【ネタバレあり】牢屋敷内にある裁判所の証言台は13台しかないらしい   作:みかづきのみ

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「あのー、いい?」

 

 俺の声に、少女たちの視線が集まる。

 

「……何?」

「んーと、あのさ。ナノカさんの言ってる事は事実だと思う。でも、その上で早合点じゃないかなって」

 

 俺がここで庇うのは、逆効果の可能性もある。佐伯(さえき)ミリアが男性と入れ替わり、唯一大人であることから黒幕であると疑われているように、俺だけ男であると言う理由で疑われてもおかしくないからだ。

 共犯の可能性すら考えられる中で、どれだけ受け止めてもらえるか。

 

「まず一個佐伯さんに確認しておきたいんだけど、佐伯ミリアさん本人なんだよね?」

「え……? う、うん、そうだよ……?」

「その言葉、信じるよ?」

 

 佐伯ミリアが佐伯ミリアであると証明できるかもしれない方法が、一つある。

 それは、【入れ替わりの魔法】を使ってもらうことだ。

 もし入れ替われるのなら、佐伯ミリア本人か、魔法が体に残るかのどちらか。

 魔法が体の方に帰属している場合が面倒だが、人格の方にくっついているのなら、入れ替わった後、佐伯ミリアに再び使って貰えばいい。その時点で佐伯ミリアは佐伯ミリアであることを証明できる。

 

 体の方に魔法が宿っていた場合は、証明は難しい。それでも、牢屋敷の歴史と噛み合っていないと言う点と、入れ替わった状況が不自然という点で、黒幕と決めつけるには早いと少しでも考えてくれるかもしれない。

 

「佐伯さん、入れ替わりの魔法って佐伯さんの体と人格、どっちに紐づいてるかわかる?」

「え? ……えっと、ああ、それはおじさんの人格だよ……?」

 

 最初は質問の意図が理解できなかったのか、少し間ができる。

 それでも、嬉しい返答が返ってきた。

 

(これなら、証明できる)

 

 そこで、足元がわずかに揺れる。

 

「……っ?」

 

 最初は気のせいかと思うほどの揺れだったが、裁判所全体が波打つように揺れ始めた。

 

「こ、これ地震ですの!?」

「どうやら牢屋敷が揺れているようですね……!」

 

 揺れは収まる気配がない。

 

(牢屋敷は古いとはいえ、倒壊するなんてことはないと思いたいけど……)

 

 そこで、上から羽ばたき音が聞こえた。

 そちらに視線を向けると、ゴクチョーが手すりにとまって、こちらを見下ろしているのが視える。

 

「は? あれ、え? どゆこと?」

 

 ゴクチョーの死体は、今も床に落ちている。つまり、目の前のゴクチョーは、新しいものということだ。

 

「やれやれ……かわいいゴクチョーを撃つなんて、ひどいことしないでください。代わりはいくらでもいるので、今回は見逃しますが……本来なら処刑ものですよ? 裁判は終わりましたし、皆さん速やかに自分の房に戻ってくださいね……?」

 

 恐ろしい情報と共に、サラッと告げられる【代わりはいくらでもいる】と言う言葉。これは、釘刺しでもあるのだろう。

 

「ああ、ちなみにこの揺れですが、処刑を執行した後は屋敷が揺れるんですよ。しばらく続きますが、危険な揺れではありませんのでお気になさらず」

 

 少女たちは、一歩も動かない。

 

「あの、外出禁止時間なので、戻らないと懲罰房行きになっちゃいますよ……?」

 

 その言葉にハッとしてスマホを見ると、22時を過ぎていた。

 

「ごめん、続きは明日!」

「ひぃっ! やばばばば。あてぃし関係ねーし、部屋に戻るからね!」

 

 看守から逃げるように、各々が走って部屋に戻った。

 

 

 

 牢屋敷生活、六日目。

 朝食を終え、ラウンジに集まる。

 

 朝食の席で、桜羽(さくらば)エマが一度みんなで集まって話したいと提案したのもあるが、昨日の佐伯ミリアの弁護の続きを行うためでもある。

 

 重い足取りながら、少女たちは続々とラウンジに入ってくる。

 しかし、佐伯ミリアはあからさまに避けられていた。

 それでも、黒部(くろべ)ナノカや紫藤(しとう)アリサは来ない可能性もあったため、集まってくれたことに少しホッとする。

 

