ハスターなオリ主とジョジョ3部   作:ラムセス_

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ゆったり腕試し

 

 俺はひとまず、空条君の家に転がり込むこととなった。

 

 俺が路上暮らしだと知って、吸血鬼の行方を掴んで出立するまでのわずかな間ならと家に入れてくれたのだ。

 いくら旧支配者が睡眠なしで動けるとは言っても、やはり吹きっ晒しのなか宿無しというのは結構精神的に辛かった。

 魔術でいくらでも模造できるとはいえ、罪を犯すほどでもないし。

 

 お誘いに俺は1も2もなく飛びついた。

 

 おじいさんは空条君の祖父で資産家のジョセフ・ジョースターというらしい。

 案内されたのはとても大きな豪邸で、なるほど、おかしな来客を数晩泊めるのに何の支障もなさそうな広さであった。

 

 というかすげーな空条君。

 所作が整っていてやけに気品のある不良高校生だと思っていたが、マジもんの富裕層だとは。

 

 空条君の母親は実に美人さんで、「まあっ!お友達?ようこそ空条家へ!」と事情もよくわかってないようなのに即日大歓迎してくれた。

 なんというか、いい人達である。

 

 そして居間に通されると、ジョセフさんに写真を一枚見せられた。

 薔薇の形をした力場で、念写のルールを持つ化身らしい。

 

 俺はそれを「ルール」と呼称している。

 神話生物が持つ、超常の理を総称してそう呼んでいるのだ。

 

 物理法則とは別に、神話生物は独自のルールを持つ。

 旧神ならたとえば「人間の信仰を力に変える」、シャンタク鳥は「宇宙を飛翔する翼」など。

 

 ジョセフさん達が持つ力場には、規模は小さいがそうした固有のルールが宿っている。

 まさに超能力のようなものだ。

 

 彼らはそれを「スタンド」と呼んでいるらしい。

 

 一人の外国人男性が半裸で佇む写真を前に、ジョセフさんはドキャーーン!と慄くような姿勢をとった。

 

「これが我々の敵、DIOだッ!奴が悪の限りを尽くせば、必ず多くの悲劇が訪れるッ!」

「人外なのに人の基準で悪いことをするのが好きなのか?」

「奴は人間だった時から悪の限りを尽くしておったと聞いておる。エリナおばあちゃん…ワシの祖母からの聞いた話でしかないがの」

「へぇ。人間辞めたのにすごく人間らしいんだな」

 

 人間みたいな羽虫をプチプチ潰すのが好きなタイプの神話生物はなかなかいない。

 人を殺す神話生物ばかりだが、実際それは悪意がゆえではない場合のほうが圧倒的に多い。

 異文明、異文化、精神構造や常識の違いから結果的に殺してしまっているだけだ。

 

 第一悪意なんて人間の尺度でしかないんだから、自覚的な悪を働いてること自体、あまりに人間的な所作と言える。

 元が人間である影響もあるだろうが、かなり人間的な行動原理の人外なのは間違いない。

 

 ニャルラトホテプは人間をプチプチするのが好きだが、大概人間臭い奴だし。

 

 ジョセフさんは「いやお主着眼点が独特すぎやせんか…?」と言われてしまった。

 せやろか。

 

 話が終わればあとはフリータイムだ。

 アブドゥルさんはDIOの写っている写真の場所などの特定に勤しみ、ジョセフさんは仕事の連絡があるのか電話にかかりきり。

 

 俺もともかく家事の手伝いぐらい……と思ったがここは豪邸ゆえにお手伝いさんが大半の業務を行っている。

 素人が下手に手を出しても仕事の邪魔なのは明白だ。

 魔術でなら料理とかやれることはたくさんあったのだが、俺は旧支配者の権能や魔術の存在を隠しているし。

 

 うーん、と悩んでいると。

 空条君が俺の背後にぬっと立っていた。

 

