ハスターなオリ主とジョジョ3部   作:ラムセス_

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マジシャンズレッドの火力

 

 インドもベレナスを通り過ぎ、デリーを越えてパキスタンへと向かう道中。

 

 俺たちは大きな車で、整備されていない道を進んでいる。

 舗装されてもいない悪路で揺れもひどく、ぐわんぐわんと体が揺さぶられる。

 

 しかしそこはご安心。

 俺の特製サスペンション触手が揺れを吸収、快適な乗り心地を提供している。

 ふかふかの俺の触手座布団に、皆まったりとくつろいでいるようだ。

 

「おー!やっぱり快適じゃわい!」

「けどいいんですか黄衣さん、スタンドどころか本体で座布団代わりなるなんて。重ければ言ってくださいよ」

「大丈夫。ハムスターたくさん手に乗っけてるみたいなもんだから。あと天井に頭ぶつけるのだけは気をつけてね」

 

 俺は満面の笑みを浮かべた。

 触手の上に人が乗ってくれるなんて、本当に数えるほどしかない体験だ。

 まず俺の本体を見て人間が取る反応は土下座か悲鳴だから、気持ち的には超絶懐かない猫がようやく膝の上に乗ってくれた気持ちに近い。

 

 へらへらと緩んだ俺の笑顔に、花京院君が気味悪げに引いている。

 

 ちなみに今俺たちは後部座席でトランプをしている最中である。

 遊戯名は「ダウト」。

 嘘をつきカードを出すルールのある、定番のゲームだ。

 

 俺は大量のカードの中からそれでもお目当てのものが見つからず、頑張って唇を噛み締めながら別のを出した。

 

「6」

「ダウト。テメェは顔に出過ぎだ。っつーかテメェ宇宙人なのにどうしてそんな腹芸ができねぇんだ」

「………俺の手札がそろそろ飽和しそうなんだけどどうしてくれんのこれ。責任とってくれよ」

「ワシそろそろ哀れになってきたわい。キャンディいる?」

「いただきます……」

 

 俺はもそもそ場にあったカードを受け取り、しょげかえって肩を落とした。

 なんでこんなにカードあるのに俺の時だけいい感じに出せるカードがなくて、仕方なく嘘をつくと一瞬で見破られるの…。

 

 花京院君が生ぬるい笑みで明後日の方向を向いた。

 

「なんというか、黄衣さん嘘つくと『申し訳ない…!』みたいな迫真の苦悶顔するんですよね」

「ワシの嘘も全然読み解けんし、だんだん心配になってくるんじゃが。それでスタンドバトルとかできるんか?」

「ジジイは嘘つき過ぎんだよ」

 

 孫に切って捨てられてオロローンとするジョセフさんを尻目に、俺はシクシクと丸まって咽び泣く。

 

 というか仕方なくないか!?

 俺が人間に嘘つくって、子犬におやつやる詐欺をするみたいなもんだぞ!?

 嘘つく必要なんて全くない全能に程近きものが、あえて矮小な生命体に嘘をつくのは外道でしかなくないか。

 そういうのは全く良くない。

 ブツブツ。

 

 ちなみにジョセフさんが嘘つきはガチ。

 嘘というか、エキセントリックかつ謎のタイミングで叙述トリックを使ってイタズラしてくる。

 

 助手席のアヴドゥルさんはまったりポルナレフさんと話をしている。

 と、そんなことやっている場合ではない。

 

 俺は飛ばしまくるポルナレフさんの運転を咎め、べしっと触手でどつくなどした。

 

「飛ばさない!無理な運転で前に入らない!」

「前の車が煙たかったんだっつの!」

「あの車スタンド!!敵スタンド車だから!」

「何ィーーーッ!?」

 

 大袈裟に驚くポルナレフさんに、アヴドゥルさんが「そういえばそろそろ来るかなとは思っていたが」とぼんやり漏らす。

 ジョセフさんがううむ、と顎を撫でて難しい顔をする。

 

