エキシビション?
今日の放課後
勇人は杉野、カルマ、渚、速水の5人で下校していた。
「うんッ!あ〜!やっと梅雨明けだ~」
「暑くなってきたね!」
「そうね。制服も夏服に変わったし」
「アウトドアな季節ですな!どっか外で遊ばねー?」
「皆んなでソ連軍の格好でもして、遊ぶか!」
「「「「嫌だわ!!!!」」」」
でもな〜梅雨明けって事は、蚊が本格的に動き出す時期でもあるんだよなぁ
「それで、何しよっか」
「じゃ…釣りとかどう?」
「いいね!今だと何が釣れるの?」
「夏はヤンキーが旬なんだ。渚君と速水さんをエサにカツアゲを釣って逆にお金を巻き上げよう!」
「「ヤンキーに旬とかあるんだ…」」
「何すっかなぁ…渚は何したい?」
「じゃあ!海なんてどうかな?」
「え?1人で泳ぐの?」
「勇人?!違うよ!皆んなで泳ごうよ!」
「冗談だって!渚!」
「もーう…けど!良いよ!勇人!」
「ありがとう!渚!」
「「「男同士でイチャつくな!!!」」」
「うん?」
「杉野?どうかしたの?」
スッ…ズバアア!!!!
「ナイスピッチング!キャプテン!」
「ふう…」
あ!野球部の練習か!
「ん?なんだ、杉野じゃないか。ひさびさだな!」
「マジで?!」
「お、杉野じゃん?」
「杉野!」
「こんにちは!」
野球と言えば、もうすぐ夏本番!でも俺はE組に落ちたせいで最後の大会出れないんだよなぁ!!!
「おお〜杉野!」
「何だよ、たまには顔だせよ!」
「あははっ…ちょっとバツが悪りぃよ」
俺もE組に落ちてなかったら、柵の向こう側で杉野の事を見てたのかな?いや…どっちにしろ、俺がE組に落ちる運命は変わらなかったかも、しれないな…
「勇人?」
「凛香?どうかした?」
「勇人は行かなくていいの?」
「ああ!俺は偶に合ってるからな!」
「え?そう言うもんなの?」
野球部の練習を見てると、体を動かしたくなるな〜
「来週の球技大会、投げるんだろ?」
「そーいや、決まってないけど、投げたいな?」
「楽しみにしてるぜ!」
「おう!」
ガシン!!
「しっかし、良いよなぁ…杉野は」
「E組だから毎日遊んでられるだろ?」
「俺ら勉強も部活もだから、ヘトヘトでさ!」
「うん…」
「よせ、傷付くだろ?進学校での部活の両立。選ばれた人間じゃないなら、しなくていい事なんだ」
「…」
「へーえ…すごいね!」
「うん?」
「まるで自分が選ばれた人間みたいだね?」
「うんッ!そうだよ!」
「「「くっ!」」」
「気に入らないか?なら来週の球技大会で教えてやるよ。上に立つ「選ばれた人間と」「そうでない人間」この歳で開いてしまった大きな差をな」
かなり本気だな…これは
「それより…勇人じゃねえか!」
「よ!」
「いや!いるんだったら顔出せよ!」
「偶に顔出してるし、良いだろ!」
「そう言うもんじゃねーだろ!」
野球部のメンバーは杉野の後ろから現れた。勇人の姿を見て普通にツッコミを入れた。
「勇人…」
「進藤!対戦楽しみにしてるよ!」
「…」
え?進藤?なんか固まったんだけど
「死後硬直」
「死んでねえーわ!それより練習に戻るぞ!」
「「「「「「「はい!!!!!!!」」」」」」」
夏の大会も近いしこれ以上邪魔したら、悪いな。
「それじゃ!俺等も帰るか!」
「そうね」
「途中でジュースでも買って帰ろうよ」
「いいね!カルマ君そうしよっか!」
そして5人で再び帰ろうとした瞬間…
「勇人!」
「進藤?」
「一学期期末テスト…」
「え?」
「期末テストで50位内に入れ」
「え?なんで急に…」
「そうすれば…夏体には、まだ間に合う」
「あ…!」
「じゃあな」
「…」
そうだ…期末テストで50位内に入れたら、大野先生が居るD組に戻れる…そうすれば…俺は野球部に戻って最後の大会に出れ…
「勇人!」
「?!」
「ぼーっとしてないで、早く帰ろうよ!」
「お、おう!」
けど…俺は…E組の皆んなと…
「ふむふむ。クラス対抗球技大会ですか。健康な心身をスポーツで養う、大いに結構!ただ…トーナメント表にE組が無いのはどうしてです?」
そう、E組だけが普通にハブられているのだ!
