新しい先生?
シュウ!シュウ!
「視線を切らすな!ターゲットの動きを予測しろ!全員が予測すればそれだけ奴の逃げ道を塞ぐことになる!」
烏間先生による暗殺訓練中間報告!
訓練開始4ヶ月目に入るにあたり「可能性」がありそうな生徒が増えて来た。
・磯貝悠馬と前原陽斗
運動神経が良く、2人がかりなら俺にナイフを当てられるケースが増えて来た。
・赤羽業
一見のらりくらりしているが、その目には強い悪戯心が宿っている。
・岡野ひなた
体操部出身で意表の突いた動きが出来る。
・片岡メグ
男子並みのリーチと高い運動量を持つ。
この辺りがアタッカーとして非常に優秀だ
「そして殺せんせー。彼こそ理想の教師像だ。あんな人格者を殺すだなんてとんでもない…」
「人の思考を捏造しようとするな。失せろ、ターゲット」
「ヌルフフフフ!」
そして俺個人が特に期待している生徒は…
「烏間先生!次は自分の番ですか?」
「ああそうだ、来い井上君!」
「はい!」
シュウ!!
・井上勇人
高い運動神経を持っていおり、身体能力はクラスでもトップ。特に柔らかい関節と柔軟な体はとても15歳の少年とは思えないほどの持ち主だ。
シュウ!
バシッ!
「どうしたその程度が!もっと来い!」
「くっ…(前より明らかに厳しくなってる…)」
この他には目立った生徒はいないものの、全体を見れば能力は格段に…
ぬるい………
「!?」
この瞬間…烏間先生は自身の体に絡み付く蛇の様な殺気に取り憑かれた。そして…
「くっ!」
バシッ!!
「ぐっは!」
「は?!」
バタッ!!!!
「いった……」
「いって…」
烏間先生はそのまま後ろに居た生徒を投げ飛ばしてしまった。
「すまん!ちょっと強く防ぎすぎた」
「あ…平気です」
「烏間先生!俺巻き込まれたんですけど!」
「いや…本当にすまない」
烏間先生が勢いで生徒を投げ出してしまったので、すぐ近くにいた勇人は思いっきり巻き込まれてしまったようだ。
「バッカでー!ちゃんと見てないからだ!」
「う…」
「杉野?俺に言ってるの?」
「いや違う!渚にだよ!」
潮田渚…気のせいか?今の得体の知れない気配は?
「うにゅ…」
どうやら殺せんせーも、今の光景を見て少し驚いているようだ。
キーンコーンカーンコーン!
「それまで!本日の体育はこれにて終了!」
「「「「ありがとうございました!!!!」」」」
「いやー!しかし当たらん」
「スキ無さすぎだぜ、鳥間先生…」
「やっぱ自衛隊に居た人は違うわ!」
烏間先生の現在は「防衛省特務部」の職員らしいが、それまでは陸上自衛隊第一空挺部隊に所属していたそうだ。
「全身バリ痛い」
「あはは…ごめんね勇人?」
「別に渚のせいじゃないから気にしてないよ」
渚の体を直に食らった為、勇人の体は全身から悲鳴を上げていた。
「せんせー!放課後皆んなでお茶してこーよ!」
「あぁ誘いは嬉しいが、まだ仕事が残っていてな」
「あ…」
烏間先生はそう告げて旧校舎に戻って行った。
「私生活でもスキがねーな」
「って言うより、私達との間に壁というか、距離を保っているような…」
「私達の事を大切にしてくれてるけど、でもそれって…ただ任務だからなのかな…」
防衛省の28歳の男性が15歳の女子中学生とお茶とかしたら、普通に考えて色々ヤバそうに見えるけどなぁ…
「よっ!烏間!」
「鷹岡…」
「「「「「うん?????」」」」」
「誰?」
「新しい先生?」
なんか図体がデカい人がやって来た…
「やっ!今日から烏間を補佐してここで働くことになった、鷹岡明だ!よろしくな、E組のみんな!」
キラキラ!キラリーン!
「な…なんだ?!」
「ケ、ケーキ?!」
「ラヘルメスのエクレアまで!」
「高級な物ばかりじゃないか!」
鷹岡さんが出してくれた物の殆どが有名な洋菓子やケーキばかりだった。
「いいんですか?こんな高そうなの」
「おう!食え食え!俺の財布を買うつもりで遠慮なくな!」
「よくこんな甘い物ブランド知ってますね」
「ま、ぶっちゃけラブなんだよ…砂糖がよ!」
ケーキ屋のペ◯ちゃん?
「でかい図体して、かわいいな…」
「明日からの体育の授業は鷹岡先生が?」
「おう!政府からの要請でな、烏間の負担を減らす為に…」
にゅるるるる…
「ケーキ…」
「お〜!アンタが殺せんせーか!食え食え!」
殺せんせーがヨダレを垂らしながらケーキを見つめていた…
「まぁ…いずれ殺すけどな!はっはっは!」
「同僚なのに烏間先生と随分と違うんすね」
「なんか近所の父ちゃんみたいですよ!」
「ははは!良いじゃねぇか!父ちゃんで!」
ガシッ!!
