空向剣伝説外伝: RTA Any%怪異譚~勇者は十五回(くらい)4ぬ   作:nocomimi

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リンク、さらにもう一度溶岩に突っ込んで4ぬ

ところで、これまでのリンクの動きを観察していたギラヒム様は驚愕と恐怖に震えていた。

 

「.......この山にはあらゆる場所にボコブリンを配置して警備させていたはず。彼らは一体何をしていたんだ!ええい、役立たずが!」

 

彼は歩き回りながら首を振った。

 

「いや、それだけじゃあない。モグマ族の爆弾袋を奪い取ってリザルフォスに二人一組で見張らせていたんだ。だから奴は爆弾を使うこともできなかったはずだ」

 

このようにしてギラヒムは不審に思った点を一つ一つ数え上げていった。そのうち、前回の遭遇のトラウマが蘇り、動悸が襲ってきた。

 

「ヤバい.....どうする?奴と戦っても、きっとボクは一方的に『狩られる』だけだ....あいつは普通じゃない。あの目.......『時間短縮』だけを見据えたあの機械のような目.......。駄目だ、勝てるわけがない」

 

悩んだギラヒムは決心した。

 

―よし、今回はボクの代りに最強の魔物をぶつけよう―

 

―いくらあのヤバい少年といえども、この魔物には勝てないはず―

 

彼はそう信じていた。

 

......しかし、彼はあまりにもナイーブ過ぎたのだ。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * 

 

リンクはこうして、重々しい扉を開きダンジョンの最深部の部屋に入った。

 

廊下を進んでいくと、フロアには鎖と足かせのようなものが落ちている。

 

ファイが姿を現した。

 

「ここでゼルダ様のオーラを検知しました。特にこの鎖から強い気配を感じます。おそらくゼルダ様は一度捕らわれたあと脱出したと推測............」

 

そう言ったあと、ファイは何かに気づいたように顔を上げた。

 

「...え?......って.....!やっぱゼルダ様誘拐されてんじゃん!ファイってば、なんで今の今まで気づかなかったわけ?」

 

彼女はアタフタと取り乱し始めた。

 

「どうしよぉ!こんな体たらくじゃあとでハイリア様に怒られる....!って...あれ?ハイリア様ってゼルダ様と同一人物だっけ?」

 

「落ち着きなよファイ。どっちにしろ大丈夫だから」

 

リンクは声を掛けた。だがファイはしくしくと泣き出した。

 

「落ち着けません。こんな失態をしてしまってファイは精霊失格です。お天とさまに合わせる顔がありません」

 

「まあまあ。僕がゼルダを助けるから問題ないよ」

 

「.......ホントですか?」

 

「.....じゃなかった。あのインパとかいう怖い姐さんが助けるんだったっけ。まあどっちにしろ、悪の根源である魔王を狩ればいいんだろ?」

 

「マスター、魔王はそんな簡単に倒せるものでは...」

 

二人はそんなことを言い合いながら進んだ。

 

だが、やがて廊下が登り坂に突き当たると、そこには人影が。

 

「やあまた会ったね。名はなんといったかな?」

 

ギラヒムだ。

 

「まあ、どっちでもいい。ボクの怒りを聞いてくれないか。せっかく部下どもが巫女を捕まえたというから急いで来てみたらどうだ?あの女神の使い走りに持っていかれたんだよ!」

 

彼は気障な仕草で続けた。

 

「あの巫女はわが主の復活に絶対必要なんだ。....というわけでボクがこの怒りをそのまま持って帰れないのはわかるよね?遠慮はいらない。じっくりたっぷりと受け取りたまえ」

 

ギラヒムが指を鳴らし、姿を消すと、坂の上に何かが出現した。

 

巨大な丸い岩の塊。

 

獄炎大岩ベラ・ダーマ。

 

巨大な岩塊に足が生えて歩く魔物だ。

 

そして、時には大きく口を開けて火炎を吐く。

 

何よりも、表皮が岩だけあって、普通の攻撃では歯が立たないのだ。

 

だがリンクは転がり落ちてきた魔物を避けると、坂を登っていき、端に生えている爆弾花を掴んだ。

 

この爆弾花は、摘むだけで着火し、数秒後爆発する極めて危険なものだ。

 

大岩はリンクを追いかけるように坂を登ってきたが、リンクに爆弾花をぶつけられ、爆発の衝撃でたまらず転げ落ちていった。

 

リンクは、さらにもう一つ爆弾花を掴むと、下手投げで転がした。

 

コロコロ転がっていった爆弾は、ちょうど呼吸するように大きく口を開けた大岩の口の中に吸い込まれていった。

 

大岩は、怒りの咆哮を上げて相手をビビらせようと思っていたのに、これではたまらない。彼が口を閉じると、鈍い爆発音がし、魔物はたまらず気絶した。

 

この隙をリンクが逃すはずがない。スカイウォードストライクを敵の弱点である目玉に浴びせる。そして獲物に襲い掛かるシャチのように躍りかかり、斬りつけた。

 

意識を取り戻した魔物は再びリンクに迫ろうとした。だがリンクは坂を駆け登り、爆弾で魔物を怯ませて退けた。そしてもうひとつの爆弾を呑み込ませて気絶させ、執拗に目玉に斬りつける。

 

やがて激しい攻撃に耐えかねて大岩が後退りしていったが、リンクは押し迫る。

 

ギシャッ!バシュッ!