「E組はエントリーされないんだ。1チーム余るって素敵な理由で!」
「そうそう!ただ…その代わりに、大会のシメのエキシビションに出なきゃなんない」
「エキシビション?」
「要するに見せ物さ!全校生徒が見てる前で、それぞれ野球部。女子バスケ部とやらされるんだ」
「なるほど。いつものやつですか…」
「そ!」
ガタッ!!!
「にゅう?」
「俺ら晒しもんとか勘弁だわ。お前たちで適当にやっといてくれや。じゃあな」
「あ、おい!寺坂!」
ガラガラ…ガシャン!
「たく…」
磯貝が止めようとするも。寺坂、村松、吉田の3人が出て行ってしまった。あの3人は体力だけなら全然あるのに。
「野球となりゃ、頼れんのは勇人と杉野だけど。なんか勝つ秘策とねーの?」
「あるぞ!前原!」
「お!やるねえ!勇人!」
「それで勇人?勝つ秘策って?」
スポーツで相手に勝つ方法…それは!これしかない!
「いいか渚!よく聞け「気合い」と「根性」でひたすら練習に打ち込めば、野球部に勝てる!」
「「「「精神論じゃねーか!!!!」」」」
「…杉野?お前はどうなんだ?」
「無理だよ…かなり強ぇーんだ、うちの野球部…特に今の主将「進藤」豪速球で名門高校からも注目されてる。勉強もスポーツも一流とか不公平だよな。だけどさ、勝ちたいんだ。殺せんせー!善戦じゃなくて勝ちたい。好きな野球で負けたくない!野球部追い出されて、E組に来て、むしろその思いが強くなった。こいつらとチーム組んで勝ちた…」
「わくわく!わくわく!」
殺せんせーがいつの間にか、ユニフォームに着替えており、触手には、バットやグローブを始め、様々な野球道具を持っていた。
「お、おう…殺せんせーも野球したいのは、よく伝わったよ…」
「ヌルフフフ!実は先生、一度スポ根ものの熱血コーチをやりたかったんです。殴ったりはしないので、ちゃぶ台返して代用します!」
「用意よすぎだろ!」
「巨◯の星かよ!」
流石に古すぎるか…
「最近の君たちは目的意識をはっきりと口にする様になりました「殺りたい」「勝ちたい」どんな困難にも揺るがずに。その心意気に応えて、殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう!」
「トレーニングですか?」
「ええ!そうです!それと勇人君が言っていた事は決して間違ってはいませんよ。相手に勝つ方法…それは、とにかく練習しかありませんからね!」
殺せんせーが言うなら間違いない!
「まずは、ソ連式の腕立てだな!」
「勇人?一旦ソ連から離れよっか?」
こうして、殺監督のハードな練習が始まった!
そして球技大会当日…
カキーン!
【あーっと!打ち上げた!】
ピイイイ!!!
【センター難なくキャッチ!試合終了!トーナメント3年野球はA組が優勝です!】
流石A組だな…勉強も部活も出来るって、まさに文武両道!
「あーあ…負けた負けた」
「次の試合見て忘れようぜ」
「俺等より良いところ無い奴等が、もっと恥ずかしい目に遭うのをよ!」
いよいよ始まるなぁ…普通に緊張してきた…
【え〜それでは最後に、3年E組対野球部のエキシビジョンマッチを行います!】
「学力と体力を兼ね備えたエリートだけが、選ばれた者として人の上に立てる。それが文武両道だ、杉野」
「…」
コト…コト…コト…
「お前はどちらもなかった。選ばれざる者だ…」
「…」
「締まっていくぞ!」
「「「「「「「おう!!!!!!!」」」」」」」
「おいおい!何であんな気合い入ってんだよ!」
「そーいや、殺監督どこだ?指揮すんじゃねーのかよ?」
「あそこだよ」
「「「「「「「うん???????」」」」」」」
「烏間先生に目立つなって言われてるから、遠近法でボールにまぎれてる。顔色とかでサイン出すって」
「つーかバレんだろ!あれ!」
「逆に目立つだろ!」
ワン!
ツー!
スリー!
ワン!
ツー!
スリー!
「なんて…?」
「勇人!殺せんせーに手振ってやろっか!」
「カルマ!そうだな!」
「「ヤッホー!!せんせー!!」」
「にゅや?!」
「「あはは!!」」
「えっと…殺すきで勝てってさ」
因みに色は「①青緑・②紫・③黄土色」だった
「確かに、俺等にはもっとデカいターゲットがいるんだ!あいつ等に勝てなきゃ、あの先生は殺せないよな!杉野!勇人!」
「磯貝の言う通りだ!」
「よっしゃ!殺るか!」
「「「「「「「おう!!!!!!!」」」」」」」
「ヌルフフフ!さあ!味わわせてやりましょう!殺意と触手に彩られた、地獄野球を!」
こうしてE組対野球部の試合が始まった!
