ハスターなオリ主とジョジョ3部   作:ラムセス_

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氷と水の猛襲

 

 近くの街で宿をとっている状況である。

 

 犬くんはあまりに怯えるので俺とは別の部屋となった。

 三人部屋二つで、俺は花京院君と承太郎君と同室だ。

 

 もう片方はジョセフさんとアヴドゥルさんとポルナレフさんの三人組。

 疲れた犬くんは向こうの部屋で爆睡しているらしい。

 

 花京院君がジト目で俺を非難した。

 

「ちょっとスタンドが使えるからって犬をいじめるのは最低ですよ。イギーの尻尾、股の間から結局出てこなかったじゃないですか」

「でもぉ、人に危害加えるかもしれないしぃ」

「捕獲に参加した財団職員も怪我した奴はいても死んだ奴はいなかったらしいぜ」

 

 承太郎君の言葉に、俺は腕を組んでうんうん唸った。

 ほな節度を守った良い人外かあ。

 ホンマか?ホンマにいい人外か?

 

 俺が首を捻ると、なぜか承太郎君にポカっとどつかれた。

 

「なぜ殴ったし!!!」

「なんとなくだ。そろそろ寝るぞ。あとテメェがジョーカー握ってんのは分かってるから諦めろ」

「俺氏二重の激怒。また表情でジョーカーの位置予測してたろ。永久に俺がババ持ちなんだけど」

「黄衣さん分かりやすすぎてババ抜き面白く無いんですよね。次は別のをやろうか、承太郎」

 

 俺は開始直後から結局永久にババを持つことになったし。

 承太郎君には謎にポカって殴られるし。

 

 俺は悲しみに咽び泣いた。

 でも旧支配者が隠し事して人間を謀るのは悪辣な犯罪だろ……!

 人を害す人外は危険だし…処理は俺の義務だし…ブツブツ。

 

 というわけで、俺たちはトランプを片付け就寝タイムに入った。

 

 夜襲の可能性があるので数時間ごとに交代で夜番を立てることにしている。

 睡眠のいらない俺が全部見張ると言ったのだが、仲間一人に寄りかかるのは性に合わないということでこうなった形だ。

 仲間扱いされていることに、やはり堪らない嬉しさが込み上げる。

 

 順番に見張りをしていると。

 花京院君か見張りをしている時間に、異変が起きたようだ。

 

 「承太郎!黄衣さん!水だ!!!」と静かで鋭い叫び声。

 ドアの隙間からつー、と流れてきていたのは水だ。

 

 か細いそれは瞬間、ドアをぶち破って部屋を満たすかの如く流れ込む。

 その水面は刃物のように波打っていて、触れればただではすまないだろう。

 

 窓に近い二人が窓を割ってベランダへ転がり出て外へと逃げる。

 侵入者からの盾となるべく一番奥にいた俺も外へ駆け出そうとして。

 角部屋の窓を突き破って巨大な氷の杭が、俺の腹を部屋の中に縫い止めた。

 

「黄衣さんっ!!」

 

 花京院君の叫びが水に飲み込まれる。

 脱出が遅れた俺は水に引き込まれてミンチになり。

 同時に氷の杭を中心に凍らされることで、完全に氷の中に閉じ込められてしまった。

 

 一瞬、俺の目が凍る前に鳥らしき姿を見た気がした。

 

 俺はカチカチミンチのまま焦って脳内で悲鳴をあげた。

 うおお、封印された!