「同じ教室にいるからには、俺達家族みたいなもんだろ?」
「あはは…」
「そうすっね…」
「あっはは!!!仲良くして行こうな!」
三村と中村さんが絡まれていた…
「勇人?食べないの?」
「渚!食べるよ!」
勇人は近くにあったモンブランを手に取った。
「へ〜勇人がモンブランね…」
「凛香…急に現れるなよ」
「現れるって、さっきからずっと隣に居たわよ?」
「え?そうなの?」
「そうよ」
まじか…全然気付かんかったわ。
「それよりモンブランって、フランス発祥だっけ?」
「ん〜、イタリア発祥でもあるみたいよ?」
「え?フランスとイタリア、両方の発祥って事?」
「まあ、そうなるわね」
モンブランの起源は諸説あるみたいだ。
19世紀のフランス(サヴォワ地方)またはイタリア(ピエモンテ州)の家庭菓子が有力らしい…
「それより私達3人も食べましょ」
「それもそうだな」
「僕も食べるよ!」
そして味の方は…めちゃくちゃ美味しかった!!!
「勇人!味の方はどう?」
「渚…」
「ん?勇人?」
「なんだこれは、たまげたなぁ〜」
「勝手にたまげてろ」
「はい」
それにしても本当凄いな…俺でも知ってるブランドの食べ物ばかりじゃん!
「渚が食べてるのって、もしかしてエクレア?」
「そうだよ!」
「エクレアって発祥はどこだろ?」
「ん〜どこだろうね」
「凛香知ってる?」
「えーっと…」
恐らくヨーロッパなのは間違いないと思うけど…
「渚!勇人!速水さん!」
「茅野?」
「茅野さん?」
「もしかして知ってるの?」
「フランス発祥よ!」
またフランス?!
「フランス発祥多いな」
「3人とも良い?そもそも現代の洋菓子の基礎はフランスのブルボン王朝時代、特に17世紀に形成された物が殆どよ!日本では明治時代に起きた文明開化と共に本格的な洋菓子店が登場したんだよ!」
「「「……」」」
「流石茅野…」
「甘い物は何でも知ってるな…」
「流石に私もそこまでは知らなかったわ…」
渚、勇人、速水の3人は少し引いていた…
「明治時代で文明開化の頃って事は19世紀末期か…日本では結構遅かったんだな」
「まあ勇人?日本は鎖国とかしてたししょうがないよ」
「けど…17世紀って事は丁度「砂糖革命」が起きた頃ね」
「「え??」」
「凛香?砂糖革命って?」
「速水さん?もしかしてカリブ海のやつだっけ?」
「そうよ、勇人?イギリスの「産業革命」がいつ始まったのかは、知ってるわよね?」
「確か…18世紀後半の1760年頃だったような…」
産業革命とは
18世紀半ばにイギリスから始まり、技術革新により「手工業」から「工場制機械工業」へと転換した産業・社会の大変革だ!蒸気機関の導入と機械化で大量生産が可能となり人類の生活が大幅に変わった時期だ。だがしかし…生活は便利にはなったが、その分貧富の格差が今まで以上に広がり更に長時間労働が重なるなどして社会的な不平等などが出来てしまった為に新たな思想が生まれた…
それが社会主義である!
「そうよ1760年から1840年頃…つまり18世紀後半から19世紀前半に起きた革命よね」
「でも速水さん?砂糖革命と産業革命って何か関係でもあるの?」
「それに凛香?さっき茅野が17世紀って言ったような…」
「分からないの?17世紀よ?その時代ヨーロッパからアフリカ、そして新大陸アメリカなどで「何貿易」していたかしら?」
「「……」」
「貿易…」
「新大陸アメリカ…」
「「あ!!」」
「勇人!あれだよね!」
「渚!中2で習ったやつだ!」
「「三角貿易!!」」
「そうよ、後別に2人で言わなくても良いわ」
三角貿易とは
3つの国や地域が関係している貿易構造のこと。主に17世紀から18世紀に展開されたイギリスなどによる大西洋での貿易を指す。
三角貿易の仕組み(17-18世紀大西洋)
・ヨーロッパ(主にイギリス)からアフリカ
織物、武器、金属製品(工業製品)を輸出。
・アフリカから新大陸(西インド諸島・アメリカ)
黒人奴隷を輸送。
・新大陸からヨーロッパ
砂糖、タバコ、綿花を輸入。
「砂糖は当初「白い金」と言われたほど、貴重な物だったからアフリカから送られて来た黒人奴隷と引き換えに砂糖はヨーロッパに送られていたわ。そこで奴隷としてやって来た人は「プランテーション」に入れられて過酷な労働を強いられた…それと黒人奴隷だけではなく先住民の人達も無理矢理働かせられていたわ」
「うわ…人間の命が砂糖以下かよ…」
「ん…やっぱり歴史って言うのは残酷だね…」
砂糖プランテーションか…
「それと最後に砂糖革命と産業革命の関係性だけど、結論から話すと「砂糖貿易で得た莫大な利益を産業革命の資本」へと投じられたのよ」
「速水さん?確かその頃って丁度イギリスの紅茶文化が始まった頃でもあるよね?」
「そうよ渚、17世紀中頃ね」
「なるほどなぁ…まとめると砂糖革命は17世紀カリブ海で砂糖の大量生産体制が確立されて、そこで得られた巨大な富と奴隷貿易が、18世紀後半のイギリス産業革命における資本の供給基盤となったわけか…」
「勇人、それで合ってるわ」
21世紀を生きる俺達にとっては当たり前のように洋菓子を食べて、当たり前のように砂糖を日常で使っているけど…歴史は残酷だ。
「知りたくない歴史だったな…」
「勇人…」
「…」
この時勇人、渚、速水の3人は洋菓子を食べる手を止めてしまった…
「勇人?渚?洋菓子って言うのはとても美味しい物だけど…その背景って言うのは、こんなにも残酷な歴史あるがあるのよ」
「渚…俺人間やめるわ!」
「勇人?ちょっと何言ってるのか分かんない」
やはり人間と言う生き物は、とても残酷な生き物かも知れないな…
「3人とも!難しい話ししてないで食べようよ!」
「「「………」」」
「茅野…そうだね」
「だな」
「そうね」
3人はさっきまでの話に熱中し過ぎていたようだ。
「それじゃ次は「ガトー・ショコラ」を食べよーっと!」
「なら僕は「フォンダン・ショコラ」を食べるよ!」
「なら私は「タルト・シブースト」を頂くわ」
3人が選んだ物は全て…
「3人とも!それも全部フランス発祥よ!」
「「「またフランス?!」」」
それにしてもこの鷹岡先生良い人そうだな!
