セドリック・ディゴリーと反抗期の妹   作:97nnn79

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勇気がもたらす

 試験当日。朝食の時間、食事よりも手元の教科書や羊皮紙に夢中な生徒が殆どだった。アリスもご多分に漏れず、スプーンではなく羽根ペン片手に足掻いていた。その様子に 「試験中腹鳴って魔法が失敗するかもよ」 とライアンが不吉なことを言うのでおとなしく羽根ペンを置く。黙々と食事をとる友達を横目に、来年は試験前悪あがきをしないようになりたい……と切に願った。

 

 

「成績が悪かったら落第かな?」

 

 最初の試験が行われる教室に向かう途中、アリスはライアンに尋ねる。初めての試験の不安から一年生は 「成績を落とすと来年も新入生と一緒に授業を受けさせられる」 だの 「追試になると夏休みは家に帰れない」 といった噂で戦々恐々としている。

 

「落第しないって」

「でも自信ないんだもん……」

 

 ライアンは立ち止まった。 「初めての試験なんだから、自信なくて当たり前だろ」

 

「ライアンみたいに余裕はないもの」 アリスが唇を尖らせる。彼は暫く黙ったが、意を決したようにアリスの手を取って自分の胸に当てる。この程度であってもライアンが自らスキンシップを取ることはないのでアリスは驚いて目が丸くなった。

 

「俺だって余裕ないよ」

 

 確かに感じられる鼓動の早さに、アリスは肩の力を抜いた。

 

「これ、本当に試験前の緊張で?」

「俺なりに考えたんだから……からかうなよ」

 

 アリスのからかいにパッと掴んだ手を放してライアンは狼狽えた。

 

「ありがとう、ちょっと緊張ほぐれた!」

 

 アリスは景気よく両腕をグルグル回して肩の緊張をほぐした。暑い気候に負けないようにいつものポニーテールもグルグルねじってお団子にする。

 

「私って単純すぎ?」

 

 まるいお団子を揺らして先行く友達に、ライアンは思わず笑みをこぼした。

 

 

 

 

「思った以上にできたと思うの」

 

 アリスはライアンといつもの裏庭に来ていた。午後の風はアリスの少し崩れかけのお団子をユラユラ揺らした。ドラゴンの庭木はくすぐられると、夏らしいビタミンカラーの花を吐く。

 

「でも……フリットウィックの試験は最後減点だよ……タップダンスの途中でヘッドスピン始めたんだもの」 上手くやりたいという気持ちが先行し過ぎたのかもしれない。回り続けるパイナップルを制御できなくてトゲが刺さって痛い思いをした。黙って聞いていたライアンだったが、耐え切れずに声を漏らして笑った。

 

「最高」

「……アハハ 本当だよね?観客がフリットウィックだけで残念!」

 

 アリスもつられて破顔した。この開放的な夏空の下ではもう終わったことはクヨクヨする気になれない。悪く言えば、喉元過ぎれば熱さを忘れる、よく言えば希望的なのがアリスだった。試験結果前の一週間は心が軽い。お団子をほどいていつものポニーテールに結い直す。古いベンチに腰掛けたアリスは鞄からスケッチブックを取り出した。

 

「見て!今まで描いたスケッチ。これ入学式の……ボートで湖を渡ったのが懐かしいよね?」

「本当だ。上手い」

 

 自己満足で描いていた絵をこっそり友達に見せることにした。スケッチブックを受け取ったライアンは興味深そうにしげしげと絵を眺める。ページをめくる手が、裏庭の湖の絵で止まる。

 

「あ……それは……」 制止しようと手が伸びる。

「これセドリック?」 ライアンがキャンパスの中、箒で空を飛ぶ青年を指差す。

 

「あ、あまり見ないで……描きかけだし」 アリスは誤魔化そうと口をもごもごさせたが、 「アー、そうだよ」 と白状した。

 

「湖で一緒に遊んだんだ」

「遊んでないよ。これは……私の想像の兄」 この絵を見ると、試験期間中に悩んでいた兄への確執を思い出す。

 