 

 外に逃げた承太郎君と花京院君の安否が心配だ。

 シンプルだが強力な能力だったし、何事もなければいいのだが。

 

 片方は水を操るスタンド使い。

 もう一人は冷気と氷を操るスタンド使い。

 本来少しだけミスマッチだが、おそらくこうやって俺を封印するためだけに組んだのだろう。

 

 まず、肉ミンチのまま頑張って身動きしようとしてみる。

 力も入らないし、結構硬い氷らしくてびくともしない。

 

 触手で外からゴリゴリ削り出すしか無いだろう。

 うっかりホテルを破壊したら嫌だなぁ。

 なんか科学館のお土産屋に売ってる化石掘りゲームみたいな状況である。

 うっかり骨を真っ二つにしそうなアレである。

 

 触手をニュッと出して外の様子を窺う。

 ホテルの下で承太郎君と花京院君が水のスタンド相手に攻防を繰り広げているのが見える。

 氷のスタンド使いの姿は見えない。

 

 あらゆる場所からウォーターカッターのような水を浴び、二人は早くも血だらけだった。

 ううううーむ、もう色々言い訳して魔術で転移してしまうか?

 

 そこに、遅れてジョセフさんとポルナレフさんとアヴドゥルさんかやってきたらしい。

 部屋の扉の前で絶句している様子が目に入る。

 

「これはッ!!!なんということじゃ!奴らめ、なんとしても黄衣君を封じておきたいらしい!」

【よっす。封じられました。アヴドゥルさん助けて】

 

 俺がニュッと触手をホテルの壁から生やせば、ポルナレフさんがギョッとした様子を見せた。

 

「いやあれでなんで意識があるんだよ。フィードバック無いとかか?」

【いや、普通に宇宙空間の方が気温低いからね。凍りついても動けないだけだから】

「その前にミンチなんだよお前。痛くないのかよ…?」

【ちょっと痛い。蚊が刺すの失敗した時ぐらい。痛っ、程度かな】

 

 ポルナレフさんに「お前の世界観だけなんかおかしいんだわ」と率直な感想を言われてしまった。

 ジョセフさんもうんうん頷いている。

 アヴドゥルさんが咳払いした。

 

「その例えはわからないが。私の方で氷を燃やすが、構わないか?」

【助かる。でも水が敵スタンドに操作されると厄介だな…】

 

 ややアヴドゥルさんも迷った様子だ。

 これだけの量の氷をすぐに溶かそうとすると、アヴドゥルさんも結構高温の炎を出さねばならない。

 すると一気に気化して灼熱の蒸気が噴出するかもしれないから注意する必要があるし。

 だからと言って水が生まれると敵の奇襲が考えられて危険。

 

 敵は現在承太郎君達と戦闘中だから、余程のことがない限りこちらにちょっかいはかけてこないだろうが。

 

「なら俺が氷を切って、黄衣を運び出せばいいだろ!」

「気をつけろよポルナレフ。まだ氷のスタンド使いがどこにいるかもわかっていない」

 

 ポルナレフさんが「分かってるって!」と応えて前に出る。

 切断は一瞬だった。

 スタープラチナのそれより速いかもしれない神速の剣裁きが氷を一閃、二閃。

 剣を振り払ったチャリオッツの姿があると言うのに、ちっとも氷が崩れ落ちてくることはなかった。

 

「こりゃどういうことだ…?切りにくいが、間違いなく切断したはずだ」

「これは…切った端からくっついておるんじゃろう……水と氷の塊であるが故にッ!」

 

 確かに、まだ氷のスタンド使いが近くにいるのかもしれない。

 スタンドによる冷気の影響が残っている。

 また、ポルナレフさんの剣捌きが鋭すぎるが故にあっという間にくっついてしまうのもあるだろう。

 

 遅れてやってきた犬くんが、ブフッとため息をついた。

 そのままスタンドを具現化した。

 

「い、イギー黄衣君を助けようと…?」

「アギッ」

 

 心外そうに犬くんは鳴いたが、助けてはくれるようだ。

 ぐるぐると段々早く、砂を電動ヤスリのように回転させ、氷を削り取っていく。

 水を砂に挟んで回収しながら、上手く水が出ないように工夫している。

 

 スタンドの性質、犬くんのスタンドの一部になっている間は他のスタンドによる操作は受けないだろう。

 つまり、水のスタンドの介在は無いと見ていい。

 

