ハスターなオリ主とジョジョ3部   作:ラムセス_

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月の暗示とブルーな気持ち

 

 香港からホーチミンを経由し、シンガポールに出る船にいる今現在。

 

 まだ港を出立したばかりだ。

 香港の街並みが遠く海の向こうに見えて、霞む都市の景色がなんとなくアンニュイな気分にさせる。

 

 これから三日は船上の旅だ。

 スピードワゴン財団が手配してくれた荷物も多めに積んだし、船員の身元もチェック済み。

 他の客は乗ってないから悠々自適に海の景色を満喫するだけだ。

 

 俺は新メンバー、ポルナレフさんの前で触手を出して、ワクワクと待機した。

 

「頼む!図柄はお任せで、かっこいい感じのやつ!」

「そりゃ逆にハードルを上げるってもんだぜ!」

 

 といいつつ、意気揚々とスタンドを出してくれるノリの良さよ。

 

 ポルナレフさんはスタンドを構え、神速の勢いで俺の太い触手の皮に彫刻を施していく。

 触手は切りやすいように皮を柔らかくしているので、比較的彫刻しやすいはずだ。

 

 数度の瞬きの後、出来上がったのは美麗な中世騎士甲冑のレリーフだ。

 

 緻密な蔦の模様を背景に、炎を纏う鳥が舞い、空に抽象化された星が輝き、大きな宝石のついた三重冠が足元に描かれている。

 皆のスタンドを描いたのだろう。

 

 彼のスタンド、シルバーチャリオッツは速さと正確性もさることながら、本体の操作技術こそがずば抜けていると言えよう。

 

「そうらよ!皮の表面のみを使った彫刻だ。かっこいいだろ?いけてるだろ?」

「お見事!!!いやぁ、俺の触手、じゃなくてイエロートライアンフも格好よくなっちゃって!嬉しいなぁ!」

「別に僕のものではないので文句はないんですが、中央に大きく騎士甲冑を配置するのはどうかと思います」

「文句あるんじゃねーか!いいだろ、チャリオッツは一番かっこいいってこった」

 

 花京院君に突っ込まれ、ポルナレフさんは恥じることはないと胸を張った。

 花京院君と承太郎君が審議中になっている。

 「これは緻密な…流石はシルバーチャリオッツというべきか」とアヴドゥルさんがまったり感想を述べた。

 

 ポルナレフさんは、もともと妹の仇を取るために旅を始めたそうだ。

 そこをDIOに騙されて肉の芽を植えられ、刺客に仕立て上げられてしまっただけ。

 あれから戦闘後俺が再生で傷を癒やしてやったのを恩義に思ってくれていたから、代わりにかっこいいレリーフを触手に刻んでもらっただけだ。

 

 再びレリーフを見て俺はうっとりした。

 

 ずっとずっと大切に取っておこう。

 間違えてうっかり再生したら無くなってしまうし、厳重に保護魔術をかけておかねばなるまい。

 ジョセフさんがしげしげと眺めて「それ、フィードバックとかどうなっとるんじゃ?」と問いかけてくる。

 

「正直問題ないよ。ネイルアートぐらいの気持ちだからな」

「ほほう、となるとスタンドヴィジョンは相当デカいというわけだ」

「俺の触手は大きいしな。うん、かっこいい!」

 

 再び満足して、俺はいそいそと本体の奥の方に触手をしまった。

 

 承太郎君と花京院君は優雅に海を眺めるようにデッキチェアでまったりしている。

 花京院君は座ったままもぞもぞとハイエロファントの触手で飲み物を手繰り寄せた。

 横着しているようだ。

 そして「俺のも頼む」と言われて承太郎君のも触脚で取ってやった。

 二人でまったりコーラを飲む様は、非常に海を満喫していた。

 

 俺もアレになろうかな。でも椅子がない。

仕方ないので彫刻してもらったのとは別の大きな触手をのしっと承太郎君の横において、それを椅子がわりに腰掛けるなどする。

 触手は柔らかくしているので、革張りのソファみたいなリッチな感触だ。

 うらやましかろう。

 