「ちょうど良い。どれだけ動けるか見せろ」

「お……軽い腕試し的な奴?」

「どうやらジジイの見立てだと、テメェは結構やるらしいしな。確認しておきたい」

 

 俺のポンコツ素人仕草のどこに「やる」を見出したのかは分からない。

 が、空条君は祖父の評価を信じていて、ちょっくら自分も見てみようと考えたらしい。

 

 バトル漫画世界観なんだよなぁ。

 

 だが戦場に立つ前に連携確認したいというのはもっともなので、俺もおとなしく空条君の後についていく。

 長い渡り廊下を進んで、中庭に出る。

 

 中には樹木が美しく手入れされ、花々の咲く和の庭園が広がっている。

 こんなところを戦闘場所にするのはあまりにも気が引けるが、なるべく頑張って木々を傷つけないようにしよう。

 

 空条君が少し離れた先で止まる。

 向こう側には池があり、中には大きな錦鯉が泳いでいるのが見えた。

 

 何だ何だと集まってきたジョセフさんとアヴドゥルさんが観戦の姿勢に入っている。

 俺は所在なくちょっとだけ構えっぽく重心を落とした。

 

「まいったと言わせた方が勝ちだ。いいな」

「了解」

 

 俺は旧支配者としての姿ならともかく、人型での直接戦闘には慣れていない。

 

 そもそも、人間と旧支配者では存在規模自体が天と地ほどもかけ離れている。

 旧支配者ハスターとは、ただ在るだけで時速2300kmの風が地表の文明を剥ぎ取り、その姿を一目見るだけであまねく生命の魂が融解する。

 超能力のある程度の人間など、爪楊枝で武装したアリと同義だ。

 

 これはいかに人間の枠内で振る舞い、戦闘をこなせるかのいい訓練になるだろう。

 

 空気が緊張に張り詰める。

 空条君が油断なくこちらを見据えて。

 

 瞬間。

 

 人外じみた踏み込みで空条君が前へ出た。

 

 彼のスタンド、スタープラチナの足を同時に踏み込んで、虚をつくような爆発的な速度を生み出したのだ。

 凄い戦闘センスだ。

 つい先日まで力を自覚してすらいなかったのに、初手から動きすぎだろうに。

 

 自分の試運転も兼ねているのか、よっぽど喧嘩慣れしているようだ。

 

 俺は思考加速をかけながら、咄嗟に出した触手を盾にした。

 触手は拳にぶち抜かれてブチュリと粘液が飛び散った。

 

 わざと柔らかくした触手だから、拳が痛むこともないだろうよ。

 

 驚愕してアヴドゥルさんが立ち上がった。

 

「こっこれは!本体にフィードバックが!」

「大丈夫かね黄衣君!?」

 

 慌てるオーディエンスをそのままに、俺は冷静にそのままぶち抜かれた触手で薙ぎ払った。

 

 目を見開いて空条君が距離を取る。

 目の前でぐにぐにと触手が再生していくのを油断なく睨め付けているようだ。

 

 俺はピッと人差し指を立てて決め台詞。

 

「俺の、あー、スタンドの能力は『無限再生』だ。いくらでも蘇る」

「なるほど、本体を殴りゃいいって話か」

「それは残念、この通り」

 

 俺は自分の体で陰にして二つ目の触手を顕現、己の胴体ごと触手で薙ぎ払った。

 

 ゴォオ、と足元を抉るように放たれた触手に空条君が咄嗟に上へ飛ぶ。

 もちろん俺は下半身が触手に吹っ飛ばされるが。

 そのまま泣き別れした胴体から、新しい足を生やして着地。

 そのままニヤッとVサイン。

 

 「何ィィイーーーッッ!?」とすごい勢いでオーディエンスが驚愕してくれるから、なんか俺もノリノリになってしまった気がする今。

 俺は触手を3本に増やして不敵に微笑んだ。

 