(蓮見さんがいないから、まぁこうなるか)

 

 11全員が集まったのを確認し、誰も口を開こうとしないのを見て、口をひらく。

 

「よし、じゃあ早速始めようか。……昨日は話の途中で終わっちゃったから」

「……ええ。話の続きを聞かせて頂戴」

「まず、佐伯さんが佐伯さんであることを証明しよう」

「そんなことができるんですか?」

 

 (たちばな)シェリーの言葉に頷く。

 

(……と言っても、佐伯さんが協力してくれないと無理だけど)

 

「簡単に言えば、佐伯さんに入れ替わりの魔法を使って貰えばいい。昨日、入れ替わりの魔法は人格の方に紐づいてるって言ってたよね。それなら、佐伯さんが誰かと入れ替わって、すぐに戻ればそれで本人だって証明になる」

「……たしかに、入れ替わった後自分の意思で元の体に戻れるなら、ここにいるミリアちゃんはミリアちゃん本人だって言えるわね?」

「なるほど!」

「……え、えーと、どういうことなんですの?」

 

 橘シェリーと宝生(ほうしょう)マーゴは理解してくれたようだが、遠野(とおの)ハンナや一部の少女はいまいちピンときていないらしい。

 

「元の入れ替わりの魔法を持っていたミリアさんを真ミリアさんとすると、ミリアさんが真ミリアさんではない場合、魔法が使える場合はミリアさんの体に魔法が(そな)わっているということになりますよね! 入れ替わった男の人は、元々は魔法を使えなかったはずですから!」

 

 ちゃんと納得してもらったほうがいいと判断したのか、橘シェリーが詳しく解説を入れてくれる。この場合、自身の解釈が間違っていないかの確認も兼ねているかもしれない。

 

「つまり、ミリアさんが真ミリアさんではない場合、ここでもう一度入れ替わると自分の意思で戻れないんです! だから、入れ替わり直すことができるのなら、ここにいるのは真ミリアさんってことになりますね!」

「補足ありがとう、橘さん。……ってことだから、協力してくれるかな、佐伯さん」

 

 肩身の狭そうにしていた佐伯ミリアに声をかけると、少し悩んだように視線を彷徨(さまよ)わせ、やがて覚悟を決めたように顔を上げた。

 

「う、うん。……おじさんのことをライカくんが庇ってくれてるのに、おじさんが逃げるわけにはいかないよ」

「……それで、誰が入れ替わるの?」

 

 黒部ナノカの言葉に、少し頭を回す。

 中身が男性である可能性も考えれば、本当は同じ男の俺が変わったほうがいいのだろう。

 だが、それでは他の少女たちの疑念が残りかねない。

 

「……本当は、俺が一番ダメージが少ないんだろうけど……。ほら、俺って怪しいじゃん? 1人だけ男だし」

「たしかに、ミリアちゃんが本物のミリアちゃんなら、ライカちゃんは唯一の男性になってしまうわね?」

 

 他の少女たちからの反論もない。宝生マーゴの言葉に頷き、口をひらく。

 

「うん。だからまぁ、俺が証言してもみんなからすれば信用出来ないと思う。それなら、ナノカさんが入れ替わって確認したほうがいいんじゃないかなって思ってるよ。次点で桜羽さんかなぁ」

 

 おそらく、今囚人(かん)で信用が高いのは桜羽エマか氷上(ひかみ)メルル、遠野ハンナくらいだろう。

 沢渡(さわたり)ココや紫藤アリサは心象が悪く、宝生マーゴも信用出来ない。夏目(なつめ)アンアンや橘シェリーは何を考えているのかあまりわからないし、佐伯ミリアは疑われている本人。

 蓮見(はすみ)レイアがいれば、適任だったのだが。

 

「……そう。なら、私が確かめるわ」

 

 黒部ナノカが一歩前に出て、手を差し出す。

 佐伯ミリアは、その手を恐る恐る握った。

 

「……っ」

「これは……」

 

 一瞬、握られた手が光を放ち、そこから自然と手が解かれる。

 

 佐伯ミリアは、自身の体を見下ろし、確かめるようにペタペタと触っていた。黒部ナノカは、目を伏せ自分の体を抱きしめる。

 

「う、うぅ……おじさん、もう、戻っていいかな……?」

「……たしかに、入れ替わったようね」

 

