到着する船を、仗助はぼんやりと眺めている。
これまでの戦闘は激闘の一言だった。
スタンドの矢を盗んだ電気のスタンド使い、音石明。
音石の居場所を確認するため、承太郎は念写のスタンドを持つジョセフ・ジョースターを呼び寄せた。
承太郎曰く偶然来日が被っただけで、元々呼ぶ手筈ではあったようだが。
仗助はなんとも気まずい気持ちで縁石に腰を下ろした。
自分はあちこち傷だらけで泥だらけ。
音石のスタンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーは強力だった。
MAXなら己のクレイジー・ダイヤモンドすら上回る出力に、電気という強力なエネルギー。
先ほどタコが……ハイタが治してくれたが、制服は見るも無惨な有様になっていた。
カッコつかない。髪も崩れてる気がする。
ジョセフを狙う音石明は仗助がきっちりとボコボコにしたが、色々相まってとてつもなく複雑な心境だ。
康一が若干心配そうに声をかけてきた。
「仗助君、なんでドラム缶の向こう側に隠れてるの…?」
「いや。服は俺のスタンドでいいとして、髪だけでも直す。あっくそ、鏡も割れてる。よいせ」
こういう自己のスタンドは使いやすくて助かる。
鏡を直して、髪をちゃちゃっと整える。
康一がやけにニコニコしていたので、むすっとしてそっぽを向いた。
やがて、船が到着する。
のっそりと船のタラップに姿を現したのは、屈強そうな大柄な老人であった。
承太郎ほどもあるだろう。
豊かな体躯に強そうな筋肉を引っ提げて、男子高校生の仗助でも敵いそうにない。
仗助は唖然として慄いた。
海外の大金持ちと聞いていたのに、こう、想像と180度違う方向性の老人がやってきたからだ。
ジョセフ・ジョースターはブルブルと震えて、そしてわっと泣き出した。
「我が息子よ!!!!」
「なん、ちょっぎゃあああああ!?!?」
開幕、仗助はベアハッグの如き強烈な一撃を喰らった。
ギブギブギブギブ!と叫ぶも聞いていないようで、感動の涙を流しながら震えている。
仗助とて男子高校生として相応の体力とタッパと筋力量を備えている。
それをものともしない機関車のような突進であった。
後から降りてきた承太郎が冷静に声をかける。
「ジジイ、これまで行方不明だったみてーだが、何があった」
「怒りのスージーQにエア・サプレーナ島にぶち込まれとったんじゃ!恐ろしい目にあった…この世のものとは思えん形相のリサリサが…うう、また思い出したら吐き気が…」
顔を青ざめさせてやっと仗助を解放する。
仗助はピャッと逃げ出してドラム缶の後ろに陣取った。
これは逃げたのではなく戦略的撤退である。
ちなみに、逃走経路に承太郎から託されたタコがいたので、そーっと別ルートを選んで大回りしている。
タコは「にゅにゅ!?」とショックを受けた様子を見せた。
いくら仗助を治してくれるタコとはいえ、ミキタカとの前で見せた本性を忘れられるほど仗助は能天気ではない。
なんだあれ。
ダイオウイカとイソギンチャクと骸骨が悪魔合体したみたいな悍ましい生き物が姿を現したんだが。
流石、宇宙生物というだけあるホラー映画みたいな造形であった。
ともかく怖いものから距離をとって警戒する。
康一が困った顔でぺこっと挨拶した。
ジョセフは必死で「仗助!我が息子!こっちおいで!お父さんがたくさんなでなでしてやろうな!!」と仗助を手招きしている。
今度こそ全身の骨を折られるかもしれないし、恐怖でしかない。
ちっとも来ない仗助を見て、ジョセフはしょぼんと背中を丸めた。
億泰が「仗助はな!さっき電気の野郎と戦ってて疲れてんだぜ!」とフォローを入れてくれている。
フォローなのか本気でそう思ってるのか微妙なラインだ。
承太郎が「やれやれだぜ」と帽子を下ろしてため息をついた。
この状況は予想していたらしい。
それとも、孫と言っていたしこれよりもっと若い時期に同じ洗礼を受けていたか。
仗助は思わず震えた。
「ジジイはこの後休憩してから矢の念写を頼む。息子と親睦でも深めるんだな」
「仗助ーおいでー怖くないぞーー。おーい」
【もっきゅ】
タコがもそっとジョセフの頭の上に乗り、同じように手招きし始めた。
行きたくない理由がまた一つ増え、仗助は内心涙した。
ジョセフは、頭に乗ってきたタコをヨシヨシと撫でてほっこり笑ったようだ。
「おお、ハイタか!また太ったんじゃないかの。触手が太くなっとる」
「食うたびに少しずつデカくなるらしい。だが食わさないと拗ねる。帽子に乗らなくなるからやめて欲しいんだが」
【みみみ】
「こんなふうにダイエットの提案は断固拒否だ」
タコは触手でバツの字を作り、ツンとそっぽを向いた。
実際ミキタカを丸呑みにしようとしたから、仗助達は必死でミキタカを連れて逃げたし。
