空向剣伝説外伝: RTA Any%怪異譚~勇者は十五回(くらい)4ぬ   作:nocomimi

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リンク、ギラヒム様を狂ったようにぶっ叩き、その心を折る

こうして、『封印の地』においてリンクは最終形態ギラヒムと対峙したのである。

 

彼は、雷龍がバーチャルに再現した『荒修行』用の最終形態ギラヒムと戦っている最中に魔法柵を飛び越えてその先にあった『鳥の像』の前で祈りを捧げ、*1

 

ゴロリと寝転んで目を閉じた。*2

 

そして、その後もう一度その場所で冒険を再開したいと念じ、

 

鳥の像の前に出現すると魔法柵をすり抜けて螺旋状の坂を登り、

 

ある地点で床から虚空に落下し、

 

意識を取り戻した。

 

すると、目の前にギラヒムが立っていたのだ。

 

しかも、彼は『バーチャルに再現された』ギラヒムではなく、本物のギラヒムであったのだ。

 

* * * * * * * * * * * * * * * 

 

ともあれリンクは相手の後ろに回り込むと、再び縦斬りを鬼のような勢いで繰り出して相手を押した。

 

だがギラヒムも負けじと腕を振り上げ、パンチを繰り出す。しかしリンクは完全にそのタイミングを読み切って回避すると、再び鬼の縦斬りを連発した。

 

するとどうだろう。両腕をクロスさせて防戦一方のギラヒムの身体が少しづつ宙に浮き始めた。彼はとうとう魔法柵の上を越えてその内側に転落した。

 

魔法柵の中は螺旋状の窪地の底だ。ギラヒムは落下し、生成されたフロアの上に叩きつけられた。

 

リンクは相手の位置を見極めると、剣を逆手に持って跳躍した。

 

軽々と魔法柵を飛び越えたリンクは、ギラヒムの上に落下し剣を突き立てた。

 

『とどめ』だ。

 

ズシッ....!

 

剣を相手の胸から抜いて剣を構えるリンクに対し、ヨロヨロと立ち上がるギラヒム。だがリンクの猛攻は続く。もはや一方的な暴行にしか見えない。

 

―こ....このままじゃ狩られる。魔法でなんとかしなきゃ!―

 

ギラヒムは手に紫の電流を生成させて構えた。そこに攻撃を受けたら一挙に体勢を入れ替える心づもりだ。

 

だがリンクは読んでいた。手の配置を見切り、空いた場所に斬撃を叩き込む。押されに押され、ギラヒムはまたもやフロアから追い落とされた。

 

リンクもすぐに後を追い、そのまま『とどめ』を繰り出しながら落下した。

 

ズシッ....!剣がギラヒムの胸に突き立てられる。

 

―どうしてだ!どうして.....なぜこの少年はボクの手の内を知ってるんだ?―

 

立ち上がりはしたもののギラヒムは恐慌状態だった。リンクは容赦なく斬撃を連発する。抵抗むなしく、ギラヒムはまたもフロアから追い落とされた。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * 

 

―クソっ....ボクはいつまでもいじめられっ子のままじゃあないぞ。ぎゃふんと言わせてやる!―

 

ギラヒムは思った。

 

彼は指を鳴らすと、魔法で剣を生成して手にした。刀身の反った優雅なデザインだ。

 

だがリンクは問答無用、四の五の言わせずに突進した。

 

横斬りからの回転斬りで、相手の武器を弾き飛ばす。そして女神の剣を天に向けて掲げた。剣の刀身に光が宿ると、彼は剣先を突き出した。スカイウォードストライクだ。

 

光の筋がギラヒムの胸の急所に命中する。その勢いでリンクは突きを繰り出しまくった。

 

ギラヒムが苦痛によろめく。その間にリンクは剣を天に向け、スカイウォードストライクを放ち、ついで突きを浴びせまくる。さらに同じことをもう一回り繰り返した。

 

ギラヒムはたまらず後ろに飛び退き、そして魔法で姿を消した。

 

だが、彼が次に出現する場所をリンクは完全に読んでいた。ギラヒムが姿を現すやいなや、物凄い勢いで走り寄ると、彼が新たに手にした剣を弾き飛ばし、スカイウォードストライクを喰らわせ、突きを浴びせまくる。

 

「こ........この小僧がぁ!」

 

ギラヒムは叫んだ。

 

彼は指を鳴らすと、〇ルセルクの〇ッツが使ってそうな極太の剣を出現させた。

 

―許さん!絶対に許さん!―

 

ギラヒムは大剣を振り上げ、振り下ろす。

 

だがリンクは見切っていた。バックフリップで回避すると、回転斬りを繰り出す。剣と剣が打ち合わされ火花が散った。

 

だが、女神の剣の材質はギラヒムのものより強い。ギラヒムの大剣の刃が欠けた。

 

―まずい!欠けたところを打たれたら剣が折れる!―

 

ギラヒムは咄嗟に大剣の向きをクルリと逆にした。だが、リンクは読み切ったように、欠けたところに集中して斬撃を浴びせる。まるで傷に塩を塗るかのように。

 

かつて『怪我をした相手の脚を狙わない』という戦いで尊敬を博した柔道家がいたらしいが、このリンクは正反対である。

 

やがてギラヒムの大剣はポッキリ折れた。リンクはここを先途とばかりに突きを連発。ギラヒムはよろめいて姿を消し、武装と体勢を整えると再び姿を現した。

 

