増している。詠唱が完成する前に、斬られる。
なら。
(……ぶっつけ本番だが、やるしかねぇか)
ログイン二日目、一人で魔法とソードスキルの練習をしていた時に、思いつきでやってみたところ、成功した技。それからある程度の成功率になるまで練習したが、まだ完璧じゃない。外せば、硬直したまま、あの斧を真正面から喰らう。
だが、今やらなきゃ、後ろの七人が崩れる。
「よう、怪物。とっておきをくれてやるよ」
俺は、剣を構えた。片手剣のソードスキルの始動の構え。刃に、淡い翠色の光が宿る。
システムが俺の体を掴んだ。
踏み込みが、勝手に加速する。剣が、勝手に軌道を描く。体は、もう俺のものじゃない。システムに預けた。
——だから、口は空いている。
システムアシストに体の全てを預け、俺は意識の全てを口に持っていく。ソードスキルを放ちながら、初期の風魔法、《ウインドブレード》の詠唱を行う。一音一音、正確に紡ぐ。システムが認識できる速度で。剣が金の胴を斬り上げ、返す刃が肩口を薙ぐ。その傍らで、魔法を放つ時に浮かぶ文字が周囲に浮かんでいる。
このソードスキルの所要時間は、一・八秒。この魔法の詠唱時間は、一・七秒。
技の最後の一閃が、金の脇腹を抉る。翠の光が弾ける。
そして、技が終わる。
体が、硬直する。本来なら、ここで無防備な瞬間が生まれる。金の斧が、その隙を見逃さずに振りかぶられる。
その瞬間——最後の一音を、唱え終えた。
技の終わりの姿勢で、俺の左手は、ちょうど金の顔面に向いている。その左の掌から、風の刃が迸った。
至近距離から叩き込まれた風が、振りかぶった金の顎を撥ね上げる。斧の軌道が逸れる。俺の頭上を、空振りした刃が通り過ぎていく。
ソードスキルによる硬直が、魔法の発動によりかき消され、俺の体は自由に動けるようになる。
その時にはもう、俺の剣は、次の技の構えに入っていた。
ソードスキルと魔法。その繰り返しによる擬似的な連続攻撃。
剣が金の皮膚を裂き、その硬直を風の刃が埋める。風が金を仰け反らせ、その隙に次の剣が叩き込まれる。剣が魔法を連れてきて、魔法が剣を連れてくる。止まらない。途切れない。金に、斧を振るう暇を与えない。
金の巨体が、たたらを踏んだ。一歩、また一歩と、後退していく。物理耐性の分厚い皮膚に、ソードスキルの属性ダメージと、風の刃が、交互に刻まれていく。HPバーが、ごりごりと削れていく。
「……なに、あれ」
背後で、リズの呆然とした声が聞こえた。
「硬直を……魔法で埋めてるのか……!?」
四連目。五連目。
視界の端で、MPのバーが、恐ろしい速度で減っていく。風の刃一発ごとに、ごっそりと。
六連目の風を放った瞬間、MPバーが、空になった。
これ以上は、続かない。
「MP切れた!交代だ!」
最後の風で金を大きく仰け反らせ、その隙に、俺は後ろへ跳んだ。
入れ替わるように、態勢を立て直した七人が、雪崩れ込んでくる。
「待たせた、アルバ!」
「遅ぇよ!」
「ここからは全員のソードスキルで金を叩く!」
キリトの叫びと同時に、七人の剣と弓が、光を纏った。
色とりどりの光の軌跡が、金の巨体に叩き込まれていく。確かに、通っている。俺が削った分と合わせて、金のHPが、目に見えて減っていく。
だが、ソードスキルには、硬直がある。七人が交代で技を叩き込んでも、その隙間に、金は斧を振るう。
俺は、その隙間を埋めた。MPは空だ。もう魔法は撃てない。だから、剣だけで。
誰かが硬直した瞬間、その前に割り込んで、斧の軌道を剣で逸らす。受け止めるんじゃない。刃の腹に剣を当てて、軌道をほんの数センチずらす。それだけで、致命の一撃が、掠り傷に変わる。
金のHPが、三割を切った。
あと少し。あと少しなのに——七人のソードスキルが、ほぼ同時に途切れた。全員が、一斉に硬直に入ってしまったのだ。金の斧が、高々と振りかぶられる。
俺は、斧を逸らした直後で体勢が崩れている。MPは、ポーションを飲む暇すらなく、空のまま。割り込めない。間に合わない。
その時だった。
キリトの右手の剣が、赤い光を放って、金の胴を斬り上げた。ソードスキル。そして、その技が終わる——本来なら硬直に入る、その刹那。
キリトの左手の剣が青い光を帯びる。ソードスキル発動の光。
左手の剣が抜き放たれ、今度は青い光を纏って、金の肩口を斬り下ろした。右手の技の硬直を、左手の技が上書きして、消している。そして左の技が終わる刹那、また右が、光を放つ。