食欲は旺盛なのだろう。
康一がヒソヒソと仗助に耳打ちした。
「でもさ、ちょっとは話してみたら?ものの試しで」
「いやでもタコもいるじゃねーか」
「僕がハイタを引きつけるから!」
「うっ………な、ならやってみる」
康一がそそそ、とタコに近づいていく。
顔色が悪い。
あんな乱杭歯をたくさん生やした化け物を抱っこなんて、こんな漢気を見せられたら仗助とて腹を括らねば格好がつかない。
康一が精一杯の笑顔でタコに話しかけた。
「ね、ねぇハイタ!僕抱っこしてみていい?1回ハイタを抱っこしてみたかったんだ!」
【もきゅ!!!!】
タコの顔が明るくなり、目がキラキラと輝く。
康一の顔は引き攣っているが、喜んでうにゅにゅと触手を伸ばして康一に抱きついた。
ジョセフも好々爺の顔でハイタの橋渡しをしてやっている。
「そうら、ハイタは優しい子じゃから、抱っこしてたくさん撫でてやるといい。喜ぶぞ!」
「わあぁ。意外と温かくてスベスベで重い……とっても重くて…本性の重さを想起させる…ッ!」
【みみみみみ!】
「康一君、そいつを持つときはスタンドと肉体を重ねるようにして持つんだ。生身で持つと腰を痛める」
「じょ、徐倫ちゃんはどうしてるんですか…?」
「気を遣ってハイタが軽くなっている」
軽くなるとは。
仗助は目をまん丸にして哲学に思いを馳せた。
「あー、その。ハジメマシテ。東方仗助です」
「ワシはジョセフ・ジョースター。君の父じゃ。ふふ、ワシの若い頃そっくりの色男じゃな」
近くに寄っていくと、ジョセフはそっと綻ぶように微笑んで仗助を見つめた。
なんともむず痒い心地に陥って、仗助はそっぽを向いた。
「あの。俺は別に幸せに暮らしてたんで、その」
「金のことは心配するな。面倒な親族争いに巻き込んだりせんわい。そもそも、ジョースター家はほぼ直系しかおらん。配分の心配も承太郎との絡みぐらいのものじゃろう」
「はぁ……」
好々爺の顔に、仗助は言葉を飲み飲んだ。
どこまでも優しくて、穏やかな愛情が広がっている。
ああむず痒い。なんだか居心地が悪くて、どことなく落ち着きが悪い。
承太郎が平坦にいつも通りの声色で補足する。
「相続関係はすでに大部分が整理済みだ。俺は特に困っていないし、ジジイの企業に興味はない。将来の選択肢の一つにでも入れておけ」
「急に経営者って話っすか!?!?」
「別に、心配ならSPW財団に任せてもいい。ああ、財団の人間とは顔を合わせておいた方がいいな。有事の際に力になってくれる」
「うむ。急に海外で爆破テロの容疑者になってしまっても融通してくれるぞ!」
おもむろにすごい権力で殴りつけられ、仗助は背後に大宇宙を背負った。
爆破テロの…容疑者……?
承太郎は「あれは面倒だったな。吸血鬼退治にとんだケチがついたもんだぜ」とぼやいている。
どうやら冗談でなく本気で地元警察を丸め込めるほどの権力があるらしい。
あまりにも恐ろしいことだ。
「ちなみに、今回の音石の悪行も財団が後処理をすることになっている。お前もスタンド使いとしてお世話になることもあるだろう。顔を繋いでおいて損はない」
「う、うす……ひょえぇ…マジか…」
「仗助君、将来社長になるかもしれないのかぁ」
「英語すら話せねぇよ!!」
ハイタに段々と慣れてきたのか、康一はよしよしと頭を撫でながらにっこり笑った。
仗助の緊張が取れてきたのを悟ったのだろう。
意外と気さくで、あまり緊張しなくてもいいというような空気感が伝わってくる。
ジョセフが急にキリリとした顔を作った。
「ところでワシ、TVゲーム得意なんじゃけどやらない?」
「え、一緒にやるってなると、スマブラぐらいっすかね」
「それならワシも承太郎とプレイしたことがある。ふむ、尋常に勝負といこうッ!」
「承太郎さんとすか……???」
凄まじくシュールな光景な脳裏に浮かび、承太郎が眉間に皺を寄せた。
「徐倫とやる前にルール確認しただけだろうが。俺は花京院に散々付き合わされたが」
「ハイタもできるんじゃもんな。徐倫ちゃんとよくやっておるようだし。康一くんもおそまつ君も一緒にどうかね?」
【むきゅっ!】
知能が高いらしいタコが元気に返事をする。
みんなでゲームとかいう変な空気になってきたようだ。
億泰が「おそまつじゃねぇ!おくやす!」と怒っている。
なんとなくほっと肩の力が抜けたようなきがして。
仗助は我知らず、ほっと柔らかな笑みを浮かべたのだった。
・ジョセフ
ちょっと痩せてたけどエア・サプレーナ島で扱かれて三部体型に戻った。
地獄を見た。
・イギー君
老齢だが現役。
ポルナレフ&アヌビス神と一緒にイタリアで五部を蹴散らしている。
砂を使った幻影などトリッキーな戦いが増えた。
・ジョルノ
ギャングスタに僕はなる!(初志貫徹)
パッショーネを一から再建物語、麻薬抜き。