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E組打順と各ポジション
1番木村・三塁手
2番潮田・捕手
3番磯貝・遊撃手
4番杉野・投手
5番前原・二塁手
6番岡島・右翼手
7番千葉・一塁
8番赤羽・左翼手
9番井上・中翼手
一塁コーチ・菅谷
三塁コーチ・三村
【さぁ!一回の表E組の攻撃、1番サード木村】
ズバアアン!!!
「ストライク!」
はっや!!!!
「やっぱ速えーな!超中学級は」
「140km出てるらしぜ」
「え!140?!プロ並みじゃねーか!」
【E組木村棒立ち!バットぐらい振らないとカッコ悪いぞ~!】
「いやーすげーアウェイ感…」
ワン!
ツー!
スリー!
「…(了解)」
色は❶赤・❷紫・❸ピンク
「しゃー!行くぞ!」
【おっと、バッター気合十分だ!】
そうさ!気合は大事な事だからな!
「フン!一回表3人で終わらせて、裏に10点取ってコールドだな!」
野球部顧問の寺井先生は完全に舐め切っている様だ。ベンチで余裕の表情を浮かべている。
「(雑魚が…)」
スッ!
【さぁ!進藤君。第2球目…投げた!】
ダン!
「何?!」
【あーっと!セーフティーバントだ!】
「木村君はE組一の俊足。意表を突けば楽々セーフにできるでしょう」
シュウ!
「セーフ!」
「しゃあ!」
【セーフ?!これは意外!】
「チッ!こざかしい…」
『2番バッター潮田君』
ワン!
ツー!
スリー (・_・)
カン!
「なっ!」
【あっと!ブッシュバントだ!】
「…くっそ!」
「にゅるフフフ!強豪とはいえ中学生。バント処理はプロ並とはいきませんねぇ!」
【何処にも投げられない!なんと!ノーアウト一塁二塁!】
「…(なっ、なにぃ…?!)」
「お、おい…なんか変な流れになってきたぞ?」
「どうなってんだよ…?!」
ガタッ!
「バカな!進藤級の速球を狙った場所に転がすのは至難の業だぞ…」
寺井先生も驚きの余り、ベンチの椅子から立ち上がってしまっていた。
「へっ!どうよ!こちとら…アレ相手に練習してんだぜ」
「そうそう!あんな練習相手、プロ野球選手でもキツイぞ!」
「ヌルフフフ!」
前原が言う「アレ」相手とは…
「ひーやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ゴオオオ!!!!!!!
「殺ピッチャーは300kmの球を投げる!」
シュバババ!!!!シュバババ!!!!
「殺内野手は分身で鉄壁の守備を敷く!」
「そちらがどうぞ!」
「いえいえ!そちらがどうぞ!」
「殺キャッチャーは「ささやき戦術」で集中を乱す!」
スッ…
「速水さんに内緒で、中村さんと渋谷デート…凄い笑顔でしたね!勇人君…」
「え?!ちょっと!殺せんせー!」
別にデートではない!
「もうダメ…」
「はぁ…はぁ…」
「水分補給したい…」
流石に練習がハード過ぎて皆んなクタクタだ…
「次は対戦相手の研究です!この3日間竹林君に偵察をしてきて、もらいました」
「面倒でした」
タン!
「進藤の球速はMAX14.5km。持ち球はストレートとカーブのみ。練習試合も9割型ストレートでした」
「あの剛速球なら、中学レベルじゃストレート一本で勝てちゃうのよ!」
「正直言って進藤は高校野球でも十分通用するよ。アレは」
てか中学生で140って…本当バケモンだよ進藤…
「そう!逆に言えば、ストレートさえ見極めれば、こっちのもんです!」
「140Kmを見極める?!」
「ええ!そうです!」
スッ!
「というわけで!ここからの練習は、先生が進藤君と同じフォームと球種で、進藤君と同じに、とびきり遅く投げましょう!」
「「「「「「え?????」」」」」
さっきまでの先生の球を見た後では…
「…」
彼の球など、止まって見える…
コン!
【あーっと!またバント!】
「従ってバントだけなら充分なレベルで修得できる」
トッ…
【フェ、フェア!ライン上ピタリと止まってしまった!3番磯貝セーフ!ま、満塁だ!ノーアウト満塁!】
「あっ、あ…」
【ちょっ、調子でも悪いんでしょうか!進藤君!】
進藤も余りの予想外の展開に混乱を隠し切れていなかった。
『4番ピッチャー杉野君』
「杉野っ…!」
ワン!
ツー!
スリー!!!!!!!!
「プレイ!」
スッ…
【さ、さあ!試合再開!おーっと!またもバントの構えだ!】
「?!」
ドクン!