「車ということは物質同化型か。黄衣君の見立てではどうじゃ?」

「うん。実際の車に重ねる形で顕現してる。物質同化型に違いない。車だけあって、パワーは結構なものかも」

「ほー、そいつは厄介だな」

 

 厄介、という割には挑戦的に細められた目で、承太郎君は笑ったようだ。

 血の気が多いことであるよ。

 

 俺は動きにくい触手の座布団を解除、

 手早くトランプをしまって、戦闘準備を整えた。

 

 今、ポルナレフさんが乱暴な運転で追い抜いたから、向こうはそれを好機として不意にその正体を現したらしい。

 一気に轢き殺そうと動き出した。

 車が変形し、なんともヒャッハーな棘だらけの車がお披露目される。

 

 ポルナレフさんがジープのハンドルを握り直して焦った顔をした。

 

「向こうも俺らがスタンド看破の力を持つことは把握済みってことかよ!くそっ!」

「では僕が挨拶がてら一番槍、というか威力偵察もらいますよ」

 

 花京院君がスタンドを半身だけ外に出し、遠慮のないエメラルドスプラッシュを打ち込んだ。

 しかし通常の車よりも頑強な装甲に、傷と凹みはついたが大した影響は無さそうだけど。

 「やはり頑丈ですね。フロントガラスの一点やサイドミラーの接続部も狙ったんですが」と花京院君がぼやく。

 

 瞬間、高速で何かが飛来。

 

 予兆を感じ取った俺が、その前に触手でハイエロファントの盾になる。

 貫かれた触手は、しかしその分厚いゴムのような皮膚によって被害を免れる。

 代わりに触手が濡れて、揮発性の高い独特の匂いが立ち込める。

 

 ジョセフさんが叫んだ。

 

「今のはなんじゃ!?いや液体、まさか、ガソリンか!?」

「そのようですね。すみません黄衣さん、助かりました」

「いいよいいよ」

 

 ガソリン、となると向こうも着火手段の一つぐらいは持っているはずだ。

 車は電気だってもちろん発生するし、そうでなくとも攻撃手段として本体が別途持ち歩くことも当然考えられる。

 

 こちらが車を燃やされる前に決着をつけないといけない。

 断続的に二発、三発と車にガソリン弾が吹き付けられる。

 車体が歪むほどの威力だが、これはガソリンを付着させることが目的の攻撃だろう。

 

 ぬうう、と呻くジョセフさんの前で、アヴドゥルさんが体勢を動かした。

 

「なら私が行きましょう。炎のプロフェッショナルは私ですから」

「待てッアヴドゥル!下手をすれば逆に我々に着火してしまうぞ!」

「私の炎を舐めてもらっては困る。私も、若い頃は世の火事凶事全てを私のせいにされていました。制御には一家言あるんですよ」

 

 現れたスタンド、マジシャンズレッドは相変わらず強力な炎のルールを秘めていて、俺もちょっとだけ壮観な気持ちになる。

 お供に触手防御を展開しておく。

 

 現れた新しいスタンドに、瞬時に飛来するガソリンの弾幕。

 それを迎え打つように凄まじい灼熱の嵐を展開した。

 

「クロス・ファイアー・ハリケーン・スペシャル!」

 

 こちらまで炙られるような気持ちにされる火炎弾は、進行方向と逆が故にかろうじて車体を焦さずに吹き荒れている。

 素晴らしい勢いの炎と熱量だ。

 

 そして空中でガソリンに着火。

 発生した爆炎のコントロールを瞬時に奪取し、そのまま反対に敵スタンドの方へと浴びせかける。

 