この「鷹岡明」と言う人はとても感じが良い先生に見えた、初対面にも関わらず直ぐにクラスにも馴染んだし流石防衛省の人間と思えるような高いコミニュケーションを持っていた。
しかし次の日…この先生の正体が明らかとなった。
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鷹岡先生がやって来た次の日
「よーし!みんな集まったな!」
あれ?1人居ないような…
「渚?カルマは?」
「ん〜教室には居たんだけどね…」
まさか…サボり?
「今日からはちょっと厳しくなると思うが、終わったらまたウマいモン食わしてやるからな!」
「そんな事言って自分が食いたいだけじゃないの?」
「まーな!おかげ様でこの横幅だ」
「「「「「「「あははは!!!!」」」」」」」
「自衛隊に居たとは思えないな…」
「勇人…それは普通に失礼だと思う…」
その頃…教員室では
カチ!カチ!
「アンタは良いのこれで?」
「…」
「なーんかわざとらしいのよ。あの男…カルマなんてとっととサボり決め込んでるわ」
「空挺部隊にいた頃の同期だ。教官としては、俺より遥かに優れてると聞いている」
「ふ〜ん…」
どうやらビッチ先生はあの男の事を怪しんでいるようだ。
「見事に生徒の心を掴んでいる。あれなら訓練も捗るだろ」
「本当にそう思うの?」
「…俺のやり方が間違っていたのかもしれん。プロとして一線を引いて接するのではなく、あいつのように家族のごとく接した方が…ん?」
「何よ?どうしたの?」
カチ!
「こ、これは…」
烏間先生が見たのは…
若い自衛隊員の背中にある大量の怪我後と手を縛られている写真だった。
そしてグラウンドの方では…
「さて…訓練内容の一新に伴って、新たな時間割を組んだ」
そしてクラスメイトは新たに配られた時間割を見て、驚愕した…
「うそ…だろ…」
「10時間目…」
「夜…21時まで訓練…」
椚ヶ丘中学校3年E組新時間割。とても中学生が行う内容じゃない。はっきり言って職業軍人が行う練習量だった。
「このぐらいは当然さ。このカリキュラムについてこられれば、お前らの能力は飛躍的にあがる!では、早速く…」
「ちょっ…待ってくれよ!無理だぜこんなの!」
「ん?」
この時間割を見て待ったをかけたのは、前原だった。
「勉強の時間これだけじゃ成績落ちるよ!」
「…」
「遊ぶ時間もねーし!出来る訳ねーよこんなの!」
スッ…
「うん?」
ズン!!!!!!!
「がばッ…」
「できないじゃない「やる」んだよ」
ドッサ…
「言っただろ…俺達は家族で俺は父親だ」
「前原…」
鷹岡先生…前原の腹に膝蹴りを決めやがった。
「世の中に父親の命令を聞かない家族が何処に居る?抜けたいヤツは抜けてもいいぞ!その時は俺の権限で新しい生徒を補充する!」
「生徒を補充…ですか?」
「そうさ!お前らの代わりなんていくらでもいる…」
まるで旧ソ連軍みたいだな…
「けどな、俺はそんな事したくないんだ。お前らは大事な家族なんだから、父親として一人でも欠けて欲しくない。家族みんなで地球を救おうぜ!な!」
ガシッ!!
「「……」」
鷹岡先生はそのまま三村と神崎さん両腕を使い包むような形で絡んだ…
三村…2回目じゃん…
《教え子を手懐けるなら、たったふたつ与えればいい。「親愛」と「恐怖だ」の2つだ》
「な!お前は父ちゃんについて来てくれるよな!」
「は…はい…」
スタ…
「あの…私…」
「お!父ちゃんについて来てくれるのか?」
「いえ…私は嫌です!烏間先生の授業を希望します」
「…」
バチッ!!!
「きゃあ?!」
ドサッ!!!
「神崎さん!」
「まずい!首からいったぞ!」
やり方が昭和じゃねーか!