 承太郎君はコーラを飲みながらこちらをじろっと見た。

 俺は少しだけ照れて、触手のつぶらな目を開いてそっと見つめ返した。

 

「うっとおしい。見た目が」

「見た目!?!?俺のキュートな瞳の何が気に食わんのだ!」

「あっ、俺の分も頼む!海を見ながら昼寝も乙なもんだしな!」

「ワシもワシも!」

「ならせっかくなので私も貰えるかな?なにぶんデッキチェアの脚数が少なくてね」

「あいよー、触手椅子三丁まいどあり。固めがいい、柔らかめがいい?」

 

 みんなで触手椅子に座り、まったり海を眺める。

 お好みの硬さにしてやれば意外と好評で、途中から承太郎君たちも安っぽいデッキチェアから鞍替えした。

 人間の形に上手く合わせてカーブもさせられるし、リクライニング機能付きだからな。

 

 見た目はすごいアクロバティックな空気椅子なんだが。

 

 花京院君を見習ってジョセフさんがハーミットパープルで飲み物を取って、そのまま波紋で遊び始める。

 「どうじゃ!ワシの彫刻もなかなかじゃろ!」と水でぶよぶよ形を作った。

 俺とポルナレフさんが拍手すれば、場はちょっとだけ盛り上がった。

 

 ちなみに、夜は波の具合にもよるがバーベキューを予定している。

 アヴドゥルさんの熟練の技により、いい具合の肉を量産する計画だ。

 今から待ち遠しいものだ。

 触手椅子に身を預けながらコーラ片手に承太郎君と談笑する花京院君は、なんだかとっても幸せそうに見えた。

 

 

 そうしてしばらくまったり雑談しながら時間を潰していると。

 

 

 にわかに、甲板が騒がしくなった。

 「ちくしょうこのボンクラ野郎が!!離しやがれ!」と絶叫が聞こえる。

 

 どうやら密航者が入り込んだらしい。

 まだ未成年の少女が、水夫さんに摘まれて甲板まで引き摺り出されている。

 見た感じ少年に見えるボーイッシュな格好をしているが、「瞳」から見れば女であることは一目瞭然だ。

 

 水夫さんも跳ねっ返りに随分と手を焼いているらしい。

 「このガキっ!」と捻り上げて怒っている。

 

 こんな歳で密航なんて事情もあるだろうから、俺はそっと水夫さんを制して声をかけてみることにする。

 

 水夫さんにすみませんと断って、密航者ちゃんに目線を合わせて少ししゃがむ。

 

「可愛い子だね。どうして女の子一人で密航なんて」

「俺が女だと!?どこ見てやがるこの節穴!タマキン潰してやろうか!」

「流れるような罵倒!!」

 

 船員さんが「ガキがお客様になんて口利きやがる!!」と首根っこを掴もうとして、するっと密航者ちゃんが手を避ける。

 そのままガブリと水夫さんに噛みつき、水夫さんは悲鳴をあげた。

 

 すごい悪ガキっ子だ。

 

 そのまま走って甲板の手すりを乗り越え、密航者ちゃんは海に飛び込んだ。

 すごい胆力だ。

 ここから陸まで軽く一キロはあるのに大した自信である。

 

 が、彼女の身体は意外と鍛え上げられており、ステータスも高い。

 俺の「瞳」は個人の技能を数値化する魔術がデフォルトで組み込まれているからな。

 その水泳技能も高い水準にあることは理解できた。

 

 陸までたどり着く可能性もバカにはできない。

 が、流れのある海でそんな危険なことをさせられないし。

 

 ちょっと連れ戻してくる!と俺は叫んで海に飛び込んだ。

 ジョセフさんが「ワシの椅子が!」と悲しそうな声を出している。

 

 特に干渉するつもりのない承太郎は無言。

 花京院君は「まったく、お人よしですよ!」と肩をすくめて俺を引き上げるためのハイエロファントを準備している。

 お人よし加減で君らに言われたくないのさ。

 

 バッシャバッシャと波をかき分けて女の子の腕を掴む。

 密航者ちゃんは素早くガルルルル!と唸った。

 

