ハスターなオリ主とジョジョ3部   作:ラムセス_

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神話会談

 

 滑らかな、気品ある動きだった。

 

 英国貴族のように優雅で……いや、確か実際英国貴族の養子になった経歴があるんだったか。

 あまり覚えていないが、その所作には間違いなく上流階級の品の良さが滲み出ていた。

 

「ふふ。私を前に緊張していない、か。君も人ではないのだろう?君とは偽りなく話をしたい」

 

 DIOは俺の対面にある椅子に腰掛け、美しく笑ってそう言った。

 正体を現せ、か。

 少しどうしたもんかと悩んでから、黄衣の王本来の姿に立ち返ることにした。

 

 人の皮を破って触手がザワザワと伸び上がる。

 

 蒼白の仮面を被った人型の触手の群れ。旧支配者の化身にして、異形の主。

 古びた黄色の衣は皮膚の一部でしかないが、それは布のように重く、艶やかに蝋燭の光を反射する。

 フードを深く被り、虫の軋るような声で俺は声を発した。

 

 僅かにDIOが瞠目する。

 

【これでどうかな。本性の方は大きすぎてこの部屋には入らないから、化身の姿で失礼するよ】

「………素晴らしい。このDIOをして心胆寒からしめる威容だ」

 

 おや、この吸血鬼はSAN値チェックをクリアしたようだ。

 俺が蒼白の仮面を取っていなかったのと、運が良かったのが重なったか。

 

 まあいいかと思考を切り替えて問いかける。

 

【それで、俺に何か用かな?】

「本題の前に、少しばかり話がしたい」

 

 優美に視線が俺を舐めあげる。

 値踏みしているのか、どう絡め取ろうか思案しているのか。

 DIOはふっと口角を吊り上げた。

 

「君は、我々の在り方をどう捉える?」

【というと?】

「人間は弱い。脆くて愚かだ。我々とは違う。彼らとどう向き合うべきだと思う?」

 

 なるほど、人類種へのスタンスを聞きたいらしい。

 それは擦り合わせておくに越したことはない。

 

 俺は少し小首を傾げて、触手の裂けた口をざわめかせた。

 

【俺は囲って遠くから見守るかな。自然保護区みたいなもんだ。外敵を遠ざけ、営みを守る】

「なるほど。それもまた正しいだろう。自然の姿を守って庇護する。人本来の在り方を保つために必要なことだ」

 

 怪しく瞳が輝く。

 DIOはペロリと唇を湿らせた。

 

「だが今まさに人は惑い、お互いに殺し合う。自らを滅ぼす兵器すら手にして合い争っている」

【そこは確かに不安点ではあるな。人間、自分で滅びそうなとこある】

「そうだろう?」

 

 「我々による管理が必要だとは思わないか?」と甘やかな毒のように嘯く姿は蛇のようだ。

 核心に迫る発言に、俺は納得した。

 

 なるほど。この人外は俺を仲間に誘って人類種を支配しようとしているのか。

 その実、見下すような気配は己と対等だとは考えていないのだとわかる。

 利用するだけしてやろうと言う思惑がそこには滴っている。

 

 俺は内心頷いた。

 

 ならば、煽るだけ煽って断るとするか。

 俺が誘いに乗る道理はないし、俺以外の人外を人の上に置く気もない。

 つまり不倶戴天の敵、同業他社というわけだ。

 

 俺は肩をすくめてくすりと笑った。

 我々の管理が必要、と言ったのだったか。

 

【でもそれ、もう俺試したから】

「───なに?」

 

 ぴくり、とDIOは眉を動かした。

 

 そう。俺はすでに管理社会を築いて運営した経験がある。

 クトゥルフによって滅びるその時まで、人類種の唯一の園、ハイパーボリアを完全で幸福な社会として維持していた。

 

 飢えが無く、格差がなく、苦しみがなく、恐怖のない。

 箱庭のような楽園だった。

 

【大体3億年間ぐらいかな。人類を管理してたことあるんだけど、あれはあれで問題があるんだよ】

「何を、馬鹿なことを」

【まず人口が増えない。幸福度が高すぎて子供を作る意味がないんだ。人類が先細りする】

 

 次に文化と技術の発展が超遅くなる。

 競争心が無いから何千年経っても同じところを牛歩でぐるぐる。

 そして一番の問題は俺ありきの社会になって、外敵がきた場合の脆弱性が半端ないところだ。

 クトゥルフが去った後にあっという間に文明は壊滅して、石器時代からリセットになってしまった。

 

 DIOの表情がどんどんと険しくなっていく。

 

【と、問題点はそのあたりだな。だからやるとしたら自主性を持たせる形で文明を導いていく必要が……】

「貴様はなんだ?」

 

 これまでにない低い問いかけに、俺はニタリと嗜虐的な笑みを浮かべた。

 

【空に跨る神と呼ばれていたこともある。はは。神に成らんと欲する怪物よ。せいぜい頑張るといい】

「………神、だと」

【生き物の世話は大変だぞ。滅ぼすのは楽だが、次の娯楽を見つけるのはもっと大変だ】

 

 50億年後には地球も太陽に飲み込まれる。

 その前に人間を太陽系外に出すことは必須業務だろう。

 それまで持つかどうかは不明だが、持たせる方策も同時進行で模索する必要がある。

 

【ともあれ、ライフプランは考えておいた方がいいぞ?星という石ころを壊して遊ぶのはすぐ飽きる】

「このDIOに、偉そうに高説を垂れるつもりか?」

【神がどういう生き物か教えただけじゃないか】

 