「本体も同様に再生したりする。俺から参ったを取るのは難しいぞ?」

「………なるほど。ちょいとばかり難しい戦いになりそうだ」

 

 それでも微塵も諦めない、人間の強さと若さが詰まったような表情で獰猛に口角を釣り上げる。

 空条君の鋭い眼光は猛禽のよう。

 

 再び強い踏み込みにステップ。

 意識外からの素早い強襲だが、今の俺は触手を出している。

 そこについている無数の目で捉えて、再び触手を動かして防ぐ。

 

 今度はデモンストレーションの意味はないため、通常通りの皮膚の硬さで顕現させた。

 

 俺の触手には、ゴムのような皮には透明な鱗による装甲がある。

 俺に攻撃を通したくば、最低限グレネードランチャーを持ってこねば皮も剥げない。

 

「俺の触手の皮は多少硬いぞ!」

「関係ねぇな。目の方が厄介だ。ぎょろぎょろ見てんじゃねぇ」

「いや流石に仕方なくないかそれは」

 

 空条君も一撃でその皮の厚さに気づいたらしい。

 瞬時に攻撃を突きへと変化させた。

 刺突に変えて目を狙っているようだ。

 

 目潰しとは卑怯なり!

 

 俺は触手を動かして応戦するも、小回りのスピードは圧倒的に向こうが上。

 なんとか攻撃を凌ぐだけで一杯一杯だ。

 上手く狙っている位置にだけ触手を動かして攻撃を妨害しつつ機会を伺う。

 

 少し距離をとって、空条君がニヤリと笑った。

 

「アンタ、やっぱり戦い慣れしてるな」

「そうかな?こうやって能力バトルするのは初めてだけど」

「動きに無駄がない。その多足を手足のように動かして、俺の速度を殺していた。厄介だぜ」

「サンクス。空条君もとんでもない喧嘩慣れの民だな。生身でそんだけ動けるのは化け物だよ」

「承太郎でいい」

 

 多少は認めてもらえたようだ。

 

 空条君、改めて承太郎君がふたたび踏み込んでくる。

 それをいなしてかわして、時々触手を振って攻撃しつつ。

 

 攻防を続けること一時間。

 

 結局、決着はつかなかった。

 俺に体力の概念はほとんどないから、どちらかと言えば粘り勝ち気味の引き分けと言ったところが。

 というより、あんな攻防を一時間も続けてられる承太郎君の方がおかしい。

 

「………次は勝つ」

「そんな怖い顔しないでくれ…目だけでぶっ殺されそうだ…」

「それまでにテメェは肝の小ささを何とかしておけ」

 

 そのように、ボロボロの承太郎君に凄まれるなどした。

 

 そのあとは泥だらけになってしまったし、風呂を貸してもらって、順番に汗を流す。

 

 俺は汗なんてかかないが、気分的に風呂に入るのは気持ちがいい。

 俺の本体はスタンドと偽っているあの触手そのもの。

 百メートルは下らないイカだかトカゲだかの姿こそが俺の真実。

 この人形など触手の先っぽを化けて人形にしているにすぎないし。

 

 うーむ、どちらが化身だという話だ。

 

 その後はまったり食事と情報交換。

 アブドゥルさんに「素晴らしい腕前だ。私は君のことを甘くみていたようだ」と称賛された。

 そんな手放しに褒められると俺も照れてしまう。

 

 というか、普通にアヴドゥルさんの火力が一番やばい。

 

 力場を解析した結果、どう低く見繕っても1500度とか出せるタイプの炎の力が篭ってるし。

 まさに、被害を気にしない場所でなら敵はいない火力の極致だ。

 

 まあ、この現代にそんな場所数えるほどしかないからこそ、彼はその力の制御に腐心せねばならないのだろうが。

 

 ちなみに、俺の売っているアクセサリーを見せたところ、結構みんな購入してくれた。

 アヴドゥルさんも首に巻いていい感じに身につけてくれたし、皆におまけをつけておいた。

 おしゃれで品質がいいと好評で、作り手として嬉しい限りだ。

 

