ヴァンガードG ~小さな戦士達の体験~   作:剣舘脇

2 / 2
ぶっ壊れないレベルでスキルとか色々考えなきゃな……
まぁ、既に何個かぶっ壊れかもしんないって思ってるスキルは確定してるんですけどね(´・ω・`)

それではどうぞ(^ω^)_凵


TURN2:新たな出会い

 それから何も考えず直ぐに眠りについたが、"幼少期の頃から偶に見る例の夢"は見る事無く翌日を迎えた。何時もならアラームが鳴ってから起きるのだが、今日はアラームより早く起きてすぐに身支度を済ませ、外に出る。

 朝の陽射しから目を守るように手で影を作りつつ歩いていた俺は、此方を一方的に知る謎の人物『J』からの贈り物である《ダンボール戦機》のカードが入った黒い箱を愛用の斜め掛けバッグへ仕舞ってある事を確認してから、昨日スマホで調べたカードショップである『カードキャピタル2号店』へと向かう。

 スマホの地図アプリを頼りにカードキャピタル2号店に向かう最中、俺はある事を考えていた。考え事と言えば勿論、昨日『J』という謎の人物から"贈り物"と称して送り付けられてきた謎多き《ダンボール戦機》のカードについてだ。

 

(《ダンボール戦機》……『J』とやらが俺に託すって送り付けて来た謎のカード。公式サイトにすら情報が載っていないから、俺の見立てでは限りなく本物に似せて作られた精巧な偽物だと思ってる。だが、それならそれでわざわざ俺にコレを送り付けてくるかとも思うんだよな……一体何の意図があって俺に送り付けてきたんだ? 『J』って奴は)

 

 頭の片隅でそんな事を考えつつ、地図アプリの案内の元歩いていれば、程なくして目的地に到着した事を報せるアラームがスマホから鳴る。それに気付いて顔を上げると、目的地のカードキャピタル2号店の看板が目に入った。カードショップには初めて来る為、緊張しつつも中へ入る。

 勇気を出して恐る恐る店内に入れば、開店して間も無い時間の為か店員の姿は無く、客も一人しか居なかった。店内に唯一居た緑色の髪の少女を横目に、視線を横に向ければヴァンガードのカードがショーケースに並べられている光景が目に入る。

 ショーケースに並ぶカードを見つつ、今俺が持っているダンボール戦機のカードが他に無いかどうか探していたが、予想通りダンボール戦機のカードは無い。それならば当初の目的であるダンボール戦機のカードを調べてくれる人を探しつつ店内を見て回っていた時だった。

 

「あれ? 君って確か、昨日来た転校生の……」

 

「ん? 君は……」

 

 誰かに声を掛けられ、其方の方へ振り向く。そこに居たのは先程見掛けた緑色の髪の少女だった。昨日質問攻めにされていた最中、一瞬だが見た事あるのは薄らと覚えていたが、次から次へと質問が飛び交い、もみくちゃにされていたのもあって名前を聞きそびれていた事を思い出す。

 その為、俺は目の前に居る緑色の髪の少女の名前を知らない。見た事はあるけど誰なのか分からずに首を傾げていると、緑色の髪の少女の方も同じ事を思っていたらしい。その証拠に俺を見て"転校生"と言っていた。

 

「えっと……枢導(くどう)ハルト君、だよね?」

 

「え、あ、そう、だけど……君は?」

 

「私? 私は安城トコハ、よろしくね! ねぇ、此処に居るって事は、枢導君もヴァンガードやってるの?」

 

「あ、えと……よ、よろしく。いや、ヴァンガードはやった事ないんだ。昨日、誰か送って来たのかは分からないけど、俺宛にヴァンガードのカードが届いててさ。それを詳しい人に調べて欲しくて此処に来ただけなんだ」

 

「あ、そうなんだ……って、調べて欲しい物ってカードなの? それならカムイさんに聞いた方が早いかも」

 

「……カムイさん?」

 