「この絵と一緒……私は兄が欲しいクリスマスプレゼントも思いつかない……お兄ちゃんはホグワーツに行ってから私の知ってるお兄ちゃんじゃなくなったから」

「なんでそう思う?」

「……違う、そう思い込んでるだけできっとセドリックは変わってない……でも私にはそう感じちゃってるの!毎日一緒にいたのに……家からいなくなったあの三年前から……」

 

 アリスは初めて口から吐きだされる感情に混乱しているようだった。

 

「……私よりハンナやスーザンの方が妹らしいよ」

「セドリックの妹はアリスだろ」

 

 当たり前のように返されてしまい、アリスは自信なさそうに幼い子のようにポニーテールの毛先を両手でいじくりまわす。 「だって私は優秀じゃないもの」

 

「マルフォイにまた何か言われた?」 ライアンの声音が鋭さを増した。

「? うぅん特になにも」 それに関してはアリスはまるまる忘れていた。

 

「昔から、私とお兄ちゃんはよく似た兄妹って言われていたのに、全然そんなことなかったわけだよ。私も入学したら手紙で聞いてたみたいに……良い成績をとって、クラスメイトに頼られてって……そんな風には……」

「セドリックみたいになれなかったから残念だって?」

 

「残念っていうか……自分にちょっとガッカリしたみたい」

「この一年ずっとガッカリだったのか?」 ライアンの言葉にアリスはパッと顔を上げる。 「そんなことは……」

 

「来年はそのガッカリって思えるのがちょっと減ったらいいよな」

 彼の言葉にアリスは逡巡したが、最後にしっかり一回頷いた。

 

「グレンジャーが、『まだ完璧でいる必要はない』ってアリスが言ってくれたって喜んでた」

「あっ それ……」 トロールに襲われる前、トイレの扉越しでの会話を思い出す。いつ彼に話してたのか……少し気恥ずかしかったがアリスはかつての自分の言葉に背中を押された気がした。

 

「そうだよね、ちょっとずつ成長していけばいいよね」 ライアンがコクコク首を縦に振ってくれたので、フンと鼻息荒くアリスは決意を固める。

 

「この絵……本当はクリスマスプレゼントにしようかなと思ってたの」

「……今からでも喜ぶよ絶対」

「じゃあ完成させようかな……」

 

 そうと決めたら忙しくなる。まだカタチが取れていないモチーフも多いし、着色は下塗りしか進んでいない。

 

「早く渡したいから今日から夜更かしして仕上げるつもり!」

「昨日まで試験対策してたのに?」 ライアンは目を丸くさせる。

 

 切り替えと行動に移すのが早いのもアリスの長所だった。

 

 

 

 

 夕食後の時間はめいいっぱい絵の完成に注いだ。凄い集中力だったのでライアンに肩を叩かれてようやく時計が就寝時間近いのに気が付く。

 

「今日はまだやる?」

「もうちょっとだけ……でも、ディーンに白い絵の具を借りたいかも」

 

 ライアンに連れられて男子寮にお邪魔すると、ディーンは快く絵の具を貸してくれた。シェーマスは試験から解放されてベッドから半身はみ出して眠りこけていた。夕食後からずっとこうらしい。シェーマスの足をくすぐると寝言で 「スネイプやめて」 とうめきながら床に落ちた。

 

「ライアンも夜更かしするの?」 男子寮から階段をくだっている最中、後ろを歩くライアンに尋ねる。

「グレンジャーが貸してくれた参考書でも読もうかな、試験に役立ったらしい」

「ねぇ嘘でしょう!」

「……俺だって冗談くらい言うけど?」 寝不足で医務室行きになったらセドリックが心配するぜ、と付け加える。アリスは肩をすくめた。

 

 

「ペトリフィカス トタルス、石になれ!」

 

 談話室から聞こえてきた呪いに心臓が跳ねる。ハーマイオニーがネビルに『全身金縛り』をかけている!ネビルは体が硬直してそのままバターン!と床に倒れた。

 