 黒部ナノカが泣き言を口にし、佐伯ミリアが落ち着いた口調で事実を認識する。そんなあべこべな状況。

 

「ほ、本当に……そんなことがあるんですの……?」

「あら……♡」

 

 周囲の少女たちも、信じがたい光景に各々の反応を示している。

 

「ナノカさん、だよね? そろそろいいんじゃない?」

「……ええ。佐伯ミリア、十分よ」

 

 佐伯ミリアの体に話しかけると、軽くため息をついて頷く。そして、再び手を差し出した。

 

「……これで、佐伯さんが佐伯さんだって証明されたってことで……いいんだよね?」

 

 再び握られた手が光り、2人が離れる。佐伯ミリアが縮こまり、黒部ナノカはゆるくかぶりを振った。

 

「……ごめんなさい。今回の件は、私の早とちりだった」

「うぇ!? い、いいんだよ……? おじさんも、魔法を隠してたし……紛らわしかったし……ご、ごめんね……」

夢咲(ゆめさき)ライカ……あなたのおかげで、私は取り返しのつかない過ちを犯さずに済んだ。……ありがとう」

「あぁ、まぁ、佐伯さん本人が許してるならいいんじゃない?」

 

 実際、一人称がおじさんだったり、8ミリフィルムの再生方法を知っていたりと、不自然なところはあった。

 

(それに、ここにいるのが佐伯さんなのは、いいこととは限らない)

 

 少なくとも、劣悪な環境に晒されているのだし。

 他の少女たちも納得した様子で、疑ったことを謝罪している者もいる。

 

「では、ミリアさんはなぜご自身のことをおじさんと呼ぶのでしょう?」

 

 誰も触れていなかったところに、橘シェリーが突っ込んだ。

 

「ちょ、ちょっとシェリーちゃん!?」

「えー? だって気になりませんか?」

 

 橘シェリーの追求に、佐伯ミリアの顔が青くなる。

 

(……何かあるんだろうなぁ)

 

 何もないわけがないが、この状況でも、怪しまれても言いたくないほどの過去があるのだろう。

 黒幕の疑いをかけられて、【色々複雑な事情があって】で誤魔化すのは、相当なトラウマがありそうだ。

 

「ボクらは協力しあうべきだと思う。だから、みんなで話し合いたいんだ」

 

 佐伯ミリアを庇うためか、桜羽エマは強引に話を進めることにしたようだ。

 橘シェリーも一度口を閉じて、桜羽エマの方に向き直る。

 

「……話はそんだけか? ウチは協力する気なんてねえ。まとめてた奴が真っ先に殺人に手を出したんだ。こん中にまだ黒幕もいるかもしれねえのに、誰も信じられねーよ」

 

 吐き捨てるように、紫藤アリサはラウンジを出ていく。

 そんな紫藤アリサの背中を悲しそうに見送った後、一度深呼吸して桜羽エマはぐるっと囚人たちを見回す。

 

「……本気で、ここを脱出するしかないと思うんだ」

 

 覚悟の決まったような、そんな語り口。

 

(その話かぁ……)

 

 集められた囚人は、成人してもいない少女たちだ。こんな環境に居たくないと思うのも当然だろうし、家に帰りたいと思うのも不思議はない。何かを残してきた少女もいるかもしれない。

 脱出したいと言う心情は、理解は出来る。

 

「レイアちゃんは大人しく従おうって言ってたけど、ここにいても救いなんてないんだよ」

 

 実際、ここにいて救いがあるかといえば、そんなことはないだろう。過ごしているうちにストレスが溜まり、魔女因子が暴走して、殺すか殺されるか。

 たった5日……4日で一度目の殺人が起きたのだから、1ヶ月で1人になったとしてもおかしくない。

 桜羽エマは元々脱獄を考えていたから、思考の流れとしても納得できる。

 

「そうかもしれないけれど、規則を破れば懲罰房行きよ」

『問題行動を起こすべきではないと思う』

「あてぃしだってこんなとこ出たいけど、逆らったら最悪看守にぶっ殺されるじゃんよぉ」

二階堂(にかいどう)ヒロちゃんみたいにね」

 

 元々行動を共にしていた橘シェリー、遠野ハンナ、氷上メルルは同意見だが、他のメンバーは協力的ではないらしい。

 

「ヒロちゃん、ノアちゃん……それに、レイアちゃんも。ここに捕まってもう3人も犠牲者が出てる」

「レイアは自業自得なんじゃねーの。人殺したんだしさぁ」

 

