空向剣伝説外伝: RTA Any%怪異譚~勇者は十五回(くらい)4ぬ 作:nocomimi
さて、リンクがこれらのことを終えると、さらに不思議なことが起こった。
リンクはいつの間にか神殿の下の鳥の像の前にいたのである。*1そして、再び階段を駆け上がり、女神像の台座の穴に入り込んだ。
するとどうだろう。さっきと同じように、床に剣が刺さっている。
彼が近づくと、先ほどと同じように不思議な少女と校長先生が姿を現した。
だが、彼はこれら全てを無視し、剣を手に取ると、先ほどと同様に天に向けてそれを掲げ、前方に振り下ろした。すると、奥にあった祭壇が下から押し上げられるようにせり上がってきた。
それを見届けると、リンクは踵を返して外に向かった。*2
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リンクは神殿から出て階段を駆け下りた。そして光の塔のある広場に向かった。
そこには、クラスメートでガキ大将のバドとその取り巻きがいる。
「おわっ...リンク!そこにいたのか?」
リンクの姿を認めると、何やら話し合っていた彼らは驚いた。だが、堂々たる体躯のガキ大将・バドは直ぐに落ち着いてこう言った。
「ほほう。さては鳥乗りの儀のことだな?この俺さまに頼みに来たんだろ?『バドさま、どうか負けてください』って.....」
しかし、そこで不思議な事が起きた。
リンクが「スキップ」と唱えた途端に、全ての会話が終わったのだ。
そして彼は踵を返すと、滝の脇にある洞窟に向かった。
「お...おい!まだ言いたいことが...」
バドはその背中に声をかけたが、リンクはそのまま走り続けた。
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リンクは、途中である民家に寄るとその扉を開けて中に入った。
その家のおっ母さんがリンクを迎える。
「あら、リンクじゃない。どうしたの?」
だが彼は返事もせず、すぐに扉を開けて出ていった。
このように、彼の行動には常識に照らすといささか首を傾げるようなものが多かった。
だが、そこには計算があった。
彼の何気ない行動が、後に大きな変化を生むのだ。*3
ともあれ、走り出したリンクは川を横切る飛び石を渡ると、薄暗い洞窟に入っていった。そして驚異的なスピードでそこを駆け抜け、途中で柵を乗り越えて近道をし、向こう側の出口から出た。
すると「リンク!」と呼び声がした。見ると、上空から大きな鳥に乗って少女が降りてくる。ゼルダだ。
「どう?リンクのロフトバード、見つかりそう?」
少女は心配そうだった。あのガキ大将が、リンクの乗るはずの鳥を隠してしまったのだ。*4
だが、リンクは近くにあった鳥の彫像の前で祈りを捧げた。*5
そして、そのまま道を進むと、どうだろう。岩のくぼみに柵がかけられ、その中に彼の鳥が捕らえられている。リンクは急いで柵を剣で壊して鳥を救出した。
リンクと少女はそれぞれのロフトバードに乗り、晴れて空の散歩に出かけた。まったく青春である。
このゼルダという少女は、何かと世話焼きな性格なようだ。
「どう?リンクのロフトバード、怪我はない?ちゃんと飛べる?」
と声をかけたり、鳥の操り方まで懇切丁寧に教えてくれる。
........気持ちは有難いがちょっとウザい。*6
一通りゼルダの世話焼きが終わると、二人はスカイロフトに戻った。
「光の塔」の広場に降り立ったふたり。ゼルダは嬉しそうに言った。
「あんなことがあったのに、あなたのロフトバード、やっぱり凄いわ.....」
その瞬間、リンクは横跳びした。そして彼女に背を向けて駆け出した。
そこには、ガキ大将のバドとその取り巻きもいた。たっぷり嫌味を言ってやろうと待ち構えていたバドは肩透かしを食った気分だった。
「おい.......リンク!どこに行きやがる!」
だがその後のリンクの行動はさらに不可解なものだった。
彼は再び「崖から飛び降りた」のである。
地面に叩きつけられた彼の身体は限界を迎えた。彼は呻き声を上げ、気を失った。
