ハスターなオリ主とジョジョ3部   作:ラムセス_

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イエロー対決

 

 本日。

 花京院君が露骨に偽物なのに本物のふりをしてパーティメンバー入りしているなり。

 

 インド方面へ向かう列車の切符を買うため、俺たちはシンガポール駅に向かっている途中である。

 実は俺が知っているシンガポール駅は2011年に廃止されていて、前に観光に来た時はすでに使用不可であった。

 

 それがこうして現役で動いているというのは、若干不思議な気持ちになる。

 いや時間遡行ぐらい俺なら楽にできるけど。

 悲しくなるからあえてやろうとは思わないし。

 

 ホテルのフロントで落ち合った花京院君は、その段階ですでにもうどう見ても花京院君ではなかった。

 

「アチィな。出立は明日だからゆっくりできるとはいえ、観光って気分にゃなれねぇな」

「いやその分厚い制服を脱げば割と過ごしやすい気候だと思う俺なのである」

「これはポリシーって奴だぜ」

「…………」

 

 無言を貫く花京院君モドキは、眩しい日差しの中汗ひとつ書かずに俺たちについてきている。

 やや口数少なめの機嫌悪そうに装って、会話でボロが出ないようにしているらしい。

 疲れていても不思議ではないここ数日の激動であったが、彼はそういう弱さを自分にも他人にも許さない誇り高い男だ。

 

 つまりまあ、露骨に花京院君ではないということだが。

 軽口をたたきつつ、俺は悶々と悩んだ。

 

 姿こそ花京院君そのものだが。

 俺から見れば、スタンドという力場で全身を覆われている謎の刺客Xだ。

 

 力場は自在な変身を可能とする、死肉を媒体に具現化する醜悪なそれである。

 エネルギーの吸収と増殖に特化し、非常に防御的。

 鎧としては非常に優秀なスタンドだ。

 

 だが承太郎君にそれを伝えるには、まず俺の知覚を説明しないといけない。

 いや承太郎君にはもう結構バレてそうだし、いっそ全部説明すべきだ。

 ああでもどこから、まず俺が外宇宙から来たよく分からん触手だという話から……。

 

 悶々とする俺の様子をチラリと見て、承太郎君はクソデカため息をついた。

 

「ヤシの実果汁でも飲んで休憩するぜ。俺と、黄衣の分。『テメェ』は必要か?」

「なら僕もひとつ」

 

 もう絶対俺の挙動不審な理由を全部理解している口調で、承太郎君は花京院君モドキに話しかけた。

 情けない俺ですまねぇ……。

 しょんぼりしていたら、承太郎君に肩を荒っぽく叩かれ「シャキッとしろ。俺らはDIOの刺客に狙われてんだぞ」と注意された。

 本当に申し訳ねぇ……。

 

 俺がべしょべしょに凹んでいる、その時である。

 不意に財布を取り出した花京院君モドキの背後に、男が近寄った。

 スリだ。

 突然モドキに向かってタックルを喰らわせ、そのまま強引に財布を奪い取って走り出した。

 

 やはり観光客が多いとこういう事件も多いということらしい。

 

 まさか自分が狙われるとは思っていなかった花京院君モドキは静かにキレ散らかした。

 スタンドの形を変形させて伸ばし、スリを素早くころばせた。

 

 怒りのままに膝蹴りをぶち込もうとしたので、手を間に挟んでストップした。

 かなりの本気だったようで、俺の手がやや潰れてしまう。

 まあ、どうせ俺にとっては毛先が潰れた程度のもので、ダメージには換算されない。

 

 俺は落ちたモドキ君の財布を拾い上げてから声をかけた。

 

「スリ相手にそこまでするのはいただけないなぁ。過剰防衛で俺らが捕まるじゃんか」

「……へぇ。スタンドも見えない人間が、僕らの罪をどう立証するんです?」

「今膝蹴りしようとしとったやろがい。防犯カメラこそ少ないけど、目撃証言でアウトだよ。まさか警察薙ぎ倒して逃げるつもりじゃないよな」

「はは。まさか。僕も少し気が立ってただけですよ、ハスタさん」

 

 花京院君は俺のことを黄衣さんって呼ぶんだけど、成り切るなら呼び方ぐらい本物と統一してくれぇ。

 

 這う這うの体でスリが逃げていく。

 その後ろ姿を見て、承太郎君が胡乱な顔をした。

 

