空向剣伝説外伝: RTA Any%怪異譚~勇者は十五回(くらい)4ぬ   作:nocomimi

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リンク、雷龍の不手際を逆手に取ってVRから本物のギラヒム様を召喚する

リンクは、トロッコ広場の隅にいる雷龍に向かって走っていった。

 

この雷龍は、本来死んでいたのが勇者の奮闘により生き返る...........はずだった。

 

すなわち、彼は最初骸骨の姿で勇者に発見されるのである。

 

そして、勇者がこのトロッコ広場に『時空石』を乗せたトロッコを戻し、その『時空石』の力で広場の時空を過去に戻す。

 

すると、病気で瀕死の状態の雷龍さまが出現するので、

 

勇者は近くにあった『生命の木の苗』をラネール地方からフィローネ地方に持って行き、『時の扉』を通り抜けて数千年の昔に飛び、そこでその苗を植え、それからもう一度『時の扉』を通って自分の時代に戻り、そこでやっと実った『生命の実』を手に入れ、

 

それを瀕死の雷龍さまに食べさせ、蘇らせるという...........はずだった。

 

しかし、ファイが言うところの「デタラメなこと」をリンクが繰り返した結果、*1

 

雷龍さまはなぜか何事もなかったように元気に蘇ってしまっていたのである。

 

ファイが悲鳴を上げるのも無理はなかった。

 

ともあれ、リンクが近づいていくと、雷龍さまは好々爺然とした笑みを浮かべて声をかけてきた。

 

「おう!しばらくしたらって言ったのにもう来たのかい。待ちきれなくなっちまったか?」

 

これはつまり、本来ならばリンクが彼を蘇らせたとき、雷龍さまは恩返しとして彼に『荒修行』をさせてやろうと申し出ていたのである。

 

豪放磊落な口調で龍は続けた。

 

「じゃあ早速始めちまうか。とはいえ、お前さんは勇者様だからな。のんびり遊んでるヒマはねえ。そこでだ。お前さんが今まで経験した困難をおさらいするってのはどうだ?温故知新、古きを訪ねて新しきを知るってやつだ。どうだ、やってみるか?」

 

リンクは頷く。

 

「それじゃ、お前さんの今までの経験を覗かせてもらうぜ....ほうほう、なかなかスゲエことをやってきてるじゃねえか」

 

なんと、この雷龍は、人の経験*2からバトルをバーチャルに再現できるという能力を持っているのである。バーチャルリアリティである。

 

リンクは、冒険の後のほうで対戦した*2敵と戦いたいと申し出た。それもギラヒムを名指ししたのである。

 

だが雷龍は念押しした。

 

「だが、遊びとは言え真剣勝負だ。もしお前さんが負けたら帰っては来れねえ。それでもやるか?」

 

リンクは力強く頷く。

 

「そうだ、言い忘れてたが、ポーチの中の道具は使用禁止だ。ないないづくしじゃあかわいそうだから盾はおまけしてやらあ。今装備している盾は持っていっていいぜ」

 

雷龍は言う。だが、彼は知らなかった。このリンクは、盾も持っていないどころか、ポーチの中もスッカラカンなのである。

 

いや、違った。そもそもポーチ自体を持っていないのだ。文字通り剣一本の勝負である。そういう意味では潔いと言えば潔いのだが。

 

「気合い入れて行けよ!」

 

雷龍はそうリンクを送り出した。

 

だが、この雷龍の手落ちが、後にとんでもない事態を引き起こすのである。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

『バーチャルに再現された』ギラヒムは、最終形態をとってリンクの前に現れた。

 

筋肉ムキムキで、肌は金属のように輝いている。

 

魔法で作り出された円形のフロアの上でリンクと対峙した彼は思った。

 

―なんだ、この勇者とかいう少年は?まだ子供じゃないか。しかも普段着に剣一丁なんて、ボクをナメてるのか?―

 

ギラヒムは悠然と相手に近づく。彼は自信満々だった。素手ではあったが、そのパンチとキックは一撃で人を吹き飛ばすほどの威力だからだ。

 

だが、リンクはギラヒムの攻撃の予備動作を完全に見切って回避すると、後ろに回り込んだ。

 

慌てて振り向いたギラヒム。だがその時にはリンクは子鹿に襲い掛かる狼のように突進していた。

 

バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!

 

縦斬りが連続して襲う。だが最終形態のギラヒムは金属の身体だ。彼は両腕をクロスさせると攻撃を受け止めた。だが、リンクは鬼のような形相で、親の仇でも打つような勢いで斬撃を連発する。

 

バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!