「お前らまだ分かってないようだな「はい」以外はないんだよ」
「それって…服従しろって事ですか?」
「ん?《こいつは確か…烏間のお気に入りの…》」
この瞬間…鷹岡先生の目の色が変わった。
「ああ!そうとも言えるな!」
「鷹岡先生…今は21世紀で年号も平成です…」
「…それがどうかしたか?」
「鷹岡先生のやり方は、まるで20世紀で昭和時代のやり方です!今の時代にはそぐわないと思います!」
「お前…名前は?」
「え?井上勇人ですけど…」
《井上勇人か…コイツは早めに潰しとくか。最初は使えると思ったが、コイツはもう、烏間色で染まっていやがる》
「そんなに文句があるんだったら拳と拳で語り合おうか!井上君!「そっち」の方が父ちゃん得意だぞ!」
「ええ…」
な、なんなんだ…この人は…
この時勇人は思った…
この人の正体が「モンスター」である事に…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新しく防衛省からやって来た鷹岡明と言う人物はとてつもない人物だった。言う事を聞かない生徒に対しては容赦なく暴力を振い、少しでも反論すれば力で脅して来る…
例え相手が中学生であってもだ。
「さあ!井上君!始めようか!」
「え、いや…」
中学生の俺が元自衛隊の人に勝てるわけがない…
「止めろ!鷹岡!」
「ん?」
勇人を始めクラスのみんなが恐怖で動けなくなっていた所に烏間先生が助けに来てくれた!
「大丈夫か?首の筋に痛みないか?」
「大丈夫です…」
「前原くんは?」
「へ、へーきっす・・・」
後数分遅れていれば勇人は鷹岡先生にボコボコにされていただろう…
「ちゃんと手加減してるさ、烏間!大事な俺の家族だ。当然だろ」
スッ!!
「いいや!あなたの家族じゃない。私の生徒です!」
「「「「「「「殺せんせー」」」」」」」
殺せんせーの顔が真っ赤になっており、しかも血管も太くなっていた…ど怒りだ!
「私が目を離した隙に…何をやっている!」
「文句があるのかモンスター?体育は教科担任の俺に一任されているはずだ。そして今の罰も立派に教育の範囲内だ。短時間でお前を殺す暗殺者を育てるんだぜ?厳しくなるのは当然さ。それとも何か?多少教育論が違うだけで、お前に危害も加えてない男を攻撃するのか?」
「…」
結局殺せんせーでも鷹岡先生の事を止める事は出来です。そのままクラス全員で強制スクワットが始まった、
「あれでは生徒達が潰れてしまう。私から見れば間違っているものの、彼には彼なりの教育論がある。ですから烏間先生?あなたが同じ体育の教師として彼を否定して欲しいのです」
「否定…俺が…」
どうやら烏間先生はまだ迷っているようだ。
「フン!」
《悔しかろう烏間…育てた生徒をこの俺に奪われるのは?部隊で最優秀だったお前は、俺の力など気にも留めてなかっただろう。その俺にこれ以上ない「出世」のチャンスを奪われるんだ!こいつらの大部分は潰れてもいい。残った生徒が精鋭に育ちあのタコを殺せれば、英雄を育てた英雄としてお前をアゴで使ってやるぜ!》
鷹岡先生…防衛省でしかも特務部所属とか十分出世してると思いますよ?
「じょ…冗談じゃなぇ…」
「ああ…スクワット300回なんて、死んじまうよ…」
「烏間先生…」
「おい!」
「あっ…(倉橋さん…)」
倉橋さんが烏間先生の名前を言った瞬間…鷹岡先生が手をポキポキ鳴らしながら倉橋さんに詰め寄った。
「烏間は俺達の家族じゃないぞ?お仕置きだな…父ちゃんだけを頼ろうとしない子はぁ!」
「あ…」
フッ!!!!
「え?」
この時誰もが倉橋さんが殴られると思ったのだが…
ドカッ!!!
「ガバッ!」
ズン!!!
「うっ!」
ドサッ!!
「え、え?(井上君?)」
「勇人…」
「なんで勇人が…」
鷹岡先生は倉橋さんではなく隣に居た勇人の事を殴りつけた。
勇人の顔面を一発殴った後続けて髪の毛を掴み勇人の腹に膝蹴りを決めた。
「う…」
「お仕置きだ!井上君!」
シュババア!!!!
「勇人君!」
「こ、殺せんせー…」
勇人が殴られた直後、殺せんせーが猛スピードで勇人の元に駆け寄り勇人の事を抱き抱えた。
「大丈夫ですか勇人君!先生の顔がちゃんと見えていますか!」
「は…はい…大丈夫です…殺せんせー…」
「くっ!」
パキパキ!!!!!!!!!!
「鷹岡先生…死ぬ覚悟は出来ているんですかね…」
「おいおい忘れたのかモンスター?言っただろ!これは教育だと、俺に逆らう生徒にはお仕置きが必要なんだよ!」
グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!!!!!!