「(な…何なんだ、こいつら!)」
ドクン!
「(俺が今やってるのは…野球なのか?)」
進藤が明らか動揺している。杉野!ここで一気に決めたれ!
「(確かに…武力でお前には、かなわねー)」
「くっ!」
ガッタ!シュウ!
「(けど、たとえ弱者でも狙いすました一刺しで、巨大な武力を仕留める事が…)」
スッ!!!
「出来る!」
ダン!!!!
【打ったあー!打球は右中間を深々と破る!二塁ランナーを始め一塁ランナーもホームへと向かう!】
「バ…バカな…」
【打った杉野も三塁へ!走者一掃のタイムリースリーベース!】
ザッアア!
「よっしゃ!」
ナイバッチ!杉野!
【な、なんだよこれ…予定外だ。E組3点先制…】
実況の人も完全に困惑してるな!
「マズいぞこれは…」
「顔色が優れませんね。寺井先生…お体の具合が悪いのでは?」
「!?」
「すぐに休んだ方がいい、部員達も心配のあまり力を出せていない」
「り、理事長!?いっ…いや!この通り私は元気で…」
「病気で良かった。病気でもなければ、こんな醜態を晒す指導者が、私の学校に在籍しているはずがない…」
「あ…」
ドサッ!
「あぁ…やはり酷い熱だ!寺井先生を医務室へ」
「は、はい!」
「その間、監督は私がやります」
「な、何を…」
スッ…
「なぁに、少し教育を施すだけですよ…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
男子野球が先制点を奪っていた頃、女子バスケの方では…
「いや〜惜しかった!」
「だね!次リベンジ!」
「ごめんね…私が足引っ張っちゃった…」
「そんな事ないって!」
「気にすんなって!」
どうやら女子バスケの方は、茅野が足を引っ張って負けてしまったようだ…ただ片岡さんや中村さんは、特に気にしてないらしい
「女バスのブルンブルン揺れる胸を見たら怒りと殺意で目の前が真っ赤に染まって…」
「茅野っちのその巨乳に対する憎悪はなんなの!?」
「だって…」
「「「「「「あはは!!!!!!」」」」」」
「さて…男子はどーなっているかな?(後勇人…)」
「速水さん?もしかして…勇人君の考えてた?」
「なっ!べ、別に考えてなんかないわよ!」
「え〜本当?」
「ちょっと!神崎さん!」
その頃…野球グランドの方では、ラスボスが登場していた。
トコ…トコ…トコ…
「理事長先生…」
野球部がマウンドで集まっている所に、理事長が不気味な顔を浮かべながら、向かっていった…
「一回表からラスボス登場かよ!」
「前原!ちゃんと今のうちに素振りしとけよ!」
「おう!分かってるぜ!勇人!」
「理事長か…」
なんか…嫌な予感がするな…
【え!今入った情報によりますと野球部顧問の寺井先生は試合前から重病で…選手達も先生が心配で試合どころでは、なかったとのこと!それを見かねた理事長先生が急遽指揮を執られるそうです!】
「「「「「おおおおおお!!!!!」」」」」
『5番セカンド前原君』
【さあ!試合再開です!ここからどのように…こっ!これは何だー?!全員内野守備!】
なっ!全員内野守備って…バントを完全に封じ込めるつもりだな…これは
「バントしか無いって見抜かれてるな…」
「つってもダメだろ!あんなに至近距離で!そうだよな!勇人!」
「いや、ルール上ではフェアゾーンならどこ守っても自由なんだ、審判がダメだと判断すれば別だけど、審判の先生は向こう側だ。はっきり言って期待できない…」
理事長…勝つ為には、ここまでするのか…
「さて…流れをリセットしよう。E組の杉野君だが、市のクラブチームに入団したそうだ。彼なりに努力しているんだね。だが、それがどうした!誰でも努力はしている。君達のような選ばれた人間には宿命がある。これからの人生で、ああいう相手を何百何千と踏み潰して、進まなくてはならないんだぞ。野球をしてると思わない方がいい。何千の中のたった十人程を踏み潰す作業なんだ。さぁ…作業を始めよう」
スッ…ズバアアン!!!!!!!
「うわたっ!」
ダン!
【打ち上げた!内野のプレッシャーにビビったか前原!これでワンアウト!】
「ふう…」
おいおいマジかよ!球速がさっきよりも上がってるやん!
『6番ライト岡島君』
「ええ…」
冗談じゃねぇ!こんなバントじゃ抜けねーよ!どーすんだよ殺監督!
ワン!
ツー
スリー…
打つ手無しかよ!!!!
ズバアアン!!!!
「ストライクスリー!バッターアウト!」
ズバアアン!!!!
