空向剣伝説外伝: RTA Any%怪異譚~勇者は十五回(くらい)4ぬ   作:nocomimi

5 / 12
リンク、溶岩に自ら突っ込んで4ぬ

『魔族長』ギラヒム様をタコ殴りにしたリンクは、部屋の奥の扉を開けて向こう側に出た。

 

そこは野外だった。岩壁に囲まれた清浄な泉だ。湧き水で一面が浸され、水面の上にタイルでできた通路が設えられている。

 

だが、リンクは新鮮な空気を胸いっぱい吸うこともせず、通路を奥に向けて疾走し、剣を天に向けると突き当りにあった祭壇に向け振り下ろした。剣先から光の筋が迸り、祭壇に命中する。

 

すると、祭壇が下からせり上がるように動き、中から石板が出てきた。

 

「マスター、ゼルダ様はこの泉で身を浄めたものと推測します」

 

ファイが言った。言ってしまってから彼女は取り乱し始めた。

 

「え?ちょっと待って!........この泉に来たってことは、ゼルダ様は魔物に誘拐されたってこと?どうしてファイってば気づかなかったわけ?」

 

「まあ落ち着きなよ、ファイ」

 

リンクは宥めた。だがファイは答えた。

 

「落ち着けません。だってゼルダ様にもしものことがあって、ファイがそれを知らなかったとしたらとんでもない落ち度です」

 

するとリンクは言った。

 

「ほら、僕がロフトバードに乗ってたとき彼女の声が聞こえたじゃないか」

 

「そ........そう言えばそうですね」

 

ファイは一応納得したように見えた。

 

だが、ファイは突如気づいた。

 

「そういえばマスター」

 

「なんだい、ファイ」

 

「ギラヒムは、『僕の竜巻』がどうとか、『少女の気配』がどうとか言ってましたよね」

 

「うん。それで?」

 

「やっぱり.......もしかすると、ゼルダ様は誘拐されたのではないでしょうか?」

 

「そうかもね。ま、どっちでもいいじゃないか」

 

「よくありません。ゼルダ様はハイリア様の生まれ変わりなのですよ。そのゼルダ様をお救いするのが、マスター、あなたの役割ではないですか?」

 

「ま、細かいことはいいじゃないか」

 

リンクはファイの小言には全く耳を傾けない。

 

リンクはこの石板を取ると、帰還することにした。

 

しかし、ただ帰還するのではない。

 

通常では考えられないような方法をとるのである。

 

* * * * * * * * * * * * * *

 

先だって、彼はその場に寝ころび、今までの行動を思い返し、*1

 

目を閉じた。*2

 

次に彼は「フィローネ地方の入り口から冒険を再開したい」と念じた。

 

そして数秒すると、彼はなんと、『封印の神殿』に通じる道、つまりフィローネに最初に降り立った地点に戻っていたのである。

 

彼は突如走り出し、崖から飛び降りてその身体を地面に叩きつけた。

 

そして、意識が薄れゆくなか彼は念じた。

 

「リ........リセット..........」と。*3

 

* * * * * * * * * * * * 

 

気が付くと、リンクはスカイロフトに降り立っていた。

 

やはり、予想した通り、その周囲には霞がかかり、住民の姿は見当たらない。平行世界だ。

 

リンクはまず、近くの木に体当たりした。そこから運の良いことにルピーが落ちてくる。

 

次に、彼は神殿に向かって走り出した。

 

彼は階段を一気に駆け登ると、神殿の女神像の台座に空いた『穴』に駆け込んだ。

 

その奥にあった祭壇に近づくと、自然とそれが下からせり上がってくる。

 

その祭壇には、既に1枚石板が嵌め込まれている。

 

リンクは持参した新たな石板を嵌め込んだ。

 

すると、女神像から光が発せられた。

 

それは、スカイロフトの下に広がる雲海のある一つの点を指した。*4

 

そして、雲のその場所に穴が開いた。

 

この地点こそが、リンクが次に冒険するべき場所なのだ。

 

だが、彼はその前にある不正を行うことを企んでいた。

 

彼はその場に寝ころび、今までの行動を思い返し、*1

 

目を閉じた。*2

 

次に彼は「フィローネ地方の入り口から冒険を再開したい」と念じ、

 

再び『封印の神殿』に通じる道に出現すると、崖から飛び降りてその身体を地面に叩きつけた。もはや恒例行事である。

 

そして、意識が薄れゆくなか彼は念じた。

 

「リ........リセット..........」と。*3

 

* * * * * * * * * * * * * * 

 

スカイロフトに降り立ったリンクは、発着所から飛び降りてロフトバードを呼び出した。

 

鳥の背に乗ったリンクが向かうのは、まずはフィローネであった。

 

ところがである。

 

またも、ゼルダの声が聞こえる。

 

「どう?リンクのロフトバード、ちゃんと飛べてる?」

 

ここは平行世界であり、スカイロフトの住人の姿はどこにも見当たらない。つまり無人だ。

 

それなのに、リンクを案ずるゼルダの『念』だけが時空を超えて漂い、

 

空に飛び立ったリンクに話しかけているかのようだ。

 

美少女にそこまで想われているのは、正直うらやましい。

 

ただ、ここまで来ると、ちょっと『重い』というか.........。

 

そうこうしているうちにリンクはロフトバードから飛び降りた。

 

「どう?ちゃんと飛べてる?」

 

はるか上空から響き、地表近い高度からもはっきりと聞こえるゼルダの凄まじい大音声を背に、

 

リンクはフィローネに降りていった。

 

* * * * * * * * * * * * 

 

地上に降りると、リンクは走った。

 

そして『封印の神殿』に至る手前で脇道に入ると、神殿の裏手にある広場に行き、そこにあった鳥の彫像の前で祈りを捧げ、

 

