暗殺教室 もう一度立ち直ろう   作:補強と育成

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おやつかよ!




ビジョンの時間

 

 

ミーン!ミンミンミンミンミン!!!!!!

 

ミー!!!!!!

 

 

ミーン!ミンミンミンミンミン!!!!!

 

ミー!!!!!!

 

 

「あ〜セミの鳴き声…」

 

 

2015年7月の上旬…本格的に夏が到来した。

 

 

「あつはなついなー!大阪の方では猛暑の時にそう言うらしいです」

 

「暑っちー。なんで裏山なんかに…」

 

「それな…普通に蚊に刺されたし」

 

「それより勇人?怪我の方はもう大丈夫なのか?」

 

「ああ杉野!もう大丈夫!」

 

「そっか!なら良かったよ!」

 

 

 鷹岡先生がE組から去った後、勇人は先生方3人に連れられてそこそこ大きい病院で検査をした。特に骨には異常が無く、身体全体を通して見ても特に問題なかったようだ!

 

 

「渚さん!プールでしたら本校舎にあるんですよね?場所が違うようですが」

 

「うん…(律…何で水着に着替えてるの?)」

 

 

 それに一体どこに向かってるんだろ…

 

 

「渚君!」

 

「あっ、カルマ君」

 

「奥田さんから聞いたよ。この前すごかったらしいじゃん、見ときゃよかった〜!渚君の暗殺姿」

 

「あはは…」

 

 

 人間相手に通じても、この教室では意味がない。皆も毎日のように何かしら試みているけど、あの先生には未だ決定的な暗殺が出来ていない。

 

 

「それより勇人〜」

 

「カルマ…なに?」

 

「鷹岡の奴にボコられって本当なの〜」

 

「…本当だよ!」

 

「何で殴り返さなかったの?」

 

「そんな余裕とか無かったよ。何だかんだ言って鷹岡先生って自衛隊で教官を務めていた人だ。パワーが桁違いだったよ」

 

「へ〜」

 

 

スッ…

 

 

「殺せんせー?」

 

「何で止まったんですか?」

 

「にゅるフフフ!!!」

 

「?」

 

 

 何で笑った?

 

 

「さぁ、着きましたよ!ご覧あれ!」

 

 

ザッ!!!

 

 

「「「「「「「うわぁ〜!!!!」」」」」」」

 

 

クラスの皆んなが見た光景は!

 

 

「先生特製のE組専用プールです!」

 

 

バサッ!!!!!!

 

 

「「「「「「いやっほー!!!!!」」」」」」

 

 

「よっしゃー!」

 

「それー!」

 

「しゃあ!」

 

 

ドボーン!!!!!!!!!!!

 

 

クラスの皆んなは殺せんせー手作りプールを見た瞬間着ているジャンバーを脱ぎ捨ててプールの中に飛び込んで行った。

 

 

「行こう勇人!」

 

「おう渚!」

 

 

 こーゆー事してくれるから、ウチの先生は…

 

 

ドボーン!!!!!

 

 

 殺しづらい!

 

 

その後は25メートルを泳ぐ者もいれば、ビーチボールで遊ぶ者。そもそも泳がない者で別れた。

 

 

「う〜ん…楽しいけどちょっと憂鬱…泳ぎは苦手だし、水着は体のラインがはっきり出るし…」

 

 

シャキーン!

 

 

「大丈夫さ茅野…」

 

「…」

 

「その体もいつかどこかで需要があるさ!」

 

 

カシャカシャカシャカシャカシャ!!!!

 

 

「うん、岡島君。二枚目面して盗撮カメラ用意すんのやめようか」

 

 

 岡島…来年同じ事したら普通に終わるぞ。

 

 

「渚…あんた…」

 

「うん?」

 

「男なのね…」

 

「今更?!」

 

「まあ…仕方ない」

 

 

 中村さん…普通に失礼だよ。それに岡野さんも何で納得してるの?!

僕も好きで髪伸ばしてる訳じゃ無いのに…

 

 

その後の渚は気分転換に25mを泳いでいたら、勇人がある事に気付いた。

 

 

「あっ、渚!」

 

「勇人?どうかした?」

 

「髪がほどけてるぞ」

 

「え?」

 

 

渚は泳いでる最中に髪がほどけていたのだ。

 

 

「あ…本当だ」

 

「茅野は?」

 

「う〜ん…浮き輪に乗ったまま動いてないね…」

 

「なんか岡島の事ずっと見てない?」

 

 

茅野はまだ岡島の事でドン引きしていた。

 

 

「分かった!俺がやるよ!」

 

「大丈夫だよ勇人!そもそも自分で出来るから!」

 

「遠慮すんなって渚!あの時のお礼だ!」

 

「う、うん…」

 

 

 勇人…普通に恥ずかしい。けど、ありがとう!

 

 

ピッ!ピッ!ピッ!

 

 

「木村くん!プールサイドを走っちゃいけません!転んだら危ないですよ!」

 

「す、すいません」

 

 

ピー!!!!!!!

 

 

「原さんに中村さん!潜水遊びはほどほどに!長く潜ると溺れたかと心配します!」

 

 

「「はーい…」」

 

 

ピッ!

 

 

「岡島くんのカメラも没収!」

 

「なっ?!」

 

 

ピッ!

 

 

「狭間さんも本ばかり読んでないで泳ぎなさい!」

 

「ん?」

 

 

ピピーーーー!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

「渚君と勇人君は男同士でイチャイチャしない!するんだったら異性の人として下さい!」

 

 

「「……」」

 

 

ピ!ピ!ピ!ピ!ピーーーーーー!!!!!