「ストライクスリー!バッターアウト!スリーアウト!チェンジ!」
岡島と千葉は手が出ず見逃し三振で終わってしまった…
【あっという間に3アウト!ピッチャー進藤君完全に復調です!】
実況の声も完全に戻っており、試合を見ている本校舎の生徒達も歓声を上げている。
「その調子だ進藤君。球種は4シームのストレートだけでいい、体を大きく使って威圧する様に投げなさい」
「はい!」
「皆にも繰り返すが、これは野球ではない。一方的な制圧作業だよ」
「「「「「「「はい!!!!!!!」」」」」」」
「逆転するぞ!」
「「「「「「「おう!!!!!!!」」」」」」」
流れは完全に向こうに行ったな。
「杉野!」
「勇人?どうかしたのか?」
「流れは完全に向こうに行った、この回大事だぞ!」
「おうよ!」
杉野の変化球は初見でいきなり打つのは難しい。でもストレートの方は厳しいかも知れない。
「勇人?険しい顔してるけど…どうかしたの?」
「渚…リードの事なんだけどさ…」
「リード?」
「ストレートは出来るだけ少なめで、変化球中心に勝負した方がいいと思う」
「え?どうしてそう思うの?」
「相手が変化球を捨てて、ストレート一本に狙いを絞られたら、この試合は必ずこっちが負ける」
「ねえ…勇人?それって…杉野の事信じてないの?」
渚がめちゃくちゃ悲しい目で見てくる…
「渚?俺はこう見えて野球部のレギュラーだったんだぞ?言っちゃ悪いが…杉野のストレートは平均より遅い、本人もそれを自覚しているから、変化球を覚えたんだぞ?」
「それは…そうだけど…」
ん〜渚が納得してくれないな…
「良いって渚!勇人の言う通りだ!」
「杉野…」
「心配すんなって!一緒に変化球の練習をしたから渚も知ってるだろ!自信はあるからさ!」
「分かったよ杉野!」
「おっしゃ杉野!渚!行こう!」
「「おう!!」」
「勇人!」
「うん?あっ莉桜じゃん!」
「頑張ってね!」
「おう!ありがとう!」
「くっ…(ギャル女…)」
この時の速水は中村の事を少し睨んでいた…
『1番レフト橋本君』
「プレイ!」
スッ…
【E組杉野、第一球投げた】
シュウ!ズバン!
「ストライク!」
「ナイスボール!杉野!」
このまま変化球で押し切れる!
「杉野~ボール来たら俺等捕れる自信ねーぞ!」
「えっへへ…わかってらい!」
前原…セカンドのお前が1番言ったらアカンやつ
「それより…理事長と進藤は何やっているのかな…」
勇人はセンターから野球部側のベンチを見ており、そこで理事長が進藤の隣に座っており、何か喋っていた。
「繰り返し言ってみよう、俺は強い」
「俺は強い…」
「腕を大きく振って投げる」
「腕を大きく振って投げる…」
「力で捩じ伏せる」
「力で捩じ伏せる…」
「踏み潰す」
「踏み潰す…!」
いつもの洗脳教育…
【な、何と!2者連続三振!】
ボコ…
「カルマ君」
「…足元に出んなよ殺監督…踏んで欲しいの?」
「ヌルフフフ!次の打順は君からです!君の挑発で揺さぶってみましょうか!」
「相手に効くかどうかは、知らないけどね」
「それでもやってみる価値はあります!では、次に勇人君の所に行ってきます!」
「え?」
シュウ!
ボコ!
「勇人君」
「…グランド破壊すんなよ。殺監督…踏み潰すよ?」
「ヌルフフフ!カルマ君の次は勇人君です!君のバッティングなら、あの超前進守備は超えれます!」
「つまり、普通に打ちに行けって事ですか?」
「はい!そう言う事です!」
「分かりました」
詰まっても内野さへ越えれば、二塁までは行けるはず。
【さあ!2回表!やはりこの回も鉄壁のバントシフト!】
『8番レフト赤羽君』
「…」
カルマ?何で打席に入らないだよ…
「どうした?早く打席に入りなさい」
「……ねーえ、これズルくない理事長センセー、こんだけ邪魔な位置で守ってんのにさ、審判の先生も何にも注意しないの?お前等もおかしいと思わないの?…あーそっかぁ!お前等バカだから守備位置とか理解してないんだね」
「「「「「「「「……………」」」」」」」」
「小さいことでガタガタ言うなE組!」
「たかだかエキジビションで守備にクレームつけてんじゃねーよ!」
「文句あるならバットで結果出してみろや!」
本校舎の生徒達はブチ切れていた…
「…(ダメみたいよ監督?)」
いいんです!それで!口に出して、はっきり抗議する事が大事なんです!