 

度重なる目玉攻撃にベラ・ダーマは悲鳴を上げてこと切れた。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * 

 

リンクは坂を登り切ると突き当りの扉を開け、その先に出た。

 

そこは、以前天望の神殿で見たのと同じような風景だった。岩壁に囲まれた清浄な泉の上に、タイル敷きの通路が通っている。

 

だがリンクはそれには目もくれず奥に向かって突進し、スカイウォードストライクを放った。

 

置かれていた祭壇に光の筋が命中し、何かが下からせり上がってくる。石板だ。

 

ファイが言った。

 

「ゼルダ様はここでも身を浄めたと推測されます。その後ラネール地方に向かわれたかと推測」

 

「.....へえ。そうなんだ」

 

「....なんなんですか、そのやる気のない返事は。マスター、ゼルダ様をお救いするのが勇者の務めでしょ?」

 

「だってインパ姐さんがいるんだから問題なくね?」

 

「そこに甘えてしまってはダメです。愛する人を自らの手で救えないという悔しさを原動力にしながら冒険に取り組み、成長していくのが勇者ではないですか?」

 

「別に。興味ないし」

 

ファイは勇者の心得を滔々と説き聞かせるも、リンクには全く響かないようだった。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

こうしてリンクはダンジョンから出た。

 

ところが、彼は踵を返すと再びダンジョンの入り口に駆け込み、階段を駆け降りた。

 

そして、内部にあった鳥の像の前で祈りを捧げると、

 

なんと、溶岩の流れに飛び込んだのである。

 

「アチャチャチャッ!」

 

彼の意識は薄れていった。

 

だが、その寸前で彼は心の中で唱えた。

 

「リ......リセット........」と。

 

*********************

 

彼は平行世界のスカイロフトに降り立った。

 

服装は、普段着に戻っている。

 

彼はまず手近の木に体当たりした。運よく落ちてきたルピーを拾うと、彼は階段を駆け登り、女神像に急いだ。

 

女神像の台座に空いた穴に入ると、彼は部屋の奥に走り込んだ。

 

すると祭壇が下からせり上がってくる。そこには今まで入手した石板を嵌めてあった。

 

今回入手した石板を嵌め込むと、女神像から光が発せられた。*1

 

その光は、スカイロフトの下に広がる雲海のある一点を指した。

 

すると、雲に穴が開いていく。この下こそ、リンクが次に冒険すべきラネール地方だ。

 

*********************

 

ところが、気が付くとリンクはフィローネの森の鳥の像の前にいた。

 

彼は、『フィローネの森で冒険を再開したい』と念じたのだ。

 

そしてさらに、彼はそこから空に戻ることを念じた。

 

すると不思議な光が発せられ、彼は凄まじい上昇気流に押し上げられた。パラショールを広げると、彼は雲の上にまで上昇した。

 

口笛に呼ばれて飛んできたロフトバードに乗ると、リンクは空の旅に出発した。

 

「マスター、前方にある緑の帯が、フィローネ地方を示す光です。あの穴を通れば地上に降りられるようです」

 

ファイが言う。だが言ってしまってから自分がいかに間抜けなことを言ったか気づいてしまった。

 

「あれ?マスターはもう既に、フィローネ地方の冒険を終え、オルディン地方さえも制覇してますよね?ファイってば、一体何を言っちゃったんでしょうか?」

 

「大丈夫だよファイ、気にしなくていいから」

 

このリンクの雑な慰めも、この時ばかりはファイの心を軽くしてくれたようだ。

 

リンクは鳥を操ると、加速岩を通り抜け、ラネール地方の入り口となる雲の穴の上で飛び降りた。

 

今回は、空に響き渡るゼルダの世話焼きの声は聞こえなかった。それでリンクがホッとしたかどうかは分からないが、傍から見ているほうは少なからず安堵したのである。

 

ともあれ、ファイはまだ知らなかった。

 

リンクの常識を無視した行動の数々により、彼女の人生はさらに狂わされていく運命にある、ということを..............。

 

(次回に続く)




*1 リンクからは見えないはずだけど、とにかく発せられたのだ。
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