 緑色の髪の少女元い、トコハが呟いた"カムイさん"とは誰の事だろうと首を傾げていると、こっちだよと手を引っ張られる。積極的なんだなと頭の片隅で考えていたが、変な事を考えている間に俺は彼女の案内の元、此処のバイトと思われる店員の元まで連れて来られた。

 恐らく"カムイさん"と思われる店員はバックヤードから持って来たと思われるダンボール箱を複数抱えて忙しそうにしていたが、トコハが声を掛けると、その声に気付いたのか抱えていたダンボール箱をその場に置いて此方へ振り向いた。

 

「こんにちは、カムイさん!」

 

「おっ、いらっしゃいトコハちゃん! ……って、ん? 見た事ない顔が居るな。なぁ、トコハちゃんの隣に居る其奴は一体誰なんだ?」

 

「彼は昨日、私のクラスに来た転校生の枢導ハルト君。枢導君、カムイさんに調べて欲しいカードがあってカードキャピタルに来たみたいなんです」

 

「俺に調べて欲しいカード? えーと、枢導ハルトって言ったか。俺は此処でバイトをしてる葛木カムイっていうんだ。よろしくな」

 

「あ……はい。よろしくお願いします、カムイさん」

 

「それでだ。一体何のカードを調べて欲しいのか、俺に見せてもらえるか?」

 

「調べて欲しいカードっていうのはコレ、なんですけど……」

 

 カムイさんにそう言われ、俺は肩掛けバッグから《ダンボール戦機》のカードが入った、天面に『V』と刻まれた黒い箱を取り出してカムイさんに渡す。俺から箱を受け取ったカムイさんは箱を開けて中に入っているカードを一枚一枚丁寧に見ていたが、見ていく度に段々と表情が変わっていった。

 

「どれどれ───って、何だコリャ!? 《LBX》に《ダンボール戦機》だとぉ!? こ、こんなの俺は見た事ない……ん? 待てよ……という事は、まさか()()()()のクランかよぉぉぉっ!? いっ、一体どうなってんだぁぁぁ!?」

 

「……えっ、また新種? カムイさん、また新種のクランって言ってたけど、それってどういう事なんだ……?

 

 ダンボール戦機のカードを見たカムイさんの叫びが店内に響く。幸いにも開店して間も無い時間帯のお陰か店内には俺とトコハ、カムイさん以外に人の影は無かった為、変に注目を集める事は無かったのでそこは内心ホッとしている。

 然し、カムイさんが"また新種のクラン"と言っていた辺り、『J』から贈り物と称して送り付けられてきたダンボール戦機の他にも、カムイさんが自身の目で見たと思われる未知のクランとやらが存在しているという事になる。

 ダンボール戦機のカードの謎もそうだが、カムイさんが叫んだ新種のクランという単語が気になって首を傾げて考え込んでいると、いつの間に見ていたのか、トコハもダンボール戦機のカードを見て驚きを隠せていない様子でいた。

 

「えっ……何これ、《LBX》に《ダンボール戦機》!? 初めて見るクランだし、ノヴァグラップラーやディメンションポリスにもロボットは居るけど、それとは違って初めて見るカードばかり……!」

 

「俺は勿論、トコハちゃんもコイツを知らないって事は……考えられるのは二つ。コイツはまだ誰も知らないレアなクランか、もしくは偽物かの二つだが……それを明らかにするには、調べるしかないって事だ。少しの間借りる事になるが、良いか?」

 

「あ、はい。俺もこのカードについて調べたんですけど、このカードの情報は公式サイトにも一切無かったんです。なので、このカードが偽物なのかどうか凄く気になるので……お願いします」

 

「いよっし! ハルトの許可も貰った事だし、早速調べてみるとするか!」

 

 カムイさんは俺が持ってきたダンボール戦機のカードを、カードを読み取る機能を持っている装置の上に置き、装置と繋がっているパソコンでカードの詳細を調べ始める。そうして、パソコンを叩く事数分。果たして、その結果はというと……

 

