ハスターなオリ主とジョジョ3部   作:ラムセス_

10 / 39
ほのぼの告白

 

 インド、カルカッタに到着。

 

 ひっきりなしにバスや車が行き交い、人通りの多さと喧騒に圧倒される。

 その活気はこれまで通った街のどこよりも強く、人の生命を感じさせる。

 

 そしてハウラー駅を降りた途端、バクシーシ(恵んでくれ)祭りにお見舞いされた。

 

 すごい量の物乞いだが、職業としてそれを選択するものもいるほどに市場が確立しているらしい。

 その裏に犯罪もあれば、後ろ暗い企てもある。

 人が多く金が流れれば、それだけ多くの悪意も集まってくるものだ。

 

 つまりだ。

 

 おお、こんなに可哀想な人間がたくさん!

 よしよし。この旧支配者ハスターがたくさんいいものをやるからな!

 

 と、言ってる間に財布がない。

 絶対スられると思ってダミーを首から下げて持っていたのだが、秒でスられたようだ。

 

 アヴドゥルさんがイキイキしながら人混みをかき分けてバスの時刻を調べている。

 もう何回もここに来ているようで、かなりこの土地を気に入っているとは言っていたが。

 

 アヴドゥルさんは爽やかな笑顔で宣言した。

 

「良いところでしょう?エネルギッシュで、皆生命力に溢れている!」

「溢れすぎだろ!こら小僧ッもう恵むものは何もねぇ!あとタクシーには乗らねぇ!」

「早めに駅前は脱出しませんか。これもう新手のスタンド攻撃ですよ」

「無理じゃわい。牛で道が塞がっておる…」

 

 俺も可哀想な人間が放って置けず、何か分け与えられるものがないかゴソゴソと懐を漁る。

 

 流石にジョセフさんの金で恵むわけにはいかないし、やはり俺の元手ゼロの手作りアクセサリーなどがいいだろう。

 これどう?しかるべき場所で売るといい値がつくよ。

 これもどうぞ。本物のサファイアだよ。

 

 などとやっていたら周囲のバクシーシが全部寄ってきて、承太郎君にポカッてどつかれるなどした。

 

「テメェは無限に恵んでんじゃねぇ!」

「でもでも、こんなに俺に助けを求める人間がいるのに!」

「ならせめて持ってる袋のサイズに比例した量の品しか出すな。打ち出の小槌じゃねぇんだぞ」

「うっす」

 

 そんなふうにめちゃくちゃ困りながら駅前を脱出できたのは30分後のことである。

 

 しばらくバスで揺られて、レストランで遅めの昼食を取ることになった。

 駅前の喧騒を離れてもやはり街は騒がしいが、店内に入ってしまえば一息つくことができる。

 

 皆ほっと一息つき、花京院君がチャイを口に含んでため息をついた。

 

「それにしても、移動中の列車を襲われなくて安心しましたよ。もし列車が脱線したら大惨事になりますから」

「そうじゃな。だがそろそろ敵襲があってもおかしくない頃合いになってきた」

「あ、俺ちょっとトイレ行ってくるわ」

「ポルナレフさんいてらー。気をつけてね。俺さっき行ったけど本当に気をつけてね」

「?おう。敵襲があったってそう簡単にやられはしねぇよ!」

 

 そうじゃなくて。

 俺は運命の縄を解くために一番にトイレを利用したからわかるのだが。

 ここのトイレの中には豚がいて、便器から顔を出してすごく鳴いてくるのだ。

 

 俺は用を足すために入ったわけではないから我慢したが。

 あそこをトイレとして利用するのは相当な気力が必要になるかもしれない。

 

 運ばれてきた本場のカレーに舌鼓を打ちつつ皆でまったりする。

 観光地価格だが、美味しいそれを堪能しながら、俺は上目遣いで皆を見回した。

 