 ジョセフさんがぱあっと顔を明るくした。

 

「おお、イギー!よくやったわい!」

「フンスッ」

 

 承太郎くんそっくりのやれやれだぜ感を出して、犬くんはどんどん掘り進めていく。

 

 肉片の俺を避けるのは難しかったようで、ちょっと先を取り込まれつつ半分ほど俺を削り出してくれる。

 

 半分ほど出てしまえば、あとは俺だけで無理やり脱出が可能だ。

 小さな氷を無理やり砕いて再生する。

 

 再びの全裸俺、触手をはみ出しながら顕現である。

 

「この犬くんは賢いなぁ!よくやった!助かった!賢い!えらい!」

 

 抱きしめてわしゃわしゃしようと手を伸ばす。

 瞬時に犬くんは身を引いてブフッと文句を言った。

 なんでや。俺の何が悪いんや。

 

 ともかく承太郎君達と早く合流せねば。

 ジョセフさん達と頷いて駆け出そうとしたその時である。

 

 再び巨大な氷の氷柱が窓ガラスを割って俺を串刺しにしようとした。

 それをすかさず近接パワー型のポルナレフさんが前へ出て、見事な腕前でその杭の進行方向を逸らす。

 だが、杭に触れた剣が凍りついている。

 生身で触れればタダでは済まないだろう。

 

 窓枠に止まったのは一匹のハヤブサだ。

 背後に冷気を発するスタンドを浮かべ、凶悪そうにこちらを睨んでいる。

 

 ポルナレフさんが慄いた。

 

「なんだこの鳥公!敵なのか!?」

「冷気のスタンド使いだな。氷の射出が得意だけど、質量のでかい氷の落下とかもできそうだ。シンプルで強いな」

「ううむ、迂闊に攻撃できん!ワシのハーミットパープルは凍らされてしまいかねん!」

 

 ふわっとハヤブサが羽ばたこうとする。

 どうやらヒットアンドアウェイで来るつもりのようだ。

 

 アヴドゥルさんが覚悟を決めてその前に炎を放った。

 建物の中ではあまり使いたくないようだが、この際仕方ないと割り切ったようだ。

 「レッドバインド!」と火力控えめなそれを放つ。

 

 それを分厚い氷の盾でギリギリ防ぎ切り、ハヤブサらしい素早い身のこなしで空へと舞い上がる。

 見たところ、出力はアヴドゥルさんの方が強そうだ。

 正面切っての撃ち合いなら勝てるだろうが、ホテルという可燃性のものまみれの場所が悪かったか。

 

 ポルナレフさんが窓から身を乗り出して空を舞うハヤブサを目で追った。

 

「くそっ、これじゃどこから攻撃されるかわからねぇ!」

「なんのこれしき!ハーミットパープル!」

 

 念写のスタンドがぐるりと俺たちを囲むように360度ホテルの壁面に這い回った。

 それと同時に、透けるように黒い念写跡が壁に浮き上がる。

 それは羽ばたき、こちらに狙いを定めるハヤブサの姿を映していた。

 

 どうやら壁を透視してハヤブサの姿を動画のように映しているらしい。

 

「凄いなジョセフさん!なら俺はいつも通り防御壁を展開、と」

「うむ、迎撃するぞ!」

 

 犬くんは仕事は終わったとばかりに暇そうにしていると見せかけて。

 俺の似姿を砂で出現させて動かした。

 トコトコと歩かせて窓からちらりと視認できるようにうまく横切らせている。

 

 どうも、ハヤブサは俺を優先的に狙っているようだ。

 俺の似姿を追うように狙いが逸れて、ハヤブサの横っ腹を狙える位置になる。

 

 氷の杭を伴ったハヤブサが、時速300km近い速度で砂の人形めがけて急降下した。

 

「さすがだぜイギーッ!シルバーチャリオッツ!」

 

