空向剣伝説外伝: RTA Any%怪異譚~勇者は十五回(くらい)4ぬ 作:nocomimi
ロフトバードで空を旅したリンクは、ラネール地方への入り口となる雲の穴の上で飛び降りた。
ラネール地方は、黄色い砂岩に覆われ、太古の昔には鉱業の盛んな地域だったという。
彼は地上に降り立つと、着地地点の塔から飛び降り、近くにあった鳥の像の前で祈りを捧げた。
それが終わると、彼は塔の裏手に走り込み、剣を抜いて、そこに生えていた爆弾花にいきなり斬りつけた。
爆弾花は暴発し、リンクは吹き飛ばされて倒れた。
だが、薄れゆく意識の中、彼は唱えた。
「リ........リセット」と。
* * * * * * * * * * * * * * * * *
リンクは、平行世界のスカイロフトにいた。これでもう何回目なのかも数えられないほどだ。
彼は神殿への階段を駆け登った。だが途中の門が閉まっているので、彼は手すりを乗り越えて下に飛び降りた。
スカイロフトは空に浮いた都市で、下には雲しかない。ところが不思議なことに、彼は見えない手に救出されたかのように、門の向こう側にある広場に降り立った。
そして彼は、鳥の像の前で祈りを捧げた。同時に彼はあることを念じた。
何を念じたかって?
『ラネール地方での冒険を再開したい』、と念じたのだ。
* * * * * * * * * * * * * * * *
リンクは、荒涼として見渡す限り何もないラネール地方の砂岩の上に降り立った。
魔物どころか、建造物も何もない。文字通り何もないのだ。
おそらく、普通に冒険していたら遠い背景として見えるであろう巨大な岩棚の上に降り立ったものと思われた。
リンクは走り始めた。ファイが慌てて声を掛ける。
「マ.....マスター!マスターは今一体何をしたのですか?座標がゼンゼン分かりません!」
「大丈夫、いずれちゃんとしたマップに戻るから」
「戻れば良いというものではありません!ちゃんとした手順で冒険をしてください!」
ファイはもはや涙声だ。
「硬いこと言うなよ。それに早くゼルダが救われて欲しいんだろ?」
リンクは適当にあしらいながら走り続ける。
すると、前方には岩の塊がある。だがリンクは避けずに真っすぐ突っ込んでいく。
するとどうだろう。リンクは何事もなかったかのようにそれを通過して先に進んでいった。
「マスター、やはりここはマスターがいていい場所ではないようです.....」
ファイが不安そうに言う。
「世界そのものが苦しんでいるのではないでしょうか?だって、さっきの岩も、自分が果たして存在しているのかしていないのかを自分自身で確信が持てずにいるように見えましたよ?」
「まあ、いいじゃなかい。硬いこと言うなよ」
リンクは相変わらず雑な返事しかしない。
道なき道を走り続けると、やがて谷間が見えてきた。
リンクはそこに飛び降りると、その先にあった洞窟に駆け込んだ。
* * * * * * * * * * * * *
洞窟を抜けると、そこは『ラネール渓谷』だった。
右手には深い谷間、左には山だ。前方に広がる広場には、中央にトロッコが設置してあり、線路が伸びている。
リンクは近くにあった鳥の像の前で祈りを捧げると、剣を天に向けて掲げた。
地面に生えていたサボテンに向かってスカイウォードストライクを放つ。
すると、サボテンの上に生えていた爆弾花が暴発し、リンクは吹き飛ばされ谷間に落下していった。
薄れゆく意識の中、彼は唱えた。
「リ.....リセット」と。
* * * * * * * * * * * * * * *
リンクは平行世界のスカイロフトに降り立った。
そして、まず手近の木に体当たりしてルピーを落とさせた。
不思議な事に、これによって墓地の横にある壁の扉が自動的に開いた。
リンクには見えていないはずだが、とにかくそうなのである。
そしてリンクは発着口から空に飛び出し、口笛を吹いてロフトバードを呼び寄せた。
彼は鳥の背に乗ってフィローネ地方の上空まで飛ぶと、飛び降りた。
両手両脚を広げ、空気抵抗を受けながら落下していく。
ところが、その時信じがたいことが起こった。
「心配だから、リンクのロフトバードの様子を見ておきましょう!」
ゼルダの声だ。
先ほど聞いた話では、誘拐されたものの脱出し、今はラネール地方に旅をしているはずではなかったか?
