鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる。   作:書仙凡人

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lv.15 従者の帰還

   [Ⅰ]

 

 

 エルファナ神殿の鐘が鳴る翌日の早朝、俺はフレイさんとランドとユミルと共に、マティスの街を後にした。

 雲一つない青空が広がっている。

 今日も暑い天気になりそうだ。

 移動は徒歩だから、なかなか大変な旅となりそうである。

 とはいえ、馬車じゃないので、今日は休憩をこまめに挟みながら、のんびりと行く予定だそうだ。

 そして……まぁしょうがない事ではあるが、同行者が2人増えてしまったのであった。

 それは勿論、シムとレティアである。

 コイツ等は本当にしつこいのだ。アレからずっとついてくるのである。

 小便にする時までついてこようとしやがって。

 シムはともかく、レティアは俺のイチモツを見たいのか? と言いたいところだ。

 正直、勘弁してほしいのだが、とりあえず、昔の仲間という設定で同行を許したのである。

 まぁ要は俺が根負けした形だ。

 だが、だからといって俺は王都へ向かうつもりはない。

 暫くはイシルに留まり、今後の事を考える予定である。

 

   *

 

 話は変わるが、この転世記を記述するに当たり、暗黙の了解的な話題もある。

 それについて、少し補足しておこう。

 今回、俺は異世界転生したわけだが、この世界でも生命は基本的に、地球にいる生物と同様な生態であると記しておこう。

 陸上生物は日光を浴び、呼吸をし、それから栄養補給をして、不要なモノを身体から出す。このサイクルは絶対なのだ。

 つまり、栄養補給をする以上、排泄行為はやはり行われているのである。

 だからといって……俺はあえてソレには触れないし、その辺は詳細に書くつもりもない。

 だって臭いし、汚いし、そんなリアルを考えると非常に萎えるからだ。

 でも……生きている以上、登場人物達は人知れず、そういう行為をしていると察しておいて欲しい。

 勿論、性欲もあるから自慰行為や性交、そしてLGBTQな奴等もいる。

 とどのつまり……考えるな、感じろ、だ。

 しないのはアンデッドな方々だけである。

 魔物はどうかしらないが、ドラゴン系は……シュレンの記憶によるとするみたいだ。すんごいのを。

 というわけで、話を戻そう。

 

   *

 

 マティスを発ち、街道を暫く歩いていると、フレイさんがニヤリと笑みを浮かべ、話しかけてきた。

 

「コジローさん……アンタ、スグラムでかなり派手な事をしたみたいだな。ランドとユミルから聞いたぞ」

 

 もう2人から、粗方の事情は聞いてるのだろう。

 

「まぁね。でも仕方ないんですよ。俺の昔の仲間が、理不尽な酷い目に遭ってたんでね。だから、戒めも込めて、ちょっと追い込んでやっただけです」

 

 俺はそう答えると、シムに視線を向けた。

 シムは面目なさそうに頭をかいた。

 

「全部、私のせいです。すいません、コジロー様」

「まぁ話を聞く限り、奴と色々あったそうだから、仕方ないところだな。だが、あのキエーザがコテンパンにやられるとはな。儂はアンタの事をかなり見縊ってたようだ。そこまでの剣の使い手だったとは……」

 

 フレイさんは俺を品定めし直すように、つま先から頭まで目を這わした。

 

「そうなんですよ、フレイさん。スグラムで騒ぎになってて、その話を聞いてびっくりしたんです」

「流石、コジローさんね。私の師匠なだけあるわ」

 

 ランドとユミルは得意げに言う。

 ちなみに俺は、ユミルを弟子とは思ってない。

 ただ軽く稽古をつけてやってるだけだからだ。

 

「本当に……こんなに強かったとは思いませんでしたよ、コジローさん。どこで修業したのか教えて欲しいですね」

 

 レティアもそう言って話に入ってきた。

 

「それは訊かない約束だろ? レティア」

「しょうがないですね。今は訊かないでおきますよ」

 