「教育だと…何も逆らっていない勇人君に暴力を振るって何が教育だ!」
「教育は教育さ!それで、どうするんだ?お前に対して何も危害を加えていない俺の事を殺すのか?」
「…」
殺せんせーの顔は異常なほど黒くなっており、このまま鷹岡先生の事を殺してもおかしくない様子だった。
「分かったなら、とっととそいつを連れて下りなモンスター!」
「…」
「無駄よ、このクズ男には何を言ってもね」
怒り狂う殺せんせーを落ち着かせようとしたのはビッチ先生だった。
「イリーナ先生…今から勇人君の治療を行いますので手伝ってもらっても構いませんか?」
「当たり前じゃない!今すぐ教員室に連れて行くわよ!」
殺せんせーとイリーナ先生は勇人の事を抱き抱えたまま旧校舎の中に入って行った。
そして校庭に残された者たちは…
「さあ!邪魔者でしかなかった井上君も居なくなった事だし続きを始めるぞ!」
「「「「「「「……………」」」」」」」
「どうした!早く始めろ!」
「私は嫌です」
「なに?」
「中村さん…」
鷹岡先生に真っ先に反抗したのは中村さんだ。
「勇人なんかよりもアンタの方がよっぽど邪魔でしかない存在ですよ?鷹岡先生」
「なんだと…」
「アンタの授業なんか「受けたくも無いし」「見たくも無い」すみませんけど…私は抜けます!」
「ほう、よく言うじゃないか…この金髪女がぁぁ!」
「うっ!」
ガシッ!!!!!
「おい鷹岡…そんなに暴れたいのなら俺が相手を務めてやる」
「烏間…横やりを入れて来る頃だと思ったよ」
《そろそろ「あの」手を使うか…》
「言ったろ?これは暴力じゃない教育なんだ!暴力でお前とやり合う気はない、やるならあくまで「教師」としてだ。烏間、お前が育てたこいつらの中から一押しの生徒を一人選べ:そいつが俺と闘い、一度でも俺にナイフを当てられたら、お前の教育は俺より優れていたのだと認めて出て行ってやる」
鷹岡先生は自分のバックから対先生用ナイフを取り出したが…
「ただし…使うのはこれじゃない」
ピュウ!
「これだ!」
グシィ!!!!!
「殺す相手は俺なんだ…使う刃物も本物じゃなくちゃなぁ」
「本物のナイフ…」
鷹岡先生はバックから本物のナイフを取り出して対先生用ナイフを突き刺した。
「本物のナイフだと!?気でも狂ったのか鷹岡!彼らは人間を殺す訓練も用意もしていない!」
「安心しな烏間。寸止めでも当たったことにしてやるよ。俺は素手だし、これ以上ないハンデだろ?」
《軍隊でもこの手はよく効いたぜ。初めてナイフを持ってビビリあがる新兵を素手の俺が叩きのめす。その場の全員が格の違いを思い知り俺に心服するようになる》
鷹岡先生は自衛隊の教官時代からこの方法を取っていたようだ。
「さぁ烏間!1人選べよ。嫌なら無条件で俺に服従…そしてお前の大好きな井上勇人は「退学処分」だ!」
「なっ!」
「「「「「「「は?!」」」」」」」
「ふざけるな鷹岡!そんな横暴が許されると思っているのか!」
「そう怒るなよ烏間!言っただろ?このナイフを使い俺に勝てさえすれば、俺は出て行くし井上勇人の退学も無くなる」
「くっ…」
「さぁ烏間…1人選べ!」
「…」
俺はまだ迷っている…地球を救う暗殺者を育てるには、ヤツのような容赦のない教育こそ必要ではないのか。ここに来てから迷いばかりだ。そしてわずかに可能性がある生徒を危険にさらしていいものか迷っている
そして烏間先生はある生徒の前に立った。
「渚君…出来るか?」
「え?」
「な、渚?」
「なっ、なんで渚を?」
「俺は地球を救う暗殺任務を依頼した側として君達とはプロ同士だと思っている。プロとして君達に払うべき最低限の報酬は当たり前の中学生活を保証することだと思っている。だからこのナイフは無理に受け取る必要はない…」
「あっ…」
「そのときは俺が鷹岡に頼んで報酬を維持してもらえるよう努力する。そして勇人君の退学はどんな手を使っても必ず俺が阻止する!」
「烏間先生…」
僕はこの人の目が好きだ。こんなに真っ直ぐ目を見て話してくれる人は、家族にも居ない。立場上、僕らに隠し事も沢山あるだろう。それに何で僕を選んだのかも分からない。けど…
スッ…
この先生の渡すナイフなら頼できる。それに神崎さんや前原君の事…許せない。そして何よりも…
「…(勇人)」
鷹岡先生が勇人に行った暴力は絶対に許せない。必ず…必ず僕が…僕が勇人の事を救ってみせる!
渚はそのまま烏間先生からナイフを受け取った。
「やります」
「…頼むぞ。渚君」
「はい」
渚はナイフを口に挟むと戦闘態勢に入った。
潮田渚VS鷹岡明の戦いが幕を開けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「烏間ぁ…お前の目も曇ったなぁ」
「…」
「まさかなぁ…そんなチビを選ぶとはなぁ…」
鷹岡先生は渚の事を舐めている様子だった。
「中村さん?渚勝てると思う?」
「はやみん?勝ってもらわないと困るでしょ!」
「…そうよね」
「渚が勝たないと、勇人が…」
「勇人…」
中村さんも速水さんも冷や汗が出ていた。
「…(お願いね渚)」
「…(鷹岡に復讐よ)」
( (勇人の仇を!!) )
ちょっと前の教員室では…
チョン!チョン!