「おお、なるほど。自身の炎で燃えているならそれは己の権能が内、と解釈してるのか。頭良いな!」

「現実の炎を『燃やし直して』私のスタンドでコントロールできるようにしたこともあります。なにぶん、使い勝手の悪い能力なのでね」

「まさか。アヴドゥルさんは人の身にはかなり重たいはずの高火力能力をここまで使いこなしてる。まさにプロフェッショナルだな」

 

 ははは、とアヴドゥルさんは朗らかに笑った。

 

 走る車に置き去りにされ、遠くなる炎は3000℃に達していただろう。

 周囲の草木が一瞬で燃え、砂地の表面がフルグライト……つまりは天然のガラスに変化したのだ。

 瞬く間に溶かし落とされた車内にて、敵スタンド使いは速やかに蒸し焼きになった。

 

 まあ、盾役の触手を見てもらえれば分かるが、3000℃程度の熱なら全然無傷だ。

 

 俺は皆の戦闘能力を見てうーんと唸った。

 

「我が軍は圧倒的だなぁ」

「ああ。アヴドゥルが味方で心強いぜ」

 

 承太郎君が同意するように頷いているが、君のスタープラチナも圧倒的我が軍の一人なのだよ。

 木っ端神話生物の群れぐらいなら軽く制圧できそうだ。

 とても人間の戦闘能力ではない。

 

 生ぬるい笑顔で花京院君がポルナレフさんを揶揄っている。

 

「ポルナレフ、生きててよかったな。仕掛けてきた場所によっては焼け死んでいたぞ」

「ちくしょう!俺のチャリオッツだって強えっつーの!面制圧は卑怯だろうが!!」

「ポルナレフさんはあれだよ、スタンドパワー自体じゃなく、その使い手の熟練度がすごいみたいなところあるから」

「黄衣……!」

 

 ポルナレフさんに涙目で感動されてしまったようだ。

 能力は地味だが、その技量を加味した総合戦闘能力はピカイチだ。

 

 花京院君が目を三角にして、途端にずいっとポルナレフさんの前に出た。

 

「僕はどうです?」

「え?う、うん。花京院君は頭脳戦というか、観察眼に優れるから相手のスタンドの特徴を素早く見抜いて立ち回りに取り入れるあたり本気ですごいと思う」

「……ありがとうございます。黄衣さんも普段抜けてますけど他人のことをしっかり見ているとこ、僕は結構尊敬していますよ」

「俺は抜けてない!」

 

 満足したらしい花京院君がふっと笑って腰を落ち着けた。

 わからん。少年の嫉妬心というやつかもしれない。

 あと納得してないで俺の名誉を回復してから成仏して!

 

 俺はジョセフさんの要望で皆の座布団を再出現させ、よっこいしょと腰を落ち着けた。

 車は相変わらず悪路でゴトゴトと揺れている。

 

 そのまま、一路パキスタンに向かうのである。

 

 あっ、ニャルがまた見てる。

 ニャルラトホテプはハンドサインでこちらに謎メッセージを送ってきた。

 

「面白そうなことしてますね」

 

 おう、ステンバーイステンバーイ。

 あとお前が邪魔で老婆がこっち見るの失敗してるから。可哀想だろ。

 そんなの知らない?暇だから遊べ?

 後でな……。

 

 そのようにまったりと、俺たちは何事もなかったかのようにダウトの続きから始めたのだった。

 

 明らかに負けが確定している俺が「仕切り直して別のゲームやらない?」と言い張ったが、要望は聞き入れられなかった。

 ちくせう。

 





・エンヤ婆
水晶が全然映らなくてキーーッ!!ってなってた。
アレがDIO様の元にやってくるまでに、なんとか己が退散させなくては!
そして息子を殺したポルナレフをぶっ殺す!
原作より強い肉の芽なしエンヤ婆、出動。

・触手座布団
上質で触り心地がいい革張りみたいな座布団。
悪路でも僅かに空中に浮かぶことで揺れをキャンセルする。
人間が座ると旧支配者ハスターがとても喜ぶ。
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