空向剣伝説外伝: RTA Any%怪異譚~勇者は十五回(くらい)4ぬ 作:nocomimi
スカイロフト―
ハイラル王国が地上において始まる前、女神ハイリアによって空に上げられた平和な都市である。
このスカイロフトの上で、魔物とは無縁の平和な暮らしを人々は享受していた。
だが、かつて地を荒し封印された悪神『終焉の者』が復活しようとしていた。そんな折りである。
スカイロフトに、リンクという若者が住んでいた。彼は騎士学校の一年生。進級を控えた彼は、「鳥乗りの儀」という進級試験に挑戦することになっていた。
ある朝、彼は幼馴染みであり、校長の娘・ゼルダからの言伝てを運んできたロフトバードという鳥に起こされた。
そう、学園のマドンナであるゼルダは、この若者に気があったのである。*1
「今日はがんばってね」的なことを書いた手紙を読んだリンクは、それに興味も示さず放り捨てると、宿舎の部屋から廊下に出た。
すると廊下の隅に同級生のセバスンが立っている。
時代が時代なら、「うらなり」とでもあだ名されるような、虚弱な少年だ。
だが、リンクは彼と挨拶し、短い会話をした。
親切だからではない。彼にとってそれは「やらなければならない」ことだったからだ。*2
そしてリンクは屋外に出た。
すると、屋根の上から「おーい」と声を掛けて来るものがある。
ホーネル先生だ。
話しを聞くと、レムリーという猫のようなペットが逃げたから捕まえてきて欲しいという。
しかし、この公私のけじめもへったくれもない面倒な頼みを、リンクは忠実に聞き入れた。
これも親切心からではない。彼にとってそれは「やらなければならない」ことだったからだ。*2
リンクは、庇の間を飛び移ったり蔦を登ったり、果ては箱を壁に寄せて足場にしたりして、
とうとうその猫みたいな生物を捕まえ、先生のところに連れていった。
そして先生から労いの言葉を聞くのもそこそこに、神殿のほうに向けて駆け出していった。
先生の言うには、そこでゼルダが待っているらしいのだ。
(そこに美少女が待っているというなら、普通の男子高校生ならダッシュしないわけがないと読者諸君は思われるだろう。だがこの予想は見事に裏切られることになる。)
そして、彼は神殿への階段の手前に置いてある鳥の石像で立ち止まり、そこで短く祈りを捧げると、*3
彼は神殿への階段を駆け登った。
そして神殿に入るか................と思いきや。
リンクは神殿の前で右手に折れ、そして崖の上から飛び降りた。
十メートルを超える高所だ。彼はたちまち下の地面にたたきつけられた。
だが、それでも傷ついた身体を奮い起こし、蔦を掴んで崖に登ったリンク。
彼は、なんともう一度崖から飛び降りた。
そして、同じことをさらにもう一度。
衝撃に耐えかねた彼の身体は限界を迎えた。
薄れゆく意識。呻き声を上げながら若者は倒れた。
いったいなぜ?
美少女との逢瀬が待っているのになぜ身投げなど?
成績不良に悩んでいたのだろうか?
それとも、もっと実存的・哲学的な悩みを抱えていたのだろうか?
.............だが、彼の行動にはある計算があったのだ。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
彼は、意識を失う寸前に「リセット」と心の中で念じたのである。*4
そして次に意識を取り戻したリンクは、スカイロフトの一角にあるウッドデッキの上に降り立った。
しかし、彼が出現したスカイロフトはいつものスカイロフトではなかった。
霞が掛かったように空気が白い。しかも、住人の姿が全く見当たらない。
そう、彼は『平行世界のスカイロフト』に転移したのである。
彼はまず、そこから神殿への階段を駆け上がった。
だが、途中の門が閉まっている。そこで彼は柵を乗り越えて、なんと下に飛び降りた。
スカイロフトは空に浮いた都市だ。下には雲しかない。そこを飛び降りたのである。
ところが不思議なことに、彼はまるで見えない手に救出されたかのように、門の向こう側にある広場に降り立ったのである。
そして彼は、先ほど祈りを捧げた鳥の像でもう一度祈りを捧げ、*3
そして神殿への階段を駆け登っていった。
美少女ゼルダに逢うためではない。そもそもこの平行世界にゼルダはいないのだ。
神殿の敷地に駆け込むと、リンクは女神像の台座に近づいた。
不思議な事に、台座の正面に「穴」が開いていて、中に入れるようになっている。普段はそんなものはないのに。
リンクは迷わず駆け込むと、女神像の内部に入っていった。
* * * * * * * *
そこには、直径十メートルほどの薄暗い部屋があった。
そしてその中央の床には、剣が刺さっている。
それに近づいた途端、不思議な人影が目の前に現れた。少女のような姿で、ケープを纏っている。だがその人影は空中に浮いており、その雰囲気は精霊のようだった。
「お待ち申し上げておりました。わが創造主より選ばれし.....」
しかし、リンクはそれを見ても驚くことはなかった。彼はぞんざいに言った。
「ファイ、いいからいいから。全部知ってるよ。何も言わないでいい」
そして迷わず剣に近づくと、それを引き抜いた。
「あの...でも......マスター。その剣について少しお話をしなければ.....」
少女は言葉を継いだ。だがリンクはそれを聞いても眉ひとつ動かず、こう唱えた。
「......スキップ」
すると、少女は絶対に逆らえない指令を聞いたかのように即座に黙り込んだ。不服そうではあったが。
それだけではなかった。リンクの背後には、いつの間にか校長であるゲポラ先生が立っている。
「おお...伝説の剣が蘇っておる.....言い伝えの通りだ.....」
彼は何やら感嘆して呟いていたが、リンクは意にも介さず、挨拶さえしない。
彼は部屋の奥にあった祭壇の前に進み、剣を空に向けて掲げた。
すると剣に光が宿ったように輝き始めた。リンクがそれを祭壇に向かって振り下ろすと、衝撃音とともに光の筋が飛び出した。
すると、祭壇が下から押し上げられるようにせり上がってきた。
そしてリンクは、どこから手に入れたのかわからないが、石板をその祭壇に嵌め込んだ。
すると、女神像から光が発っせられた。*5
その光は、スカイロフトの下部に広がる雲のある場所に向けて照らされた。すると雲に大きな穴が開いたのである。
その穴は、彼がこれから冒険するべき危険な世界への入り口であった。
(次回に続く)
*1 この「気のあるそぶり」「妙に積極的なヒロイン」が、結構後に明らかになる真相の伏線....のような気がしたが、そもそもRTA(Any%)ではその真相の開示のシーン自体が出てこないので関係ないか。
*2 別の世界では「フラグ立て」ともいうらしい。
*3 別の世界では「セーブ」ともいうらしい。
*4 別の世界では「バックインタイム」ともいうらしい。
*5 このときリンクは女神像の台座の中にいるのでそれを見ることはできなかったが、とにかく光が発せられたのである。そうなのだったらそうなのである。