 今日のレティアは昨日と一転して、剣士風の格好で現れた。

 チュニックにような白い布の服にロギン製の軽い防具を装備している。

 腰には長剣と短剣。足には皮のブーツ。そして、リュックみたいな道具袋を背負うという、これまたファンタジー戦士のような出で立ちなのであった。

 昨日のワンピース姿と全然違うので、俺も面食らったところだ。

 というのも、今朝聞いた話によると、レティアは元々、母の警護も務める侍女の役割を担っていたのだそうだ。

 なので、コイツはそこそこ武器に精通しているのである。

 おまけに昨夜、レティアは俺の部屋に来て、お礼を言いにきたのだった。

 どうやら、キエーザをコテンパンにしたのが嬉しかったみたいである。

 その時のやり取りを抜粋すると、こんな感じだ。

 

「シュ……いえ、コジローさん。私……実は、酒場で働く同郷の女の子をキエーザから守る為に、アイツに剣の勝負を挑んだんです。でも負けてしまって……それで、身体を触られてしまったんですよ。本当は今夜、私は酒場の外で、アイツともう一度剣の勝負をする予定だったんです。でも次は負けたら、同郷の女の子共々、全員犯すと言われてまして……。それで、早めに酒場に来て、アイツに勝てるよう罠を張ろうと考えてたんです。そこで貴方と出会えました」

 

 レティアは恥ずかしそうに事情を話してくれた。

 話を聞く限り、キエーザは相当な女好きのようだ。

 強引にレイプされた子もいたんだろう。

 

「ほぇ……そんな事があったのか。じゃあ、ヤバかったんじゃん。負けたらアイツに抱かれてたってことだし」

「そうなんですよ。今思い出しても身の毛がよだちますし、腹が立ちます! でも内心……負けるかもとは思ってまして……そんな時にコジローさんがアイツをコテンパンにしたので、凄いスッキリしたんです。ありがとうございました」

「へぇ、じゃあ俺はシムとレティアと同時に救ってたのか。中々良い事をしたようだ。じゃあ、ご褒美に……今晩、俺と一緒にどう?」

 

 するとレティアは、半眼で俺を見ていた。

 ちょい軽蔑されたかもしれない。

 

「王子……いえ、コジローさんも、そういうところあるんですね。男ですもんね。でも今は……やめときます」

「あ、やっぱりダメ? だよね。なんだか行けそうな気がするぅ、と思ったんだけど……なぁんてな。まぁ冗談だよ。とりあえず、明日は朝早いし、俺はもう寝るよ。レティアも酒場に行くんなら、無理はしないようにな。明日、本当に……俺についてくるんならだけど」

「はい、ついて行きます。コジローさんは、ゆっくり休んでください。お店の女の子達には、キエーザが来たら、コジローさんの名前を出すように言っておきますんで」

「おいおい、あんまり俺の名前を出さないようにしてね。これっきりだよ」

「わかってます。ではおやすみなさい」――

 

 とまぁこんなやり取りがあったのだ。

 まぁなんというか、キエーザはなかなかの狼藉者のようで、皆、色々と困っていたようである。

 ちなみにランドの話によると、キエーザはあの後、塞ぎ込むようにしてスグラムを去って行ったそうだ。

 相当に落ち込んでいたとの事である。

 これに懲りて、性根がどうなるかはあの男次第といったところか。

 

「しかし、コジローさん。アンタはこれからどうするんだ? とりあえず、儂の鍛冶を手伝ってくれる為に、この70日もの間、イシルの村に留まってくれたが。どこか行く宛てでもあるのかね?」

「ああ、それはですね……イタタタ!」

 

 オカッパ野郎が余計な事を言いそうだったんで、俺はコイツの足を踏んでやった。

 

「突然、何をするんですか、コジロー様」

 

 オカッパ野郎は涙目で、抗議してきた。

 

「あ、悪ぃ、ちょっと足を踏んじまったようだ。不可抗力だよ。すまんすまん」

 

 レティアは意味が分かったのか、クスリと笑っていた。

 さて、俺が答えるとしよう。

 

「行く宛てですか? それがないんですよ。ですから、もう暫くイシルに留まろうかなと思ってます。いいですかね?」

「まぁそれは構わんが、アンタも若いのに変わった奴だな。あの村は本当に何もないぞ?」

「だからいいんですよ。考え事するにはね」――

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