 くすくすと嘲笑すると、ピリピリとした空気が俺に殺気を伝えてくる。

 部屋の外で俺に強烈な殺意を持つ人間が見張っているようだ。

 なんとも、吸血鬼想いな信奉者さんで。

 

 DIOが決裂を告げるように立ち上がる。

 

「………このDIOは全ての頂点に立つ!貴様の如き醜悪な神もどきがいるのなら、その上にもだ!」

【そういうハングリー精神は人間っぽくて嫌いじゃない。やっぱり精神の基底は人間だと強くていいな】

 

 そう言い切れば、瞬時に時間停止が展開された。

 時間停止の間にDIOが俺の頭をトマトのようにぶち抜くが、それを無抵抗で受け入れる。

 避ける意味がないし、力を誇示する必要があるからだ。

 

【残念】

「ッ…!」

 

 拳に貫かれたまま、中からビチビチとたくさんの触手を生やして反撃に出る。

 DIOは大きく後退した。

 

 俺は触手をそこら中に生やして撹乱する。

 いつでも撤退していいが、ふむ。敵スタンドを確認してからにするか。

 

【君の考えが聞けて楽しかったよ。偉そうになって申し訳ない。先達の老婆心だから気にしないでくれ】

 

 そのように上から目線攻撃で言い捨てて敵を煽る。

 部屋の外の信奉者はまんまとそれに乗って来てくれたようだ。

 

 壁面からスタンド攻撃が飛んでくる。

 空間を削るような一撃だ。

 恐らくは閉ざされた世界の外に強制的に物質を捨て去る能力。

 

 ん?これ地味に俺のお手軽脱出口にならないか?

 まあここまで来て敵を捨て置くわけにもいかないから無理なんだけど。

 

 それを目眩しにこの化身を捨て……ようとして、アヌビス神が放置されてしまうことを思い出した。

 

 ポン俺。すまんアヌビス神。

 

 慌ててアヌビス神だけ別に承太郎君達のいるホテルに転移させてから、化身を廃棄する。

 

 ずっとアヌビス神は置いていかれるかと思っていたらしく、ヒーーンと悲しい犬みたいに鳴いていた。

 よしよし。見捨てないから安心してくれ。

 

 

 そうして。

 俺はDIOの館を後にしたのだった。

 

 

 まあ、概ね予想通りの展開だった。

 

 出会って早々、俺の無い頭脳でも「こいつは自分の上に立つ奴が嫌い」とわかっていたからな。

 わざと煽るような語り口で、俺にヘイトを向けることを優先していた。

 DIOとの決戦でも、これで俺を優先的に攻撃してくれると信じたいものだ。

 

 加えて、DIOとやらの思想は大体わかった。

 

 こいつは人類支配とか何も考えていない。

 語り口では一緒に支配しようとか言っていたが、根本的に先頭に立ちたいだけだ。

 

 登山家みたいなもので、山頂に登りたいだけと言うべきか。

 アイアムナンバーワン原理主義。

 先頭民族ってやつだ。

 

 だからそのついでにちょろっと支配もしようかな、ぐらいの温度感である。

 

 そしてその根本では、深い恐怖に囚われている。

 何者かの支配を恐れているのだ。

 もう誰にも支配されないために、何かに追い立てられるように頂点を目指している。

 

 こういう場合幼少期の体験が原因なことがほとんどだが……。

 孤児だったというし、何を体験していてもおかしくはないか。

 

 そしてそれゆえにとてつもなくプライドも高い。

 だというのに、承太郎君たちに関心を払う仕草をしている。

 「人外たる自分が関心を払うものでは無い」とか軽視アピールしそうなものなのに。

 

 それは、それだけ承太郎君たちに思うところがあることの裏返しだ。

 例えば、ジョースター家に特別な思いがあるのかもしれない。

 

 まあどれも憶測に過ぎない。

 

 ビヨンと花京院君に渡した触手を核に俺の化身を再構成する。

 

 ホテルの一室でニュニュニュと俺が全裸で……おっと全裸はまずい。

 大事なところを隠す仕草で黄色のパーカーを瞬間着替え。

 

 アヌビス神も同時に転送されたが、傷付いているのかまだヒーーーンと鳴いている。

 悪かったって。

 

 花京院君とポルナレフさんが立ち上がって俺の帰還を祝ってくれた。

 

「黄衣さん!無事でしたか!?」

「俺は全然楽しくお茶会しただけ。肉の芽もない。ポルナレフさんは体調大丈夫?」

「おうよ!お前のおかげでバッチリだぜ!悪かったな…無理させちまって」

「いいっていいって」

 

 ジョセフさんもアヴドゥルさんもいるようだ。

 狭い室内に男6人がみっしり詰まってやや狭苦しい。

 

 承太郎君がニヤッと笑って言った。

 

「収穫はどうだった?」

「ぼちぼちかな。まあ、明日には響かず帰れたからよしとしてくれ」

 

 

 そうしてひとまず、お互いの無事を祝い合ったのだった。

 





・空に跨る神ハスター
古代、絶対神として崇められたもの。
楽園の神話の原型、ハイパーボリアを運営したもの。
星を砕くのは昔ハスターも暇つぶしでやってたが、マジで賽の河原の石積み並みに虚無ですぐやめた。
今時の若いもんは構文で偉そうにされてDIOは怒り心頭。
もう絶対なんとかして殺してやると思われている。
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