「ネビル!」 ライアンが慌てて駆け寄る。ハーマイオニー、ロン、ハリーはまさか寮から二人が戻ってくるとは思わなかったようで動揺している。アリスは肖像画の前で透明マント片手に立ちすくんでいる三人にすぐ察した。

 

「ハグリッドに会いに行くの?ノーバードはチャーリーのとこに行ったんじゃないの?」

「アリス……これは……」 ロンが言い淀んだ。ハーマイオニーも、ライアンが解除の呪文をネビルに試みてるのを後ろめたそうに見ていた。

 

 

「僕たち、行かなくちゃいけないんだ」

 

 ハリーが一歩前に出る。

 

「詳しくは言えない。でも、今行かないと大変なことになる。皆に迷惑かけてごめん」

 

 ハリーの爛々と光るエメラルドグリーンの瞳に射抜かれる。アリスは彼の強い眼差しに、口を閉じた。黙ったアリスに三人は察したのか、 「ありがとうアリス」 と言い残し、肖像画裏へと消えていった。

 

 静かになった談話室に、ライアンの解除呪文が小さく響く。ネビルは全身の緊張から解放され、口から息を吐くとそのままポロポロ泣き出した。

 

「ネビル、三人を止めようとしたんだよね、ごめんね……」

 

 止めるべきだった。でも、何かを成し遂げようとする、ハリーの揺るぎない覚悟にアリスはのまれてしまったのだ。

 

 

 

 翌朝になってハリーが入院していると噂になった。

 

「シーカーがいないだって!?」 談話室中にオリバーの声が響いた。

 

「どうしちゃったの?怪我?」

「しばらく入院するそうだ」

 

 グリフィンドールは久しぶりにハリーの名前を口にしたと思う。あの一件以来、話しかけることすらしなかった。

 

「シーカーがいない我がチームはレイブンクローにぼろ負けだろうな」

「どっちにしろ寮杯が手に入らないんじゃあ試合も意味がないさ」

 

「今のは誰だ!」 オリバーがまた吠えた。次第と皆は試験前の暗い感情を思い出した。

 

「昨晩から消えたってことはまた夜中抜け出したって?」

「最年少シーカーのポジションはもういらないのかもな」

 

 そんな……

 少し前までは皆がクィディッチを楽しんでいたのに……ハリーの減点に怒るのは当然だ、けれどこの雰囲気の悪さは悲しくて息が詰まる。

 

 

「皆、もうハリーとプレーしたり……応援するのがイヤになった?」

 

 アリスの小さな声に皆が振り向く。多くの上級生からも注目を浴び、アリスはキュッと体を強張らせる。でも、そのまま言葉を続ける。

 

「……ハリーは入院してるけど……私は新しい応援旗作って皆を……ハリーも一緒に応援したい……だって、ハリーはグリフィンドールの選手でしょう?」

 

 アリスは乾いた唇を舐めて、声を張る。

 

 

「……次、絶対……ハリーは最高なプレーをしてくれる選手だって私は信じてるから……!」

 

 だから……ハリーの居場所を残してほしい。

 項垂れたアリスの頭頂部に、グリフィンドール生は顔を見合わせた。

 

「……熱い告白だなお嬢ちゃん!」 ジョージが吹いた。

 

「ハリーがいないなら今日の試合のハイライトは俺らだな!」

「ちょっとローブに隠し持ってるクソ爆弾はどういう了見?」 フレッドの隣でアンジェリーナが目を光らせる。

 

「シーカーがいない分、コイツで爆発力を補う算段だ」

「それ、ハリー越えの大量失点かもな」 「笑えねぇぜ!」 リー・ジョーダンのツッコミに談話室に笑い声が起こる。

 

「……シーカーがいなくっても全力を出すわよ!」 ケイティ・ベルが血気盛んに吠え、「全ての選手への応援も、抜かりなく!」 パーシーが周囲を先導するように拳を振るった。

 

「グリフィンドール全員がこの試合を戦い抜く!誰一人欠けることなくだ!」

 

 オリバーの威勢にワッと一同が盛り上がる。選手は練習場へ向かい、皆はその雄姿にエールを送った。緊張から解放されたアリスの肩に手が置かれる。

 