「……ふむ。結果から先に言うとだな、ハルトが調べて欲しいと持ってきたコイツは全部公式のカードで間違いない……が、少し妙だな」

 

「妙? カムイさん、それってどういう事ですか?」

 

 俺が偽物だと思っていたダンボール戦機のカードは全て公式のカード。つまり、精巧に作られた偽物ではなく紛れもない本物という事になる。然し、カムイさんが言うには本物のカードである事の他に妙な点もあるらしい。

 俺が持ってきたダンボール戦機のカードは全て公式のカードだという点を除けば、俺は勿論だがトコハも知らなかったし、ヴァンガードのカードに詳しいカムイさんですら見た事の無いカードなのは確か。

 それ以外にもこのカードには妙な点があるのだろうか、と首を傾げていれば、その言葉を聞いて疑問に思ったトコハがカムイさんに尋ね、それに答えるようにカムイさんは話を続ける。

 

「そうだ、コイツの妙な点を話す前に聞いておきたい。ハルト、お前はヴァンガードについて何処まで知ってるんだ?」

 

「いえ、何も……というより、一度もやった事ないんです。ヴァンガード。そういうカードゲームがあるんだなぁ、という事くらいしか知らなくて」

 

「なるほどな、まだ何も知らない初心者って事か。んじゃ、ヴァンガードのルール云々は後にして……まずはヴァンガードがどういう物か教えるぞ」

 

「お、お願いしますっ!」

 

 その申し出を快諾すると、ニッと笑みを浮かべたカムイさんはヴァンガードについて解説を始める。ヴァンガードとは、自分自身が惑星クレイで暮らす住人であるユニット達を導く者……《ヴァンガード》となり、彼等と共に戦うカードゲーム。

 ヴァンガードの舞台となる架空の惑星である惑星クレイにはユニットと呼ばれる住人達が暮らしており、彼等はクレイに6つ存在する国家にそれぞれ属している。更に各国家合わせて24のクランが存在し、ヴァンガードファイター達は24あるクランの中から自分に合ったクランを選んで自分だけのデッキを構築し、日々研鑽を積んでいるとの事。話の流れで二人がどのクランを使っているのかついでに聞く事となった。

 トコハは世界最高峰の高知能生物が豊穣な自然と共に生きる緑の大地が特徴の国家『ズー』に属している《ネオネクタール》の使い手であり、カムイさんはルール無用の商業格闘集団に宇宙人や異界の生命体が跋扈する未知の大陸が特徴の国家『スターゲート』に属している《ノヴァグラップラー》の使い手らしい。

 と、若干話は逸れたがカムイさんからヴァンガードというカードゲームと惑星クレイ、国家とクランについて詳しく聞いた所で先程カムイさんが呟いていた"コイツには妙な点がある"という一言が気になった俺は、その事を聞いてみる事にした。

 

「あの、カムイさん。先程"コイツには妙な点がある"って言ってましたけど……それって一体何ですか?」

 

「ん、そうだったな。お前が持ってきたコイツ等……《LBX》達が属するクランである《ダンボール戦機》。そのクランの記された色に妙な点があってな。最初見た時は灰色に見えたから俺のノヴァグラップラーと同じ『スターゲート』に属するユニットかと思ったんだが……まぁ、コレは見た方が早いか。ハルト、クランの記された所をよく見てみな」

 

「あ、はい。えーと……って、あれ? 灰色の他にも様々な色が入ってる。昨日見た時になんで気づかなかったんだコレ……」

 

「そう、ハルトが見た通り、灰色が主体で様々な色が各所に差し色されている不思議な配色になっているんだ。ヴァンガードのクランには《クレイエレメンタル》っていう七色の配色で記された特定の国家に属さない特殊なクランがあるんだが、それとは違う配色なのを加味すると……恐らくコイツ等は惑星クレイに存在する6つの国家全てに属していない特殊なユニットかもしれない。まぁ、その他にも秘密が隠されているかもしれないが……現状、それ以上の事はさっぱり分からないな」

 

「そう、なんですか……」

 