 

 

「こ、小うるせえ…」

 

「いるよねー、自分が作ったフィールドの中だと王様気分になっちゃう人」

 

「ああ…ありがたいのに、ありがたみ薄れちゃうよな…」

 

 

ピピピ!♫ ピピピ!♫ ピピピ!♫

 

ピピピ!♫ ピピピ!♫ ピピピ!♫

 

ピピピ!♫ ピピピ!♫ ピピピ!♫

 

ピーーーーーーーーー!!!!!!!!

 

 

「ヌルフフフフ!!!!景観選びから間取りまで自然を活かした緻密な設計…みなさんには整然と遊んでいただかなくては」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

殺せんせーの弱点(22)

 

プールマナーに

  やたら厳しい

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「もう〜堅いこと言わないでよ殺せんせー!水かけちゃえ!」

 

 

バシャアア!!!

 

 

「きゃーん!!!!」

 

 

グググ…

 

 

「「「「「「「……………」」」」」」」

 

 

「え、なに?今の悲鳴…」

 

「それに今の体の動き…」

 

 

ガシッ!

 

 

ガタ!ガタ!ガタ!ガタ!

 

 

「カルマ君!ちょっと揺らさないで!水に落ちる!落ちる!落ちますって!落ちますから!頼みます!!!!」

 

 

水に対する殺せんせーの反応が明らかに違う…

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「殺せんせー」

 

「もしかして…」

 

 

ピ〜…ピ〜…

 

 

「いやー別に泳ぐ気分じゃないだけだし〜!水中だと触手がふやけて動けなくなるとかそんなんないし〜!」

 

 

殺せんせーは口笛を吹きながら誤魔化しているが…

 

 

「先生…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

殺せんせーの弱点(23)

 

泳げない

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「泳げないんだ」

 

 

 これは、今までで一番使える弱点かも…

 

 

「手にビート板持ってるし、てっきり泳ぐき満々かと」

 

「そうだよ殺せんせー!何の為のビート板だよ!」

 

「三村君に勇人君!これはビート板なんかじゃありません!」

 

 

 え?ビート板じゃない?!

 

 

「え?じゃあ何ですかそれ?」

 

「どう見てもビート板にしか見えませんけど?」

 

「麩菓子です!」

 

 

「「おやつかよ!!」」

 

 

「そんな麩菓子見た事ねーよ!」

 

「絶対先生の手作りだろ…」

 

 

クラスの皆んなが泳いでいる中…1人だけ泳いでない者がいた…

 

 

「ケッ!くだらね…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ガシィ!!

 

 

「んだとぉ!模試の成績上がって良かっただぁ?」

 

「いや!でも…」

 

 

グイイ!!

 

 

「村松てめえ…もういっぺん言ってみろ!」

 

「い、いやあ…俺が今まで受けて来た中で過去最高の順位でよ。これというのもあのタコが放課後に開いた模試直前、放課後ヌルヌル強化学習のお陰で…」

 

 

実はクラスの中で寺坂以外のメンバーは、7月1日に実施された全国模試を受けており、殆どの者が過去最高の順位を叩き出している。クラスの中で唯一寺坂だけが遅れている形になっているのだ。

 

 

「てめ!あの放課後ヌルヌルうけたのか?!」

 

「い、いやあ…まあ」

 

「ヌルヌルなんざバックれよーって、三人で言ったじゃねーか!」

 

「でもヌルヌルすんのと、ヌルヌルしないのじゃ大違い…」

 

「ヌルヌルうるせー!」

 

 

ドッ!!!!

 

 

「いってえ…」

 

「成績欲しさに日和りやがって。裏切りもんが…」

 

 

 気にくわねえ。どいつもこいつも、あのタコに取り込まれやがって、居心地悪い…

 

 

「クソッ!」

 

 

寺坂は村松を後ろの木に向かって押し倒した後、気分を悪くしながら旧校舎の中へと入っていた。そして教室の中から…

 

 

「マジかよ殺せんせー!」

 

「ん?」

 

 

ガラガラ!!!

 

 

「まるで本物じゃねぇか!」

 

「すげ〜なこれ!」

 

「これ本当にバイク模型なんですか?」

 

「勇人君!これは正真正銘バイク模型ですよ!」

 

「まじか…」

 

 

殺せんせーが教室の中にバイク模型を持ち込んでおり、服装もレーサーの格好だった。

 

 

「何してんだよ、吉田」

 

「あぁ、寺坂。この前殺せんせーとバイクの話で盛り上がっちまってよ。うちの学校でこういうの興味ある奴少ねぇから」

 

「良いですか皆さん!先生は大人な上に、漢字の漢と書いて漢の中の漢。この手の趣味も一通りかじってます。しかもこのバイク最高時速300km出るらしいですよ!先生一度本物に乗ってみたいもんです」

 

「アホか!抱きかかえて飛んだ方が速ぇだろ」

 

 

「「「「「「ははははは!!!!」」」」」」

 

 

「くっ!」

 

 

ガシャ!!!

 

 

寺坂はこのクラスの雰囲気が嫌だったのか、殺せんせーのバイク模型を蹴り飛ばした。

 

 

「にゅやーー!!!!!」

 

「なんて事すんだよ寺坂!」

 

「寺坂!いくら何でもそれは酷いぞ!」

 

「謝ってやんなよ。大人な上に漢字の漢と書いて漢の中の漢の殺せんせーが泣いてるよ」

 

 

「「「「「「そーだそーだ!!!!」」」」」」

 

 

「きっ…」

 

 

どうやら寺坂は本当に機嫌が悪いみたいだ。

 

 

「てめぇら…虫みてぇにブンブンうるせーんだよ!キモいから駆除してやんよ!」

 

 

カタン!