だが、リンクはもはや相手に反撃する隙さえ与えなかった。

 

囮としてスカイウォードストライクを放ち、ギラヒムに大剣で防御させると、近づいて回転斬りを放ちまくる。ギラヒムの頼みの大剣はあっという間にボロボロになり、ポッキリ折れた。そして鬼のような突きが襲ってくる。

 

何度やっても同じことだった。大剣を縦に構えようが、横に構えようが、リンクはその欠けた場所を執拗に狙ってヘシ折ると、すかさず突きで責め立てる。

 

..............とうとうギラヒムは心が折れた。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

ギラヒムは倒れ、魔法柵もフロアも消滅し、リンクは『封印の地』に一人立っていた。

 

『封印の地』の螺旋状の窪地の中心からは、禍々しい黒い霧が立ち昇っている。

 

「マスターに報告。これより先に進むと、かの者を倒さない限り戻れない確率百パーセント。準備はよろしいですか?」

 

ファイが現れると言った。しかし、言ってしまった後、彼女は驚愕の表情を浮かべて自分の口を手で押さえた。

 

「え?え?ええ...?えええ......?えええええっ.........?」

 

うろたえた口調で彼女は尋ねた。

 

「マ.....マスター。い..いま.....いったい何が起こっているのでしょうか?」

 

「何がって、これから終焉戦だよ。あと三分くらいで終わるかな、この冒険は」

 

リンクは気軽に言う。

 

「そ...そんなことはありえません。だって、ここは数千年の時をさかのぼった『封印の地』のはずですよね?」

 

「まあ細かいことはいいじゃないか」

 

「よくありません。マスターは世界を...いえ、時間さえも壊してしまったのですか?」

 

ファイは顔面蒼白だった。

 

「そもそも.....この場所に来るまでには『時の扉』を通らなければならないはずです。でも、『時の扉』を起動するためには、マスターは授けられた女神の剣を三つの『聖なる炎』で鍛えて.....」

 

「そんな面倒くさいことはやってられないじゃないか。とにかく終焉を倒せばいいんだろ?」

 

「そんな雑な考えでは困ります、マスター」

 

ファイは腰に手を当ててリンクを睨みつけた。

 

「勇者というものは数々の冒険と試練を乗り越えて成長するものなのです。その過程なくしてただ魔王だけ倒せばいいというものでは....」

 

「だからぁ、その過程が面倒くさいんだってば」

 

「マスター、その考えは、『勇者』というものの存在意義の否定ではないですか?」

 

「まあ難しい話はあとでしようよ」

 

「嘆かわしいことです。これは、この世界を造られた神々への冒涜ではないですか?」

 

「そんなこと言われてもなあ....そもそも雷龍がこんなところに鳥の像を置いておくからいけないんだよ」

 

「他人のせいにするんですか?最低ですね、マスターは」

 

「だって、僕も最初はこんなことになるなんて知らなかったんだよ」

 

リンクは頭を掻きながら説明し始めた。

 

「だけど、雷龍が『荒修行』のために再現したギラヒム最終戦のフィールドは、『本当のギラヒム最終戦』のフィールドを模したものだから、どうも彼はそのまんま全体をコピーしたらしいんだ。それで、そこに置かれた『鳥の像』が本来は異なる両者の世界線を結びつけていたってわけさ。どうだい?僕のせいじゃあないだろ?」

 

「理屈っぽいことを並べて誤魔化そうとしたって駄目です。ちゃんと冒険をしてもらわないと困ります」

 

「でもなあ.....ここまで来たものをやり直すわけにいかないじゃないか」

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

ふたりが口論している間、某所で待ち受けている『彼』は腕組みしながら唸っていた。

 

―明らかにおかしい。何がどうなっているのだ?―

 

腹心ギラヒムからの報告では、勇者がここに辿り着くまでには、気の遠くなるような道程が立ちはだかっているはずだった。

 

勇者はまずゼルダを追ってフィローネ、オルディン、ラネールの三地方でダンジョンを制覇し、

 

次いで女神の剣を鍛えるためにもう一度この三地方で新たなダンジョンを巡り、

 

...あ、あと忘れてた。「サイレン」とかいうホラゲ真っ青の恐怖の空間で試練を乗り越え、

 

さらには雷龍を蘇らせることはもちろん、空を司るクジラのような精霊ナリシャ様を正気に戻し、

 

三地方の龍を訪ねて『勇者の歌』を集めて完成させ、

 

さらには『空の塔』を制覇してトライフォースを手に入れなければならないはずだった。

 

ところが、その過程が一割も終わっていないうちに、勇者は目の前にまで迫ってきているという。

 

―だが、まあいい............―

 

彼はひとりごちた。

 

―来るなら来るがよい。よしんばここまで来たとしても、この儂の力に驚愕し、怯え、そして絶望するだけだ―

 

こうして彼は、低い含み笑いを漏らした。

 

だが、彼はナイーブに過ぎた。あまりにもナイーブ過ぎたのである。

 

彼のところに向かってきていたのは、ただの『選ばれし勇者』ではなかった。

 

ここに来ようとしていたのは、『RTA走者リンク』だったのである。

 

(次回に続く)




*1 ある世界では『セーブ』ともいう
*2 ある世界では『セーブリセット』ともいう
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