「オリバー! あの……」

「あぁ、俺らの大事なシーカーだ。ハリーはこれまでチームに貢献してくれてた。これからも期待してるんだ」

 

 アリスは安堵の笑顔を浮かべた。

 

「アリスのおかげで試合前、グリフィンドールが一丸となれたよ」

「え? わ、私のおかげ?」 アリスは感謝されたので、見るからに口角を上げて照れた。

 

「そうさ、助かったよ。勇気がいっただろう」

「……まぁ、ちょっとね」

 

 誇らしげに揺れているアリスの小さな頭にオリバーは微笑みを浮かべて、ポンと軽くなでた。

 勇気を出してよかった、またハリーをみんなで応援できる!嬉しくってアリスは笑みがこぼれた。

 

 

 

 

  レイブンクローとの試合は惨敗だったがグリフィンドールは闘志を絶やさずに戦った。そんな選手たちにグリフィンドール生は大きな拍手を送ったのだった。

 同時刻、ハリーに関する新たな噂が流れていた。あの晩、彼はホグワーツが守っている賢者の石を魔の手から守り抜いたという!

 

「クィレルが賢者の石を狙ってたって。これは間違いない」

「レイブンクローのアンソニー・ゴールドスタインから聞いたよ。試験後にクィレルへに質問しに教授の部屋へ行ったら、荷物はそのまま。当の本人は行方不明だ……」

 

「だからハリーは入院しているのね」

「大きな怪我をしているんじゃないか?」

 

 一同は医務室へ大挙して押しかけたが、マダム・ポンフリーに門前払いされた。頼み込んだらお土産くらいは渡せるらしくアリスも双子と一緒にハリーのお見舞いに訪れた。

 

「なにそれ?」 アリスはカバンから差し入れのチョコレートを取り出そうとしたところ、傍らのフレッドのお見舞い品に顔をしかめる。

「トイレの便座さ」

「そんなものもらってハリーはうれしいかな」

「医務室にチョコレートの差し入れはあっても、便座は足りてないかもしれないだろ?」

 

 ジョージの物言いにマダム・ポンフリーは目を吊り上げて便座を没収した。慌てて、アリスはカバンの底からもう一つお見舞い品として差し出す。

 

「これ、応援旗なんです。飾っていただきたくって……」

 

 なるべく清潔に見えるようにアリスは旗のシワを伸ばした。マダム・ポンフリーは、 「もうお戻りなさい」 と一言交わし、応援旗を受け取ると忙しそうに医務室の中へ引っ込んだ。チラッと伺えた奥のベッドに、アリスは無事早く回復するように祈った。

 

 

 翌晩、学年度末パーティーが行われた。大広間はスリザリンを祝して緑とシルバーの豪華な飾りつけで施されている。

 

「来年はグリフィンドールが寮杯を取れたらいいよな」 シェーマスがつまらなそうに呟く。

「寮杯に手が届いてたものね」 ラベンダーも残念で仕方がないようだ。

 

 そうこう話していると、一瞬、大広間が静まり返った。振り向くとあの、ぐしゃぐしゃ頭のハリーがグリフィンドールのテーブルに向かって歩いている。周りはチラチラ視線をやってコソコソ隣と耳打ちしていて……最近の噂話はハリーの冒険でもちきりだからだ。ハリーが着席するとタイミング良く、ダンブルドアが現れる。

 

「また一年が過ぎた!──ここで寮対抗杯の表彰を行うことになっとる。点数は次のとおりじゃ。四位 グリフィンドール 三一二点。三位 ハッフルパフ 三五二点。レイブンクローは四二六点。そしてスリザリン 四七二点」

 

 スリザリンのテーブルから歓声が上がる。足を踏み鳴らし、ゴブレットを叩く金属音が鳴り響く。

 

「スリザリン。よくやった。しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」 流れが変わるような言葉に、皆が耳を澄ませた。

 

「駆け込みの点数をいくつか与えよう。えーと、そうそう……まず最初は、ロナルド・ウィーズリー君」

 