「どう?ちゃんと飛べてる?」
間違いなかった。ゼルダがリンクを心配して世話焼きしているのだ。
恐るべきことであった。
本人はそこにはいないのに、本人の『念』があまりにも強すぎて、大空にその世話焼きの声が響き渡っているのだ。
「ロフトバードの飛ぶ方向を変えるときはね..........」
リンクが地表に近づいてきても、まだ聞こえる。もはやその大音声は神話級である。
...........重い。重すぎる。美少女に想われているリンクがうらやましいなどといった気持ちは、もはや筆者には欠片もなくなってしまった。
* * * * * * * * * * * * *
フィローネに降り立ったリンクは、『封印の神殿』に至る道を疾走し始めた。
そして脇道にさしかかると、いつもの『念』で丸太をちょいと落とした。それを足掛かりに崖を登り、洞窟を抜け、広場に出た。
ところが、洞窟を抜けた瞬間、彼は緑の制服姿に変わっていた。
広場の隅にある鳥の像の前に立つと、彼はまたしても念じた。
ラネール渓谷での冒険を再開したい、と。
すると、彼はいつの間にかラネール渓谷に戻っていたのだ。
しかも、普段着に戻っている。
ファイはもはや混乱し切っていた。
「マ........マスター、さっきから服装がちょこちょこ変わってますけど....」
「あ、これ?気にしなくていいよ。大丈夫だから」
「しかし、マスター....勇者はフィローネ地方、オルディン地方を制覇して最後にこのラネール地方に来るはずです。どうして普段着でここに来られるのですか?」
「まあ、細かいことはいいじゃないか」
リンクは剣を天に向けて掲げると、地面に生えていたサボテンに向けて放った。
するとサボテンについていた爆弾花が爆発し、近くにあった岩が粉々に吹き飛んだ。*1
リンクは鳥の像の前で祈りを捧げると、もう一度スカイウォードストライクを爆弾花に向けて放ち、手早く自爆した。
吹き飛ばされ渓谷に落下していきながらリンクは唱えた。
「.........リセット」と。
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彼は平行世界のスカイロフトに降り立った。もう何度目かを数えるのも厭わしい。
彼が近くにあった木に体当たりしてルピーを落とすと、墓地の横にある壁の扉が開く。リンクには見えないはずだったがとにかく開いたったら開いたのだ。
そしてリンクは発着口から飛び降り、ロフトバードを呼び寄せ、フィローネ地方の上空まで飛ぶと飛び降りた。
......やはり予想した通りだった。
「心配だから、あなたのロフトバードの様子を見ておきましょう!」
恐ろしすぎる。
リンクを案じるゼルダの『念』は、全ての時空を超えてリンクを追うのだ。それとも、『生き霊』とでも形容すべきか。
普通の神経をした少年なら、参ってしまうだろう。
だがこのリンクは気にすることはなかった。彼は両手両脚を広げてダイブし、フィローネに降りていった。
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リンクは『封印の神殿』に至る道から分岐する脇道にいつもの『念』で崖を登って入り込み、広場を通り過ぎ、フィローネの森に分け入っていった。
障害物を乗り越え、ロープにぶら下がって間隙を飛び越え、剣で邪魔な木を斬り倒してひたすら前進する。
するとどうだろう。
平行世界なのに、ボコブリンが二匹ほどいて、誰かをいじめている。
キュイ族だ。大型の鼠のような体格に、細長い口吻。頭にちょこんとついた飾りと葉のような尻尾が特徴だ。
リンクはスカイウォードストライクを放ち、ボコブリン二匹を瞬殺すると、キュイ族に話しかけた。
ファイは安堵した。「この若者もやっと勇者としての務めに目覚めてくれたのか」、と。
だが、そうではなかった。
リンクはキュイ族と話しつつ、『ラネール渓谷での冒険を再開したい』と念じた。
彼の視界が光に包まれ白くなったかと思うと、彼はいつの間にか望みどおりラネール渓谷にいた。
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ラネール渓谷に再び現れたリンクは、トロッコ広場を横切って奥にあった岩に体当たりした。運よくルピーが飛び出してきた。
そしてリンクは鳥の像まで戻るとそこで祈りを捧げ、それから手早く爆弾花つきのサボテンにスカイウォードストライクを浴びせ、吹き飛ばされて渓谷に落下した。
もちろん「.......リセット」と唱えるのも忘れない。
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すると彼は平行世界のスカイロフトに降り立った。
彼は神殿への階段を駆け登り、
そして閉ざされた門の手前で手すりを乗り越えて眼下の雲海に飛び降り、
見えない手で救出され下ろされた広場にある鳥の像の前で祈りを捧げ、
そしてまた『ラネール地方で冒険を再開したい』と念じた。
すると、次の瞬間。
彼はラネールの広大な砂岩の上に降り立っていた。
どこなのかも、全く分からない。
普通の冒険をしていたら、遠く背景として見えるだけの場所だ。リンクはそこを疾走し始めた。
「マ....マスター!ファイはもう耐えられません!」
ファイが泣き声を上げた。
「一体ここは何処なんでしょうか?こんな地の果てみたいな場所、ファイは知りません。お願いですからマスター、ちゃんと正しく冒険してください!」
「大丈夫大丈夫。慣れるからさ」
リンクは相変わらず雑な返ししかしなかった。
だが、ファイは知らなかった。
このあとリンクは、想像もつかないほどの奇行に走るのである。
(次回に続く)
*1 たぶんんこれもフラグ立てなんだと思います