殺監督はカルマの挑発に対して、顔に赤丸を出していた。
「ストライクスリー!バッターアウト!」
「まあ…こんなもんでしょ」
「カルマ…せめて1球ぐらい振れよ…」
「勇人なら、あの超前進守備は軽く超えるやつ打てるでしょ?俺の役目はあくまで挑発…後は頼んだよ!勇人!」
「お、おう…」
なんっつー顔してんだよ!カルマの顔が明らかにムカつく顔だった…
「9番センター井上君」
「よっし!」
ガタ…
「審判、タイムを」
「え?」
「「「「「「え??????」」」」」」
「にゅや…」
「ここでタイム?」
理事長がベンチから出て来ると、野球部に指示を送った。その指示とは
「前進守備解除、各自本来のポジションに着いてください!外野は定位置より前で!」
「「「「「「「はい!!!!!!!」」」」」」」
「なっ?!」
ここで解除?!何で急に…
「にゅや?!」
「なんで急に前進守備やめたんだ?!」
「杉野!もしかして!」
「渚…恐らく理事長は知ってるんだ、勇人の実力を…」
理事長は勇人の事を見ると、こう言い放った…
「やあ!勇人君!」
「は、はい!(下呼び?!)」
「昨年の8月…君がこのグランドで放ったホームランは記憶に残っているよ!」
「そ、そうですか…」
「それに進藤君も君との勝負を楽しみにしている様だし、それと…君にはバントは似合わない、強者のスイングを是非この私に見せて欲しい」
「はあ…(強者のスイング…)」
理事長はそう言い残してベンチに戻って行った。
「勇人!」
「進藤…」
「本気で行くぞ!」
「おう!やってやるよ!進藤!」
こうして進藤VS勇人の戦いが始まった!
「進藤!ちょっといいか?」
「どうした?ベンチからわざわざマウンドまで来て」
「いや理事長先生からの指示でちょっとな。インコースにストレートで相手を仰け反らす感じで投げる用にって、進藤君に伝えてくれって言われたからさ」
「…」
「進藤?」
「分かった。大丈夫だ」
「OK!じゃあ頼むぞ!」
「おう!任せろ!」
野球部ベンチでは…
「理事長先生?少しよろしいですか?」
「どうかしたかい?」
「その、バッターは勇人なのに、あんなにも外野を前に守らせて大丈夫なのですか?もし超えられでもしたら…」
「フフフ…気にする必要はないよ。彼は進藤君のストレートを打つ事は出来ない。140Kmのストレート…それもインコースとなれば、尚更ね」
「なるほど…」
先程の言葉で悩みが出たはず…井上勇人君…君は進藤君には勝てない。
そして勇人の方は…
「ん?」
(外野がえらい浅めに守っているな。もう長打は無いって思われているのかな?)
「ふ…」
スッ…
【進藤君。投げた!】
ズバアアン!!!!
カン!!!!!
「「なっ!」」
「「「「「「「あ!!!!!!」」」」」」」
「ファール!」
勇人の打球は右に大きく切れてファールとなった。
「?!(あそこまで飛ばすとは…)」
「理事長先生…」
「大丈夫だ。問題ない」
理事長も少し驚いていた。
「…(進藤のストレートをあそこまで…)」
(仰け反らせようとしたのに、インハイのボールをあそこまで運びやがった…)
「うん〜…ちょっと詰まったかな?」
「なっ!(勇人の奴…)」
キャッチャーは困惑していた。
その頃外野の方では…
「(おいおい…俺達こんなに前出てて良いのか?)」
「(相手は勇人だし…ここは下がった方が…)」
「(逆に定位置より更に後ろの方がいいな)」
外野の3人は理事長の指示を無視して勝手に後ろに下がった。
「ふん…(よし!下がったな)」
勇人はバットを少し短く持ち直した。
「…(外にストレートだ!)」
「うん」
スッ…
【進藤君。第2球投げた!】
ズバアアン!!!!!
カン!
「あっ!」
「ライト!その打球は取れるぞ!」
ボテ!
「バッカやろう!何勝手に下がってんだ!」
「くっ…(私の指示を無視するとは…)」
【何とE組井上!進藤君のストレートを打ち返した!】
ザアアア!!!
「よっしゃ!」
勇人はボールがファールゾーンに転がっている間に全力疾走で二塁まで到達した。
【井上!ツーベース!】
「ナイスバッティング!勇人!」
「ナイバッチ!勇人!」
「勇人!ナイス!」
味方ベンチも空気が戻ったな!
「お見事です!勇人君!」
殺せんせーは顔に赤丸を出していた。
『1番サード木村君』
「木村!頼むぞ!」
「続け!木村!」
スッ…
ズバアアン!!!!!
「ストライク!」
スッ!
ズバアアン!!!!
「ボール!」
ズバアアン!!!
「ストライク!」
スッ…
ズバアアン!!!
