空向剣伝説外伝: RTA Any%怪異譚~勇者は十五回(くらい)4ぬ   作:nocomimi

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リンク、終焉の者に往復ビンタして『わからせ』る

こうして、ギラヒム最終形態を完膚なきまでに倒したリンク。

 

彼は、『封印の地』の地の中心、禍々しい黒い霧の立ち昇る地点に足を進める。

 

傍らにいるファイは呆れ顔。

 

本来なら『ファイはいつまでもマスターとともにあります。ご武運を』と健気な言葉をかける........はずだったのだが。

 

だが、冒険の手順をメチャクチャに捻じ曲げられてしまったことで、本来なら『未熟な勇者の成長を温かく見守り導く』はずの彼女の使命までもが完全に狂わされたのだから、無理もない。

 

やがて、中心地点に立ったリンクは別のフィールドに移された。

 

見渡す限り何もない平地だ。そして、少し離れたところに何者かが立っていた。

 

巨人のごとき巨躯。隆々とした筋肉。黒鉄のような肌。燃える炎のような髪。

 

かつては神々のひとりであったという噂もある、『終焉の者』だ。

 

彼は手に巨大な剣を持つと、ノシノシと足音を立てながらリンクに近づいた。

 

リンクは剣を構え相対する。だが普段着のうえ、剣は鍛えられたマスターソードではない。初期状態の短い女神の剣だ。

 

―ふん....一撃で屠ってしまっては面白くない。少しは遊んでやるか―

 

終焉の者は考えた。

 

リンクは右、左、と横斬りを放った。終焉の者は余裕の仕草で剣を立てて防御する。

 

しかし、リンクの回転斬りが炸裂し、終焉の者は斬撃を喰らって思わず顔を背けた。

 

―なに?―

 

怪訝に思う間もなく、今度はリンクの縦斬りが。剣をかざして防ぐ終焉の者。

 

できた隙を狙って再びリンクの回転斬りが炸裂する。打撃を喰らいよろめいて腰を落とす終焉の者。

 

すかさずリンクが右左右と横斬りを連発する。

 

バシッ!バシッ!バシッ!

 

まるで往復ビンタを受けているかのように終焉の者の顔が揺れ動く。さらに回転斬りが炸裂した。

 

―ムッ....見かけによらず手練れか?―

 

怪訝に思いながら立て直す終焉の者。だが、気付くのがあまりに遅すぎた。

 

リンクは下からの逆縦斬りを放つ。終焉の者がそれを大剣で防御した瞬間、またもリンクは隙を突いてきた。まるで大魚にたかって牙を立てるピラニアだ。

 

バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!

 

左右の横斬りで往復ビンタ状態。そして回転斬りを浴びせられる。

 

―や......やるではないか!―

 

そして立ち直ったところに再び飛んできた縦斬りを、剣をかざして防いだ瞬間、隙を狙った横斬りの連発が襲った。

 

バシバシバシバシッ!

 

息もつかせぬ斬撃の連続になすすべもなく往復ビンタ状態で顔を揺さぶられ、おまけの回転斬りを喰らった終焉の者はとうとう後ろに吹き飛び、倒れた。

 

だがリンクは知っていた。ここで『とどめ』をかけようとしても避けられることを。

 

* * * * * * * * * * * * * * * 

 

倒れたフリをして待っていた終焉の者は、リンクが引っ掛からないことを悟って跳ね起きた。

 

―面白い。ならば儂の真の実力を見せてやろう!―

 

彼は片足を踏み鳴らすと、大剣を天に向け掲げた。

 

すると、雷が落ちてきて、彼の剣に光が宿った。

 

ウオオオオ!

 

終焉の者は雄たけびを上げながら突進し、剣を払った。

 

だがリンクは距離を取ると、ヒラリとバックフリップして斬撃を回避する。まるで蝶を素手で掴もうとするようなものだ。

 

着地したリンクは回転斬りを放った。ヒットしてのけぞる終焉の者に、鬼のような連続縦斬りが襲った。

 

バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!

 

さらに回転斬りが炸裂すると、終焉の者はまたも後ろに吹き飛ばされ倒れる。

 

ここでもリンクは『とどめ』をかけなかった。

 

倒れたふりをしていた終焉の者の心に、初めて恐怖が湧き上がってきた。

 

―わ....儂の作戦を読んでいるというのか?この小僧は何者だ?―

 

リンクはその間も、剣を天に向けて掲げてその先端に雷を受け、刀身に光を宿らせていた。敵の真似をしたのだ。

 

焦れた終焉の者は立ち上がった。

 

―儂は敵を見くびっていたかも知れぬな。ならば、この儂の全力を尽くして....―

 

だが彼は知らなかった。彼の命運はあと数秒で尽きることを。

 

リンクはおもむろに回転斬りを放った。刀身が終焉の者にヒットすると、そこから雷の電流が伝わり、彼は体中が痺れ動けなくなった。

 

―し.......しまった!―

 

さらに追加の回転斬りが襲う。さらにもう一度。そしてダメ押しの突き。

 

たまらず後ろに吹き飛ばされた終焉の者に対し、ここで初めてリンクが繰り出した。

 

『とどめ』だ。

 

剣を天に向けて雷を受けると、逆手に持ち跳躍する。

 

リンクは上から馳せかかって終焉の者の胸に切っ先を突き立てた。

 

* * * * * * * * * * * * * * * 

 

胸を貫き通された終焉の者は、最期の力を振り絞ってヨロヨロと立ち上がった。

 

「人間よ....我を凌駕せし強き人間よ....見事だ。だが覚えておけ...まだ終わっていない....」

 

彼は呻くように言った。

 