「ちょっと痛いです。ビッチ先生…」
「我慢しなさい!これ塗らないと傷口が治らないわよ!」
「はい…」
傷口から滲みて結構痛い…
「勇人?今日の放課後は予定を入れないでちょうだい」
「え?どうしてですか?」
「病院に行くからに決まってるでしょ!」
「わざわざ病院だなんて…」
スッ…
「勇人君?病院には行くべきですよ。少なくとも骨の確認はちゃんと検査してもらった方がよろしいでしょう!」
「殺せんせー…分かりました!」
「ですが、先生も一様確認しときます!」
「え?」
この後…殺せんせーに触手で体中の骨を確認された。
「ちょっと嘘でしょ…」
「ビッチ先生?どうかしたんですか?」
「矢田から聞いてけど、どうやら鷹岡と勝負するみたいよ」
「え?誰がですか?」
「渚よ」
「え!渚が?!」
どうやらビッチ先生は一度旧校舎に戻って来た矢田さんに外での状況を聞いたそうだ。
「烏間のヤツ…どーかしちゃったんじゃないの?なんで渚なの?」
「殺せんせー!今すぐ止めてきて下さい!」
「ちょっと勇人!じっとしてなさい!」
「渚が…もし渚が…」
ピタ…
「え…殺せんせー?」
「勇人君?見てれば解ります」
「…え?」
殺せんせー?それってどう言う…
「それでは勇人君?私とイリーナ先生は様子を見て来ますので、ここでじっとしてて下さいね!」
「大人しくしてなさいよ?それと、勝手に動いたら後でディープキスの刑よ!」
「分かりました。じっとしときます…」
ガラガラ…ガシャン!
「一人ぼっち…」
そしてグラウンドでは…
「渚のナイフ当たると思うか?」
「無理だろ、プロ相手に本物のナイフなんて…」
「あぁ…絶対無理だぜ…」
「渚…」
クラスメイトの大半は渚が勝てないと見込んでるようだ。
バサッ!!!
「さぁ、来い!」
「う!」
《公開処刑だ!すべての攻撃を躱してから、いたぶり尽くす。生徒全員が恐怖し、俺の教育に従うようにな…》
鷹岡先生はジャージを脱ぎ捨てて準備万端だ!そして渚の攻撃を「いいよ、来いよ」と言わんばかりに待っている。
「ふ…(落ち着け…)」
いいか渚君。鷹岡にとってこの勝負は見せしめの為の戦闘だ。対して君は暗殺。強さを示す必要もなく、ただ一回当てればいい。そこに君の勝機がある。
「うっ…(落ち着け…)」
ドクン!
ドクン!
ドクン!
渚君…鷹岡に勝って勇人君の事を救ってくれ。勇人君の事を救えるのは、渚君。君だけだ!
「…(勇人)」
僕が勝って勇人を助ける。僕にしか出来ない事か…
「ふ…」
待っててね勇人。今から助けてあげるよ。この僕が…
「フ…《そろそろ気付いたな…》」
《刃物を持つとは、どういう事か。人間の心理に基づいてこう考えてしまう「本物のナイフで人を刺したら死んじゃうよ…こんなモノ本気で使えない!」とな。俺はな…それに気付いて青ざめるド素人が大好きなんだぁぁ…》
鷹岡先生は絶対的な自信を持っており今回もいつものやり方で勝てると思っているようだ。
「さぁ!かかってこい!」
「…」
僕は本物のナイフを手にどう動けばいいのか少し迷って、鳥間先生のアドバイスを思い出した。そうだ闘って勝たなくったっていい…
「あっ…(だって…)」
殺せば勝ちなんだ
「フン…」
コト…コト…コト…
だから僕は笑って、普通に歩いて近づいた。通学路を歩くみたいに普通に。
トサッ…
「…」
「…?」
そして僕はナイフを振った。
シュウ!!!!
「なっ?!」
ここで初めて鷹岡先生は気付いた。自分が殺されかけている事に、そしてギョッとし体勢を崩した。誰だって殺されかけたらギョッとする。殺せんせー、でもそうなんだから。
「うっ!!!」
重心が後ろに偏っていたから服を引っ張って転ばし…
ドサッ!!!!!
正面からだと防がれるので、背後に回って…
ぬるい…
「うわああああああああ!!!!!!」
確実に…
「はぁ…ぁぁぁ…」
「捕まえた…」
「「「「「「あっ…………」」」」」」」
「あっ…」
鷹岡先生の首元には渚のナイフが…
なんて事だ、予想を遥かに上回った。普通の生活では絶対に発掘される事のない才能…
殺気を隠して近づく才能。
殺気で相手を怯せる才能。
本番に物怖じしない才能。
俺が訓練で感じた寒気はあれが本当の暗殺だったら、戦闘の才能でも暴力の才能でもない。恐らくこの才能は…
暗殺の才能!
これは、咲かせても良い才能なのか?!
烏間先生を含めクラス全員が驚きを隠せなかった。渚が勝ったのだ。普通の中学生が元自衛隊の人に…
「あれ、烏間先生…ミネ打ちじゃダメなんでしたっけ?」
「いっ、いや!」
烏間先生の頭の中は驚きと困惑でいっぱいだった。
その頃…教員室では
「渚…」
「良い光景が見れたね、勇人君」
「そ、そうですね…浅野理事長…」
理事長…いつまで居るんですか
「それでは…そろそろお暇させてもらうとすると」
「あ、はい!(やっと落ち着ける…)」
「それと最後に…君に良い報告がある」
「良い報告ですか?」
「あぁ…この窓からよく見ているといい。君にとって最高の気分を味わえる事だろうね…」
「…」
ガラガラ!ガシャン!
