鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる。   作:書仙凡人

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lv.18 古代遺跡へ

   [Ⅰ]

 

 

 女神像の前でソレスさんが俺を紹介した後、御触れの詳細を説明する。

 続いて、今回の討伐隊の責任者であるロイアスという若いイケメン剣士が後を引き継ぎ、移動方法と目的地までの道順を説明してくれた。

 それによると、アラトリアの遺跡まではそれほど悪路でもないので、移動は馬と馬車になるようだ。 

 だが途中、道らしい道がない森の中を進まねばならない為、そこからは徒歩になるそうである。

 構成は馬車2台と単独の馬が6頭となっており、俺達は馬車の方へと回された。

 そして、俺達は馬車に乗り込み、彼等と共に、このマティスを後にしたのである。

 そんなわけで道中は、馬車の荷台でのんびりと移動になるのだ。

 但し、荷台に屋根がないので、暑い行軍となりそうではあるが……。

 まぁそれはさておき、この荷台には俺達の他に、エルファナの神官2人が同乗している。

 神官は男1人に女1人という構成で、白いローブのような神官服を2人とも着ていた。

 形状は、カトリックの司祭が着るアルバと呼ばれるモノと似ている感じだ。

 またそれに加え、胸の部分には、翼をモチーフにしたエルファナの紋章が描かれているのが特徴である。

 ちなみに、神官のうち1人は我々と同じアシェンで、もう1人はルヴィンというエルフのような耳長の種族であった。

 ルヴィンの女性神官は、肌が白く、透き通るような水色の髪をしている。

 地球では毛染め以外でお目にかかる事がない、珍しい髪の色であった。

 それもあり、エルフのように神秘的な美しさが感じられる。

 だが、かといって、ファンタジー作品に出てくるエルフのように、長命というわけではない。

 寿命は、人間であるアシェンとそんなに変わらないのがミソだ。

 ただ、自然を愛する大人しい種族なので、そこはエルフを彷彿とさせるところである。

 以上、シュレンのルヴィン観であった。

 まぁそんな事はさておき、マティスを出ると壮大な大自然が広がっていた。

 広大な緑の草原には、所々に林や丘が小さく見え、それらが手つかずの自然を感じさせてくれた。

 手が加わっているのは、今移動している土が剥き出しの道くらいだろう。

 そこだけは馬車のモノと思われる4つの轍が、どこまでも伸びているからだ。

 しかし、周囲から聞こえる「パカパカ」という馬の蹄鉄音と、荷台の振動が眠りを誘ってくる。

 道中このままだと、睡魔との戦いになりそうだ。

 なもんで欠伸も出る。

 

「ふわぁぁ……長閑な景色だねぇ……眠くなってくるよ。暑いから、それがキツイけど」

 

 俺は周囲を見ながら、1人呟いた。

 そう、直射日光が意外と大変であった。

 時折吹く風が暑さを和らげてくれるが、やはり暑いのには変わりないからだ。

 その為、俺はフードを浅めに被って日除けをしながら、周囲をぼんやりと眺めているのである。 

 

「確かに暑いですね。でも……」

 

 と言うと、隣に腰を下ろすレティアが、耳元で囁いてきたのであった。

 

「コジローさんて、本当に変わりましたね。逞しくなって、余裕があるというか……何回も言いますけど、別人みたいです」

「レティアはまだ、あんまり受け入れられない感じか?」

「いえ……そんな事ないです。頼もしい男性になられたなと思って……見直してるんです。本当に……」

「へぇ、なら良かった。ン?」

 

 と、そこで、対面に座る女の神官と目が合った。

 神官は恭しく微笑んだ。

 

「初めまして。コジロー様とお呼びすればよろしいでしょうか?」

 

 それにしても、美しい神官だ。

 肩よりも長い水色の髪を後ろで結い、線の細い見目麗しい顔立ちをしている。

 神官にしておくには勿体無い、綺麗な女性である。

 

「様なんてつけなくていいですよ。コジローか、コジローさんとでも」

「そうですか。私はエルファナ神殿のエールス階位の神官で、ニーサと申します。こちらの者も同じで、名はイデークと言います。以後、お見知りおき下さい」

 

 その隣にいる男の神官は、そこで胸に手を当て、恭しく頭を下げた。

 

「私はイデークと申します。今日はよろしくお願いしますぞ、コジローさん」

「ニーサさんとイデークさんですね。覚えました」

 

 名前がNISAやiDeCoを連想させる方々だ。

 なんとなく、資産運用が得意そうな方達に思えるが、幾らなんでもそれはないだろう。

 ちなみに、イデークさんは30代半ばから後半くらいの年齢で、頭に白いベレー帽のような物を被っていた。

 人の好さそうな中肉中背のオッサン神官である。

 

「ところでコジローさん、貴方がお噂のキエーザ殿に勝ったお方ですか?」

 

 ニーサさんが、めんどくさい事を訊いてきた。

 適当にあしらっておこう。

 