 カムイさんの言う通り、クランの記された色を見てみると灰色を主体に様々な色が各所に差し色として入っている。それに加えて惑星クレイのどの国家にも該当しないかもしれないという。だが、カムイさんが言うにはそれ以上の事は分からないらしい。

 カードに詳しい人であるカムイさんですらお手上げならば、このカードの謎がより一層深まった事になる。カムイさんが調べてくれたお陰でこのカード達は精巧に作られた偽物ではなく本物のカードである事は分かったものの、それ以外の謎が解決しなかったのもあって落ち込んでいると、カムイさんが俺に質問をしてきた。

 

「そういやハルト、其奴は一体何処で手に入れたんだ? 一応公式のカードだというのは判明したが、其奴は恐らく……というか十中八九お前だけしか持ってないカードだ。俺としては、其奴を手に入れた経緯が知りたいんだが……話してくれるか?」

 

「あっ、それは私も気になる!」

 

 質問してきたカムイさんに便乗する形でトコハも話に乗っかって来た。とはいえ、それとなく有耶無耶にして誤魔化す事も一瞬考えたのだが、トコハは初対面にも関わらずカードに詳しいカムイさんの所に連れて行ってくれた恩があるし、カムイさんは俺が持ってきたダンボール戦機のカードを調べてくれた恩がある。

 二人には多大なる恩がある故に此処は有耶無耶にせず、俺はダンボール戦機のカードを手に入れた経緯を正直に話す事にした。昨日の帰り、『J』という人物から《君ならば扱える筈だ。故に君に託す》という手紙と共に"贈り物"と称してダンボール戦機のカードを自宅に送り付けられて来たという事を。

 

「……という訳なんです」

 

「なるほどなぁ……その『J』って野郎がハルトにダンボール戦機のカードを送り付けて来たって事か」

 

「はい。『J』って奴がどんな意図を以てこのカードを送って来たのか、それが分からなくて……」

 

「確かに……"私には扱えなかったが、ハルトならば扱える筈だ"って、なんか意味深な言い方だし。もしかして、そのカードには枢導君以外に託す事が出来ないような重要な秘密があるのかな?」

 

「……確証は無いけど、多分そうだと思う。じゃなかったら俺に託すような真似はしない筈だし」

 

 謎の人物『J』から"贈り物"と称して送り付けられ、俺の元に来た《ダンボール戦機》のカード。トコハの言う通り、俺以外に《ダンボール戦機》のカードを託す事が出来ない重要な秘密がこのカードに隠されているかもしれないが、もう一つ気になった事があった俺は、その事を一旦頭の片隅に追いやってからカムイさんにその事を聞いてみた。

 

「そう言えばカムイさん、このカードを見た時にまた新種のクランかよって言ってましたけど……俺のダンボール戦機以外にも新種のクランとやらを見た事があるんですか?」

 

「ん? 嗚呼、あるぜ。数日前だったか、赤い渦巻き頭の奴……新導クロノっつったか。其奴が此処に来てな、その時俺に見せてきたのが《ギアクロニクル》。ハルトのダンボール戦機同様、誰も見た事の無い新種と言うべきクランだったんだよ。まさか立て続けに新種のクランをこの目で見る事になるとは思わなくてな、つい叫んじまったって訳だ」

 

「ギアクロニクル、それがカムイさんが見たっていうダンボール戦機同様新種のクラン……って、しれっと言ってたけど新導クロノって誰?」

 

「あ、そっか。枢導君は昨日来たばっかりだから新導の事を知らないよね。新導は私と枢導君と同じクラスメイトなんだけど……新導ってあまり良い話を聞かないし、その上目付きも悪いからクラスの皆も新導の事を怖がってるみたいなの」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「枢導君も新導絡みの良くない話を聞く事があるかもしれないけど、彼奴もそんなに悪い奴じゃないから。一匹狼で居る彼奴にとっては余計なお世話かもしれないけど、もし見掛けたら声を掛けてあげてね」

 