「泳がせるならもうちっとやり方を考えろ。黄衣、テメェは分かりやすすぎだ。奴に気取られたら面倒だろうが」

「やっぱりっすか。挙動不審すまない。あと多分だけど本物の花京院君はホテルで待ちぼうけくらってると思う。可哀想だから後でお土産買って帰ろう」

「土産はこいつの首でいいんじゃねぇか」

 

 すごく血生臭いことだ。

 戦国武将じゃないんだから、首見せられても嬉しくないんじゃよ。

 

 モドキ君は慌てて己の無実を主張した。

 

「な、なにを言ってるんですハスタさぁあん!本物だとか偽物だとか、そんなものありませんよ?」

「ふん、それなら一発殴って確認すれば済む話だ。ちょうどこの場には黄衣がいる。黙って殴られな、クソ野郎」

 

 本物が乗っ取られていることも考慮したのだろう。

 承太郎君自身が素手で殴ろうとしたので、俺は素早くそれを制した。

 

「危険だ。奴はスタンドを身に纏っている。多分防御型の化身。直接攻撃はやめた方がいい」

「!……てめぇ」

 

 俺が情報の一つを開示したことに気付いたようだ。

 すなわち「俺は見ただけで相手のスタンドの性質をある程度看破できる」ということだ。

 

 モドキ君が醜悪に顔を歪ませ、唾を吐き捨てた。

 

「ふん。どうやってスタンドの正体を見抜いたのかはわからんが。おれのスタンドに触れておいていい気なもんだ。我がイエローテンパランスは力を吸い取る生きた鎧!弱点はないのだ!」

 

 花京院君モドキはようやくその本性を現すことにしたらしい。

 纏ったスタンドの間から顔を出して、愉悦に自虐的にせせら笑った。

 というかイエローかよマジで被るのやめてくれないか。

 

 なるほど、元から俺の手にスタンドを付着させることが狙いだったらしい。

 俺の手に付着していた奴の力場がにわかに再活性化して、おれの手からエネルギーを吸い取り、肉を貪り始める。

 

 承太郎君が「ッテメェ、その手についたやつは!」と瞠目する。

 

「ヒヒヒ、いかにテメェが再生すると言っても、エネルギーごと食ってしまえばお終いってもんよ。おれのハンサム顔も拝んだことだし、この世に未練はねぇだろう?」

「俺とエネルギー勝負をしようってか。いいけど、勝ったら俺が唯一のイエローってことでお前には消えてもらうぞ」

「ハハハハァーーッ!!勝てる気でいるのか!こいつぁお笑いだぜ!」

 

 承太郎君がチラリと俺の目を見て「テメェがやるか?」と問いかけてくる。

 

「いや、俺は正々堂々勝負してるから、適当にボコしてやっといてくれ。承太郎君も偽物にキモい思いしてたろ?」

「はっ、そうだな。不愉快で仕方なかったところだ。遠慮なくぶちのめさせてもらうぜ」

「やってみろよビチグソ共が!」

 

 ここはスリが逃げるのに使った人通りが少ない路地裏だから、人払いは最低限でいい。

 

 軽く人払いの魔術を展開。

 余計な被害が出ないように注意する。

 

 承太郎君は戦闘に入って、殴り合いに移行したようだ。

 相手のスライム状の鎧にやや責めあぐねている様子が見える。

 

 俺はどうすべきか。

 手に付着したのはエネルギーを吸収して成長、変化するルールをはらんだ力場だ。

 

 こんなの別に宇宙の果てまで放っておいたって俺を吸い尽くすのは不可能だ。

 でもイエローの座のかかった戦いだし、気持ちよく完全勝利を収めたいところである。

 あのモドキ自身たいそうな外道だし、ここで仕留めておかないとまずい。

 

 実は、奴が勝ち誇っているのは理由がある。

 

 奴はただ俺の手に付着させていたわけではない。

 俺の手に食いつき、血液に乗って全身に力場を送り込んでいるのだ。

 だからもし人間なら、手を切り落とそうと死が確定している状況である。

 奴の奥の手なのか、かなりスタンドパワーを消費するらしく、承太郎君にそれを仕掛けようとはしないようだ。

 

「イエロー・トライアンフ」

 

 格好つけに軽く宣言。

 

 旧支配者に人間がリソース勝負を挑もうなど片腹痛い。

 俺はゆっくりと再生力を増強していく。

 それとともに敵スタンドは増殖し、身体中から滲み出した多量のイエローテンパランスが俺の全身を喰らっては回復を繰り返す。

 