 沢渡ココの言葉も理解出来るが、それでも、殺さないで済むのならそのほうがいい。罰は受けなくてはならないと言うのは、前提の上だが。

 それに、魔女因子なんてものがある以上、情状酌量の余地はある。

 

「それだって、こんな状況じゃなきゃ起こりえなかった。ナノカちゃんの言うとおり、弄ばれてるんだよ! ここにいたらみんな同じような目に遭っていって、最悪な未来しか見えない。見つからないように目を盗んで脱出する方法は、きっとあるはず。みんなでここを出よう! 協力しあえばきっと活路が見えるよ!」

「げろぉ」

「……っ」

 

 沢渡ココの反応はあまりいいものではないが、そもそも桜羽エマは初日からそこまで協力的な言動をしてこなかった。問題行動もあり、自業自得の部分もあるだろう。

 そこで、宝生マーゴが一歩前に出る。

 

「エマちゃんは偉いわね。私はとても、みんなを信じることなんてできないわ」

「マーゴちゃん、で、でもここでバラバラになっちゃったら!」

「ふふ、心配しないで。出るために協力し合うことに賛成よ。その方が合理的よね。私はエマちゃんに協力するわ」

 

(……?)

 

 宝生マーゴから、意外な言葉が飛び出す。

 何か思惑でもあるのだろうか。

 

「本当!? よ、良かったぁ……」

「ココちゃんも出たい気持ちは同じよね?」

「そりゃ、まあ……」

 

(正直、何かをするために協力するタイプには見えなかったけど)

 

 どちらかと言えば、人が苦しんでいるのを見て愉悦に浸るような人間に見える。

 

「本格的に、脱獄のために計画を練りましょう。チームのリーダーを決める必要があるわね。これまでみんなを見てきて、リーダーはエマちゃんがいいと思ったわ」

「えっ、ボ、ボク……!?」

 

 人選自体は、無難だろう。沢渡ココや夏目アンアンよりは間違いなく求心力があるし、行動力もあって裁判を振り返れば思考力もある。

 声を真っ先にあげたのも彼女だ。

 

(……人を信用してないのに、狙われるような位置にいくわけないか)

 

 その上で、宝生マーゴからすれば盾のような役割でもあるのだろう。参謀のような立ち位置で、桜羽エマを操る。

 

(……実際にどうかはわからないけど、そのくらいに考えておこう)

 

「ええ。みんなを引っ張ってくれるのはあなたよ。反対の人はいるかしら?」

 

 声は上がらない。

 

(……完全に言う機会を逃したな)

 

 言った後の空気を思うと胃が重いが、仕方ない。

 そう考え口を開く前に、桜羽エマがこちらを向いた。

 

「ライカくんと、ナノカちゃんも協力してくれるよね?」

 

 沢渡ココと宝生マーゴの協力を得られた嬉しさからか、浮かれたようにこちらに話しかけてくる。

 

「あー……この空気でこんなこと言うの本当に申し訳ないんだけど、俺、ここを出る気ないんだよね」

「……え……?」

「ど、どうしてですの!?」

 

 桜羽エマはショックを受けたように呆然と呟き、遠野ハンナが驚いたようにずいっとこちらに詰めてくる。

 

(……あんまり、水を差したくないんだよな)

 

 俺が脱獄を望んでいない理由は、二つある。まずは、元の生活に戻りたいと思っていないこと。これは、完全に個人的な理由だ。

 

 もう一つは、俺たちが魔女因子を持っていると言うこと。魔女因子が、ここを出たら活性化しないのならいい。だが、そんなことはないだろう。生きていればストレスを感じることなんていくらでもあるし、ふとした瞬間に魔女化しかねない。

 そんなことになれば、一番危険なのは近くにいる可能性が高い家族や友人といった、大切な人だろう。

 魔女化し、理性のない状態で帰りたかった理由を自ら壊してしまう。そんな可能性を考えれば、帰ろうとはとても思えなかった。

 

(……それに、そもそも社会に受け入れられるかって言えばそんなことないだろうし)

 

 家族はわからないが、友人はどうだろう。いつ化け物になるかもわからない人間のそばにいられるだろうか。友人本人は良くても、その友人の家族は? 友人の友人は? 大切であればあるほど、こんな化け物と一緒にいて欲しくないと思うはずだ。