 初めて聞いた名前に首を傾げていると、その名を聞いたトコハが新導クロノという人物について簡潔に話す。新導クロノは俺やトコハと同じクラスメイトなのだが、トコハが言うにはあまり良い話を聞かない人物のようだ。

 ただ、トコハ曰くクロノは悪い奴では無いとの事。何故かと思って聞いてみた所、以前トコハの親友であるクミちゃんこと『岡崎クミ』が昼食のパンを落としてしまった所、それに気づいたクロノが拾ってくれた事があったらしい。

 だが、その時の光景は誰がどう見ても目付きの悪い仏頂面の不良少年がか弱い女子からパンをタカっているようにしか見えなかったのもあり、その光景を目撃したトコハはクロノの言い分を聞かずに一方的に罵ってしまったらしい。後に真相を知ったトコハはクロノの元まで謝りに行ったそうだ。

 そんな出来事もあった為か、トコハはクロノの事を噂通りの悪い奴ではないと思っているそう。だが、彼絡みの良くない話というのは依然としてチラホラと聞く事がある為、それ絡みもあってかは不明だが一人で居る事が多いクロノを見掛けたら声を掛けてあげてと言われた俺は素直に頷いておく。

 それは兎も角、新導クロノこそカムイさんがその目で見たという新種のクランである《ギアクロニクル》の所有者だという。俺とクロノ、共に新種とされるクランの所有者同士というのも有るが、良くない話云々を抜きにしても是非とも一度会って話してみたい気持ちが湧いて出てきたのは言うまでもない。

 そんな事を考えたり、話を聞いたりしている間に時間も過ぎていったのか、カードキャピタル2号店に続々と人が来始めた。人が増え始めた為、店長に怒られる前にそろそろ仕事に戻らなきゃなと傍らに置いておいた複数のダンボール箱を抱え直したカムイさんがとある一つの提案を出す。

 

「嗚呼、そうだハルト。良い機会だからヴァンガードを始めてみたらどうだ? 『J』って野郎に其奴を託された云々を抜きにしても、折角手に入れた其奴を使わずに埃を被らせておくのは勿体無いと思うぜ?」

 

「えっ、ヴァンガードを?」

 

「うんうん! 私もその方が良いと思う!」

 

「えと、安城さんとカムイさんには言ったと思うんだけど……俺、ヴァンガードやった事無いんだけど。ルールも知らないし」

 

「それなら大丈夫! ルールなら私が一から教えてあげるから! ね、枢導君もやろうよ! ヴァンガード!」

 

「え、と……」

 

 仮にも異性同士だと言うのにそんな事は一切気にしないといった様子でやたらとグイグイ来るトコハに気圧されたのか、身体が勝手に一歩、二歩と後退りしていった。助けを求めるように近くに居た筈のカムイさんの方へ視線を向けたが、当の本人はダンボール箱を抱えてその場を後にしていた為、既に居ない。

 カムイさんの助けを借りる事が出来ない事が確定してしまった為、意を決してトコハの方に向き直ると、後退りした俺を見て首を傾げていた。どうしてほぼ初対面の俺に対してここまで優しくしてくれるのだろうかと疑問に思った俺は、勇気を出してその事を聞いてみる。

 

「えと、その、安城さんは───」

 

「そう言えば、枢導君と私って同い年だよね? 私の事はさん付けじゃなくて呼び捨てで良いよ。その代わりなんだけど……私も枢導君の事はハルトって呼んで良い?」

 

「まぁ、それは別に良いけど……それじゃあ、改めて聞きたいんだけどさ、トコハは何で初対面の俺にそこまでしてくれるんだ?」

 

「えっ? 何でって……私はね、ハルトと友達になりたいからだよ。それ以外に理由って要るかな?」

 

「友達……って、俺と?」

 

 友達になりたい。その一言を聞いて呆けた顔で己自身を指差しつつ確認すると、満面の笑みで頷くトコハ。その笑顔が眩しく感じたせいで反射的に若干目を細めたが、友達になりたいと言ってくれたのは嬉しく思う。