 

 

プシュウ!!!!!!!

 

 

「うわ?!」

 

「なんだこれ!」

 

「殺虫剤!?」

 

「目に入ったらヤバいやつか?!」

 

 

寺坂は自分の机の中からスプレー缶を取り出してそれを叩きつけたのだ。

 

 

「寺坂君!やんちゃするにも限度ってものが…!」

 

 

パシ!

 

 

「触んじゃねーよ。このモンスターが、大体気持ちわりーんだよ!テメーも!このモンスターに操られて仲良しこよしのお前らも!」

 

 

「「「「「「「……………」」」」」」」

 

 

「なにがそんなに嫌なのかねぇ…気に入らないなら殺せばいいじゃん。せっかくそれが許可されてる教室なのに」

 

「おいカルマ…お前ケンカ売ってんのかよ?いいぜやってやんよ!だいたいテメーは最初から…」

 

 

ガシィ!!!

 

 

「ダメだってば寺坂…ケンカなら口より先に手を出さなきゃ…」

 

「くっ…!離せ!」

 

 

パシュ!

 

 

「チッ!くだらねー」

 

 

ガラガラ!ガシャン!

 

 

寺坂は不機嫌のまま教室から出て行ってしまった…

 

 

「なんなんだよ、アイツ!」

 

「一緒に平和にやれないもんかなぁ…」

 

「前原?お前まで不機嫌なるなよ」

 

「勇人…別に俺は不機嫌じゃねーよ!ただちょっと寺坂の奴にムカついてるだけだ」

 

「そう…」

 

 

 いや前原…それを不機嫌って言うんだよ。

 

 

「うにゅう…」

 

「殺せんせー?ほっといて良いんですか?」

 

「そうですね…そもそも何故、寺坂君が不機嫌なのかも分かりませんし…逆に木村君は何かご存知で?」

 

「いや〜流石に…」

 

「まあ…そうですよね…」

 

 

殺せんせーも悩み中だ。

 

 

「ん〜(寺坂どうしたんだろ)」

 

「勇人?どうしたの?」

 

「いや、寺坂の奴ここ最近ずっと不機嫌だなーって」

 

「別に良いんじゃない?寺坂って、いつもあんな感じだったし。ほっといても大丈夫よ」

 

「え〜そうかな?」

 

「そうよ」

 

「なあ凛香?なんか冷たくない?」

 

「そう?別に冷たく無いと思うけど…それにさっき言った通り。寺坂はいつもあんな感じだし。そこまで気にしなくても大丈夫と思うわよ」

 

「だと良いけど…」

 

 

そしてその日の夜…

 

 

ガシャン!!!

 

 

寺坂は夜の森の中で薬剤混入された液体の水を川に流していた。

 

 

「…」

 

 

 地球の危機とか。暗殺の為の自分磨きとか。落ちこぼれからの脱出とか。正直な所どーでもいい。その日その日を楽して、適当に生きたいだけだ。だから俺は…

 

 

パチ!パチ!パチ!

 

 

「ん?」

 

「ご苦労様!約束してた報酬の10万円だ。受け取ってくれ」

 

「どーも」

 

「寺坂君のおかげで、効率良く準備ができたよ」

 

「…」

 

 

 こっちの方が居心地いいな…

 

 

寺坂を買収した人物とは…

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なにせあのタコは鼻が利く。だから君のような内部の人間に頼んだのさ、イトナの性能をフルに活かす舞台作りをね」

 

「…」

 

「寺坂君、私には君の気持ちがよくわかるよ。だから安心しなさい。私の計画通り動いてくれれば、すぐにでも奴を殺し、奴が来る前のE組に戻してあげよう」

 

「それは、ありがてぇーな。シロさんよ」

 

 

寺坂の事を買収したのは「シロ」だ。

 

 

ストッ!

 

 

「ん?」

 

「お前は…あのクラスの赤髪の奴より弱い。馬力も体格もあいつより勝るのに、なぜかわかるか?」

 

「はあ?何が言いたんだよ」

 

 

イトナは木の上から飛び降りると、そのまま寺坂の顔を覗き込む様な形で寺坂の左目を大きく開くた。そして、こう言い放った。

 

 

「お前の目にはビジョンがない。勝利への意志も手段も情熱もない。目の前の草を漠然と喰ってるノロマな牛は、牛を殺すビジョンをもった狼には勝てない」

 

 

普通に辛辣だ。

 

 

「んだと…この野郎!」

 

「まあまあ…そこまでにしてやってくれ」

 

「きっ…」

 

「決行は明日だ。よろしく頼むよ。寺坂君」

 

「…」

 

 

そして次の日…

 

 

殺せんせーの様子が明らかにおかしかった。

 

 

「うぅぅぅぅぅ…くぅぅぅぅ…」

 

「なによ、さっきから意味もなく涙流して」

 

「いいえ、イリーナ先生…鼻なので、涙じゃなく鼻水です。目はこっち」

 

「紛らわしい!」

 

 

 目と鼻の距離感が明らかにおかしい…てか何で、目より鼻の方が少し上にあるんだよ!

 

 

「なあ渚?殺せんせーって鼻水も黄みたいだな」

 

「うん、確かにそうだね」

 

「弱点メモに書く?」

 

「勇人?鼻水の色って弱点になるの?」

 

「う〜ん…多少」

 

「多少ね…」

 

 

 いや…普通に考えて鼻水の色は弱点じゃないか。

 

 

「どうも昨日から体の調子が少し変です」

 

「先生って休まなくても大丈夫なんですか?」

 

「ご心配無く矢田さん。先生はこれぐらいで…」

 

 

ガラガラ…

 

 

「おぉー!寺坂くん!」

 

 

シュバアアア!!!