そして『大空に戻りたい』と念じた。

 

するとどうだろう。

 

凄まじい上昇気流に運ばれて彼は空に舞い上がった。彼は口笛を吹くとロフトバードを呼び寄せて飛び乗った。

 

ところが、また声が聞こえる。

 

「心配だから、リンクのロフトバードの様子を見ておきましょう!」

 

ここまで来ると、筆者はもはやリンクをうらやましいとは感じない。

 

むしろゼルダが怖くなる。

 

むかし、「あなたを待~っているわ。愛してく~れるまで」という歌があったが....*5

 

いくら美少女に思われているとはいえ、ここまで粘着されたら話は別だ。

 

リンクは、聞こえないふりをして、ある岩の上でロフトバードを飛び降りた。

 

不思議な力で空中に浮いた『加速岩』だ。

 

そして、その岩に空いた穴の手前で口笛を吹いて鳥を呼び戻す。

 

鳥に乗って穴を通り抜けたリンクは、やがてオルディン地方の上空に到達し、飛び降りた。

 

* * * * * * * * * * * * 

 

こうしてリンクはオルディン地方に降りた。

 

フィローネ地方とはうって変わって、荒々しい火山地帯だ。

 

だが、何か様子がおかしい。

 

まず、彼は空中にいた。

 

そして、敵もいないのにジャンプ斬りをいきなり繰り出したのだ。

 

そしてかなりの高度を落下すると、やっと地表に降りた。勢いがつきすぎて、着地したときにダメージを喰らってしまったほどだ。

 

しかもリンクは緑色の騎士学校の制服を着ていた。

 

校長でさえもが、"ワシもこの色はどうかと思う"と漏らした、そんなデザインの制服だ。

 

この服は、本来なら進級試験である『鳥乗りの儀』に合格し、

 

さらにヒロインの誘拐という事件を受け、捜索のため彼を地上に送り出すことを校長が決意して初めてリンクに与えられるものだ。

 

それをリンクはどうやら不正に手に入れたらしい。

 

リンクの度重なる奇行を静観していたファイが耐えかねた様子で尋ねてきた。

 

「マ...マスター。その制服はどこで手に入れられたのですか?」

 

「これかい?」

 

リンクは軽く手を上げ服を着た自分の手足を一瞥したあと答えた。

 

「どこだったっけな。確かストーリーフラグの関係で手に入ったんだ」

 

「ストーリー......フラグ.......ですか?」

 

ファイは混乱した様子だった。

 

「しかし.......マスター。勇者が装備を整え地上に降りるのは、危機に陥ったゼルダ様を救うためのはず。まだゼルダ様には何も起きていませんよね?」

 

「ん?そうだっけね。まあ僕にはどっちでもいいけど」

 

「さっき、ゼルダ様はマスターがロフトバードに乗っていたとき、いろいろ世話焼きをしてましたよね?....そうですよね?そうですよね?」

 

確認するようにそう言ったあと、ファイが次第に自信を無くしたように呟いた。

 

「それとも........もしかしてゼルダ様はファイの知らない間に魔物に連れ去られたのでしょうか?」

 

「まあ、それは良しとしようじゃないか」

 

リンクは気にも留めない。

 

「いえ、良しとするわけには参りません。大事な問題です」

 

ファイは抗弁した。

 

だが、ふと彼女はもう一つとんでもないことに気づいた。

 

リンクはなんと、火山の中腹に降り立っていたのだ。

 

そこには道などない。

 

ただ、そこに存在した山の中途に唐突に出現した、と言ったほうがいいかもしれない。

 

「それにしてもマ.....マスター。ここは一体どこでしょうか?」

 

唖然としながら周囲を見回してファイが言った。

 

「ここはオルディンさ。これから大地の神殿を攻略するんだ」

 

リンクは当然のように答える。

 

「ですが........座標が認識できません。ここはマスターがいていい場所ではないのではと.........」

 

ファイが言ったがリンクは意に介さない。

 

「大丈夫だよ。そのうち正式なマップ内に戻るから」

 

「戻る.......とおっしゃいましても。そもそも戻ったり出たりしていいものではないのではないでしょうか?」

 

だがリンクは猛スピードで山を登り始めた。まるで、「そこに山があるから登るのだ」と言わんばかりに。

 

すぐ横に溶岩の川が流れている。

 

そう、この山は活火山なのだ。

 

もしこの世界に気象庁が存在したら確実に立ち入り禁止にするだろう。

 

だが、リンクはひたすら急ぎ足で山を登った。

 

道なき道、急な傾斜をものともせず高度を稼ぐ。

 

そしてある地点に辿り着くと、彼は突如「エイッ!」と掛け声を発して横っ飛びし、

 

溶岩の川を飛び越えた。

 

すると、目の前は、神殿の入り口だった。

 

『大地の神殿』。

 

各所を溶岩が流れ、危険な魔物も潜むと噂されるダンジョンだ。

 

リンクは、その入り口の脇にあった鳥の像の前で祈りを捧げると、

 

突如走り出した。

 

そしてなんと、神殿前の広場の向こう側にあった溶岩の川に『飛び込んだ』のだ。

 

アャチャチャチャッ!

 

彼はそう叫んで飛び上がり、

 

そして薄れゆく意識の中彼は唱えたのだ。

 

「リ.........リセット....」と。*3

 

(次回に続く)




*1 ある世界では『セーブ』ともいうらしい。
*2 ある世界では『セーブリセット』ともいうらしい。
*3 ある世界では『バックインタイム』ともいうらしい。
*4 リンクからは見えないけど、発せられたのである。そうだったったらそうなのである。
*5 世代がバレる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。