ハスターなオリ主とジョジョ3部   作:ラムセス_

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香港、見知らぬ観光客

 

 香港の料理店にて、俺たちはまったりとやや早めの夕食に来ていた。

 

 空港で多少の足止めを喰らい、三時間近く拘束されたからな。

 疲れたし、ランチはまともに食べられなかったし。

 今日は香港で泊まりになるだろう。

 

 というか、こうやって香港警察から解放されたのだって奇跡に近い。

 

 バンコクに飛ぶはずだった大型旅客機が香港国際空港に緊急着陸。

 コックピットには舌を切り取られたパイロットの死体が二つ。

 俺たちはコックピットに突如侵入して、なぜか都合よく旅客機操縦の知識があって航路を変更した。

 

 客は四人ほど血まみれなのに外傷がないのがいて、俺たちの近くに座っていた。

 夜とはいえ、俺たちが暴れてたのを見た人もいただろう。

 

 挙げ句の果てにどう見ても外傷性の頭部出血でおじいさんが死んでる。

 

 あまりにも役満だ。

 おれが警察の立場ならそのまま詰所で一晩過ごしてもらうレベルである。

 

 スッとどこからともなく出てきたスピードワゴン財団が全て何とかしてくれたが、あれがなければ現実に俺たちの旅はそこで終わっていただろう。

 謎権力過ぎるぞスピードワゴン財団。

 

 ホリィさんのことを思えば急ぐに越したことはないが、ちょっぴり万能すぎて怖い。

 そんな気持ちの俺である。

 

 ジョセフさんが料理店のメニューを睨みつけながら、むむむと唸ってため息をついた。

 

「空路はやはり危険じゃな。大勢を危険に巻き込む。それに、わしら自身抵抗がしづらい」

「それはそうだな。全滅すればどっちにしろホリィさんは助けられないし。いや俺は生き残れるけど。俺だけ生き残ってもどうしようもないし」

「いや高度一万メートルから大洋に放り出されて生きてるんですか黄衣さん」

 

 素早く花京院君に胡乱な顔をされてしまった。

 なんか飛行機の一件で株を落とし、ネタ枠になってしまった気がしないでもない。

 

 俺はせめてもの抵抗として、咳払いしてキリリとした。

 

「そのぐらいなら余裕で生きてる。ただし陸地を目指した地獄のスイミングが始まる」

「うーむ、黄衣君の必死の遊泳は置いておくとして、我々もやはり海路で行くべきでしょうね」

 

 アヴドゥルさんにさらりと置いておかれた俺はちょっとむくれつつ、その言葉には同意して頷いた。

 海路は悪い手ではない。

 沈没しても他の人間が巻き込まれる危険が薄いし、個人用の調達も容易だ。

 

 プライベートジェットをチャーターするという手もあるが……。

 スタンド使いに潜り込まれたら海より生還率が低いのが難点だ。

 

 俺が敵なら、間違いなく上空で仕留めにかかるレベルで狙い目だしな。

 相手には肉の芽というコントローラーがある。

 適当な一般人に自爆攻撃をさせればそれだけでことが済む可能性すらある。

 

 あのクワガタだってそうだ。

 俺らを殺しにかからず、飛行機ごと海に突っ込む戦法を取っていれば、間違いなく俺以外の全員が死んでいただろう。

 

 うーむ、と今後の旅程にみんなして頭を悩ませていると。

 

 フランスから旅行に来た観光客とやらが控えめに話しかけてきた。

 銀髪のお兄さんで、これもまた素晴らしいガタイの良さだ。

 俺、もやし説。

 

「すみません、メニューが読めなくて……漢字読めますか?」

「ああ、俺読めるよ。確かにこの店、珍しく英訳がないな。この辺ならこれとこれとこれが美味しくて定番だと思う。ほらこれ、ガチョウのロースト。パリパリの皮が美味しいんだ」

「オー!ありがとうございます!」

「あとこっちは土鍋で米と具を炊き込んだ丼モノ。定番料理だったはずだよ」

 

 それを聞いて承太郎君も「俺もそれにするか」と頷いた。

 ちなみに俺は火鍋が好き。オーソドックスで辛くて美味しいよね。

 

 花京院君が「この…黄衣さんの有能さと適当さを行ったり来たりする…絶妙な塩梅…」とモヤモヤしているようだ。

 仕方ないだろこれが俺の通常運転なんだから!