だが、薄れゆく意識の中、彼は「リセット........」と念じたのである。*7
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再び「平行世界」のスカイロフトに現れたリンクは、手近の鳥の彫像でまたも祈りを捧げると、今度は木で組まれた足場から飛び降りた。これは、ロフトバードを操る者が使う発着口のようなものだ。
彼が落下しながら口笛を吹くと、すぐにロフトバードが現れて彼を背中に乗せた。
フィローネ地方の上に昇り立つ緑の光に向けて飛ぶと、あの精霊ファイが姿を現した。
「マスター、前方に見える緑の光が.........」
だが、リンクは全く話を聞いておらず、別のことを考えていた。
「どうやってダメージを喰らうか」
彼の思考はこれで占められていた。彼は鳥を操ると、近くを飛んでいた「ガー」と呼ばれる鳥に体当たりした。たちまち彼は負傷した。だがまだ十分でない。彼はもう一度同種の鳥に体当たりした。
彼の肉体は限界を迎えた。そしてロフトバードの背からずり落ちると、真っ逆さまに落ちていった。
...............次の瞬間、彼は洞窟の裏手にあった鳥の彫像の前に立っていた。*8
彼は再び自分のロフトバードを救出し、そしてゼルダと一緒に空に飛び立った。
先ほどと同じように、クラスのマドンナ・ゼルダはリンクに世話を焼いた。
「心配だから、あなたのロフトバードの様子を見ておきましょう!」
だが、リンクは全く話を聞いておらず、別のことを考えていた。
「どのタイミングで飛び降りるか」、だ。
彼は真っ直ぐに緑の光のほうに向かった。
そして、ゼルダに話しかけられているのに返事もしないまま、
突如としてロフトバードからまっさかさまに飛び降りた。
両手両足を広げると、凄まじい勢いで雲海に空いた穴に向かって落ちていく。
「どう?リンクのロフトバード、怪我はない?」
ゼルダは幼馴染の狂気じみた行動に気づいていないのか、はるか上方に取り残されながらも、しきりに声をかけていた。
だが、ほどなくリンクは雲の穴に到達した。眼下には大地が見えている。緑の森に覆われた大地だ。
「ちゃんと飛べてる?」
まだゼルダは話しかけている。考えてみれば物凄い声量である。
だがリンクは、いつの間にか入手したパラショールを広げると、落下速度をゆるめ、ゆっくりとフィローネ地方の大地に降りていった。
本来なら後で魔物に誘拐されるはずのゼルダは上空にいるままだ。
いや、リンクが地上に降りるのは、本来ならば誘拐されたゼルダを救うためであった。
それなのに、リンクはその誘拐が起きる前に地上に降りていってしまったのである。
そしてなによりも不可解なのは、
リンクは普段着の背中に女神の剣を背負った軽装。盾さえも装備していない。どう考えても冒険をナメてるとしか思えない。
しかし、それでもリンクは冒険開始の地に降り立った。
そして彼は近くにあった鳥の像の前で短く祈りを捧げると、*4
なんと崖から飛び降りてその身体を地面に叩きつけた。
意識が薄れゆくなか彼は念じた。
「リ........リセット..........」と。*7
(次回に続く)
*1 一説によると、『平行世界』にいながらにして『さっき祈りを捧げた鳥の像の前から冒険を再開したい』と念じたことによりそこに転移されたという。
*2 一説によると、このあと本来であれば美少女ゼルダとの逢瀬が行われたのだが、このリンクはなんとそれさえも「スキップ」したという。
*3 別の世界では「フラグ立て」ともいうらしい。
*4 本人はスキップしたから聞いていなかったが。
*5 敬虔だからではない。後々の過程のため必要だからだ。また、ある世界では「セーブ」ともいう。
*6 だがリンクは黙って聞いていた。なぜならこれは「チュートリアル」という名の「絶対にやらなければならない」作業だからだ。
*7 別の世界では「バックインタイム」ともいう。
*8 一説によると、ここでリンクは「コンティニュー」と唱えたらしい