 そろそろ、話を振らねば皆に不義理になってしまう。

 怯える気持ちに喝を入れ、なんとか重たい口を開く。

 

「………ところで、誰にどこまでバレてる感じ?俺の事情とかその辺」

「ポルナレフがいない間に聞くあたり、彼には絶対バレてないと踏んでるの凄く笑うんですけど」

「えっまさかポルナレフさんにもバレてる!?」

「バレてないぜ」

 

 承太郎君が断言してくれたので、ほっと一安心する俺である。

 ポルナレフさんのゆるキャラさに救われる俺である。

 いや最終的には話すんだが、その前にみんなの認識を統一しておきたいし。

 

 とはいえ。

 この話を出そう出そうと思ってここまで引っ張って日を跨いでしまうあたり、俺のどうしようもないチキンさが滲み出ている。

 

 正直、とても怖い。

 拒絶され続けたこれまでが脳裏に蘇って、動悸、息切れ、めまい等に見舞われるなどする。

 更年期障害に陥る旧支配者みたいな絵面になってしまっているが、これも仕方のないことだ。

 

 たいそう情けない顔になってしまっているのか、アブドゥルさんが安心させるように微笑んで話し始めた。

 

「私はジョースターさんから、君が戸籍やパスポートの一切を持っていないことを聞いていたからな。世界各地にはスタンドに由来しない恐るべき神秘や人外の知性体がいることも知っている。もしやとは思っていたさ」

「身分証も無いし、言動もゆるゆるじゃし。夜、寝息を立てながらむにゃむにゃ寝言を言う触手もはみ出しとるし」

「俺ガバの国の王様だったかもしれん。偉大なるガバ王降誕。なぜこれで隠していると思ってたのか」

「まったくだぜ」

 

 承太郎君の追撃に俺はしおしおのしおになった。

 でも皆朗らかで、俺は改めて口にすることで彼らの温かい気持ちに応えた。

 

「そうだ。俺は人間じゃない。今の俺は化身を…本体をスタンドと見立てているだけの一般的な触手なんだ」

「ワシ一般的な触手は初めて見たかもしれん。日本にいた時タコは食べたが、それは一般触手でいいのかの」

「タコはダメです。俺の嫌いな奴がタコ型してて、例えるならイカの方で頼む」

「僕の中で愉快な海の仲間達が展開してるんですけど合ってます?」

「間違いしかない俺は海に住んでない…」

 

 花京院君がクスクスと笑い、ヨーグルトを掬いながら口を開く。

 

「なら実際、貴方はどういう生き物なんです?」

「デフォルトで高速再生する謎触手だよ。凄くでかい。長生き。主に外宇宙に住んでる」

「宇宙人だったんですか!?大きいというと、どれぐらい?」

「気分によって伸び縮みする。100メートルはある。1500メートルにもなれる」

 

 この辺、基本的にはマジで気分である。

 肉は持つものの概念的な体なので、サイズ感は見る人によって変わるのだ。

 

 承太郎君がのんびり食事の手を止めて眉間に皺を寄せてこっちを見た。

 

「シンガポールの時部屋で触手が寛いでた時は10メートル前後だと思ったが」

「黄衣さん無限にゆるゆるのエピソードが出てくるの本当どうかしてますよ」

「……うん……10メートルは身体をギチギチに縮めてた…本体で人間のホテルでまったり寛いでみたかったから…」

 

 俺がメソメソしてささやかな夢を口にすれば、アヴドゥルさんが優しく慰めてくれた。

 「このデザート、これ、美味しそうじゃないか?」とメニュー表を見せて微笑んでくれる。

 やさしい……みんな超優しい……。

 

 ジョセフさんがうむうむ頷いてサムズアップした。

 

