ハスターなオリ主とジョジョ3部   作:ラムセス_

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終幕

 

 泥のような眠りの後、俺たちは祝杯を上げた。

 ホテルのレストランで豪華食べ放題、ジョセフさんの大盤振る舞いだ。

 

「よーし!今日は食って食って飲むぞ!!ホリィも無事じゃ!DIOも倒した!万事善しじゃわい!!」

「長かったようで短かった旅でし…ポルナレフ!それは僕が目をつけていた肉なんだが」

「ケチ臭ぇこと言うなよな。また頼めばいいだろうがよ。あ、そっちのシチューもいいな!」

「アギッ」

 

 イギー君が山のように折り重なったコーヒーガムの箱の上でガムを喰みながらうたた寝している。

 幸せそうで何よりである。

 

 ポルナレフさんが食事をアヌビス神に食わせようと刃に添えて、「やめろ刃先がネチャネチャする!」と怒られている。

 アヌビス神が難しい顔をしてため息をついた。

 

『俺は血を啜れればそれでいいのだが。特に人の血がいい』

「うーむ、血ねぇ。輸血パックじゃダメか?」

『ダメに決まってるだろう!我が使い手ならばもっと人を斬れ!!』

「まあ今後もSPW財団の依頼を受けるから戦いはコンスタントにあるだろうがな」

『そうか。ならいい。楽しみにしておく。こまめな手入れを忘れるなよ』

 

 血液パックを啜る魔剣アヌビス神を机に立てかけて、ポルナレフさんが鳩のローストをひたすら掻っ込んでいる。

 すっかりアヌビス神はポルナレフさんに懐いたようだ。

 これならこの後もポルナレフさんに任せても大丈夫だろう。

 

 アヴドゥルさんがそら豆のコロッケを取り分けながら笑う。

 

「それで、黄衣君は今どのような形なんだ?一度DIOに外に追いやられて、今の君は一部だけ地球に降りてきている状態なんだろう?」

「そうそう。触手を一本、無理やり地球に降ろして人の形をとってる。これが終わったら正式に俺は帰るよ」

「……そうか。寂しくなるな」

 

 少しだけしんみりとした空気になる。

 俺はことさら明るい声で一体。

 

「流れが正しくなって、接続が難しくなってきてるからな。でも大丈夫!万が一の連絡用に、今俺を形作ってる触手を残していくから!可愛がってやってくれ!」

「可愛がるって、何をですか」

「触手を。ほら、こんな感じになる予定」

 

 ぽん!と軽い音とともに現れたのは、ハスターの落とし子である。

 見た目は大きくて色の変なタコさんだ。

 ミニタコさんは実に可愛らしくて鳴いた。

 

【みーーー!】

「完全にタコじゃないですか。タコ嫌いって言ってませんでした?」

 

 花京院君の言葉に、ミニタコ君は大いに憤って威嚇した。

 やれミニタコ君!花京院君にひっついてやれ!

 

 憤ったミニタコ君が花京院君の左腕にぴたりとくっついた。

 剥がそうとするものの、吸盤が不可解なほどぴたりと張り付いて全く取れない。

 そして、そんなミニタコ君の頭上にスピーカーがニュッと出現する。

 

「!?!?」

「この通り、この触手は落とし子…つまりミニタコ君となって俺の声を中継する。電話の要領だな」

「これ全然外れないんですけど!?僕食べられないじゃないですか!」

「俺をタコだなどと言った報いを受けよ。俺はタコは嫌いなんだ」

「黄衣さんが自分でタコって言ってます!!!」

 

 ハイエロファントに突き回され、ミニタコ君は渋々自席に戻った。

 俺もスピーカーをグネグネさせて憤りをあらわにする。

 

「なんたること!このミニタコ君には俺の再生の能力もあるのに。ヒーラータコ君だぞ!」

「へぇ、なら今朝ちょっと椅子にぶつけて肘にあざができちまったんだ。治せるか?」

【みみみっ!】

 

 ポルナレフさんは帰って早々怪我をしてしまったらしい。

 ミニタコ君が触手をニュニュニュと向けると、ポルナレフさんのあざが一瞬で消え失せる。

 「おおっ!やるなこのタコ!」と言う言葉に、ミニタコ君が力こぶを作ってポージングした。

 

 それからぽん!と再び煙と共に俺の姿が元に戻る。

 

 ポルナレフさんが「それに意外ととっつきやすい見た目だったじゃねーか。なぁ?」と承太郎君に笑いかけた。

 承太郎君が眉間に皺を寄せて口を曲げる。

 