 

 

「今日は登校しないのか心配でした!」

 

 

殺せんせーは寺坂が登校してくれた事に大量の鼻水粘液をぶち撒き長ら喜んでいる。勿論、寺坂の顔にかかっているが。

 

 

「…」

 

 

 寺坂君。昨日君が教室に撒いたスプレー缶は、奴だけに効くスギ花粉みたいなものだ。触手生物の感覚を鈍らす効果がある。そうした上で、あのモンスターをプールに誘い出すんだ。我々も後で君と合流する。

 

 

「おいタコ…」

 

 

寺坂は殺せんせーのネクタイで自分の顔にかかった鼻水を拭くと、こう宣言した。

 

 

「そろそろ本気でぶっ殺してやんよ!放課後プールへ来い。弱点なんだってな…水が。おい!テメーらも全員手伝え!オレがこいつを水ん中に叩き落としてやっからよ」

 

 

ガタッ!

 

 

「寺坂…お前ずっとみんなの暗殺には強力してこなかったよな?」

 

「おい前原!」

 

「止めんな勇人!正直言って、もう限界だ」

 

 

前原は我慢の限界が来たみたいだ。顔もちょっと険しい表情を浮かべていた。

 

 

「おい寺坂、話の続きだけどよ。今までずっとクラスの暗殺に協力して来なかった奴の命令なんかに、みんなが「はい、やります」って言うと思うか?」

 

「フン…別にいいぜ?来なくても。そんときはオレが賞金100億独り占めだ!」

 

 

ガシャン!

 

 

寺坂はそう言い残して、教室から出て行ってしまった。

 

 

「なんなんだよ、寺坂の奴」

 

「もう正直ついて行けねーわ」

 

 

吉田や村松も限界のようだ。それに最近の寺坂の横暴さは、4月の頃とは比べ物にならない。

 

 

「私、行かなーい」

 

「同じく」

 

 

倉橋さんと岡野さんも行かない宣言…他のみんなも行く気配がない様だ。

 

 

「みんな行きましょうよー」

 

 

ドロドロ……

 

 

「うぉっ!粘液に固められて逃げられねぇ!」

 

「せっかく寺坂くんが私を殺る気になったんです。みんなで一緒に暗殺して気持ちよく仲直りです…」

 

 

ドロドロ……………

 

 

「まずアンタが気持ち悪い!」

 

 

殺せんせーの鼻水粘液が教室の床全体に広がってしまった。しかも殺せんせーも大量の粘液で顔も見えない。ガチモンのモンスターだ。

 

 

「寺坂君!」

 

「寺坂!ちょっと待てよ!」

 

「ん?」

 

 

渚と勇人の2人は殺せんせーの鼻水粘液を脱出した後、すぐに寺坂の事を追いかけに行った。

 

 

「んだよ。渚と勇人かよ」

 

「本気で殺るつもりなの?」

 

「あぁ?当たり前じゃねーか。渚」

 

「なら、ちゃんと皆に具体的な計画話した方が…」

 

 

ガシッ!!

 

 

「うるせえよ。弱くて群れるばっかの奴らが、本気で殺すビジョンもないくせによ!俺はな…テメーらとは違う。楽して殺るビジョンを持ってんだよ!」

 

 

バサッ!

 

 

寺坂が渚の胸ぐら掴んでイライラ混じりに、強気で言い放ったが…その顔はどこが迷いがある様にも見えた。

 

 

「チッ!」

 

「なあ、寺坂が考えた暗殺なんだろ?それなら渚の言う通り、ちゃんとみんなに説明した上で、暗殺した方が成功率は格段に上がると思うぞ?」

 

「…」

 

 

しかし寺坂は勇人の事を無視して裏山の方に去ってしまった。

 

 

「渚…大丈夫かな?寺坂の奴」

 

「うん、どうだろう…」

 

 

 寺坂君は「計画」に自信を持ってる様子だった。けど…自分に自信を持ってる様には見えなくて、しゃべる言葉もなんだか借り物のようで、ちぐはぐさに胸騒ぎがした

 

 

そして放課後

 

寺坂の言われた通り、クラスみんなでプールの中に入った。

 

 

「よーし、そうだ!そんな感じでプール全体に散らばっとけ」

 

「偉そうに」

 

「なんなんだよ…ほんと」

 

 

クラスの皆が寺坂のに対して不満を漏らす中、千葉がある事に気付いた。

 

 

「あれ?そう言えば、カルマと勇人の2人はどうしたんだ?」

 

「あ、確かに居ないね?」

 

「速水?2人の事見てないか?」

 

「いや、見てないわよ?逆に千葉君や矢田さんは、2人の事見てないの?」

 

「俺は見てないな…」

 

「うん、私も見てないかな?」

 

「そう…」

 

 

カルマと勇人の2人はこの暗殺には参加しなかった。

 

 

「疑問だね、僕は。君に他人を泳がせる器量なんてあるのかい?」

 

「うるせー竹林、とっとと入れ!」

 

 

ドッ!

 

 

「フェ!」

 

 

ドバーン!!!