「離しやがれこのドサンピン!」

「いやこの海域サメが多いっぽいから普通に遊泳は無理だよ。美味しいサメの餌になりたくなかったら早く船に戻って」

「……ち、ちくしょう」

 

 船で遠目から見ただけでも、サメの姿が確認できたからな。

 女の子を船員さんが垂らしてくれた縄梯子に捕まらせて、俺もハイエロファントの触手を掴もうとする。

 海上警察に突き出されるだろうが、死ぬよりはマシだろうよ。

 

 瞬間。

 俺の足が何者かに掴まれて、勢いよく海の中に引き摺り込まれた。

 

「ッ!?ゴホ、」

 

 水の中には遠目に映るサメの姿に混じり、魚人のような人型の異形の姿がある。

 それは俺の足をしっかりと掴み、俺を海の奥深くに沈めようとしていた。

 

 俺に水中戦を挑むということらしい。

 船では急に沈んでちっとも上がってこない俺の姿に困惑が広がっている。

 

 先に水中で何が起きていることだけを示すため、

 触手を複数本水中から出して英単語を描かせる。

 すなわちENEMY(敵)である。

 驚愕する船のメンバーを置いて、俺は下卑た笑みを浮かべる敵スタンドと相対した。

 

 ひとまず触手を振り払えば、呆気なくスタンドは離れた。

 

「我がスタンドはダークブルームーン!厄介なテメェから処理できるとは、オレのツキも巡ってきたってもんだ」

「へぇ。俺の能力を知ってるのか」

「いくら回復能力があると言っても、息ができなければ我が攻撃は対処できまい!ここでゴミのように息絶えるがいい!」

 

 無論だが、俺こと旧支配者ハスターは呼吸など不要だ。

 俺は「星間宇宙を渡るもの」の名の通り、身一つで宇宙空間を泳ぐ極大の神性。

 酸素が必要な脆弱な生命とは違う。

 

 でも適当な理由をつけねば怪しまれるか。

 もし戦闘が長期化したら再生をかけ続けて、健康な肉体を維持したとか言い張ればいいか。

 多少ガバでも結果が全てである。

 

「お前はここで孤独に海の底に沈むのだ!そして!足についたフジツボが繁殖し、お前を蝕む!」

「おお、足に能力を付着させてるのか。凄いな」

 

 ふと見れば、足は既にフジツボがびっしり張り付いていた。

 ちくちくする上に、宿主の生命力を吸い取るようだ。

 俺は別に身体中覆われても何の痛痒もないけど。

 

 俺は触手をぞろりと出して、ダークブルームーンとやらに殺到させる。

 瞬時に触手は水中カッターのようなものに切り裂かれた。

 なかなかに切れ味が鋭く、柔らかい触手をぶつ切りにした。

 俺の周りには鱗も舞っており、俺が逃げようとすればそれで切り刻もうとしているのは明白だった。

 

 なかなかに多彩な能力だ。

 水中特化なだけあり、水の中では無類の強さを誇ると言ってもいいだろう。

 

 俺は頷いて、敵スタンドに触手を殺到させた。

 

「無駄だ!水の中は俺の独壇場ッ!そんなやわなスタンド如きに───ヒギャ」

「うん、もう隠し玉はなさそうだし、いいか」

 

 ウォーターカッターを無視してただ触手を前進させるだけ。

 細切れにされたとて、そんなの瞬きの間も必要なく再生できるからだ。

 

 そうして奴の体を触手で巻き取って、純粋に握りつぶしてやるだけ。

 ぐにゅり、と骨が肉を突き破る感触がある。

 

 正直、半魚人は嫌いだ。

 

 クトゥルフと深きものどもを思い出すから胸糞悪くなる。

 その上余罪もたっぷりで、記憶を探れば船長を殺したり、それ以外にもいくつも海難事故に関わっていた。

 

 遠慮なく握り潰せば、船の上でいきがっていたスタンド使いは爆散したようだ。

 スタンド像が消えたのを確認してから、ぶはっと水面に顔を出す。

 

 ハイエロファントがすかさず触手を伸ばしてくれたので、それをありがたく掴ませてもらう。

 承太郎君が俺にタオルを放ってくれた。

 