「我の憎悪は...魔族の呪いは...悠久の時を超え輪廻を描く...忘れるな....繰り返すのだ!」

 

彼は片手を上げてリンクを指さすと、続けた。

 

「女神の血を持つ者....勇者の魂を持つ者は永久にこの呪縛から逃れられぬ。この憎悪と怨念が...その権化が貴様らとともに血塗られた闇の海を永遠にもがき彷徨い続け....」

 

「あのさぁ...盛り上がってるところ悪いんだけど」

 

リンクは遮るように口を挟んだ。

 

「君、『ガ』のつくオジサンに転生して悪さするつもりなんでしょ?でも君が次に出現するときも、その次に出現するときも、全ぇ~んぶ対策済みだから」

 

「た....対策済み?いったいなんのことだ?」

 

終焉は怪訝そうに尋ねた。

 

「あのね、君が出現する事件はもうぜんぶ攻略法が確立してるんだ。だから最短で五分とか、十分とか....長くても三時間とかで解決する時代になってるんだよ、今は」

 

リンクが剣を肩に担ぎながら気軽な調子で言う。

 

終焉の者は驚愕に両目を見開き、首を振った。

 

「う......嘘だ!デタラメを言うな!我の野望を....たった五分で...だと?できるわけがない!」

 

「できるさ。今回僕がやったように世界線と時空を操作すればね」

 

「う..嘘だ....嘘だ...。我の野望と企みが.....」

 

「じゃ、次も頼むよ。終焉くん」

 

「き...貴様...酷いぞ....ひとの心とかないんか....」

 

終焉の者の呟きが小さくなっていく。やがて彼は消滅していった。

 

* * * * * * * * * * * * * * * *

 

「終焉の者の消滅を確認。残留する思念をマスターソードに吸収。封印完了しました」

 

ファイの声が聞こえた。だがその声音はいかにも不服そうだった。

 

気が付くとリンクは『封印の神殿』の中に立っていた。

 

そもそも、彼は今回の冒険でこの神殿の中に入ったことは一度も無かった。本来なら何度も入らなければならなかったのだが。

 

目の前にはインパがいる。黒い肌に白い髪、スラリと背の高い女戦士だ。

 

だが、そもそも彼は今回の冒険で彼女に会ったことは一度も無かった。本来なら重要な場面で何度も会わなければならなかったのだが。

 

ふと振り向くと、背後にはクラスメートのガキ大将・バドが。

 

そしてその隣にはゼルダが立っていた。

 

「ありがとうリンク....」

 

ゼルダが言った。彼女の目からみるみるうちに涙が溢れた。

 

「これでやっと全部...本当に全部.....」

 

最後は言葉にならない。するとバドが進み出て言った。

 

「はい、お疲れ、おふたりさんよ。勇者バドの伝説に参加してくれてありがとよ」

 

彼はリンクとゼルダの前を通り過ぎて付け加えた。

 

「....って冗談だけどな」

 

「いや、そなたの功績も大きい。感謝している」

 

インパが言った。

 

「ま...そう言ってもらえるのはうれしいけどな」

 

バドは照れたように頭を掻いたあと、振り向いて声を掛けてきた。

 

「なあ、片付いたんだからさっさと俺らの時代に戻ろうや。バアさんも心配してるだろうしよ」

 

.....と、ここまで言ったところでバドは我に返ったように左右を見回した。

 

「おい...待てよ。俺、いったいここで何をしてるんだ?」

 

彼は混乱したように言った。

 

「片付いたって....何がだ?.....バアさんって誰だ?........いや.......リンク、俺たちは『鳥乗りの儀』で勝負をつけようとしていたんじゃなかったのか?」

 

すると、リンクの目の前の空中に、光が迸った。その中から姿を現したのはファイだ。

 

「マスター。今日という今日は言わせていただきますよ」

 

彼女は怒り心頭に発したという形相でリンクを睨みつけた。

 

「マスター、あなたは世界の法則の『スキマ』を利用して不正なことばかりしましたよね。本来なら行けない場所に侵入し、手に入れられないはずのものを入手し、出現するはずのないものを出現させました。こんなことは到底勇者のすべきことではありません」

 

「どうしたのファイ?そんなに怒って。終焉の者は倒されたんでしょ?」

 

不思議そうな顔をしたゼルダが尋ねる。するとファイは、ゼルダの耳に口を寄せて何事か囁き始めた。

 

ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ......

 

ファイの言葉に耳を傾けていたゼルダが、驚愕に目を丸くし、茫然と口を開け、そして最後にその顔がみるみる怒りに歪み始めた。

 

「リ.......ン........ク......いったいどういうことなの?」

 

ゼルダはリンクを睨みつけた。その表情は般若のようだ。

 

「え?....僕何かマズいことした?」

 

「本当なの?私が誘拐されていた間もちっとも心配してくれなかったって。それどころか『どっちでもいい』とか、挙句の果てには『興味ない』とかって。どういうことなの?説明して!!」

 

「い....いや...それはさあ」

 

リンクは困惑の笑顔を浮かべながら後じさりし始めた。

 

「あ...そういえば用事思い出した。行かなきゃ!」

 

見え見えの言い訳をしながらリンクが踵を返すと、ゼルダとファイが叫んだ。

 

「マスター!逃げないでください!」

 

「リンク!待ちなさい!」

 

二人に追いかけられ、リンクはほうほうの体で逃げ出した。

 

女性二人に追いかけ回されるとはなんと果報者だろうと思われる読者もいるかもしれない。

 

だが彼の興味はそこにはなかった。

 

逃げ回りながらも、彼の考えていたことはただひとつ。

 

『次はどうやってタイムを縮めるか』

 

それだけであった。

 

(おわり)

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