デカグラマトン編3章のネタバレが含まれますのでご注意ください
まじで駄文ですね
お姉様を可愛いと思っていただけたら幸いです
青い空にうざったいまでの晴天。ジメジメとした気候の代わりに恐々とした寒さを感じる今日この頃。
私はいつも通りに書類に追われていた。
紙1枚を無くしたところで山となってしまった書類達が一気にしおらしくなるわけでもなく、膨大でしかない仕事を淡々とこなすしかない。
今日の日付は2/16。2で割り切れてしまって気持ちがいいというのはさすがに受験期を引きづりすぎか。
2月も後半に差し掛かり、様々なイベント事が起こってくる3月も見えてきた。
この調子で行くと3月も仕事漬けだろう。気持ちは鬱蒼とするばかりだ。
少なくとも鋼鉄大陸の書類は未だまとめ終わりそうにはない。
あっちの山が鋼鉄大陸で…、こっちの山がバレンタインデー事件。
書類の山を現実逃避のためジャンル分けしていると、ふと私のタブレット…、シッテムの箱に着信が。
『今からそちらへ向います』
珍しい生徒からだ。
彼女…、マルクトは鋼鉄大陸に関することにガッツリ関係する生徒だ。
詳しいことは省くけど、いろいろあって鋼鉄大陸からやってきて、生徒に迎え入れられた。
「うーん」
身体を伸ばして服を着替えようと席を立つ。
書類のタワーが崩れそうになり、体が自動的に反応する。
タワーの崩壊は杞憂に終わり、倒れることなく泣き止むようにしてその場に留まる。
私が着る服は基本的に白衣だ。白衣の下にスーツを着ているのが私の基本形だ。
中々に自分でもセンスのない服装だとはわかっているが、長年居続けたスタイルを崩すのは難しい。
「先生…いつもそれはさすがにどうかと思いますよ…?」
シッテムの箱から声が聞こえる。我らがスーパーAIアロナちゃんだ。
「でもこれしか持ってないし…」
「提案。今度生徒さんに服屋に連れててもらうのはどうでしょう」
「いやー、こんなおじさんと2人きりで服屋なんて行きたくないでしょ」
「……クソボケ」
「……もうダメですね、これは」
2人の声が重なり何かを言っていた。
聞き取ることはできなかったけど。
「さすがに片付けないとなぁ…」
人が来るなら机の上を片付ける。それは大人として、ではなく人として当然のことだ。
まあ私も学生の頃は全然片付けてなかったんだけど。
「先生。気をつけてくださいね」
私の身を案じてくれるアロナの声を聞きながら、書類の山を丁寧にどこかへ置いていく。
「skill〜my heart〜銀河の果まで〜♪」
思わず鼻歌とは名ばかりの熱唱が出てしまう。
「あっこんなところに」
そして見つけた。書類に塗れて無くしたと思っていた動輪剣を見つけてしまった。
大きさはフィギュアの付属品程度なのだが、縦一文字斬りができそうな出来だ。
「あっ」
その瞬間、グラりと揺れる。視界が、ではない。書類の山が、だ。
それと連鎖するように雪崩のような書類達が私の方へ流れてくる。
あっと思い、避ける暇もなく私はそれに飲み込まれてしまう。1枚1gあるかないか程の重さの紙とはいえ、それが相当量あれば1人の成人男性を押し倒すには十分の重さだ。
視界が白に包まれ、床に倒れ込みそうになる。
しかし、私の背が硬い床に打ち付けられることはなかった。かわりに、私の背には柔らかい、温かい感触が。
「大丈夫ですか?先生」
限りなく白に近いほどに透き通った声。私よりも少しだけ低い温度。
ちらりと見える比喩ではない真っ白の肌。
「マルクト…!ごめんね。ありがとう」
「いえ、我は大丈夫です。気にしないでください」
彼女はそう言った。
私は書類のケアをしながら立ち上がり、彼女に向き直る。
綺麗な黄色の目と、雪そのものと言っていいほどの人間離れした白い肌。
「ごめんね。こんなみっともないところを」
「気にしないでください。急に押しかけたのは我なのですから」
本当にみっともないところだった。仕事量が多いことに文句を言いたくなるのはそうなのだが、それを差し引きしてでも余るほどのみっともなさだ。
穴があったら入りたいとはまさにこの事。
「ほら、そこ座ってよ。ちょっとまっててね。お茶出すから」
椅子を取り出しマルクトを座らせる。
景観は悪いが、椅子の座り心地はいいと自負している。
何せ私が自費で吟味し買った椅子なのだ。そこだけ自信がある。