 女性もののネックレスもいくつかホリィさんが購入してくれて、そのままの流れで「ワシの所で一つ商売を始めるたりするのはどうだ?」とジョセフさんに誘われたり。

 

 まったりと平和に夜は更けていったのであった。

 

 

 

 翌日。

 

 承太郎君はいつもの制服姿で登校していった。

 あの鎖とかジャラジャラついた学ランを靡かせていると不良感が凄まじい。

 承太郎君ぐらい体格が良いと、注意する先生の方も命懸けだろう。

 

 そんなの全然気にしない屈強な女生徒達にキャーキャーと黄色い歓声で囲まれて行ったが、あれは果たしてどういう肝の太さなのか。

 

 俺の方は午前中は店を出す予定だ。

 旅の費用はジョセフさんが出してくれるそうだが、なるべく自分でも稼いでおきたいしな。

 

 軽く店を開ける準備をした後は、のんびり店先に座ってちまちまと俺にかかっている運命の縄をほぐす。

 放っておくとどんどん絡まって手に負えなくなってしまうし。

 

 ひたすら運命を解く作業をしていると。

 

 なぜか、先ほど登校したばかりの承太郎君が見知らぬ男子生徒を一人背負って、のっしのっしと歩いているではないか。

 全身から出血しながらも平然と帰宅の途についている。

 

 俺は慌てて彼に走り寄った。

 

「ままままって承太郎君傷やばい傷、すごい血出てるあとその背負ってる子誰!?」

「DIOの刺客だ。何か知ってるかも知れねぇから、ジジイのところに持っていく」

「うおおその前に承太郎君の傷だけでも治させて!」

「っ、傷の治療ができるのか?」

 

 うっかり口を滑らせてしまったが、もうできると言うことにしておこう。

 こんなの放っておけるものじゃない。

 

 というか初戦を危なげなく勝利して敵の潜伏地を知るかもしれない捕虜を捕らえてくるって無敵すぎか?

 

「再生の他人への付与って感じだよ。治して良い?」

「……頼む」

「あらほらさっさー」

 

 あっという間に回復して、承太郎君は腕を回して「助かったぜ」とぶっきらぼうに言った。

 

 ちなみに、あまりに瞬時に回復するから、俺は昨晩ジョセフさんにたくさん波紋とやらを流されてアウチになった。

 俺は吸血鬼じゃないから太陽で遊泳もできるんよ。痛いけど。

 何なら前にやけになって実際に遊泳したことある。

 そんなんで旧支配者が死ねるなら苦労はしないのだ。

 

 承太郎君がDIOの刺客とやらを抱え直し、息をついた。

 

「テメェの能力は底が知れねぇな。再生か。俺のスタープラチナにも何か発現するのか?」

「まあ、今後に期待って感じかな」

 

 見たところ、もうすでに発現しているようだが、それは己で自覚してこそだろう。

 相手に応じてその姿を変える、万能にして若い力の具現。可能性の化身。

 

 スタンドというのも奇妙なものだ。

 この世界の神はどうしてこんな力を人に与えたのだろうか。

 

 こんなに人を雁字搦めに運命で縛って、何を求めて人を導いているのか。

 足掻くことは認めるが結果を変えることは許さないとは、なんとも残酷な神だ。

 

 

 赤髪の男子高校生は、まだ目が覚めないようだった。

 




・ハスターのスタンド(名前がない)
スタンドとは重ければ遠くに伸ばせないものだと思っているので、近距離パワー型のフリをしている。
能力は「無限再生」と言い張っている。
スタンドの皮が硬い特徴がある。
精密動作性はそこまでよくはないが、持続力と破壊力はあると本人は自負している。
力任せに振り回すスピードならあるが、精密動作性がひどいのでトップスピードは出せない。
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