 

 

「すっかり暴君だぜ、寺坂のやつ」

 

「あぁ、あれじゃ一年二年の頃と同じだ」

 

「なるほどー。先生を水に落としてみんなに刺させる計画ですか。それで君はどうやって先生を落とすんです?ピストル一丁では先生を一歩足りとも、動かす事は出来ませんよ?」

 

「…」

 

 

 これは銃ではなく、我々に合図を送る発信機。皆がプールでスタンバイしたら、引き金を引いて、我々に知らせるんだ。君の仕事はそれだけで良い、その後は我々に任せてくれ。

 

 

「覚悟はできたか?モンスター」

 

「もちろんできてます。鼻水も止まったし」

 

「ずっとテメーが嫌いだったよ。消えてほしくてしょうがなかった」

 

「えぇ知ってます。この暗殺の後でゆっくり二人で話しましょう」

 

 

寺坂が殺せんせーに銃を向けたが、殺せんせーの方は顔に緑の縞模様を浮かべており、舐めている様だ。

 

 

「クッ…(ナメやがって…来いイトナ!)」

 

 

そして寺坂が銃の引き金を引いた瞬間…

 

 

ピピ!

 

 

ドカンッ!!!!!!!!!!!!

 

 

プールの水路が爆発し決壊。勢いよく流れ出すプールの水の勢いに、クラスの皆んなは次々と流されていく。

 

 

「なっ?!」

 

「みなさん!」

 

 

シュバアア!!!!

 

 

「「「「「「うわ?!!!!!」」」」」」

 

 

「うわ…」

 

「やばい…流され…」

 

 

寺坂の銃は合図を知らせる為だけでは無く、水路に仕掛けられていた爆弾を爆破する為の発信機でもあった。

 

 

そしてシロとイトナの2人は崖の下で待機していた。

 

 

「水に入って助けなきゃ、殺せんせー。じゃないと数人死ぬ事になるよ?」

 

「来いよ…兄さん」

 

 

シロとイトナの2人は予定通りにシナリオが進んでいる為、満足そうだったが、寺坂の方は…

 

 

「ウソだろ…こんな事…聞いてねーよ」

 

 

 おい…話が全然違うじゃねーかよ!

 

 

寺坂は騙されていた。恐らくシロの奴は寺坂の事を使い捨てにするつもりだ。

 

 

プールの水路が爆破される数分前…

 

 

カルマと勇人の2人は裏山の中で話あっていた。

 

 

「…と言う事だカルマ!ちょっと協力してくれ」

 

「へ〜なるほどね。それで、わざわざ俺に頼みに来たって訳ね」

 

「ま、多少はね?」

 

「勇人?次同じ事言ったら協力しないけど」

 

「ごめんって」

 

 

 カルマの目が一瞬変わった…

 

 

「まあ…良いよ。でもさぁ、ここ最近の寺坂の様子がおかしいって言うけど、いつもと変わんなくない?」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ」

 

 

 カルマ…もしかして聞く気ゼロ?

 

 

「もしかして寺坂の事、どうでも良いって思ってる?」

 

「別に〜、それは無いよ」

 

「なら良いけど」

 

「それじゃあ、話し合いと行きますか」

 

「おっ、そうだな」

 

 

その後は2人で「たわいもない会話」をしていたら…

 

 

ドカンッ!!!!!!!!!!!!

 

 

「「?!」」

 

 

「爆発か?」

 

「勇人!プールの方からだ!」

 

「分かった!行こう!」

 

 

そして2人は衝撃的な光景を目にする事になった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

シュバアア!!!

 

 

「この先は険しい岩場が…落下すれば死んでしまう」

 

 

殺せんせーは触手が水を吸収して、酷く腫れているにも関わらず、流されている生徒達の救出作業の方を行なっていた。ただこれもシロの作戦の内だ。

 

 

「気づかって助けてる間に、奴の触手はどんどん水を吸っていく」

 

「少しの水なら粘液を出せば防げるぞ?」

 

「そうだねイトナ。周囲の水を粘液で固めて透過圧を調整できる。しかしな…奴の粘液は出尽くしている」

 

「つまり、防ぐ事はほぼ不可能」

 

「そう言う事だ」

 

 

シロの作戦はほぼ完璧に近かった。殺せんせーを出来るだけ弱体化させた後にトドメを刺す。これほど効率が良い、やり方はないだろう。

 

 

「カルマ!もうすぐプールだ!」

 

「ああ!」

 

 

その頃、カルマと勇人の2人は走ってプールがある場所まで急いでいた。そしてプールに到着した後、2人が見た光景は…

 

 

「何これ?」

 

「嘘だろ…なんでプールの水が無くなってんだよ」

 

 

2人が見た光景はプールから水が消滅しており、もぬけの殻になっていた。

 

 

「俺は何もしてねぇ…話がちげーよ、イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに…」

 

「おい寺坂…話が違うって、どう言う事だよ?それに何でイトナの名前が出てくるんだよ?」

 

「お、俺は…」

 

 

寺坂は余りの衝撃的な光景を見たせいで、明らかに動揺と困惑をしていた。寺坂は右手にハンドガンを握っていたが、その手もずっと震えていた。その時カルマがある事に気付いた。

 

 

「なるほどねぇ…寺坂が立てた計画じゃなくて、シロが立てた計画って事ね」

 

「マジかよ寺坂!何で誰にも言わなかったんだよ!」

 

 

ガシッ!

 

 

「おい勇人!い、言っとくが、俺のせいじゃねーぞ!大体こんな、ふざけた計画なんかを、やらす方が悪りーんだ。皆が流されてったのも全部シロの奴が…」

 

 

ダン!