「なにはともあれ、黄衣君がワシらの心強い仲間であることは間違いないッ!そうじゃろう!」

「!!!」

「ええ。ちょっと見た目が変わってるからといって差別するような度量の狭い人間だと思われていたなら心外です。志を同じくするのなら、そこに壁を設ける必要はない」

「そうだな。テメェはそのナイーヴさをなんとかするべきだろうよ。どんな想像してたのかしらねぇが、その辺の奴らと俺等を一緒にするのは勘弁だぜ」

 

 花京院君とジョセフさんが宣言して、承太郎君がそれに同意する。

 アヴドゥルさんも頷いて「その通りだ」と力強く笑ったようだ。

 

 もう、なんだか涙が込み上げるような堪らない気持ちになる。

 ニュッと触手を出して、並んだ目から全部ダバダバと涙をこぼした。

 

「うおっ泣くんかこれ!?いやこっちが本体じゃった!」

【あ゛り゛か゛と゛う゛!!!】

「うわっ触手が縦に裂けて乱杭歯が並んでる。黄衣さんやっぱり造形酷いですね…」

 

 ピィピィ泣く俺を物珍しそうにつついたり引っ張ったりするので、俺は余計に泣いた。

 人の心がないんかお前ら!

 

 と、和気藹々としているあたりで。

 全速力で店の外に飛び出すポルナレフさんがテーブルの横を通り過ぎた。

 

 慌てて俺らも追いかければ、店のすぐ外で雑踏を見渡してポルナレフさんが叫んだ。

 

「敵襲だ!鏡に映る謎のスタンドだ!」

「なるほどな。次の刺客が来たってわけだ」

 

 承太郎君がチラリと俺に視線を寄越したので、俺もそれを受けて解析結果を口にする。

 

 先ほど光を媒体に移動する力場が通り過ぎたのを確認したからな。

 もう力の内容はバッチリ理解しているとも。

 

「虚像の化身だ。光に乗って、虚像越しに攻撃してくると思う。逆を言えば、反射面がなければ何もできない。この雑踏は少し厄介かも」

「!!黄衣、お主敵スタンドの情報が分かるのか!?」

「言ったろ。スタンドは化身に似てるって。これは太古の昔から俺たちが使っている技術なんだよ」

 

 自分の一部を切り分けて、その力を独立させて動かす技術。

 「化身」とは、己のメッセンジャー。

 己自身であり、現れ方の一つである。

 

「だからこそ見抜くのもお手のもの、と言うわけですか。貨物船スタンドの性質を瞬時に見抜いたのは妙だとは思っていましたが」

「俺のガバエピソード無限に出てくるじゃん。もっと手加減して」

「え、なんの話だ?まさか敵スタンドの詳細をもう掴んでたのかよ!?」

「ポルナレフさんには敵撃破後話すからまた後で」

「ともかく、人通りの少ない場所に移動するとしよう。この人数の中戦うのは危険だ」

 

 不満そうなポルナレフさんを伴って、俺たちは移動する。

 「俺がトイレで悪戦苦闘してる間に何があったんだよ!っつーか黄衣も分かってたならもうちょっとなんかあったろ!」とポルナレフさんが憤っている。

 はっはっは。豚さん超びっくりしたやろ。めっちゃ鳴いてくるんやで。

 

 俺たちはその後しばらく空き地で襲来を警戒したが。

 その日の夕方まで、敵襲は時間が空くこととなる。

 





・ポルナレフ
仇の存在に気付いてない。
ラバーソウルから両手が右手の奴のことを聞かずに仕留めたので、鏡に映るスタンドの情報を得ていないため。
代わりにちゃんとスタンドの両手が右手なのも鏡越しに見せたのだが、いい具合にポルナレフが確認し損ねた。

・Jガイル
あれ、ポルナレフが乗ってこない???
ちょっと予定外だが、ホル・ホースとはすでに合流しているため、黄衣を引き剥がして各個暗殺する予定。
二人とも暗殺特化で、回復役がいなければ確実に殺せると判断している。

・ハスター
旧支配者ガババー。全身がガバでできてる。
根本的に隠し事が向いていない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。