「この窓から大人しく見てろって事か…」
けど、今はそんな事どうだっていい。
勇人はそんな事よりも渚の事が心配だった。
渚…この平和な日本には無くていい才能を持ってるよ。暗殺の才能なんて…
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「そこまで!」
「ん?」
スッ!
「勝負ありですね!烏間先生!」
「あっ…そうだ!そこまでだ渚君」
殺せんせーが渚からナイフを取り上げてしまった。
「まったく…本物のナイフを生徒に持たすなど正気の沙汰ではありません、ケガをしたらどうするんですか」
「あはは…(殺せんせーいつの間に)」
この時殺せんせーは普通にナイフを食べていた…
「フン…」
ケガしそうなら、マッハで助けに入っただろうが。それにしても…
「やったじゃん、渚!」
「ホッとしたよ!」
「渚!大したもんだよ!」
「ああ!よくあそこで本気でナイフ振れたよな!」
「渚の完全勝利だ!」
クラスの皆んなは、鷹岡先生を破った渚の元に集まっており歓喜の声を上げていた。
「いや、烏間先生の言われた通りにやっただけで、鷹岡先生強いから…」
「…渚」
「うん?前原君?」
パチン!
「いたっ!何で叩くの!?」
「あぁ、悪い!ちょっと信じられなくて…」
「え…」
ガバッ!!!
「でもサンキュ!今の暗殺スカッとしたわ!」
「あはは…」
「笑顔でナイフ突きつけて「捕まえた」なんて意外と肉食系!」
「ち、違っ…上手くいって安心しただけだって!」
「でも、ありがとうね渚!」
「…中村さん?」
スッ…
「なんて言っても渚のおかげで勇人は退学にならずに済んだんだから!」
「あっ…(そうか…)」
僕が勝ったから、勇人は退学にならずに済んだのか。良かった…
「うん!僕も勝てて良かったよ!」
にゅるる!!!
「今回は随分迷ってばかりいますね!烏間先生」
「悪いか?」
「いえいえ!」
殺せんせーは烏間先生の後ろから抱きついているが、烏間先生は嫌そうではなかった。
「烏間先生?もし仮に渚君が負けていたら勇人君は本当に退学処分になっていたのですか?」
「…仮に渚君が負けていたとしても俺が全力で阻止するだけの話だ」
「もし相手が「あの」理事長だったとしても?」
「当たり前だ!それが俺の使命でもある!」
「…」
一瞬だけ殺せんせーは無言になったが…
「ヌルフフフ!!!!」
「何がおかしい?」
「いえいえ!烏間先生はやはり生徒の事を誰よりも思っているんですね!」
「フン!勝手に言ってろ!」
ダッ!!!
「ん?」
「はぁはぁ…このガキ!父親も同然の俺に刃向かってまぐれの勝ちがそんなに嬉しいか!もう一回だ!心も体も全部残らずへし折ってやる!」
鷹岡先生はガチギレ状態だ!
「くっ!」
ピタ!
「?」
「ぬんぬん」
烏間先生が行こうとしたら殺せんせーがそれを止めた。しかも「ぬんぬん」と言いながら顔を横に振った。
「鷹岡先生。確かに次やったら絶対僕が負けます。でもはっきりしたのが、僕らの担任は殺せんせーで僕らの教官は烏間先生です。これは絶対譲れません。父親を押し付ける鷹岡先生よりプロに徹する烏間先生の方が僕はあったかく感じます。本気で僕らを強くしようとしてくれたことには感謝します」
スッ…
「でもごめんなさい。出て行ってください」
「「「「「「…………」」」」」」
渚は頭を下げ、他の者は軽蔑な目で鷹岡先生の事を見ていた。
「じゃあ私は?」
「僕らのビッチです」
「殺す!」
ビッチ先生…
「烏間先生?」
「ん?」
「教師として一番嬉しい瞬間は、迷いながら自分が与えた教えに生徒がはっきり答えを出してくれた時です。そして烏間先生?生徒がはっきり出した答えには、先生もはっきり答えなくてはなりませんねえ!」
「…」
グググ!!!!!!!!!!
「この野郎…黙って聞いてりゃ…ガキの分際で大人になんて口を!」
「っ!」
「うりゃああああああああああ!」
バシュ!!
「なっ!うわぁぁぁ…」
ドサッ!!!
鷹岡先生は怒り狂いそのまま渚に突っ込んで行ったが、烏間先生が顎に肘打ちを決めた!
「身内が迷惑をかけてすまなかった。後のことは心配するな!今まで通り俺が教官を務められるよう上と交渉する」
「烏間先生!勇人の退学の件は…」
「心配するな速水さん!俺が理事長の元に赴いて説得させするから安心しろ!」
「あ…(良かった…)」
「「「「「「「烏間先生!!!!」」」」」」」
「や、やらせるかそんなこと…俺が先にかけあって…阻止してやる!そしてそのまま井上勇人を退学に追い込んでや…」
「交渉の必要はありません」
「?!《こ、この声は…》」
《まさか…》
「理事長」
「それに、ご心配無く烏間先生。勇人君の退学は先ずあり得ません」
「え?それは一体どう言う…」
スッ!