 

 

「がっ!」

 

 

寺坂は勇人の胸ぐらを掴むと、必死な表情を浮かべて、自分の責任では無いと訴えて来たが、その内容を聞いて痺れを切らしたのか、カルマが寺坂の頬をグーで殴った。そして倒れ込んみ、尻餅をついた寺坂に対して、カルマはこう言い放った。

 

 

「流されたのは皆じゃなくて自分じゃん。人のせいにする暇あったら、自分の頭で何したか考えたら?」

 

「…」

 

「勇人。先行ってるよ」

 

「分かった」

 

 

カルマはそう言い残して岩場の方へと向かった。

 

 

「勇人…俺は…」

 

「寺坂!後悔の方はまだだ!とにかく俺らも行くぞ!」

 

「お、おう!分かった!」

 

 

勇人は、まだ倒れ込んでいる寺坂の腕を引っ張り、2人でカルマの後を追うように岩場の方へと向かった。

 

 

そして、その岩場の方でも大きな動きがあった。

 

 

「うわーーー!!!」

 

 

シュバアア!!!!

 

 

「彼で最後!」

 

 

シュウ!

 

 

「にゅや?!(触手?!)」

 

 

ドボーン!!!!

 

 

「一体なぜ触手が…」

 

「久しぶりだね、殺せんせー」

 

「にゅう!シロさん…」

 

 

殺せんせーは最後に流されていた吉田を救出した瞬間、イトナに足を触手で掴まれ、そのまま川に叩きつけられてしまった。

 

 

「ちなみに君が吸ったのはただの水じゃない。触手の動きを弱める成分が入っている。寺坂君に手伝ってもらって、まんまと上手くいったね」

 

「イトナ君…」

 

「さぁ…兄さん。どっちが強いか改めて決めよう」

 

「にゅう…」

 

 

第二次・殺せんせーVSイトナの戦いが始まった。

 

 

その頃、寺坂と勇人の2人は…

 

 

「勇人…俺は自分が強いと思っていた」

 

「は?いきなり何言ってんだよ」

 

 

 小学生の頃の俺は、弱そうな奴にターゲットを決めて支配下に置く。それで俺は楽勝だった。だけど…この学校じゃその生き方は通じなかった。

 

 俺がE組行きになる前の話だ。

 

 

「お〜い!次の授業サボって、コンビニ行こうぜ!」

 

「い、いや…次の英語の予習しないと…」

 

「そんなもん一回しなくても大差ねーよ!」

 

 

 俺はいつもの様に弱い奴に狙いを定めて、支配下に置こうとしたが…

 

 

「うっわ…サルが人間脅してら!」

 

「あぁぁ!誰だ言ったや…」

 

 

 だけど…この学校じゃその生き方は通じなかった。俺以外の連中は机に向かって黙々とペンを動かしていた。

 

 

・次の授業の予習をする者。

 

・さっき行われた授業の復習をする者。

 

・他の教科の予習や復習をする者。

 

 

俺は浮いていた…

 

 

「寺坂君さぁ…ウチの中学で、そーゆー事してる奴いないんだよね。どんなにガキ大将が粋がっても、E組に落ちたら無条件で弱者なんだから」

 

「…」

 

「君…クラス成績ビリだよね。楽しみだなぁ!E組に落ちた君に石拾って投げつけられる日が!」

 

「…」

 

 

 俺の持っていた安物の武器は…ここじゃ一切役立だないと、この時悟った。しかも、多分これから一生そうなんだと。こいつらみたく先々を見据えて努力する奴が、大人になって俺みたいな無計画な奴を支配するんだ。落ちこぼれのE組に落ちて、同じような目的のない連中と楽に暮らせると思ってたら、そこでも違った。いきなりモンスターがやってきて、クラスに対して「地球を救う」と言うデカい目的を与えちまった。取り残された俺はここでも、目的があって計算高いやつに繰られて使われてた。

 

 

そして勇人の方は寺坂の話を聞いて、こう思った。

 

 

「なぁ寺坂?それで良く、椚ヶ丘中に入れたね」

 

「あぁ…たまたま勉強ができたからなぁ」

 

「たまたまね…」

 

 

 たまたま勉強が出来て、偏差値66の中高一貫に合格するとか…余程の地頭じゃないと厳しくね?俺なんてどれだけ勉強したと思ってるんだよ…

 

 

「けど寺坂…この世の中は「結果が全て」なんだ。ガキ大将は小学生までだ!椚ヶ丘中とか関係無しに、普通の市立中学校でも同じなんだ。中学生は全然子供だけど、小学生の頃と同じ様に何も考え無しに生きていてもダメなんだ。それに…いや、ごめん…なんか上から目線で物申して」

 

「勇人…この際だ。俺に対してはっきり言ってくれ」

 

 

 俺は変わらないと、一生このままだ。

 

 

「…分かった。寺坂…高校受験で人生の大半が決まるぞ。偏差値が低い高校に進学したら、その高校名が一生自分の履歴書に残るんだ。そうなったら良い会社に就職する事は事実上不可能になる。俺もそれが怖いから一生懸命勉強してるんだ」

 

「…」

 

 

 俺が勉強をサボり、模試もサボってる間にも、勇人を始めクラスの皆は勉強に勤しんでいる。このままだと俺は…

 

 

「くそっ!」

 

「あ、でも落ちこぼれって言っても進学校の落ちこぼれだから、そこまで気にしなくてもいいと思うよ。寺坂レベルでも普通に偏差値50以上の高校には進学できるよ!」

 

「おい!」

 

 

 さっきまでの空気がおかしくなったじゃねーか!

 

 

その頃、岩場の方では…

 

 

シュバアア!!!!!

 

 

「速い…重い…」

 

 

シュバアア!!!!!