「旅は終わった?」
「いえ。まだです...。ですが今回は先生に渡したいものがあって舞い戻ってきました」
騒動の後、いなくなってしまった妹たちの託した願いを胸に抱え、人生のたびに出ていたマルクト。
彼女の様子から、その旅はどうやら順調らしい。
お湯が湧く。エンジニア部製の湯沸かし器は湯が沸くのがとても早い。技術の結晶と言うやつだろう。
かわりに確率で爆発するのがたまにキズか。
「はい。これ、緑茶とお茶請け。リラックスしててね」
お盆に湯気立つ湯呑みとお饅頭を添え、マルクトに差し出す。
彼女はほうと一息つき、一気に飲み干す。
「淹れたてだから熱いよ....って!?」
「あっつっ」
私の言葉が届くには少し遅すぎたようだ。マルクトは小さく舌を出し火傷してしまった場所をどうにか冷やそうとしているようだ。
私はすぐさま冷水をコップに注ぎ彼女に差し出す。
「大丈夫!?」
「ありがとうございます....。こんなに熱いものだとは.....」
マルクトは少し涙目になりながら冷水を飲む。
この姿すらも可愛いと思ってしまうのは少々意地が悪いと自分でも感じる。だが、これはトランブルなんだから仕方ない。
「どう?痛いところは?」
「舌が.....ひりひりします」
べーっと、マルクトはその黄色い舌を私に魅せるように口を開ける。
官能的なその光景に私の息子も思わずスタンディングオベーションをしそうになるが、やはりここは生徒への心配が勝つ。
ところどころ見える白い場所は火傷の証拠だろう。私は医師免許を持っているわけでも医療に詳しいわけでもないが、幼い頃に自分で確認した状態とよく似ている。
素人の生兵法は危険だとわかってはいるが、今は総判断するしかないのだ。許してほしい。
「あちゃー。火傷してるみたいだね」
見たところ結構跡を引きそうだ。
「喉は痛くない?」
「ええ。なんとも」
「それは九死に一生ってところかな」
喉をやけどするとひどい事態になるってのは私の幼少期で実験済みだ。こう聞くと私は危なかっしい子どもだったように聞こえるな。
「それで、マルクトは最近どうなの?」
「我ですか?我は最近....」
熟考した後、口を開く。
マルクトは一連の騒動が終わった後、自分の人生と整理をつけるために旅に出ていた。
「我は最近人の文化を学ぶために様々な学園へ赴いています。この間はトリニティへ行きました。初めてそこであいすくりーむという菓子を食べました」
ひんやりしていて、甘くて、おいしかったです。と彼女は満足そうに言う。
その顔はまさに彼女が生を謳歌しており、私の心の底から望んでいたことが達成されていることの何よりもの証拠だった。
「へえー。トリニティはおししいお菓子がいっぱいあるからね。私も何軒か隙な店があるんだ。今度一緒に行こうよ」
「はい。それは楽しみですね」
またもや満面の笑顔。
思わずその誰もが振り向くほどの笑顔にドキッとしてしまう。
「それで....、ですね。実はそこで聞いたことがありまして....」
満面の笑顔から一転、彼女の顔は急に赤くなる。
朱を指す頬は白によく映える。
「人の世にはバレンタインという大切な人にちょこれーとを渡す日があるそうですね」
バレンタイン。想い人にチョコを渡す日だ。今年のそのイベントは例年通り爆発が多かった。
ワカモが普通にチョコを渡しに来たのだけが救いか。
「うん。あるね」
「それを聞いて我も思ったのです。先生にちょこれーとを渡したいと」
それは嬉しいことだ。
キヴォトスに来てからチョコを貰う機会は嬉しいことに激増したが、やはり一人から渡したいと思ってもらうのは素直に嬉しい。
たとえるなら...なんだろうか。私は国語が得意なはずなのに良い例えが思いつかない。
「ですが、その日はすでに過ぎ去ってしまった。それでも、受け取ってくれませんか?」
「もちろんだよ」
彼女の言葉に私は頷く。断る理由がない。
「では...」
彼女は立ち上がる。
スラリと長い身長は、座っている私に大きな差をつける。
ふいに、彼女は上着を脱ぎだした。
もとより、下着をつけていない、言ってしまえば破廉恥な姿だとは思っていたがいざこう見せつけられるとセクシーでどうにも官能的だ。背徳的と捉えても良いかもしれない。
......ってえ?
