空向剣伝説外伝: RTA Any%怪異譚~勇者は十五回(くらい)4ぬ   作:nocomimi

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リンク、精霊ファイに世界の裏側を見せてしまい自我崩壊寸前に追い込む

リンクは、ラネール地方の巨大な砂岩の上を疾走していった。

 

周囲には、建築物もないし、魔物もいない。

 

本当に見渡す限り何もない。普通に冒険していたら遠く背景に見えるであろう場所を、走っているのだ。

 

そうしながらも、彼はメンタル崩壊寸前のファイをなだめていたが、

 

やがて背の高さほどの段差に行き当たった。

 

そこでリンクは立ち止まると、位置を調整し、やおら足を踏み出した。

 

すると次の瞬間である。

 

彼は岩をスッポ抜け、その先にあった何もない空間に落下していったのだ。

 

―うわあああああああー

 

悲鳴を上げながら、彼は虚空に落ちていった。

 

* * * * * * * * * * * * * * 

 

気が付くと、彼は落下する前にいた段差の手前に戻されていた。

 

「マ.....マスター!今...岩の向こうに見えたのって.........」

 

傍らにいたファイは顔面蒼白になっていた。

 

「大丈夫、気にすることはないよ」

 

リンクは服を手で払って立ち上がると、ファイを雑に慰めた。

 

「いいえファイは気にします!岩の向こうって、空っぽで何もない空間だった...ように見えました...」

 

ファイは両手を頬に当てながらガクブルと震えている。

 

「あれは..この世界の裏側...でしょうか?もしかして私たちが今見ているものって、全て虚ろな幻影なのでしょうか?もしかして...このファイもまた......」

 

「深く考えないほうがいいよ。さあ、行こう」

 

リンクは軽い調子で言うと、段差に手を掛けてよじ登り、再び疾走し始めた。

 

しばらく走ると、彼は岩場の隅に近寄ってぶら下がり、そこから飛び降りた。

 

そして着地したところで横跳びした。

 

ちょうど降り立った場所はトロッコ線路だった。だが、周囲は流砂だらけで、とても歩けたものではない。

 

だがそこでリンクは不思議な技を使ったのか、砂の中に身体が半ば埋もれているのに、異様に早い速度で移動した。*1

 

しかし、線路沿いに進むとその先は閉ざされた扉だった。

 

もはや命運は尽きたか。

 

リンクは手を天に差し伸ばしながら流砂に呑み込まれていった。

 

* * * * * * * * * * * * * * 

 

ところが不思議なことに、気づいたときにはリンクは扉の向こう側にいた。

 

身体を起こすと、近くにはトロッコがある。そして、そのトロッコの周囲だけが不思議な光の線で囲まれており、さっきは流砂だった場所が床になっている。

 

トロッコは自動で進んでいき、リンクはそれについていった。

 

途中でトロッコは人の乗れない細い線路に分岐していく。だが、トロッコから発せられる不思議な力により、その近くに設えられた床板が次々と姿を現した。リンクはその床板の上を渡っていった。

 

そうしてトロッコとペースを合わせて移動していくと、終着点はあの広場だった。

 

広場に辿り着いたリンクは近くに置いてあった椅子で休憩すると、鳥の像で祈りを捧げ、そして爆弾花にスカイウォードストライクを当てて手早く自爆した。

 

言うまでもないが、渓谷に落下していきながら「リセット」を唱える。

 

* * * * * * * * * * * * * * * *

 

彼は平行世界のスカイロフトに降り立つと、近くにあった木に体当たりしてルピーを落とした。

 

すると、当然のように墓地の横にある壁の扉が開く。

 

そしてリンクは発着口から飛び降り、ロフトバードを呼び寄せ、フィローネ地方の上空まで飛ぶと飛び降りた。

 

「心配だから、あなたのロフトバードの様子を見ておきましょう!」

 

もはやBGMのようにゼルダの声が響く。

 

だが、このリンクの口癖の一つは「そのうち慣れるよ」である。

 

少女の声が天空から地表に聞こえるほどの大音量で響き渡るという神話級の超常現象も、

 

この彼の「慣れ」には勝てなかったのだろうか。

 

こうしてリンクはフィローネ地方に降りていった。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * 

 

『封印の神殿』に至る道から分岐する脇道にいつもの『念』で崖を登って入り込み、広場を通り過ぎ、フィローネの森へ向かって疾走するリンク。

 

しかし彼は突然立ち止まると、これまでは目もくれなった脇道に通じる崖に目をやった。やはり『念』で丸太を上から落とすと、それを足掛かりにして登り、さらに前進。

 