 杭と共に飛び込んで二撃目を加えようとしたハヤブサの胴体を、チャリオッツが横薙ぎにする。

 

 シルバーチャリオッツの致命の一撃を受け、ハヤブサは胴と首が泣き別れして力尽きたようだ。

 鳥の死体一つにしては、随分とまぁ散々な被害だったものよ。

 少なくとも、このホテルにはもう泊まれないだろう。

 

 ほっと皆で息をつく。

 

 そこに、ズタボロの承太郎君と花京院君が現れた。

 花京院君は目…というか顔面を剥ぎ取るようにやられているらしく、承太郎君の肩に担がれてだらりとしている。

 

 顔面が全部持っていかれているようで、大量に出血してピクリともしない。

 とんでもねえ!?眼球も潰れてるだろこれ!?

 

 承太郎君も肩を撃ち抜かれているらしく、ぐっしょりと血に濡れた制服で顔色が悪い。

 承太郎君は苦り切った顔で口を開いた。

 

「悪い黄衣、花京院の治療を頼む」

「うおぉ了解生きてて良かった二人とも!!」

 

 承太郎君も合わせて再生を付与。

 瞬時に全ての傷が癒え、ギリギリ意識があったらしい花京院君が顔を押さえて「み、見える…よかった…!」と青ざめている。

 

 ポルナレフさんも流石に驚いたらしく、慌てて花京院君に駆け寄った。

 

「お前と承太郎が二人でかかってそれとか、水のスタンドそんな強敵だったのかよ!?」

「ああ。街の至る所から致死の攻撃が飛んできてね。ハイエロファントの結界でギリギリ探知しつつの攻防だ。承太郎が決めてくれなければ僕は死んでいた…」

 

 凄まじい強さだった、と花京院君がまだ顔を撫で摩りながらため息をつく。

 

 俺がおおお、と申し訳なさに唸っていると、俺の足元で座ったイギー君がブフォッ、と居丈高な感じで鳴いて俺をじとっと見た。

 なるほど、働きに応じた対価が必要だと、そう言っているようだ。

 

 俺は座って犬くんと、イギー君と目線を、合わせた。

 

「うむ。良き働きをした汝にはプレミアムコーヒーガムを渡しましょう。俺製の香り高い本格コーヒーと犬の嗅覚を考慮し、あっ、話の途中なのに取られた……」

 

 イギー君はもしゃっと俺の手からコーヒーガムをひったくって食い始めた。

 俺特製コーヒーガムの味にはかなり満足したらしく、俺に尻を引っ付けてもちゃもちゃしている。

 

 花京院君は少しだけ明るい顔をした。

 

「仲直りしたんですか?黄衣さん、犬好きじゃ無いっぽかったですけど」

「好きじゃ無いわけじゃないけど。うむ。イギー君が賢くて良い犬くんなのはわかった」

「てめーは犬嫌いというより人間好きな巨大陰険イカなだけだろうよ」

「陰険イカ言うなし!性格良い方じゃないけどさぁ!!」

 

 わちゃわちゃしつつ、俺たちは再びスピードワゴン財団へとヘルプコールをしたのだった。

 





・承太郎
これまでの旅で、ハスターの性格が「人間のことを溺愛してる高慢で酷薄な人外」だと見抜いてる。
いけ好かない奴だが人間へ深い愛は本物なので、ヤバくなったら適宜自分が殴って止めれば良いかと思っている。

・ハスター
承太郎に殴られるとめっちゃ凹む。
陰険イカって言われてちょっとブツブツ文句言ってる。
今後はコーヒーガム供給係になる。

・イギー
黄衣の情けない姿が見捨てられず義理で助けて、その上でギブアンドテイクに落ち着いた。
よっぽど今のうちに逃げようとも思ったけど、それは流儀に反するかなと。
やばい奴だけど話は通じる。
なら近場で見張りつつ適当に取引を続ければ安全だろう。
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