偽。【チ。現パロ二次創作小説】   作:すう

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こちらはチ。の二次創作小説です。
現代パロディを含みます。
ドゥラカ、レヴァンドロフスキ、フライ、ラファウが十二歳です。
ほんのり現代J国が舞台です。

よろしければお付き合いください。


偽。〜家族と呼ぶには、まだ早い 1

「やっぱりあなた方、そういう関係だったんですね」

 

 孤児院に迎えに来た夫婦に向かって、ドゥラカの第一声はそれだった。

「??」

 夫婦は彼女の言葉に目を丸くする。

 母親となる女は、異端解放戦線の組織長。

 父親となる男は、同じ組織で隊長をしていた。

 しかし。

 どうやら「六百年前の記憶」は二人には残っていないらしい。

「忘れてください。これから、よろしくお願いします」

 すかさず訂正して、頭を下げる。

 この日、十二歳のドゥラカは、夫婦の子供となった。

 

「慣れるまでは、呼びやすい名前で呼んでね。私はヨレンタ」

「私は、シュミット。よろしく」

 夫婦はドゥラカに選択権を委ねる。

 思春期と呼ばれる多感な時期の子供を引き取る為に、相応の心構えをしたのだろう。

 ドゥラカは頷いて、適切な距離感とは何かを考える。

 いきなり彼らを父や母と呼ぶには、気を使いすぎだと思われるかもしれない。

 考えあぐねた末に、少し距離感はあるものの、慣れた呼び名で呼ぶことにした。

「はい。ヨレンタさん。シュミットさん」

 ヨレンタは柔らかく微笑んで、ドゥラカに新しい家を紹介する。

 町のほぼ中心に位置するその家は、二階建てのごく普通の住宅。ただ、三人で住むには大きい気もする。

 質素だが妙に整っている。

 生活感があるようで、どこか仮の匂いがするのは、ドゥラカが今世で生まれてから、家族というものと暮らしたことがないからなのか。

 孤児院では様々な年齢の子どもがごっちゃになって大部屋で生活していた。

 昨日までの賑やかすぎる生活から一変した静かな空間に、実感が持てないのかもしれない。

 食卓には三脚の椅子。

 子供部屋。

 ドゥラカが住むことを想定して用意された品々を、少し気恥ずかしい思いで見つめる。

「疲れたでしょう。部屋で休んでね」

「夕食になったら声をかける。一緒に食べよう」

 二人はそう言って、子供部屋のドアを閉める。

「?」

 ――今、何か見てしまったような。

 ドアが閉まる瞬間に見えた、仮面を取ったような二人の表情の変化が引っかかった。

 

 新しい教科書。

 新しい通学鞄。

 真新しい物尽くしの物で身を包んだドゥラカが、転校先の学校にやってきた。

 手続きには、今日も夫婦二人が揃っていた。

「じゃあ、ドゥラカさん。お友達と仲良くね」

「はい」

 校長に連れられて、校内を案内される。

 何の変哲もない、普通の公立学校。

 ドゥラカの通う教室は古びた校舎の三階にあった。

 校長が引き戸を開ける。

「あ!」

 教室の中から、声が上がる。

 好奇心で彩られた中に、ひときわ驚きで満ちた目を見つける。

「嬢ちゃんじゃねえか!」

「レヴァンドロフスキ君。友達は名前で呼ぼうね」

 すかさず担任の注意が入る。

 担任は髭面の男性教師。特徴のある前髪。

「ボルコさん……?」

「ドゥラカさん、先生って呼んでね」

 強面から想像しづらい言葉遣いでドゥラカも注意された。

 そして、席の一番前に一等冷めた目で周りを見つめる少年。

「あんたは、フライ……!」

 彼らは、六百年前に、異端解放戦線として共に戦っていた戦士たち。そして、その裏切り者。

 同じ時代に生きていた者たちが、今は同じ小学校の時間割で生きている。

 

 ボルコに席に着くよう促され、ドゥラカは空いている席へ向かった。

 黒板にはドゥラカの名前が書かれ、今日の目標のところには「新しい友達の名前を覚えましょう」と書かれている。

 均整の取れた、少し硬くも優しい字だ。

 教室を満たす、そわそわとした空気。

 転校初日らしく、授業中も視線は新しい転校生に向いていた。

 チャイムが鳴った瞬間、空気を引き裂く大声に、教室が震える。

「久しぶりだな、嬢ちゃん!」

 飛ぶように、ドゥラカの席にやってきたのはレヴァンドロフスキだった。跳ねた前髪が風に揺れる。

「レヴァンドロフスキ君、廊下に立つ?」

「おっと、悪い悪い!」

 悪びれもせず、レヴァンドロフスキが机に肘をつく。軽い口調は前世のままだ。

 ボルコは胃のあたりを押さえながら次の授業の準備に移っていった。

「いやあ、まさか同じクラスとはな。……運命だな」

「運命って言葉、軽すぎませんか」

「そうか? 俺は、重く、受け止めてるぜぇ……!」

 目を閉じて、拳に力を込める。

「お前が言うから軽いんだ」

 ぽこん、と丸められた紙片をレヴァンドロフスキの頭に当て、低い声が割って入る。

 前の席から振り返ったフライが、冷めた目で二人を見た。

「……なんか言い訳はないの、裏切り者」

 ドゥラカも同じ温度でフライを見る。

「まあまあ。気にすんな。こいつは昔からこうだ」

「良いわけないでしょ!私らこいつのせいで死……」

 ぱっと口を塞がれる。

「おっと。トゲトゲ言葉はやめときな。それに、今更だ。軽くしねえと生きらんねえだろ」

「……」

「俺は、今世では大きな目標掲げてんだ。それを達成するまで、今回は簡単にくたばんねえぞ」

「目標?」

「何それ」

 フフフ、とレヴァンドロフスキが含ませた笑いを浮かべる。

「それはな……シュミット隊長とヨレンタ組織長を見つけ出し、今世こそくっつけることだ!」

「あの二人、もう夫婦ですよ」

「いきなり俺の目標終わりかよ!え?どう言うこと?」

 レヴァンドロフスキが頭を抱える。

 ドゥラカは自分が転校してきた成り行きを話す。

「良かったなぁ隊長ぅ……でもちょっと複雑だぜ」

「お前の今世の目標終わったな、お疲れさん」

「……じゃあ給食を残さないに目標変える」

「いつも残してないだろ」

 フライがレヴァンドロフスキの肩をポンと叩く。

「でも……」

 ドゥラカはそこまで言って、言葉を濁す。

「何か、変なんですよね、あの二人」

「?どう言うことだ」

 ゴホン。

 わざとらしい空咳に振り返ると、ボルコが立っていた。

 腕を組み、静かに三人を見下ろしている。

「休み時間は、終わっているよ」

「すみません」

「廊下に立つかい?」

 レヴァンドロフスキが肩をすくめる。

「いや、今日は勘弁してくれ。再会で盛り上がっちまってな……」

「再会?」

 ボルコの眉が、少しだけ動く。

「……君たち、知り合いなのかい」

「ああ、六百年前にな……!」

「レヴァンドロフスキ君」

「冗談です」

 ボルコには、昔の記憶は無いようだ。

 ドゥラカは筆記用具を取り出して、算数の授業に耳を傾ける。

 ……それにしても。

 なんて因縁が深い場所なんだ。

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