「ハハハハハハハ!!!見ろ奴を!もう奴は終わりだ!全身を俺のスタンドに貪り食われ、餌になるんだよーーーッ!!」

「はっ、それはどうかなクソ野郎」

 

 勝利を確信した顔で承太郎君は不敵に笑った。

 信頼が心強い。

 ならば俺もそれに応えるに不足はない。

 

 再生力をフルマックスで稼働していく。

 敵スタンドがどんどんと増殖する。俺は食われるたびに再生し、再生し、再生し、再生する。

 食われるより早く再生していく。0コンマ以下の超高速再生にて、逆に敵スタンドを食い尽くしていく。

 

 もちろん俺は再生過多でグロテスクな肉塊化して弾け飛ぶが、内部のイエローテンパランスも同様にダメージを受ける。

 これでもまだ再生としては手加減気味だ。

 

 「オゲェーーーッ!?」とモドキ君が口から肉塊を吐き出してよろめいた。

 スタンドのフィードバックだ。

 それを致命的な隙として、軽く踏み込んだ承太郎君が露出した顔面にラッシュを決める。

 

 攻めあぐねていたようだが、タイミングも良かったのだろう。

 承太郎君が俺の反撃を確信して待っていたのかもしれない。

 

 俺は吹っ飛んだ敵スタンド使いを見て喝采を送った。

 

「「「わぁい!流石承太郎君!」」」

「少し戦闘のダメージが残ってるのか、テメェが六人いるように見えるんだが」

「「「再生しすぎた。今統合するから待ってて」」」

 

 頭痛いみたいな顔をして承太郎君は首を振った。

 俺は六体で黄衣団子を作り、「合体!!!」と決めポーズを取るなどする。

 実写だとキモいので、いい感じに光らせて視界を誤魔化しながら増えすぎた触手を統合して一人に戻る。

 

 光が収まる頃には、いつも通りの俺の姿があった。

 

「完・全・復・活!!!」

「テメェは人間のふりする気があんのか?」

「いや人間だから一人に戻ったんじゃん。六人もいたらキモいじゃん」

「そもそも人間は増えねぇ」

「それはそう」

 

 俺は深く頷きながら、虚空から新品の服を取り出していそいそと触手で隠しながら着替えた。

 

「もう服弾けすぎて勿体無いから諦めた。全裸露出男が街で歩いたら通報されるし」

「そもそも物も再生できるって言っときゃよかっただろうが」

「服のことは予想してなかったんだよ!恥ずかし…俺承太郎君みたいにマッチョじゃないから恥ずかしい」

「俺なら恥ずかしくないわけじゃねぇよ。全裸で徘徊して恥ずかしくねぇのはイカれてるっつーんだ」

 

 承太郎君の的確なツッコミに同意しつつ、俺は飛び散った敵スタンドの肉片を集めて触手に乗せた。

 

「とりあえずこの肉片を弔おう」

「………どういう意味だ?」

「これまでの犠牲者の肉を媒介に具現化してた物質同化型のスタンドみたいだよ。たくさん殺して食いやがって。信じられねー」

「DIOに与するだけある外道ってわけか」

 

 俺たちは遠回りしてスピードワゴン財団にスタンド使いと犠牲者の死体を引き取ってもらった。

 どうせ警察では取り締まれない者たちだ。

 多くの死体が混ざってDNA検査もままならないし、その縁者の元には戻すことはできない。

 

 やりきれない思いだ。

 人が力を手に入れただけで、こんな非道なことができるなんて。

 

 走っていく財団の車を見送りながら、俺は少しだけ目を臥せた。

 

「テメェは、そんなに弱くてよく長く生きていられるな」

「うーん、マジで俺どこまでバレてる?」

「バレたくなかったら12世紀の歴史上人物の酒乱ネタを懐かしそうに話すんじゃねぇ」

「うん忘れて。ガバガバの星から来たガバ星人ですよ俺は」

 

 改めてシンガポール向かう道すがら、俺は晴れ渡った空を眺めた。

 

 旧支配者に死という概念は存在しない。

 太陽遊泳してもブラックホールに飛び込んでも超新星爆発に巻き込まれても、俺たちは蘇る。

 

 

 つまり、長すぎる生に憂いたとして、死にたくても死ねないということである。

 





・留守番花京院
ホテルに置いていかれて憮然としている。
お土産のココナツジュースを飲みながら偽物の話を聞いて憤慨した。
僕の姿でなんてことを!!!(激おこ)
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