キン!!
「ファール!」
スッ!
ズバアアン!!!!
キン!!
「ファール!」
「くっそ!粘りやがって…」
スッ!!
ズバアアン!!!!!
カン!!
【木村の打球はセカンド正面!一塁に送球してアウト!これでツーアウト!】
木村はアウトだったか、ランナーを三塁まで進めた。
『2番キャッチャー潮田君』
「…」
ガタ!
「進藤君!落ち着いて投げなさい!」
「…(E組の分際で舐めるなよ!)」
スッ…
ズバアアン!!!
カン!!!
【あーっと!初球攻撃!ショートの頭上超えた!】
ダン!
「よっしゃ!4点目!」
「ナイバッチ!渚!」
「渚!ナイス!」
「いいぞ!渚!」
スッ!
「続けよ!磯貝!」
「おう!勇人もナイバッチ!」
渚が進藤のストレートをジャストミートで打ち返し、三塁ランナーの勇人がホームに帰り4点目が入った
【2回の表、E組追加点。4点目!】
「にゅるフフフ!!!素晴らしいですね!」
『3番ショート磯貝君』
「くっ…」
「落ち着け!進藤!」
スッ!!
ズバアアン!!!!
カン!!!!
【磯貝の打球はセンター正面!スリーアウトチェンジ!】
磯貝もいい当たりだったが、センター正面。
「理事長先生…すいません」
「気にする必要はない。私の指示をちゃんと聞けば必ず勝てる。いいね?」
「「「「「「「はい!!!!!!!」」」」」」」
【2回の裏野球部の攻撃は4番の進藤君からだ!】
「オラアア!!!」
ダン!!!
【打った〜!低い弾道!フェンス直撃!おっと!クッションボール取れない!進藤君楽々二塁へ!ツーベース!】
「にゅう…」
「…」
殺せんせーありがとう。私の教育に協力してくれて。小細工だけで、勝とうとする弱者たちと。それを容易く捻じ伏せる圧倒的強者。生徒達はどちら側に、なりたいと思うだろうね。
【この回集中打で3点を返して4対3!いよいよE組を追いつめたぞ!】
3回表の攻撃は…
「ブアアアアアアアア!!!!!」
ズバアアン!!!!!!!
「ストライクスリー!バッターアウト!」
一瞬で終わりました
【さあ!3回の裏!いよいよ最後!野球部の攻撃を残すのみ!】
スッタ…
「橋本君?」
「はい!」
「手本を見せてやりなさい」
カン!!
「にゅや?!」
「「あ!!」」
【あーっと!セーフティーバント!今度はE組が地獄を見る番だ!E組よ!バントとは、こうやるんだ!】
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3回の裏野球部の攻撃はE組がやったバント攻撃を仕掛けて来た
「すまね…杉野」
「いいって!いいって!」
野球部が素人相手にバントなど、普通なら見てる生徒も納得すまい。だが…
スッ…
【やはりここもバントで来た!】
君達が先にやった事で大義名分を使ってくれた。手本を見せてやると言うね…
【ノーアウト満塁!ここで迎えるバッターは我が校が誇るスーパースター進藤君だ!】
ドン!ドン!ドン!
「踏み潰してやるぅ!杉野ぉ!!!」
「うっ…」
最終回のこれを演出するために、彼を一回から育てて来た。最後を決めるのはバントではない。主役である「強者」のスイングだ。さあ…どうする?殺せんせー
ボコ!!
「カルマ君!さっきの挑発が活きる時が来ましたよ!」
「あーなるほどね…」
ボコ!!
「勇人君!」
「だからグランド破壊すんなって!殺監督!」
「それより勇人君にお願いがあります!」
「お願いですか?」
「ええ!実は…」
殺せんせーが勇人に言った事とは…
「やっぱり進藤は敬遠するしか…」
「おーい!監督から指令!」
「カルマ君?指令って?」
【さあ!試合再開!ですが…】
デデン!!!
【こ、この前進守備は!】
「明らかにバッターの集中を乱す位置で守ってるけど、さっきそっちがやったとき、審判は何も言わなかった…」
「あ…」
「文句ないよね!理事長?」
なるほどな。よく考えたが小賢しい。
「ご自由に、選ばれた者は守備位置位で心を乱さない」
「へー言ったね?じゃあ遠慮なく!行くよ!勇人!」
「おう…(ヤバい…普通に緊張して来た…)」
「「「「「「「あ………?!」」」」」」」
【ちっ…近い!前進どころかゼロ距離守備!振ればバットが当たる距離だ!】
「…」
進藤も衝撃的過ぎて目が点になっている。
「気にせず打てよ、スーパースター!ピッチャーの球の邪魔はしないから」
「進藤!遠慮すんなよ!」
この時の勇人の心臓はバクバクだった…
「フフフ!くだらないハッタリだ!構わず振りなさい進藤君。骨を砕いても打撃妨害を取られるのはE組だ!」
「?!(骨砕くって…死ぬやん!!!!)」
やっぱりあの時断るべきだったわ…
勇人が殺監督に言われた事とは…
「カルマ君と一緒に進藤のすぐ近くまで行ってください!」
「…は?」
「お願いしますよ!勇人君!」
「え!ちょっと!殺せんせー!」
マジで言ってるの?!