  パッとグリフィンドール生が……いや、大広間中の生徒がロンを見るので彼の顔は緊張で強張った。

 

「……この何年間か、ホグワーツで見ることができなかったような、最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに五〇点を与える」

 

「マジかよロン!」 シェーマスが叫ぶ。ディーンがロンのために机を叩きならして祝う。

「僕の兄弟さ! 一番下の弟だよ。マクゴナガルの巨大チェスを破ったんだ」 パーシーがそれはそれは嬉しそうに弟を自慢するので……ロンの境遇を共感できるアリスは胸が熱くなった。ロンの顔は熟れたトマトのように真っ赤で、双子に頭をかき混ぜられている。

 

「次に……ハーマイオニー・グレンジャー嬢に……火に囲まれながら、冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに五〇点を与える」

 

 ワッとハーマイオニーが腕に顔をうずめた。

 

「ハーマイオニー!」 思わず彼女に駆け寄って抱き着いた。ラベンダーとパーバティも……。同室の女の子は彼女が、減点をどれだけ反省していたか知っていたからだ。

 

「三番目はハリー・ポッター君……」 部屋中が水を打ったようにシーンとなった。

 

「……その完璧な精神力と、並はずれた勇気を称え、グリフィンドールに六〇点を与える」

 

 爆発したような、喜びの叫び声が大広間を震わした。まさか……こんなことが起こるだなんて!

 

「じゃあ……得点は」 シェーマスが両手の指を折ったり伸ばしたりして得点を必死に数えていたが難しそうだった。

 

「勇気にもいろいろある……敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。しかし、味方の友人に立ち向かっていくのにも同じくらい勇気が必要じゃ。そこで、わしはネビル・ロングボトム君に一〇点を与えたい」

 

 グリフィンドール生はネビルを取り囲んだのでもみくちゃになった。ライアンは喜色をたたえて、呆然とする彼を揺すった。ネビルが得点を稼いだ!するとつまり……

 

「したがって、飾りつけをちょいと変えねばならんのう」

 

 ダンブルドアが手を叩くと大広間の飾り付けがスリザリンカラーからグリフィンドールへ変わる。真紅と黄金の獅子の垂れ幕に、喜びの声が大きく上がる。レイブンクローとハッフルパフからも祝福の拍手が沸き起こった。輪の中心にいるハリーの元にアリスも混ざる。グリフィンドールが寮杯を獲得した喜びに皆は浸った……。

 

 夢のようなパーティーの翌日、試験結果が配られた。

 

「これも夢じゃないかしら!」

 

 パーティーと同じテンションで喜べるのはハーマイオニーくらいだ。でも、それもそのはずハーマイオニーは学年一位の成績だったから。彼女はライアンの成績表と回答用紙を見比べていた。彼女の勢いにあっけにとられている彼の順位も、上から数えて十本の指に入る成績で、グリフィンドールの秀才はこの二人で固定だった。

 

「アリス、変身術が満点じゃない」 自分の成績表を考察するのを一回やめたハーマイオニーが褒めた。

 

「ハーマイオニーが苦手な理論の記述、教えてくれたおかげだよ」 アリスは顔を綻ばせた。二人のように、トップクラスの素晴らしい成績ではないが……想像以上の健闘に自分を褒めたくなった。

 

「魔法薬学の実技も良いね」

 ライアンも感嘆の声を上げた。目を回しながら必死に詰め込んだおかげだ。でも……

 

「二人の背中を追っかけて頑張るのも良かったけれど……来年は自分のペースで頑張ろうかな」

 

 ライアンとハーマイオニーは顔を見合わせた。

 

「うん。アリスは我流で学んでいくのも上手いと思った。俺はいつでも手伝うけど」

「私もそう思うわ、でも学習スケジュール表は渡しておくわね。安心して、来年度用にブラッシュアップしておくから……」

 

 彼女のいつもの調子に、通りかかったハリーとロンが苦虫を噛み潰したような顔をしたので、ライアンとアリスは思わず噴き出した。

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