「ええ、まぁそうらしいです」

「そうらしい?」

「実は、その時の事はもう忘れたのです。だから詳細な事はお答えできません。たぶん、ソレスさんの方がよく知ってると思いますよ」

 

 すると、ニーサさんはクスリと微笑んだ。

 

「うふふ、そうですか。変わったお方ですね。ところで、そちらの皆様は、お仲間ですか?」

「ええ、そんなところです」

「そうでしたか。あと、つかぬ事をお訊きしますが……もしやコジローさんはオヴェリウスの方でしょうか?」

「ええ、そうですよ。よくわかりましたね」

「黒髪はオヴェリウスの方に多いので、もしやと思った次第です」

 

 確かに、オヴェリウスは黒髪の多い民族だ。

 シムのような赤毛もいるが、どちらかというと黒髪が多い感じである。

 

「ああ、そういう事でしたか」

「ちなみにですが、コジローさん達はオヴェリウスから、避難されて来られた方なのですか?」

「向こうの兄妹は違いますが、私を含め、この者達はそうですね」

 

 と言って、俺はシムとレティアを指さした。

 

「そうでしたか。私も旅の者達から、色々と噂を聞いております。グランゼニスの侵攻の激しさや、その凄惨な手口も……。勇猛果敢なオヴェリウス王も討ち死にされたと聞きました。大変だったそうですね」

 

 ニーサさんは目尻を下げ、居たたまれない表情になった。

 色んな噂を聞いているんだろう。

 

「オヴェリウス王が討ち死に……ニーサ様は避難民の方から聞かれたのですか?」

 

 すると、シムが話に入ってきた。

 王族の執事みたいな役回りをしていたから、流石に聞き捨てならないのだろう。

 ニーサさんは頷く。

 

「はい。オヴェリウスから来られた、ルザリアという女性から聞きました」

「ルザリアだって……」

「え、ルザリア様から……」

「もしや、お知り合いですか?」

 

 と、ニーサさんが訊いてくる。

 俺はとりあえず、頷いておいた。

 

「まぁ少し……ですがね。で、何か言ってましたかね、ルザリアは?」

 

 ニーサさんは頭を振る。

 

「それ以外は、特に何も。ただ、私がルザリアさんに会ったのはエルファナ神殿でございましたが、その時、ルザリアさんは王都アーレスに向かうと言ってました。旅の無事を祈りにエルファナ神殿に立ち寄られたそうです」

「そうですか。ちなみに、ルザリアには他に、仲間がおられましたかね?」

「確か……男女2名のお供の方がおられたと思います。双方共に、剣士のような出で立ちをした方々でしたね」

 

 俺はそこでシムをチラッと見た。

 シムは首を横に振る。

 たぶん、シムが知らない者達なんだろう。

 

「なるほど、そうでしたか。ありがとうございます。久しぶりに懐かしい名前が聞けたので、良かったですよ」

「そうですか。ちなみにコジローさんは、あの方とどういうお知り合いなのでしょうか? おや?」

 

 するとその時であった。

 

「前からヤグルが来るぞ! 総員、至急戦闘態勢に入れ! 敵は集団だ! 神官の方々はエルファナの加護をお願い致します!」

 

 という大声が響いたのである。

 どうやらゾンビの集団が現れたようだ。

 俺は荷台から顔を出し、前方に視線を向けた。

 すると俺達の進行を遮るように、こちらに向かって駆けてくる屍の集団がいたのである。

 しかも、人や動物の死骸が「アァァァ!」「ギィィィィ!」「ウリィィィ!」などという奇声を上げながら、こちらに向かって来ているのだ。

 それらは全て、朽ちた死体ばかりなので、かなりエグい見た目である。

 腐臭も凄まじいに違いない。消臭剤が欲しいところだ。

 まぁそれはさておき、ゾンビなので動きが遅いイメージがあったが、意外と動けるのが怖いところだ。

 以前見た古いゾンビ映画に、脳味噌大好きな走るゾンビがいたが、まさにそんな感じである。

 そして、それはまるで、オヴェリウス陥落前の死人戦法を彷彿とさせるモノでもあったのだ。

 シュレンが今、このヤグルの集団を見ていたならば、腰を抜かしていた事だろう。

 

「皆さんの武器にエルファナの加護を授けます。さぁ武器をお出しください!」

 

 そこで、ニーサさんの声が響いた。

 俺達は剣を鞘から抜き、神官の前に出す。

 続いて、ニーサさんとイデークさんは腕を伸ばし、両掌を剣に向けたのだ。

 するとその直後、2人の掌から光のシャワーが放出されたのである。

 それはまるで、ダイアモンドダストを見ているかのような、キラキラとした美しい光景であった。

 ちなみにだが、実は俺も習得している魔法だったりする。

 魔法の名は『闇を祓う光の印・ミシュラ』と呼ばれるモノだ。

 本当は自分で試したいところだが、今は神官達のでやってみるとしよう。

 さて、ではこれよりは戦闘だ。 

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