偽。【チ。現パロ二次創作小説】   作:すう

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偽。2 〜放課後教会活劇 3

 「あのっ学校の課題でっ、こ、ここのことっ聞きたいんですけどっ」

 教会前の掃き掃除をしていたオクジーに向かって、レヴァンドロフスキがカチコチに緊張した面持ちで話しかけた。

 右手と右足を同時に出し行進するレヴァンドロフスキを冷めた目で見つめ、フライが補足する。

「教会の成り立ちを調べています。いつからここにあるんでしょうか?」

「えっお、俺……?」

 話しかけられたオクジーは、レヴァンドロフスキと同じくらい挙動不審になって慌てている。

「そ、そう言うのは、バデーニさんじゃないと……」

 離れたところで様子を伺っていたドゥラカたちが動き出す。

「レヴァンドロフスキ君、下手だね」

「しっ」

 日は落ちかけ、ドゥラカたちの背後に長い影を作っている。建物の影に身を潜ませるようにして移動していく。

 教会の裏手は周囲の建物に囲まれて、通りからは完全に人の目の死角になっている。

 古い木造りの扉が目の前に現れる。

 ここだ。

 ラファウが早速ドアに手をかける。

「おっと」

 ラファウの焦った声に、アルベルトがドゥラカの服の裾を強く掴む。

 周囲の見張りをしていたドゥラカが視線をラファウの手元に向ける。

 ドゥラカが心の中で舌打ちした。

 真新しい南京錠。

 嘘でしょ。

「そこで何してる」

 低い声。

 大きな黒い影がドゥラカたちを覆った。

 心臓が飛び出るかというほど、三人が同時に飛び上がった。

 背後にいたのは、黒い修道服の、顔に傷と眼帯をつけた男。

「……バ、バデーニ神父……!」

「なぜ私の名を知ってる」

 以前のままの、不機嫌そうな表情で子供たちを見下ろす。

 固まったままの三人を見て、バデーニが、はあと大きなため息をつく。

「ここは子供の遊び場ではない。帰りたまえ」

 しっしっと猫か何かを追い払うように手を振る。

 作戦、失敗か。

 ドゥラカが一歩後ずさったその時。

「……あのっ」

 アルベルトが意を決して、声をあげた。

「?」

「ごめんなさい。僕、前に教会の中に大切なものを隠してて、それを取りに来たんです……」

 手はドゥラカの裾を掴んだまま、涙目で訴える。

「……勝手に中に入って、ごめんなさい」

 バデーニがじっとアルベルトを見つめている。

 ドゥラカはアルベルトを背中に隠し、バデーニからの視線を遮った。

 バデーニはもう一度、はあ、とため息をつく。

「それならそうと、最初から素直に言いたまえ。この中にあるのか」

 そう言って懐から鍵を取り出し、南京錠の鍵穴に刺した。軽い音がして錠が外れる。

 なんだ、話が通じるじゃないか。

 ほっとして肩の緊張が抜ける。

「コソ泥のような真似をするんじゃない。ただでさえ怪しい奴らがウロウロして……」

 バデーニの言葉は最後まで出なかった。

 黒服の男が二人、バデーニの背後で佇んでいた。

「声を出すなよ。……中に入れ」

 男たちの手には、夕陽を反射して鈍く光る得物が握られている。

「……」

 バデーニの手が、庇うようにドゥラカとアルベルトの肩に回された。

 

 ジリジリと、黒服の男が迫る。

 バデーニとドゥラカたちが教会の中に追い詰められる。

 通路が真っ暗になった。背後で扉が閉められたのだ。

 目前でちらつかされるナイフに、アルベルトは震えている。

「……何の用だ」

「神父さんが話を聞いてくれないから、俺たちの上司も痺れを切らしちゃってね。強硬手段に出るってさ」

 完全に優位に立った勝者の立場で、男たちが下卑た笑みを浮かべた。

「俺たちどーしてもこの土地が必要なの。古い教会なんて潰しちゃって、有効活用してあげようって話でさ」

「……この教会の歴史的価値は高い。所蔵されている資料もな。それを理解しないとは、これだから凡俗は。頭が足りないんじゃないのか?」

「ちょっ煽らないでください」

 バデーニの暴言にドゥラカが青ざめる。

 男が眉間に青筋を立ててバデーニを殴りつける。

「ひぇ……」

 目の前で振るわれる暴力に、アルベルトが腰を抜かした。

「おい、こいつら縛っちまえ。どうせ全部燃やすんだ。遺体が何人出たって分からねえ」

「なっ」

 男の合図で、もう一人の黒服がロープを取り出した。その手つきは手慣れていて、躊躇いがない。

 脅しじゃ、ない。

「やめろ」

 殴られた頬を赤く腫らし、バデーニが呻いた。

「子供は関係ないだろう」

 男の手がピタ、と止まった。

「お優しいねえ」

「でももう、見られちゃったし」

 そう言って再びロープを強く握りしめる。

 

 ガタァン

 

 突如、教会の中に重い音が響いた。

 男たちが一斉に振り向く。

「なんだ?」

 続いて、足音。重く、しかし着実にこちらに向かってくる。

 にわかに、黒服たちの顔に焦りが見え始める。

「バデーニさん」

 闇の中から、巨体が現れる。

 高い上背。

 広い肩。

 困ったような眉。

 彼が両手に抱えているものを見て、思わずドゥラカが声を上げる。

「……あんたたち」

 レヴァンドロフスキとフライが、オクジーの両脇に抱えられていた。

「……ポキポキされる」

「卵みたいに握りつぶされるかも」

 二人はブルブルと震えながら、なすがままに抱えられている。

 オクジーが目の前の状況に、眉根を寄せた。

「……子供が、怖がっているじゃないですか」

 おまいう。

 その言葉を誰もが思ったが、口には出さなかった。

 黒服の男が怯んでロープの拘束が解けた。ドゥラカはアルベルトの手を取って抜け出す。

 オクジーは子供二人を抱えているとは思えない歩みで黒服たちとの距離を詰めていく。

 次の瞬間。

 

 ――タァン

 

 乾いた音。

 一拍のち、オクジーが崩れ落ちる。

 抱えられていたレヴァンドロフスキとフライが床に放り出された。

「オクジー君!!」

 バデーニの叫び。

 オクジーは片膝をつき、左足を押さえている。指の隙間から、赤いものが床に滴り落ちている。

「お前ら、何を手間取ってる」

 オクジーの背後から、ドスの効いた低い声がかかる。

 靴音が近づいてくる。

 続いて、銃を構えた黒服の男が、教会の入口に姿を現した。

「アニキ!」

「すぐ燃やすんだ」

 男は淡々と言った。

「こうしちまえば、手っ取り早い」

 倒れたままのフライを踏みつけ、その額に、冷たい銃口を押し付けた。

「……!」

「うああああ!」

 レヴァンドロフスキが男の足に縋り付く。

「っこのガキ」

 銃口はレヴァンドロフスキへ向かう。

 引き金に手をかける指先にわずかな力が加わった、その時。

「こっちです!」

 教会の中に大きな声が響き渡った。

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