「この教師が勝手に言っているだけですからね。私はそのような横暴は決して行いませんのでご安心よ…」
「そ、それは…感謝します」
「いえ…」
烏間先生は少し冷や汗が出ていた。
「実は新任教師の手腕に興味がありまして、全て拝見させていただきました」
「なっ!い、一体どこから…」
「最初は草むらから「ソッと」見ていましたが、途中からは旧校舎の中で見ていましたよ。あなたが暴力を振るい怪我を負わせた井上勇人君と一緒にね…」
「あ…い、いや!これは!」
タッ!
「鷹岡先生?あなたの授業はとてもつまらなかった。ある程度において教育に恐怖は必要です。ですが、暴力でしか恐怖を与えることができないなら、その教師は三流以下だ…」
グチョグチョ!!!!
「お、俺は…」
「解雇通知です」
理事長は鷹岡先生の口に解雇通知書を突っ込んだ。
「ここの教師の任命権はあなた方防衛省にはない、全て私の支配下だということをお忘れなく」
理事長は自分の手をハンカチで拭くとそのまま鷹岡先生のバックに捨てて行ってしまった。
「くそ!くそ!くそ!くそ!くそぉーーーー!」
鷹岡先生は解雇通知の紙を食べると、そのままグラウンドから走りながら去って行った。
「鷹岡、クビ…」
「ってことは今まで通り烏間先生が…」
「「「「「よっしゃぁ!!!!」」」」」
この瞬間…クラス全員が歓喜の声を上げた!
「相変わらず、あの人の教育は迷いがないですねぇ」
「例えばお前が…」
「にゅう?」
「もし渚君が「将来は殺し屋になりたい」と言ったら、それでも迷わずに育てるのか?」
「…」
「渚君本人は気付いていないが、その才能がある」
スッ…
「答えに迷うでしょうねぇ、ですが迷わぬ教師などいない。本当に自分がベストの答えを教えているのか、内心は散々迷いながら、生徒の前では毅然として教えなくてはいけない。決して迷いを悟られぬよう堂々とね!」
「…それで何が言いたいんだ?」
「だからこそカッコいいんですよ!先生って職業は!」
「はぁ…なるほどな…」
殺せんせーはアサガオを口に挟み決め台詞を決めた!
「烏間先生?生徒の努力で体育教師に返り咲けたし、なんか臨時報酬があってもいいんじゃない?」
「そーそ!鷹岡先生って、そー言うのだけは充実してたよね!」
中村さんと倉橋さんは美味し物が食べたいみたいだ!
「ふん…甘いものなど俺は知らん、これで食いたいものを…」
「シュバ!」
「「「「「「「やったー!!!!」」」」」」」
烏間先生が言い終わる前にビッチ先生が烏間先生の財布を奪い取ってしまった。
「速水!中村!アンタ達2人で勇人の事を呼んで来てちょうだい!クラス皆んなで食べに行くわよ!」
「「はい!!」」
「早く行こ!はやみん!」
「うん!」
速水さんと中村さんの2人は笑顔を浮かべながら旧校舎の中へと入って行った。
「にゅや!先生にもその報酬を…」
「えー!殺せんせーはどうなの?」
「今回は碌な活躍なかったよなー!」
「いやいやいや!烏間先生に教師のやりがいを知ってもらおうと、あえて静寂していたんです。それ…」
「放っといて行こ行こ!烏間先生」
「ああ…」
俺も、この教室でハマってしまっているのかもな。迷いながら人を育てる面自さに…
倉橋さんに腕を掴まれながら歩いている時の烏間先生の顔は笑顔で満ちていた。
ゴミョ…ゴミョ…
「うわ!土下座しながらついて来た!」
「そこまでして食いたいか?!」
スッ…
ブアアアアアアアア!!!!!!!!!
「何卒!!何卒!!何卒!!何卒!!何卒!!」
「「「「きゃあああ!!!!」」」」
勇人を呼んで来た後…
「え?莉桜?凛香?今から皆んなでご飯食べに行くの?」
「ええ!そうよ!」
「烏間先生の奢りでね」
烏間先生の奢りか…
「それより勇人!驚けよ!」
「前原?急にどうした」
ダッ!
「喜べ勇人!渚が鷹岡に勝ったんだぞ!」
「マジか!凄いじゃん渚!」
「あっ、いや!別に大した事じゃないよ!」
まあ、理事長と一緒に廊下の窓から見てたけど。それと理事長…ありがとうございます。廊下の窓からよ〜く見させてもらいましたよ!
「今度理事長にお礼言わないとなぁ…」
「勇人?今なんか言った?」
「い、いや!何も言ってないよ渚!」
「なら良いや!」
「けど…本当ありがとうな!渚!」
「うん!どういたしまして!勇人!」
渚の顔は今日1番にときめいていた!
「今日は渚の対鷹岡先生戦勝記念日だな!」
「勇人?そう言うのはいいから」
「はい」
それより…
「ビッチ先生?殺せんせー?ちょっと良いですか?」
「にゅ?どうかしましたか?勇人君?」
「何よ?早く行くわよ!」
「病院は行かないんですか?」
「「あっ」」
次回予告
この教室でよく使われる動詞「やる」は「やらない」「やります」やるときやれば「やれ」は「やろう」と活用します。ラ行の「あ段」から「お段活用」しますので、これは五段活用になります。渚君。動詞に「ない」を付けてみて「ない」の前が「あ段」であれば五段活用と覚えておきましょう!」
次回・ビジョンの時間