 ()()()()()()()()()()()俺の地元にはトコハのような明るい子が一人も居なかったから尚更嬉しく感じたのかもしれない。それは兎も角、友達になりたいと面と向かって言ってくれたトコハの気持ちを無碍に出来る程、俺は冷めた男じゃない。

 それに加えて、『J』から託された《ダンボール戦機》のカードを実際に使ってみたいとも薄々思っていた。未だに分からない大きな謎が隠されているであろう彼等と共にヴァンガードを続ければ、いずれ何処かで一方的にこのカードを託して来た謎の人物である『J』に会えるかもしれない。そう思ったのもある。

 

「わ、分かった。今日から友達という事で……よろしく、トコハ」

 

「うん! 私の方こそよろしくね、ハルト!」

 

「それじゃあトコハ、早速で悪いんだけど……俺にヴァンガードを教えてほしいんだ」

 

「勿論! こういうのは習うより慣れろって事で早速ファイトしよ……って言いたい所だけど、その前にまずは簡単で良いからヴァンガードのルールを覚えよっか。詳しいルールはやりながら教えるからね」

 

 差し出された手を取り、握手を交わした後にその一言を告げると、元から元気一杯という様子だったトコハはより一層元気を増したような気がした。そのままの勢いで再び手を握られ、店内に設置されているテーブルまで連れて来られる。

 経験者のトコハは兎も角、俺は生まれてこの方初めてヴァンガードをやる為、先ずはヴァンガードのルールから覚えようという事でルールブックを渡された。それを読んでいたが、ルール的に言えばそこまで複雑では無いようだ。

 そこまで分厚くは無いルールブックを読み終えた後、次は『J』から一方的に託された《ダンボール戦機》のデッキの中身を知る事を始める。カードゲームに疎いとは言え、自分と共に戦ってくれる仲間達を知る事をせずにぶっつけ本番でファイト出来るとは思っていない。

 箱からカードを出して1枚ずつテーブルに並べていき、それをトコハと共に見ていく。ヴァンガードとして戦場に立つ自分と共に戦う仲間となるユニット達が描かれたカードには様々なスキルが備わっており、それぞれ発動タイミングやコスト等が違ってくる。初めて目にする物というのもあって一つ一つしっかりと覚えようとしたが、流石に多かった。

 

「うーん……やってみるとは言ったけど、ヴァンガードって意外と覚える事が多いんだな。全部覚えられるかどうか不安かも……」

 

「まぁ、そこら辺はやっていく内に自然と覚えていくから大丈夫だよ」

 

「……そうかな」

 

 ヴァンガードのルールは何となく覚える事が出来たものの、ユニット達が持つスキルに関しては覚える事が多くて目を回しかけた。それを愚痴として零すと、傍らでその愚痴を聞いていたトコハが大丈夫と念を押してくれた為、その言葉に首を傾げつつも頷きを返す。

 とはいえ、共に戦う仲間であるユニット達が持っているスキルを全て覚える事が出来なくてもある程度は覚えた為、テーブルに広げていたカードを一つにまとめてデッキの形に戻した俺はそれを持ち、またもトコハに連れられる形で店内に設置されているファイト用のテーブルへと向かう。

 何の因果か《ダンボール戦機》のカードを手にした俺は、生まれてこの方初めてヴァンガードファイターとしての道を歩み始める事となる。とはいえ、初めてという事もあって上手く出来るのか怪しかったが、今はただこの時を全力で楽しもうと心に決めた。

 そして、もう一人の新種のクランである《ギアクロニクル》の所有者こと新導クロノとの出会いがこの後に待っていて、彼との出会いを皮切りに、()()()を境に永らく動く事が無かった運命の歯車が漸く回り始める事になるとは、この時の俺はまだ知る由もない。




ようやく書き切れた……(´・ω・`)
次は初めてのヴァンガードから始められるかな。ダンボール戦機をクランにした以上、唯一無二の特徴とか諸々考えなきゃな……

それでは、お読み下さりありがとうございました。
また次回(・ω・)ノシ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。