「敵スタンドに襲われたんですか!?」

「おうよ。ちゃんと仕留めといたよ。水中特化型で、ウォーターカッターやらフジツボでの生命力奪取やらいろいろしてきたよ」

「よく無事でしたね、黄衣さんのスタンドは直接戦闘向きではないでしょう」

「うーん、そうでもないぞ?」

 

 飛行機では他の客の手前控えめにしか動けなかったが。

 パワーはかなりある方だ。

 俺は前衛タンク兼任ヒーラーなのだ。

 

 ジョセフさんが慌ててこちらにきて眉間に皺を寄せる。

 

「いま船長が突然破裂したが、もしや船長は!」

「うん。俺が締め潰したから、多分俺に負けた敵スタンド使い本体だったんだろうな」

「何ということじゃ!!」

 

 少し向こうでは、ぐちゃぐちゃになった船長さんの死体を囲んで水夫さん達が怯えて縮こまっていた。

 俺は死体の前で立ち尽くして、少しだけ視線を下げた。

 

 承太郎君が俺の後ろまで来て、くだらないと言わんばかりに吐き捨てる。

 

「凹んでんじゃねーよ。肉の芽もねぇ。こいつは自分でDIOに従ってた悪党ってことだ」

「そだね。その通りだ」

「チッ。回復のスタンドってことは、性根が戦いに向いてないってことか」

「そうじゃないとは、思ってるけど。……思ってるだけかも」

 

 処置なし、と首を振る割には承太郎君の瞳には心配の色が宿っていた。

 本当に根がいい子なんだよなぁ。

 

 俺もそろそろ着替えて服を乾かさないと。

 トボトボと皆のところに戻り、しょんぼりしながらごそごそと荷物を漁る。

 

 ままならないものだ。

 奴が死刑に相当する罪を重ねていたのは明白だ。

 

 だからと言って、俺が裁いていいわけではない。

 神が人を裁くのは古の時代で終わったことだ。

 既に人は神の手を離れた。

 だからこれは越権行為。推奨された行為ではない。

 

 俺はタオルで髪を拭いながら、アヴドゥルさんに声をかけた。

 

「あーー、なんか敵スタンド使い、俺の能力知ってた。もしかしたら何らかの監視手段があるかも」

「やはりか。行く先々でちょうど待ち伏せされているようだから、疑ってはいたが」

「面倒ですね。これだけの距離を見張るということは、監視特化のスタンドでしょうから僕たちにはどうしようもない」

 

 今後も、敵はおそらく分断各個撃破をしてくるはずだ。

 

 俺がいる限り回復されてしまうから、できるだけ俺の動きを一番に封じようとしてくるだろう。

 それはタンク役として望むところだが、封印系が決まると少し厄介だ。

 本性を見せて突破、となると言い訳が面倒だし。

 

 本当は命惜しさにDIOの刺客が逃げてくれれば一番嬉しいんだが。

 

 俺はそのまま無言でデッキチェアに寝転がって目を閉じた。

 

「突如襲われて心が傷ついたので今日は寝ます。おやすみ」

「っつーことはその分の肉は俺たちで食っていいって話か?やったぜ」

「ポルナレフさんの非人道的な発想に全俺がいきり立ちました。起きます。謝罪と賠償に肉一枚を要求します」

「おうおう、食え食え。2枚でも3枚でもいいぞ。食わねーと体力はもたねぇからな」

「お兄ちゃん……」

 

 俺はシクシク泣いて弟分に落ち着いた。

 ポルナレフさんの兄貴力しゅごい…俺の方が年上だけど……。

 

 高校生組が可哀想なものを見る目をしているが、俺はそれを努めて無視したのであった。

 





・ハスターの触手レリーフ
宝物。おしゃれなネイルアート的な奴。
仲間のスタンドが美しく彫られている。
後に羽のついた犬(ザ・フール)が描き加えられる模様。
神体に刻まれているため、やろうと思えば宇宙の終焉のその先までもっていける。
大事に大事に、彼らの死後もその旅路を思い出せるように大切にするつもり。
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