すると、蛸のような魔物・オクタロックが地面から顔を出している。

 

リンクはそいつの前で立ち止まった。

 

するとオクタロックは口から岩を吐き飛ばしてきた。

 

「ウッ........!」

 

ダメージを喰らったリンク。だが彼は離れようとしない。

 

「ウッ........!」

 

またも岩が襲う。それでもリンクはその場に留まったままだ。この珍妙な生物をそんなに愛しているのだろうか。だったらゼルダのことを少しでも思ってやったほうがまだいいだろうに。

 

最後の一撃がヒットし、リンクはとうとう倒れ伏した。

 

だが、薄れゆく意識の中彼が唱えたのはいつもの「リセット」ではなく「コンティニュー」だった。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * 

 

気が付くとリンクは再びフィローネの森の入り口にいた。

 

先ほどの脇道に入り、オクタロックの脇を通り過ぎると、彼は普段と違うルートで高見台に辿り着いた。さらに高見台の裏の洞窟を抜ける。

 

すると不思議な事に、普段着だった彼は緑の制服姿になった。

 

さらに不思議な事に、彼は次の瞬間には『天望の神殿』の前に移転していた。神殿は彼を歓迎するかのように入り口扉を開けている。あれほど理不尽な目に遭わされたことを覚えていないのだろうか。

 

ところが、そこでリンクは念じた。『ラネール渓谷で冒険を再開したい』と。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * 

 

気が付くとリンクはラネール渓谷のトロッコ広場にいた。服が普段着に戻っている。

 

「マスターが手に入れたのは、『勇者の詩』の一部です........」

 

ファイが姿を現すと言った。そして言ってしまったあと気づいたかのように口に手を当てた。

 

「.........いま....ファイってば何て言いました?勇者の詩?なんですかそれ?聞いたこともないです。記憶がゼンゼンありません...........」

 

「まあ気にしなくていいよ。そういうのもそのうち慣れるから」

 

相変わらずの雑なリンクの返しである。ファイは両手を腰にあててリンクを睨みつけた。

 

「慣れられるわけないでしょう、マスター。マスターがいけないんですよ。めちゃくちゃなことばっかりするから、ファイまでおかしくなっちゃったじゃないですか」

 

「まあまあ。とにかく大丈夫だから」

 

「大丈夫じゃありません。ちゃんと冒険してもらわないと困るんです」

 

しかし、プンおこのファイをよそに、リンクは適当な返事をしながら広場の中央に止まったトロッコに近づき、剣を抜いてやおら一撃を加えた。

 

すると、トロッコから発せられた不思議な力が、周囲一帯を光で包んだ。

 

荒涼とした砂地に、緑が回復する。

 

しかも驚いたことに、広場の端に巨大な何者かが立っている。

 

堂々とした髭に、好々爺のような顔立ち。

 

『雷龍』だ。

 

「マスター....!あれは.......!」

 

ファイは悲鳴に近い声をあげた。

 

「...ありえません。確か雷龍は死んだはずです。そしてそれを蘇らせるために勇者は奮闘努力するはずでした。それなのに、こんなにあっさりと.....」

 

「そんなことないさ。僕だって結構苦労してきただろ?」

 

「マスターはただデタラメなことをやってただけでは?」

 

「失敬な。ちゃんと目的があってのことだぜ」

 

「も.......目的って..なんですか?マスター......」

 

ファイは恐る恐る尋ねた。だが、聞いてみたいような、聞きたくないような。

 

好奇心と恐怖がないまぜとなって彼女の胸を満たした。

 

「雷龍の『荒修行』でギラヒム最終形態と戦う。そして次に終焉の者を狩る」

 

「.........前半はわかりますが、後半が意味不明。解析不能です」

 

茫然となったファイが目を丸くして言う。

 

「ギラヒム最終形態と戦えば、終焉とも戦えるんだ。まあ僕に任せてよ」

 

リンクは雷龍のほうに歩いていきながら請け合った。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

ところで、某所にいたギラヒムの背中を猛烈な悪寒が襲った。

 

「..........い.....いったいこの寒気は?」

 

彼は思わず自分の肩を抱いた。

 

「あ....あのヤバイ少年がボクを狙ってるような気がする.....」

 

(次回に続く)




*1 たしか「ブレークスライド」とか言って、砂の中を進んでいるときに一旦ポーズして、ほんの僅かにアナログスティックで後ろを軽く入力しながらⒶを押す技だったような....
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