 

 ジョセフさんは我関せず「これなんかどうだ?アヒル料理だと思うんじゃが」とメニューを見せてきたので、俺はしょっぱい顔をした。

 

「カエルの丸焼きが来るぞ。いや美味しいけど。美味しいけど見た目がすごい」

「なんじゃと!?」

「逆に私は興味ありますね。こういうのは地元の味を食べてこそですし。私はそれと貝料理を一つ」

「好き者じゃのう。ふむ、よければお主も一緒に食うか?こういうのは旅の縁じゃというし」

「ありがとうございます!」

 

 などと観光客のお兄さんと和気藹々しつつ。

 ちょっと所用があるからと、料理が来るまで抜けることとした。

 

「あまり遠くへは行かんようにな。一人のところをDIOの刺客に狙われるやもしれん」

「了解。すぐ戻るよ」

 

 そのように返事をして席を外す。

 アヴドゥルさんはあの流れで堂々とカエル料理をいただくのか…強いな…と頷きながら店外へと出る。

 たいていの神話生物から俺宛で捧げられる謎食糧より美味しいのは間違い無いんだが。

 やっぱこう、料理って第一印象も大事だよね。

 

 と、てくてく歩いて体の状態を確認する。

 すでにすっかり神体たる俺の身体は運命の縄で覆い尽くされている。

 

 そろそろまた体にかかった運命を解かないと、グルングルンに身体が縛り上げられてしまうからだ。

 一日半が目安か。

 それ以上放っておくと、いよいよもってこの世界から脱出して外宇宙に帰るのが困難になる。

 

 外に出て、少し行った先の建物の影でエッサエッサと運命の縄を外していく。

 複雑に絡まって面倒臭いが、間違えてプチッとやったらこの世界にどんな揺り戻しが来るかわからないし。

 

 無心で手早く作業を続けていると。

 瞬間、全てが静止した。

 

 時間停止だ。

 いやこれは…自分の時間を展開する、と言った方がいいだろう。

 

「ほへぇ、発想の転換だな。初めて見た」

 

 思わず声を上げて、すかさず停止を利用してエッサホイサと縄を解く。

 

 これはヨグ=ソトースの時に割り込んで、自分だけが動ける時間を作成しているのだろう。

 純粋な生物が抱くルールとしては、権能に片足突っ込んでいるほど強大な力だ。

 

 同時に、本当ならヨグ=ソトースの全領域に展開しなければ成立し得ない、凄まじく高負荷のルールでもある。

 

 時間の大神の代わりを務めるなんて、流石の俺でも無理な大事業だ。

 この円環を描いて閉じる特殊な世界をうまく利用して負荷を軽減しているからこそ成立しているのだろう。

 面白い能力だ。

 

 とはいえ、そんなことするぐらいなら普通に時を止めた方が楽だ。

 そんな大規模なことをすれば止められて内部体感時間1分とかだろうし。

 

 この世界ならヨグ=ソトースもあんまり文句言わないだろうから、父なる神の表面をつねって普通に時を止めた方がいいような気がせんでも無い。

 

 そんなどうでもいいことをモソモソと考えつつ、作業終了。

 

 てくてく席に戻ると、なぜか席はもぬけのからで、観光客のお兄さんを含めて誰もいなかった。

 というか火事だ。

 右往左往するウェイターさんに慌てて声をかければ、烈火の如く怒られた。

 

「金払え!お前達逃げたな!弁償しろ!!」

「なんでや!?!?待ってこの短期間で何があった!?」

 

 消防車も出動しているようで、サイレンの音がここまで響いてくる。

 

 ともかく店外に出てから多めに料金を支払って、ペコペコしながら魔術をかけて逃走する。

 加えて火災による被害が最低限になるように細工。

 あとなぜか真っ二つになっていた机などをちょろっと修理して。

 

 俺たちが金を払って平穏無事に店を出て、火事とは無関係ということに記憶を修正しておいた。

 

 みんな敵襲にあったのはわかるけど、俺を置いていかないで!?!?