 

押されたギラヒムはフロアの端に追いやられ、とうとう下に落下していった。

 

リンクは、すぐには敵を追わなかった。彼は今立っているフロアの端にしばらくぶら下がりながら待った。そして眼下のフロアが広がり始めると、彼は一呼吸置いて飛び降りた。

 

ギラヒムは再び少年と対峙しながらも、その心に焦りが広がるのを感じた。

 

―こ...こいつ...ボクへの殺意がハンパない。どういう育ち方をしたんだ?―

 

しかし、リンクはすぐさま突きを連発した。ギラヒムはやはり両腕をクロスさせて防御したが、リンクの勢いは凄まじい。

 

ギラヒムは、反撃する間もなくフロアの端に追いやられ、落下していく。そして、リンクは再びフロアの端に掴まり、下のフロアが広がってから飛び降りた。

 

ギラヒムはもはや恐怖に怯えていた。

 

―い..勢いが凄すぎる....パンチもキックも出す暇さえない!―

 

その通りだった。リンクは再び鬼のような勢いで縦斬りを繰り出し続け、押されたギラヒムはまたもフロアから押し出され、落下した。

 

リンクは同様にフロアにぶら下がり、しばらく待ってから降りた。今度は落差が大きく、着地時にダメージを喰らってしまった。だがそんなことを気にするようなリンクではない。

 

再び狂気のように剣を振るいまくったリンクは、ギラヒムをフロアの端に追い詰めて追い落とす。

 

なすすべもなく落下し、下のフロアに叩きつけられたギラヒム。

 

だが、リンクはその時誰も予想できなかった動きをした。

 

彼はフロアの端から跳躍すると、ジャンプ斬りを繰り出したのだ。

 

バトルの舞台である、『封印の地』。それは螺旋状の窪地であった。それを囲んでいた魔法柵を、ジャンプ斬りの慣性力に助けられ、彼は飛び越えてしまったのだ。

 

そして着地すると、近くにあった鳥の像の前で彼は祈りを捧げた。*3

 

そして、ゴロリと寝転んで目を閉じた。*4

 

* * * * * * * * * * * * * * * * *

 

リンクは、『封印の地』で冒険を再開したい、と念じた。

 

すると念じたとおりに、彼は『封印の地』の鳥の像の前に現れた。

 

周囲の風景は、さきほどバトルを中断した状態のままだった。ギラヒムが生成した魔法柵もそのままだ。

 

リンクは後じさりして魔法柵と土の壁の間に無理やり身体をねじ込んでジャンプした。そして魔法柵の内側に入り込むと、しばらく横移動してから今度は魔法柵に突っ込んでジャンプする。すると彼は魔法柵の外に出た。

 

そしてリンクは螺旋状の坂道を走り、登っていくと、ある地点でいきなり落下し始めた。床が『あるように見えて実はなかった』のだ。

 

―うわああああああああ―

 

悲鳴とともに虚空に落ちていく。

 

だがこれこそがリンクの狙ったことだった。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * *

 

再びリンクが身体を起こすと、そこは魔法柵の外なのに、なぜか足元には戦闘用のフロアが生成されていた。

 

しかも目の前にはギラヒムが立っている。

 

しかし、先ほどとは大きな違いが、一つあった。

 

このギラヒムは、『バーチャルに再現されたギラヒム』ではなかった。

 

本物のギラヒムであったのだ。

 

この時リンクの前に立ったギラヒムは、

 

リンクがトライフォースを見つけ出して封印されし者を消滅させたあと、

 

不意打ちによりゼルダを再び誘拐して時の扉を通って過去に連れていき、

 

『儀式』を通じて彼女の魂、すなわち女神ハイリアの魂を抜き取って、

 

それを彼の主である封印された『終焉の者』と融合させて、蘇らせんとしていたギラヒムなのだ。

 

なぜ、そんなことが可能なのかって?

 

実は、雷龍のとんでもない手落ちのせいなのである。

 

リンクが戦っていたのは、『雷龍が荒修行のために再現した』ギラヒム。

 

ところが、この雷龍が『戦闘用フィールドに鳥の像を何気なく置いておいた』ことが、

 

このリンクにとっての『付け入る隙』になってしまった。

 

これが世界そのものを崩壊寸前に追い込むことになってしまったのである。

 

(次回に続く)




*1 素人が見るとそうなのだが、実のところ緻密な調査と計算に基づいているのだと思います。RTA走者のみなさんに対しては本当にリスペクトしかありません。
*2 ここでメタ的発言をしてしまうと、リンクは既に通常モードで全ての冒険をクリアしており、今は辛口モードだから可能なんだよね
*3 別の世界では『セーブ』ともいう
*4 別の世界では『セーブリセット』ともいう
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