 

「ああでも勘違いしないでね。俺は俺の個人的な理由で出たいと思ってないけど、桜羽さんが嫌とかそう言うことじゃないからさ」

「……私も、脱獄に興味はないわ」

 

 黒部ナノカも、小さく、しかし芯の通った声で主張する。

 桜羽エマは分かりやすく肩を落とし、悲しげな表情になった。

 

「……牢屋敷を出たくないと言うのなら、仕方ありませんね」

 

 橘シェリーは肩をすくめ、お手上げと言った風に両手を広げる。

 

「……これ以上一緒にいても邪魔だろうし、俺は出るね。俺は協力できないけど、応援してるよ」

 

 そう言って背を向けても、引き留める言葉はかからない。

 そのまま、静かにラウンジを出た。

 

 

「夢咲ライカ、ちょっといい? 話があるの」

 

 ラウンジを出た瞬間、一緒に出て来ていた黒部ナノカが話しかけてくる。

 話すタイミングを伺っていたらしい。

 

「もちろん構わないよ。何?」

「あなたは、いつ佐伯ミリアが佐伯ミリアだって気付いたの?」

 

 どうやら、俺が佐伯ミリアを庇えたことが不思議らしい。

 

「別に気付いたわけじゃないよ。ほら、昨日早合点だと思うって言ったよね。決めつけるには早いなって感じただけ。だから、本人だって証明できて俺も良かったなって思ってるし」

「それでも庇ったと言うことは、私の発言が事実と違う可能性をある程度感じ取ったはず。それをどこで感じ取ったの?」

 

(まぁ、二度も間違えかけたら気にもなる、か……?)

 

 俺自身が怪しまれていると言うよりは、考え方の参考にしたいと言う趣旨のように感じる。

 

(別に、隠す必要もないか)

 

「……まず、佐伯さんの中身が成人男性だったとして、この牢屋敷の黒幕になるって部分が別に繋がってないと思った。だから、ナノカさんの話す内容には思い込みがあるんじゃないかなって考えたよ」

 

 黒部ナノカは考え込むように視線を下げ、何も言わない。

 

「そこから考えてみれば、成人男性が少女の体を奪うには、状況が不自然だって思った」

「……どう言うこと?」

「魔法は佐伯さんのものでしょ? だから、佐伯さんが入れ替わりの魔法を持ってるって知る方法は、本人から聞くくらいのはず。つまり男性は、魔法、それも入れ替わりの魔法を持ってるって話す程度には佐伯さんから信用があった人のはずだ」

 

 相槌はないが、ちゃんと聞いていることは態度でわかるため、話を続ける。

 

「それなら、もっと人目のつかないところで良かったよね。それに、入れ替わった後も問題がある。体格とか筋力の問題で脅されてたなら、その力関係は逆転しているわけで、反撃されないとも限らない。その場で喜んでる余裕はないと思うな。実際脅された少女がその場で反撃に出られるかは置いておいてね。要は、入れ替わりは同意の上なんじゃないかってこと」

 

(だから、まぁ……)

 

 佐伯ミリアは、自殺しようとしていたのだと思う。

 自殺を考えるほどのトラウマには、触れない方がいいだろう。

 

「同意の上で入れ替わったなら、もう元に戻ってる可能性もあるよね。だから、庇ったよ」

「…………そう……。たしかに、その可能性はあったわ」

 

 黒部ナノカは長い時間考え込んでいたが、ある程度納得したのか、右手で頭を抑え、息を吐き出した。

 

「ナノカさんの焦る気持ちもわかるし、仕方ないよ」

 

 焦っていたのだろうが、男性の言葉選びにも問題はあっただろう。

 自責を行なっている黒部ナノカに(なぐさ)めの言葉をかけ、反応を待つ。

 

「……私はあのまま、彼女を撃っていたかもしれない。改めてお礼を言わせて。ありがとう」

「……どういたしまして。……と、自由時間もそろそろ終わるし、戻ろうか」

 

 軍手を外してスマホを操作しながら言うと、黒部ナノカがそっと触れてきた。

 

(……幻視か)

 

「……別に、言ってくれればいくらでも触らせるのに。……見えた?」

「……いいえ。……でも、あなたのことは信じてみることにするわ」

 

 自然に会話は途切れ、外出禁止時間になる前に、お互いの房に戻った。

 

 

 

反映するかはともかく、バッドエンドは

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