「目いくつあんだよあのタコ」

「まあ黄衣君自身の触手よりは心臓にいい形はしておるの」

「そこ!俺の可愛いミニタコ君に何か!?」

 

 旅の間ずっと可愛さに重点を置いてブラッシュアップしていたからな。

 連れ歩いても違和感ないように──タコを連れ歩くのはそもそも違和感だが、それはともかく──仕上げたわけだ。

 そりゃもう可愛いに決まっているのだ。

 

 俺は満足にうむうむと頷いたあと、ひょいと本を一冊取り出して承太郎君へと渡した。

 承太郎君が訝しげな顔をする。

 

「なんだ?」

「この世の運命を分ける本。別名DIOの日記。読むか読まないか承太郎君に任せようかなと思って」

「DIOの日記じゃとッ!?!?」

 

 ジョセフさんがのけぞって驚きの声をあげる。

 承太郎君は「説明を続けろ」とでも言うように強い視線だけを俺に向けた。

 本当に聡い人だ。強い人だ。

 

「これを読んだ場合、世界が滅びる可能性が極めて高い」

「滅びの魔道書じゃねーか。その説明で読むやついるのか」

「でも代わりに、『次の人類』は壁に守られ、俺のような外敵が地球の外から攻めてくる可能性は低くなる」

「!」

 

 世界の一巡、と呼ぶものらしい。

 

 高速で回した世界を地球を中心とした内と外で分けて、あらゆる可能性を内包した「内側」を作る大事業。

 この世界は滅びるが、これによってできた壁は旧支配者から身を守るこれ以上ない盾となる。

 

 承太郎君が本を揺らし、問いかける。

 

「じゃあ、読まなかったら?」

「今この世を隔てる壁が壊れ、俺のようなものが自由に襲えるようになる。人では勝てない。滅びたほうがマシな目に遭う」

「………なるほどな」

 

 皆が息を飲み、本を見ている。

 まあ実際には読まずに燃やしたところで、神は諦めないだろう。

 新しいお告げを渡し、なんとか壁を維持しようとするはずだ。

 旧支配者だってこんな辺鄙な砂の山を必ず襲うとは限らない。

 

 また本を読んだとて、絶対世界が滅びるわけではない。

 人の意思の奇跡により変えられぬ運命が変わる可能性だってなくはない。

 俺だっているから、変わる可能性も十分あるだろう。

 

 承太郎は俯いて瞳を伏せた。

 そのままライターを取り出し、そっと本へと火をつけた。

 

 本はまるで溶けるように小さく燃えて、わずかな燃え滓だけが机に残った。

 花京院君が「承太郎ッ………!」と慄くような視線を向ける。

 

「悪いが、自らを犠牲に次の人類を助けるほど、俺はお人よしじゃないんでね」

「………そうじゃな。ワシらには守りたいものがある。全てを捧げられるほど世捨て人なわけでもない、か」

「ははは。そんな酷い顔しなくていいよ。どちらにしろ、もしやばくなったら俺を呼んでくれって言うつもりだったし」

「黄衣さんも元の場所で守ってるものがあるんでしょう?あまり迷惑はかけられませんよ」

 

 花京院君の拗ねるような声色に、俺はふと顔を上げて彼を見た。

 花京院君はその誇り高さゆえに、人に寄りかかることをよしとしない。

 相手が無限のリソースを持つ、神たる俺でさえ。

 

「あなたが帰りたいのはそう言うことでしょう?ちゃらんぽらんのくせに、そのあたりしっかりしてたので分かりましたよ」

「ちゃらんぽらん言うなし。俺は非常に賢い絶対神、空に跨る神だし。非常に賢い」

 

 2回言わなくてもいいですよ、と花京院君に言われて俺はむくれてハンバーグ風のものに食いついた。

 美味しい。俺は本当に賢いのに。ぶつぶつ。

 

 ジョセフさんが「黄衣君が神かぁ。結構不安じゃの。フォローしてくれるものはおるか?」と心の底からの親切心で声をかけてくれる。

 俺はちょっと涙を拭った。

 

「だいじょぶ……俺はとても優秀なので……そういえばさっきついでに噂のカーズとやら見てきたよ」

「なんじゃとッ!?それで、奴は大人しくしとったか!?」

「石になってた。刺激がなさすぎて思考停止したみたい。適当に星に当たらない方角に蹴っ飛ばしといた」

「おお……それはよかったわい」

 