 

 彼らは戦闘のために店外に移動したようなので、俺も魔術で彼らの居場所を探す必要がありそうだ。

 

 素早く「瞳」を構築。

 遠くへは行っていないと思うので、この店周辺を視界に収めるように展開。

 

 俺は普段、肉眼でものを見ていない。

 

 俺ほどの存在規模のものが肉眼を使えば、それだけであらゆる存在に悪影響を及ぼす。

 例えば何か意思など込めて人を見れば精神に異常をきたすし、道理は歪み呪詛が宿る。

 

 だからいつも魔術で人間の視界をエミュレートした「瞳」を使っているのだ。

 本物の瞳は敢えて開いたとて盲るように細工している。

 

 ともかく、「瞳」で一帯を俯瞰すれば、承太郎君達はタイガーバームガーデンにいることがわかった。

 

 走って向かえば、既にことは終わっていたようだ。

 承太郎君が俺をチラリと横目で確認して、倒れ伏す観光客のお兄さんを観察している。

 

「遅かったな。コイツの肉の芽を抜く。お前も協力してくれ」

「話巻き過ぎじゃないか?なんか数話分ぐらい連載見逃した気分なんだが。あらすじ頼む」

「この野郎はDIOの刺客だったが肉の芽が植えられていた。アヴドゥルがぶっ飛ばしたから今抜こうとしてるってとこだ」

「きちんと説明してくれる承太郎君は優しくていい子というホリィさんの説は有力。あらほらさっさ」

 

 俺は素早く所定の位置についた。

 承太郎君が「……説明するんじゃなかったぜ」とやさぐれている。

 いいじゃないか、ホリィさんは承太郎君のことをよく見てるってことだし。

 

 あとは流れ作業だ。

 素早く肉の芽を抜きつつ、腕を盾にしつつ。

 相変わらずグロい光景に、ジョセフさんが「どうして吸血鬼ってこんなキモいんじゃろ」と哲学的な思考に思いを馳せている。

 人外はキモいもんだ。知らんかったのか。

 

 今回は承太郎君も慣れたのか、前回よりも早く腕一本分ダメにしたあたりで抜き終わった。

 

 俺も「イエロー・トライアンフ!」と掛け声と共に触手から再生を付与して承太郎君の腕を元に戻す。

 承太郎君が汗を拭い、一息ついたようだ。

 

「スタンドにようやく名前を付けたのか」

「まあね。黄色は俺のトレードマークだから」

「被ったらどうする?」

「相手をぶん殴れば俺だけが唯一の黄色になる。このパーティってそういうルールでしょ」

「たしかにな」

 

 クツクツと笑って、承太郎君は荒っぽく俺の肩を叩いた。

 

 こんな野蛮な戦いに馴染んできてしまって。

 俺もなんだかヤンチャ時代を思い出してしまうことよ。

 ハスターに転生した生を憂いて、目に付く旧支配者全部に喧嘩ふっかけていた時代もあったからなぁ。

 

 波紋によって肉の芽が消し去られ、灰になるのを見ながら改めて俺は眉を釣り上げて怒ってますポーズを取った。

 

「あと俺に謝って欲しいんだけど、帰ったらみんないないし戦闘中だからって無銭飲食したから俺すごい怒られたよ」

「そりゃすまんかった。でもそりゃこの刺客君が悪い。そうじゃろ?」

「それはそうなんだけど、俺の悲しみがどこへも行けずに燻っている。このままだとジョセフさんの髪を無意味に長髪にしてしまうかもしれん」

「何でじゃーッ!!」

「ああなるほど、再生で髪を伸ばせるんですね。へぇ、面白い使い方だ」

 

 感心する花京院君の後ろにジョセフさんが隠れる。

 別に伸ばされたからって毛根にダメージは出ないのに。

 

 アヴドゥルさんに「すまないが私の方も治療を頼みたい」と声をかけられたので、気を取り直してそちらにも再生を付与。

 顔に幾らか攻撃を受けたらしく、出血している。

 

 一瞬で傷が消えて、アヴドゥルさんはほうと皮膚に触れて目を見開いた。

 

「君がいると本当に助かるな。治療の専門家が旅にいることがこれほど心強いとは」

「力になれてよかったよ。でも無茶はしないでくれよ。死んだら流石に治せない」

「分かっているさ」

 

 からからとアヴドゥルさんは笑った。

 

 その身体には、びっしりと死の運命が纏わりついていることを、俺だけが知っているのである。

 





イエロー・トライアンフ
トライアンフ(Triomphe)とはタロットとトランプの元となったカード遊戯である。
すなわち化身。スタンドの元となった概念。
スタンドの命名法則に則っていない。スタンドではないからだ。

触手は旧支配者ハスターの本体である。
イエロー・トライアンフ(黄色い化身)とは、人型の化身、黄衣の王そのものを指す。
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