「ちょ!?何してるの!?」
「トリニティでは最も強く想いを伝えるにはこのようにしたほうが良いと言われました。ですので
」
マルクトの上着を脱いだその姿はほぼ裸に近く、控えめなその胸と誰もが羨むほどのつややかさを持つ白い肌につながる局部には赤いリボンが可愛らしく巻かれており、まるで自らをプレゼントするように包装しているようだ。
まさにその姿はセクシーで官能的。先ほどと同じ言葉を使うなら背徳的というべきだ。
無論、その姿のお披露目は私の脳では到底想像できないものだったので、腰を抜かしそうになってしまった。
「誰に聞いたの!?」
私は思わず聞く。
「浦和ハナコさんという人です」
あの娘かぁー!!!。
成るほど納得だ。
「なぜでしょう、この姿はいつもなら寒いと感じるはずなのに、あなたの前だと体が火照って...、熱いです」
その言葉は蠱惑的で、本能を目覚めそうになる。そんな本能を理性で無理やり押さえつけ、私は彼女に上着を着せる。
インパクトが強すぎて一週間は忘れることはなさそうだ。
「それになんだか胸の奥がザラザラするのです」
「マルクト。それはね、きっと、人を大切にしたい。一緒に歩んでいきたいと想う気持ちだ」
「我には、その気持がわかりません。いえ、感じてはいるのです。貴方のことを心の底から独占してしまいたいというような、隣りにいたいとおもうような、近いものをさがすとしたら、妹たちに感じていた愛、でしょうか」
愛。
たった一文字としては重い言葉だ。その一つで人は縛られ、解放さえもされてしまう。
人が享受するには少々取り扱い注意な言葉だ。
まさに言霊という例ともいえるだろう。
「我は知りません。この気持ちを。ですが、今はただ貴方が心の底から愛おしく、もどかしく、欲しい。それだけなのです」
身を乗り出し、私に熱弁してくる。
その拍子でまた上着が脱げてしまった。
「...いいかい。その気持はきっと、誰も知らない。知っている人はもういないんだ。君が求める人生、その到着点でやっとわかることなんだ」
「......理解、しました。ですが、今貴方を欲しいと想う気持ちに変わりはありません。......もう一つ、知りたいことができました。それは、恋です。言った先々で皆が言う、好き、恋という感情、それを私は知りたい」
「それは、君がもっと生きて、経験して、そうやって理解するものなんだ」
暗に伝える告白は、私の心を大きく揺さぶる。
「では、先生が教えて下さい」
「.....それは、できない。君の可能性を潰してしまうから」
「我は、人生を旅で見つけました。ある意味これで完成と言ってもいいのかもしれません。ですが、やはり、旅を続けるたび、貴方が恋しい。我は貴方へのこの気持ちがしりたい。このどうしようもないくらいの独占欲を、愛情を。我は旅を続けていたときでも一緒に悩み、時には導いてくれた貴方への気持ちが知りたい」
彼女のその冷静かつ感情的な言葉は途切れることなく紡がれる。
「それは、貴方と共じゃないと知り得ない気持ちです。だから、先生。貴方が、教えて下さい」
マルクトの強い眼差しと、ブレることのないその言葉は大胆な告白を紡いでいた。
「.....ここまで言われたら拒めないな」
私は微笑みながら彼女に言う。
「マルクト。その気持は、私でさえも知らないんだ」
「......」
「だから、一緒に見つけていこうよ」
「......はい」
マルクトの頬は朱に染まり、笑顔となった。
やはり私はこの笑顔をかわいいなと思った。
「あと今日はシャーレに泊めてください。つかれてもう動けそうに....」
マルクトはそう言い残すと電池が切れるように私の膝上で眠ってしまった。