 

 

「前よりもはるかに…」

 

 

殺せんせーがイトナの攻撃に対して押され気味だ。

 

 

「フッフ…気付いたかい?触手の数を減らし、その分パワーとスピードを集中させた。単純な子供でも繰りやすい」

 

「にゅう…」

 

「兄さん。俺は強い…誰よりも強い」

 

 

イトナもシロもこのまま行けば勝てると思っている様だ。実際戦況だけを見れば、イトナが圧倒的に優勢だ。

 

 

「まじかよ…」

 

「あの程度の水のハンデは、なんとかなるんじゃ?」

 

「どうしたんだろ…」

 

 

その様子をクラスの皆は岩場の上から見ていた。

 

 

「水だけのせいじゃねー。力を発揮できねーのは、お前ら助けたからよ」

 

「寺坂…なに呑気に語ってんだよ」

 

「それより見ろよ!タコの頭上」

 

 

 寺坂が指を刺した場所を見ると、原さんが今にも折れそうな木に掴まっていた。しかも村松と吉田の2人が身動きが取りづらい場所に取り残されていた。

 

 

「ああ!ポッチャリが売りの原さんが、今にも落ちそうだ!」

 

「殺せんせー!原さんたちを守る為に!?」    

 

「アイツ、ヘビーで太ましいから危ねぇぞ」

 

「このままだと、ボキって行くぞ!」

 

 

普通に失礼過ぎる。

 

 

「助けないと!」

 

「でもどうやって…」

 

 

この時クラス委員の礒貝がある事に気付いてた。

 

 

「オマエひょっとして今回の事、全部奴らに繰られてたのか?」

 

「フン…あぁ!そうだよ。目標もビジョンもねぇ短絡的な奴は、頭の良いかに繰られる運命なんだよ。だがよ…繰られる相手ぐらいは選びてぇ!奴らはコリゴリだ。賞金持ってかれるのもやっぱ気に入らねぇ!だからカルマ!テメェが俺を操ってみせろや!」

 

「はぁ?本気で言ってんの?」

 

「当たりめーだ。その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ!完璧に実行してあそこにいるの助けてらやぁ!」

 

「いいけど、実行できるの?俺の作戦…もしかしたら死ぬかもよ?」

 

「別に良いぜ、やってやんよ!こちとら実績持ってる実行犯だぜ?」

 

 

カルマが考えた作戦とは…

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さあて、とどめにかかろう。イトナ」

 

 

バシャア!!

 

 

「おいシロ!」

 

「寺坂君。わざわざ岩場の上から降りてきたんだね」

 

「よくも俺を騙してくれたな!?」

 

「まぁそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃった、だけじゃないか。それにE組で浮いてた君にとっちゃ丁度いいだろ」

 

「うるせぇ!テメエらは絶対に許せねぇ。イトナ!テメェ俺とタイマン張れや!」

 

 

寺坂は着ているシャツを脱ぐと。それを盾にして、イトナの前に立った。

 

 

「無茶です!寺坂くん!生身の人間は触手には勝てない!」

 

「すっこんでろ!ふくれタコ!」

 

 

その様子を見て、シロは笑った後、恐ろしい命令をイトナに命じた。

 

 

「フッフッ…健気だねぇ「潰せ」イトナ」

 

 

 今「潰せ」って命令した?!

 

 

「シロさん。恐ろしい事言わなかった?」

 

「カルマ君!」

 

「大丈夫だよ渚君。シロの狙いは俺達生徒を殺す事じゃない。俺たちが生きているからこそ、殺せんせーの集中力をそげるんだ。原さん達も一見危険だけど、イトナの攻撃の的になる事は恐らく無いと思う。だから寺坂にもいっといたよ。気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言えば触手のスピードもパワーもその程度。死ぬ気で喰らいつけって」

 

 

ドッ!!!!!!!!!!!

 

 

「ぐふぅ……」

 

 

イトナの触手の一撃が寺坂を捉えたが、寺坂の方は何とか堪えた。しかし寺坂のシャツはイトナの触手にそのまま回収されてしまった。

 

 

「よく耐えたねぇ。寺坂君。ではイトナ。もう一発あげなさい。次で終わりにしてやれ」

 

「ん?ヘックション!」

 

「え…?」

 

 

イトナが寺坂のシャツを自分の所まで持って行ったら、急にイトナがくしゃみをし出し、それが止まらなくなった。

 

 

「寺坂の奴、昨日と同じシヤツのままなんだ。つまり変なスプレーの成分を至近距離で、たっぷり浴びたシャツだってことだ。イトナだってタダで済むはずがない。で、イトナに一瞬でもスキをつくれば、原さんは、殺せんせーが勝手に助けてくれる」

 

 

カルマが解説をしている時に、殺せんせーが原さんの事を救出した!これでシロの作戦も失敗に終わったわけだ。この後にする事は…

 

 

「吉田、村松!」

 

「あ?」

 

「は?」

 

「デケェの頼むぜ!」

 

「まじかよ!」

 

「ったく!」

 

「殺せんせーと弱点一緒なんだよね。じゃあ、おんなじ事をそっくりそのまま、やり返せばいいわけだ。勇人?」

 

「OK!皆!カルマの言った通り、ここから飛び降りて、イトナに水をぶっ掛けてやれ!」

 

 

「「「「「「おう!!!!!!」」」」」」

 

 

勇人の合図と共にクラスの皆が一斉に川に飛び込んで行った。

 

 

「おら!」

 

「行くぜ!」

 

「よっしゃ!」

 

「しゃあ!」

 

 

ドボーン!!!!!!!!!

