Pokémon Card Game LEGENDS "became" 作:とげ
「サカキ……! そいつが、ケイツァルを操ってるのか!」
憑依だとか異世界だとか、悪のカリスマなどオメガの話していることのほどんどが理解できなかったククルだったが、全ての黒幕がその男である事だけは理解でき、グッと拳を握りしめた。
「ねぇ! そいつからケイツァルを助けるにはどうしたらいい?」
『んー、殴ってみたらいいんじゃない?』
「え、そんな物理的な話?」
ククルはオメガの気の無い返答に、一瞬にして毒気を抜かれてしまった。もちろんその手は最初からやるつもりではあったのだが、あまりにも力技過ぎる。
『いやぁ、僕にも分かんないんだよ。なんせなんで彼がこの世界に顕現出来たのかすらわからないし……。あぁそうだ、彼からポケカ……君らが精霊の印と呼ぶものを取り上げるのが一番じゃないかな』
「つまり……」
『そ、君が強くなって彼とカミ喰いを行うのさ。そのうえで殴ってやれば正気に戻るんじゃないかな?』
結局、そういうところに落ち着くらしい。
ククルは上を見た。
燦燦と輝く太陽が、あの時ケイツァルのヘルガーの放った炎によく似ていた。
顔に当たった熱気を思い出すだけで、喉がカラカラにヒリつくのを感じる。
あの時のケイツァルの戦いが瞼から離れない。
だが、彼を止めるには、彼より強くなるしかないのだ。
「話はまとまったみたいね。強くなる。それしかないなら一刻の猶予も無いわ。早速出発しましょ」
「そうだね。オレは……あいつを超える!」
ククルは太陽から目を反らし、声をかけて来たエマを見た。
太陽の光に目を焼かれたククルの視界は白く染まり、何度瞬きをしても辛うじて近くに居るエマが見えるだけだった。
そんな目の前に居る彼女は、何かを言いたそうにもじもじとしている。
「えーっと。コホン。よく聞いてね」
「うん?」
その白い世界で彼女は笑い、ふーっと息を吐き意を決したように手を差し伸べた。
「私の名前は、エマ。みんなからはポケモンの巫女と呼ばれているわ。まだ知らない人が多いけど、この世界にはポケットモンスターと呼ばれる精霊たちが居るの。その精霊の宿った札を、私たちは戦わせたり集めたり……そして、私の父は、この精霊のことを研究しているというわけよ。では、初めに君の名前を教えてもらうわ」
「……? ククルだ。何で今更?」
「ふむふむ、ククルね。そして、アイツがケイツァル……」
エマが、ちらりとエルドラドの方角を見た。
ククルは、彼女の芝居がかったセリフに首をかしげながらも、とりあえず面白そうなので最後まで付き合ってみることにした。
「ククル! いよいよ、これから君の物語の始まりよ。夢と冒険と! ポケットモンスターの居る世界へ! レッツゴーよ!」
「これは、なに……?」
最後まで聞いてみたが、結局よくわからなかった。
だが、何か力の湧いてくる。これから冒険が始まるんだという予感のする言葉だった。
「う……。うちの教会に伝わってる旅立つ者への祝詞みたいなものだから気にしないで」
事態を飲み込めないククル少年と、少し恥ずかしそうに笑うエマが草原に立つ姿は、まるで一枚の絵のように美しく――
『あー。コレ昔僕が冗談で広めた奴……。うわぁ懐かしい。聞いてる方が恥ずかしくなっちゃったよ』
「……だそうです」
それを伝えた瞬間、ただでさえ恥ずかしそうだったエマの顔が真っ赤に染まる。そして――
――パァン!!
『ぐえぇえぇぇ!? 僕ぅぅぅ!?』
「!?」
エマから繰り出されたビンタの前に、ククルはオメガを差し出したのだった。
『ひ……酷い……』
「あ……はわわわわ……オメガの印叩いちゃった!?」
「あははははは! 絶対来ると思った。あー、すっきりした!」
狙い通りオメガに一泡吹かせたククルは大いに笑い、エマは一瞬混乱した後に、狙ってやられたことに気づいた。
「ま……待ちなさい!! あなたねぇ!! こらー! ククル!!」
「あはははは! どっち! どっち行けばいいんだー!!」
二人は、草原を駆けだした。
その日は、旅立ちにふさわしい良く晴れた日であった。
ちなみに、オメガが今の衝撃ですべてのエネルギーを使い果たし気絶したのに気づいたのは、それからしばらくしてからの事だった。
第一章、これにて完結でございます。
全然ポケカしてない……。
ポケモン30周年を記念した何かを作りたいと思い立ち、書き始めたこの小説ですが、不敬になっていないかが不安でしょうがないです。
子どものころからポケモンとは何かを妄想して、大人になるまで色んなことを考えて、一緒に育ってきました。
一度は離れたり、未プレイのソフトがあったりと紆余曲折のあったポケモン人生ですが、こうしてまた再びハマって居られることに感謝の気持ちでいっぱいです。
ククルとエマの旅はまだ始まったばかりですが、遅筆のため今年中の完結が叶うかどうか……。
完結までの道筋は、頭の中にあります。
すごくきれいにまとまる予定です。
ただ、執筆速度が間に合っていないので、これからまた書き貯めモードに入ります。
全然ポケカをする時間が取れません。
ZAすらクリアできていません。
ですが、30周年という節目にこうして自分の作品を作っていける喜びが勝っています。
できることなら、第二章はゴールデンウィーク辺りに発表出来たらなと思っております。
どうか皆さん、そのころにまたご覧いただけましたら幸いです。