 ちょっと引かれがちながら、万事解決である。

 俺の行動の速さを見て、承太郎は俺が出立しようとしていることに気付いたようだ。

 

 静かに目を合わせて俺と視線を交わす。

 

「行くのか」

「そろそろね」

 

 花京院君がムッとして俺を睨みつける。

 「まだゲームの約束が終わってませんよ」と約束の不履行を責める。

 

「どうせこの後一旦帰郷してから再集合になるだろう?そこまで待ってたら俺の友達が痺れを切らしすぎてDIOの百倍悪いことするかもしれないしな」

「どんだけ悪いことする気ですかそれ」

「前菜ぐらいの催しとして、人間を閉じ込めた密室に怪物を放って誰が一番生き残るか賭けとかする」

 

 花京院君がうわぁ、とドン引いた顔をした。

 本当に悪いニャルなんだ。

 俺も実際見たことあるし、ポカって殴ってやめさせたこともある。

 俺はすまんと言い置いてから言葉を続けた。

 

「その代わりにミニタコ君遠隔操作でゲームに参加させてくれ。オンラインプレイだ」

「オンラ…?まあそれならいいでしょう。ハンデは考慮しませんよ」

「うす。全力でやるぜ!唸れミニタコ君!」

 

 俺が力こぶを作ると、花京院君が穏やかな笑みを浮かべた。

 

 俺は皆に向き直り、大きく息を吸った。

 少しだけ喉の渇くような、緊張が胸を撫でる。

 でも精一杯の誠意と感謝を込めて、宣言する。

 

「ありがとう。俺と対等に友達になってくれて。ずっと仲間に入れてくれて。人の視線で、同じ時を過ごさせてくれて」

 

 この気持ちを俺は生涯忘れないだろう。

 人類が滅びて宇宙が終わったその先も、ずっとずっと覚えている。

 50日にも満たない鮮烈な日々が、俺の魂に焼き付いている限り。

 

 皆、ふっと笑ったようだった。

 承太郎君がすっと拳を出す。

 

 それに合わせて皆も拳を出したので、俺も慌ててそれに合わせる。

 拳の触れ合う、鈍い感触。

 

「いつでも連絡して来い。そのタコは俺が飼っておく。餌はどうすりゃいい?」

「いらないけど、人と同じものを与えると喜ぶ。あと撫でるとタコ君に自信がつく」

「ふん。俺の家なら広くて遊ぶにもこまらねぇだろうよ」

 

 どうやらミニタコ君は承太郎君が預かってくれるようだ。

 「ワシもいるぞ!!」とジョセフさんが主張する。実に心強い。

 

 俺は自分の分のデザートを喉にかっこんでから、涙を誤魔化して立ち上がる。

 

「じゃあ皆、ありがとう。また時々連絡しよう。……もう直接会うことはないだろうけど。それでも、みんなは俺の大切な友人だ!」

 

 おう!と皆が各々に返事をして

 「アギッ」とイギー君がコーヒーガムを俺に一枚渡してくれた。

 餞別らしい。

 それをぐっとポッケに突っ込んで、少し離れて。

 振り返って涙を堪えて、大声で言った。

 

「またな!」

 

 そうして。

 俺はぐるりと接続を切ったのだった。

 

 

 

 

 

 その場に残されたのは、一匹の奇妙なタコだけである。

 タコはモゾモゾと承太郎の帽子に乗り、いい具合に収って満足げに「みー!」と鳴いた。

 

 アヴドゥルが少し苦笑して肩をすくめた。

 

「寂しくなりますね」

「そうじゃのお。優秀なスタンド使いで……それで、優しい奴じゃった」

 

 承太郎が同意して少しみじろぎする。

 目を細めて。

 

「あいつ曰く、優しいのは俺らだそうだがな」

 

 

 落とし子を乗せたまま帽子を直し、少しだけ笑ったのだった。

 

 

 

 





「ねぇ我が友ぉ泣きすぎじゃないです??」
「もうベトベトじゃないですかもー」
「ほら、僕がいますから。よーしよしよし」
「帰りましょう、あるべき場所へ」
「この出会いを一時の夢として、永遠を紡ぎましょう」

「それが、僕たちの在り方ですから」



今後は気が向いたら四部とかの番外編かなぁぐらいの気持ちです。
帽子にタコ乗せた承太郎が娘を連れて登場するぐらい。
(ミニタコ再生搭載オーバーヘブンなので大事なものは手近においたほうが守りやすい理論)

神「再走案件です本当にありがとうございました」
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