そして今…勇人はカルマと共にバッターボックスのすぐ近くで守っていた
「…くっ!」
ナメたマネしやがって…大きく振ってどビらせりゃぁ、退くに決まってる!
シュウ!!!!
ボン!!!
「ストライク!」
「(殆ど動かず躱わすとは)」
進藤のスイングは明らかに鈍っていた。
ぐるぐる…
2人の度胸と動体視力はE組中でもトップクラス!バントを躱わすだけならバントよりも簡単ですねぇ!
「あむ」
殺せんせーはこの状態でお菓子を食べていた…
「ダメだよ。そんな遅いスイングじゃぁ…次はさ…殺すつもりで振ってごらん?」
「ひっ…!!」
この時点で進藤君は理事長の戦略に体がついていけなくなった。ランナーも観客も。野球の形をした異常な光景に飲まれてた。
ズバアアン!!!
「う、うわぁぁぁぁ!!?」
コンッ…
「渚君!」
シュウ!
「あ!うん!」
「アウト!」
「渚!三塁!」
「う、うん!」
シュウ!
「アウト!」
「木村!次一塁!ランナー走ってないから、焦っなくていいぞ!」
「りょーかい!」
シュウ!
「アウト!」
7ー2ー5ー3と言う恐らく滅多っに見れないトリプルプレーが完成した!
【トリプルプレー…ゲームセット! な、なんと、E組が…野球部に勝ってしまったぁぁぁぁぁ!!?】
「なんだよつまんねーE組ごときに負けやがったぞ野球部!」
「あの戦力差で負けるかよ!フツーよ!」
見てた人達は知るよしも、ないだろうな。試合の裏の2人の監督の数々の戦略のぶつかり合いを。
「ふう…」
中間テストと合わせると1勝1敗ってとこですねぇ!次の期末でケリをつけましょう!
「進藤!ゴメンな…はちゃめちゃな試合しちまって」
「…」
「でも分かってるよ。野球選手としてはお前は俺より全然強えー。これでお前に勝ったなんて思ってねーよ!」
「だったら…なんでここまでして勝ちに来た?結果を出して俺より強いと言いたかったんじゃないのか?」
「ん……」
杉野は一言置いて、進藤にこう言い放った。
「渚と勇人は俺の変化球練習にいつも付き合ってくれたし、カルマの反射神経とか皆んなのバントの上達ぶりとか凄かったろ?でも結果出さなきゃそれが上手く伝わらない…」
「…」
「ようはさ、自慢したかったんだ!昔の仲間に今の俺の仲間の事をさ!」
「あ…」
杉野の言葉を聞いた進藤は理事長の洗脳から完全に抜け出した。
「覚えとけよ杉野!次やるときは高校だ!」
「おうよ!」
高校まで地球があればな…
「どうした?」
「いや!何でもない!」
杉野はそう言うと、進藤に右手をスッと手を差し出した。
「ふん!」
パン!
進藤は杉野が差し出した右手をガッチリ掴むとそのまま起き上がり、2人の関係は再び友好に戻った!
「それより、勇人はどうしたんだ?」
「そーいや、いないな?」
「まあ…どっかでまた会えるし、大丈夫だ!」
「分かった。じゃあな進藤!」
「おう!またな杉野!」
一方その頃勇人は…
「渚…俺は次の期末テストで必ず50以内を目指すわ!」
「ええ…急にどうしたの?」
「やっぱり野球は楽しい。俺はもう一回野球部に戻って最後の大会に出たい」
「え?野球部に戻る?」
「ああ、学年50以内に入れば大野先生が居るD組に戻れる。戻ったら野球部に戻って進藤達と一緒にまた野球が出来る」
「勇人…?」
「「「「「………」」」」」
渚だけでは無く、カルマ、磯貝、前原、菅谷の4人も勇人の言葉を聞いて驚きと困惑の両方をしていた。
ねえ勇人?僕には分からないよ。勇人の言っている意味が…
次回予告
マッハ20は秒速約6800メートル。ダイヤモンド一周分の道のりは約110メートル。よって先生がダイヤモンド一周するのに掛かる時間は、道のり÷速さ=時間の公式から約0.016秒ですよ。杉野君
次回・中村莉桜と井上勇人の時間