途切れない。硬直がない。光の軌跡が、次から次へと、金の巨体に刻まれていく。
二本の剣が、嵐のように、金色の巨体を斬り刻む。
だが、あと少しで削りきれる、というところでキリトの連続攻撃が終わる。今度こそスキルディレイによる硬直。金ミノタウロスがにやりと笑い、大斧が引き絞られる。その斧を振り抜くその瞬間。
「やあァァァッ!」
後衛にいたアスナが、雄々しき雄叫びを響かせながらその細剣を五回突き立てる。
そのアスナの攻撃でHPゲージは今度こそゼロになり…。
甲高い悲鳴とともに、黄金の巨体が硬質な音を立てて爆散した。
◇
「おいキリト。なんだよさっきのやつ」
戦闘が終わった後、俺はキリトに聞いた。
キリトは、二本の剣を鞘に収めながら、少し気まずそうに笑った。
「スキルコネクトって、俺が勝手に呼んでるシステム外スキルだ。右と左で交互にソードスキルを繋いで、硬直をキャンセルする。……成功率は、半分くらいだけどな」
「ほー。いいな、今度教えてくれよ」
「それは構わないけど…。ていうかアルバ。さっきのなんだよはこっちのセリフだぞ?何だよアレ」
キリトが、俺の顔をまじまじと見た。
周りの全員が、こくこくと頷いていた。
「何って、見ての通りだよ」
俺は、肩をすくめた。
「ソードスキルの最中は、体は勝手にシステムが動かしてくれる。俺が動かす必要はねぇ。だから、その間に口で詠唱しとく。技が終わって硬直した瞬間に、呪文を完成させて撃つ。撃ってる間に硬直が解けるから、次の技に入る。その繰り返し。お前のさっきのやつの魔法バージョンだよ」
「……簡単に言うけど」
リーファが、頭を抱えていた。
「技の長さと詠唱の長さがぴったり合ってないと成立しないですよね、それ。少しでも詠唱が遅れたら硬直中に魔法が撃てないし、早すぎたら技の途中で暴発するし……」
「ああ。だから、ある程度は試してみたぜ。覚えたソードスキルと魔法の組み合わせをな。で、結局初期のソードスキルと魔法の組み合わせが一番丁度良かったから、そればっかり練習してた。上位の魔法とソードスキルは流石に時間が足んなかったわ」
「それに、剣を振りながら詠唱するってことは、体の動きと口の動きを、別々に制御してるってことでしょう?普通、技の途中で詠唱なんかしたら、どっちかが乱れるわよ……」
「ああ。最初めっちゃ舌噛んだ。でもまあ、何とか形にはなったぜ」
舌を噛んで涙目になりながら練習した日々。といっても二週間だが。
「ただ、MPの減りがえげつねぇ。六連が限界だ。それに、一音でも詠唱を噛んだら呪文は不発。硬直したまま、攻撃を真正面から喰らうし。まあ、ヤバい時用だな、アレは」
「……成功率は?」
キリトが、恐る恐る聞いてきた。
「余裕で五割を切る」
「お前の方がよっぽど無茶じゃないか!」
「お前に言われたくないわ!」
「……名前は?」
ふいに、リーファが聞いてきた。
「あ?」
「技の名前ですよ!お兄ちゃんのがスキルコネクトなら、アルバさんのは……剣で、魔法を繋ぐから……《スペルコネクト》!」
「…まんまじゃん。まあ、好きに呼べよ」
「やった!決まりですね!」
なぜかリーファが一番嬉しそうだった。
「それにしても、一人であの金ミノタウロスの攻撃を捌き切るなんて。アンタ、本当に今日が初めての本格ボス戦なの?」
リズが、呆れたような顔で言った。
「ALOのはな。似たようなデカブツはGGOでソロで狩りまくったし、慣れてるわ」
「……末恐ろしいわね」
「でも」
振り向くと、シノンが立っていた。
「HP、ギリギリだったでしょ。無茶しすぎ」
「無茶する場面だろ、あそこは」
「分かってるけど、それでも、よ」
シノンの眉間に、皺が寄っていた。心配してくれていたのだ。遠くから、弓を引きながら、ずっと俺の背中を見ていたのだろう。
「……悪かったよ。次は、もうちょい余裕持つ」
「約束よ」
「ああ」
シノンは満足げに頷いて——それから、ふっと表情を緩めて、俺の胸を、拳で軽く叩いた。
「でも——格好良かったわよ、少しだけ」
「……そりゃドーモ。てか少しだけかよ」
「ふふ」
ちょっとだけ、独自解釈が混じってます。ソードスキル中に叫んだりできるんだから、魔法の詠唱もいけるんじゃね?みたいな感じで。実際どうなのかは分からないですけどね。