 

 

皆が飛び込んだ後は、イトナに水を掛ける者。イトナの周りで足をバシャアバシャア動かし暴れ回る者。このお陰でイトナの触手はどんどん水を吸収してしまい、殺せんせーと同じ様に大きく腫れていた。

 

 

「だいぶ吸っちやったね。これで、あんたらのハンデが少なくなった」

 

「これで勝負は互角になったな。どうするイトナ?」

 

「くっ…」

 

「それで、どーすんの?勇人の言う通り、勝負は互角になったけど、まだ続けるの?もし続けるなら、こっちも全力で水遊びさせて貰うけど」

 

「なっ!」

 

 

この時、クラスの皆はバケツやビニール袋などに水を入れて準備していたり、中には両手で水を掬っている者もいた。

 

 

「これはやられたな。しょうがないが、ここは素直に引くとするか。この子等を皆殺しにしようものなら、反物質臓が、どう暴走するか分からん。帰るよ、イトナ」

 

「くっ!」

 

 

 イトナは今回も事実上の敗北した事に対して怒りを表情に出していた。その時、顔が巨大化していた殺せんせーがイトナに話しかけた。

 

 

「どうです?皆で楽しそうな学級でしょう?そろそろちゃんとクラスに来ませんか?」

 

「…」

 

「イトナ。モンスターの言葉に惑わされるな。一緒に帰るよ」

 

「くっ!」

 

 

バシャア!!!

 

 

しかしイトナは、そのままシロと共に帰って行った。まだまだクラスに来る気配は無さそうだ。

 

 

「ふー、なんとか追っ払えたな」

 

「良かったね、殺せんせー。私達のお陰で命拾いして」

 

「ヌルフフフフ、もちろん感謝してます!まだまだ奥の手はありましたがねぇ」

 

 

 これで一件落着のはずが…

 

 

「そーいや寺坂君。さっき、私のこと散々言ってくれたわよね。ヘビーだとか、ふとましいだとか」

 

「い、いや…あれは状況を客観的に分析してだな…」

 

「言い訳無用!動けるデブの恐ろしさを舐めんじゃないわよ!」

 

 

 寺坂はそのまま原さんから詰め寄られてしまい、かなりお困りの様だ。

 

 

「あーあ、本当に無神経だよな、寺坂は。そんなんだから人の手の平で転がされるんだよ」

 

「そうそう!寺坂の悪い所だな」

 

「うるせーカルマ!勇人!テメェら2人とも高い所から呑気に見てるんじゃねぇ!」

 

 

ガシッ!!

 

 

「は?!」

 

「ファ?!」

 

 

バシャア!!!!!!

 

 

寺坂がカルマと勇人の服を掴むと、そのまま川にぶん投げてしまった。2人ともびしょびしょだ!

 

 

「はぁ!?何するんだよ。上司に向かって!」

 

「あーもう!ずぶ濡れになったじゃねーか!」

 

 

 てかカルマ。中学生で自分の事を上司呼びは中々厨二やぞ。

 

 

「何が上司だ!触手を生身で受けさせるイカれた上司がどこにいる!大体テメーはサボリ魔の癖に、おいしい場面は「いつも」持っていきやがって!それと勇人も同罪だ!」

 

 

 寺坂の言い分は実に分かる。言い分…え?

 

 

「は?!何で俺が同罪になるんだよ!」

 

「当たりメーダ!今回の暗殺、勇人参加してなかったろ!」

 

「あーそれは私も思ってた。それに勇人は何でサボったのかな?」

 

「これを機会に、たっぷり泥水も飲ませようか!特にカルマ!」

 

「賛成!私は井上君に泥水飲ませるよ!」

 

 

 寺坂の言葉に同調した、片岡さんや中村さん。そして倉橋さん達が一斉にカルマと勇人に襲いかかった。しかも後ろから前原や磯貝。そして杉野や岡島までもが襲いかかって来た!

 

 

「あっ!こら!」

 

「ちょ!何で俺が!」

 

 

 カルマと勇人の2人はクラスの皆から揉みくちゃにされていた。カルマの方は寺坂からめちゃくちゃ顔面に水を掛けられており、勇人の方は前原と杉野の手によって、バケツの水をあり得ない程、掛けられていた。それでもカルマと勇人の2人も表情はとても笑顔だったが、2人よりも寺坂の方が1番幸せそうな表情を浮かべていた。

 

 

そんな寺坂の様子を殺せんせーは、この様に評価した。

 

 

「寺坂は高い所から計画を練るのに向いていない。彼の良さは現場でこそ発揮されます。体力と実行力で自信も輝き、現場の皆も輝かせる。実行部隊として成長が楽しみなアサシンですねぇ!渚君もそう思いますか?」

 

「はい、殺せんせー!」

 

「にゅるフフフ!」

 

 

 寺坂君は、かなり乱暴だけど、ちょっとずつクラスに馴染んできた。僕もカルマ君も勇人もクラスの皆も。その事が内心では嬉しくて、クラス全員がその時は見落としてたんだ。水なんかよりもっと大きな、殺せんせーの最大の弱点を…

 

 

「それじゃ殺せんせー。僕も勇人に泥水飲ませて来ます」

 

「渚君?本当に飲ませてはダメですよ?」

 

「…」

 

「…え?渚君?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回予告

 片岡さん。クロールの基本動作を確認しましょう。バタ足は足の股関節から動かし、蹴り上げる時は膝を伸ばします。腕は掌を少し外側に向けてかけ始め、手で下へ水を押し切ってから、肩を回すようにして前に戻します。


次回・期末の時間



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